2021/05/08(土) - 16:10
ドゥクーニンク・クイックステップとボーラ・ハンスグローエの選手たちが着用するスペシャライズドのヘルメット。オールラウンドモデルの通気性を追求した新作"S-WORKS PREVAIL II VENT"が登場。高温多湿な日本の気候に適したレーシングヘルメットをテストした。
スペシャライズド S-WORKS PREVAIL II VENT
レースに情熱を傾けるスペシャライズドがサポートするドゥクーニンク・クイックステップとボーラ・ハンスグローエ。世界チャンピオンのジュリアン・アラフィリップ(フランス)やペテル・サガン(スロバキア)のみならず、数多くの強豪選手たちがスペシャライズドのプロダクトを使用し数々の好成績を納めている。
サポート選手たちのフィードバックをもとに開発されるプロダクトの一つ、軽量フラッグシップヘルメットのPREVAILシリーズ。2017年に登場したS-WORKS PREVAIL IIをベースに通気性を追求し、更なる進化を遂げた"S-WORKS PREVAIL II VENT"が登場した。
ヘルメット中央と側面のブリッジの7個を取り除いた
2017年に登場したS-WORKS PREVAIL IIが通気性がアップしたモデルである
グランツールの山岳ステージなどで活躍するPRIVAIL IIから通気性を向上させるためにスペシャライズドはヘルメットの内部構造を一から設計し直している。基本的なデザインをそのままに開口部を繋ぐフォーム製ブリッジを7個すべて取り除き、これまで分割されていた開口部を一つに繋ぐとともに通風路をアップデートした。
この進化により通気口の面積が20%増加、ヘルメット内の空気の流速が18%向上。内部に効率よく風を届けられるとともに、風が素早くヘルメット内を通過することで冷却効果が高められているという。
また、廃されたフォーム製ブリッジの代わりに用いられたのが、カーボン繊維とアラミドを機械で紡いだアラミドロープだ。アラミドロープでフォームを支え強度を確保されているため、発泡フォームの量は減っているものの安心して使うことが可能。
フォーム製ブリッジの代わりに用いられたアラミドロープ
PREVAIL II VENT(左)とPREVAIL II(右)
もちろんライナーの素材にはメインボディと側面で密度の異なるEPSフォームを使い分けていることで、衝撃吸収性能を向上させている。アメリカのバージニア工科大学で安全性のテストも行われ、安全性も確認されている。CE EN 1078の規格ももちろんクリアしている。
MIPSとANGiというテクノロジーが採用されていることも特徴だ。MIPSは帽体が落車などで回転衝撃を受けると、シェル内部に配されたシート状構造体がスライドし、脳内に伝わるダメージを軽減するというテクノロジーである。
PREVAIL II VENTで採用されているのは独自開発のMIPS SL。通常のMIPSがシート状構造体をヘルメットと頭部の間に配置していたのに対し、MIPS SLはそれぞれのパッドに備えられているウォッチバンド(シリコンバンド兼留め具)が独立して10から15mmスライドすることでMIPSの機能を実現している。
メインボディと側面で密度の異なるEPSフォームを使い分けている
MIPS SLはパッドに備えられているウォッチバンドがスライドする
通常のMIPSと同様の機能を持ちながら、パッドごとにMIPSを搭載することにより軽量化を実現している。使用されるパッドは裏地に細かな穴の空いた通気性の高いリップストリップメッシュ生地を採用し、快適さを向上させてくれる。
ANGiはスペシャライズド独自開発のクラッシュセンサー。落車や転倒時にヘルメットの衝撃を感知すると事前に登録した緊急連絡先に転倒したことと位置情報が送られるという電子デバイスだ。ライド中にアクシデントに見舞われた場合でも、誰かに通知してくれることで、様々なアクションを起こせる選択肢が広がるはずだ。
パッドは裏地に細かな穴の空いた通気性の高いリップストリップメッシュ生地を採用
軽量で薄くて柔らかい4X DryLiteストラップ
フィッティングシステムは「Mindset HairPort IIマイクロダイヤルフィットシステム」を採用。5段階で高さ調整が可能であり、ライダー自身の後頭部に合わせられるため、優れたフィットを実現する。加えて、4X DryLiteストラップは軽量で薄くて柔らかいが、汗や水を吸っても伸びることがないため、あらゆる環境下でも頭にフィットすることで保護してくれる。
サイズはアジアンフィットのSとM、Lのサイズ展開。カラーはMatte Gloss White/Chrome、Matte Sand/Gloss Dopio、Matte Maroon/Matte Black、Matte Blackの4色展開。価格は33,000円(税抜)。
― 編集部インプレッション
見比べるだけでも涼しさを感じる
今回インプレッションを行うのはアジアンフィットのヘルメットと相性が良いCW編集部員の高木。カスクだとMサイズ、カブトの場合はS/Mサイズを着用している。借り受けたS-WORKS PREVAIL II VENTのサイズはアジアンフィットのMサイズだ。
着用感としてはジャストフィット。帽体は若干楕円形だが額のインナーパッドのおかげもあり、頭とヘルメットに隙間がなく被れる設計となっている。また帽体が深めに作られているため、側頭部や後頭部などがしっかりと覆われ、頭を守られている安心感がある。クロージャーのダイヤルは縁に細かく凹凸が設けられているため、操作しやすく好印象だ。
頭部全体を駆け抜けていくような通気性を感じる
肝心の通気性に関してだが、今回は通常モデルも同時に着用し比較してみた。スタンダードモデルのPREVAIL IIは、額のエアインテークから入り込んだ風は、内部のチャネルを通り抜け、後頭部から風が抜けていくような設計。風が駆け抜けていくことにより、涼しさも感じられるような印象だ。
対してPREVAIL II VENTはヘルメット中央と側面のブリッジ7個を取り除いたことで、生まれた大きなエアインテークが大いに活躍してくれる。ブリッジに遮られない風は、前頭部と頭頂部に直接当たり続けるため、頭の熱がすべて流されていってしまうかのよう。
大きなエアインテークによりヘルメット内部が快適に
今回のテストライド中に信号待ちで立ち止まっていると、VENTの場合は大きなエアインテークから熱気が立ち上りヘルメット外へと逃げていく感覚を覚えた。これまでのヘルメットは内部に熱がこもることが常であったが、VENTの放熱性は非常に優れている。これからやってくる梅雨や真夏のライドでも、快適に走ることができそうだ。
週末にレースやサイクリングを楽しむ上でも、安全性は見逃せない大事な性能。帽体がしっかり作られていることはもちろん、回転衝撃をいなすMIPSが備えられていることは安心感に繋がる。ANGiもクラッシュを通知してくれるというシステムのおかげで、自宅から離れた位置でサイクリングを楽しむサイクリストとその家族、仲間が安心できるだろう。
高い通気性を備えたVENTシリーズはロードシューズ"S-WORKS 7 VENT"もラインアップ
高温多湿な日本の気候に適したヘルメットで梅雨や夏の時期に良さそうだ
カラーラインアップも全4色で、チームウェアなどにも合わせやすいホワイトとマットブラックという2色が用意されていている。S-WORKS PREVAIL II VENTはMIPを搭載しながら軽量で、日本人の頭にピッタリなアジアンフィットモデルを探している方には、一度試してもらいたいヘルメットだ。
スペシャライズド S-WORKS PREVAIL II VENT
カラー:Matte Gloss White/Chrome、Matte Sand/Gloss Dopio、Matte Maroon/Matte Black、Matte Black
サイズ(アジアンフィット):S、M、L
価格:33,000円(税抜)
text:Michinari TAKAGI
photo:Gakuto Fujiwara
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サポート選手たちのフィードバックをもとに開発されるプロダクトの一つ、軽量フラッグシップヘルメットのPREVAILシリーズ。2017年に登場したS-WORKS PREVAIL IIをベースに通気性を追求し、更なる進化を遂げた"S-WORKS PREVAIL II VENT"が登場した。
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グランツールの山岳ステージなどで活躍するPRIVAIL IIから通気性を向上させるためにスペシャライズドはヘルメットの内部構造を一から設計し直している。基本的なデザインをそのままに開口部を繋ぐフォーム製ブリッジを7個すべて取り除き、これまで分割されていた開口部を一つに繋ぐとともに通風路をアップデートした。
この進化により通気口の面積が20%増加、ヘルメット内の空気の流速が18%向上。内部に効率よく風を届けられるとともに、風が素早くヘルメット内を通過することで冷却効果が高められているという。
また、廃されたフォーム製ブリッジの代わりに用いられたのが、カーボン繊維とアラミドを機械で紡いだアラミドロープだ。アラミドロープでフォームを支え強度を確保されているため、発泡フォームの量は減っているものの安心して使うことが可能。
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MIPSとANGiというテクノロジーが採用されていることも特徴だ。MIPSは帽体が落車などで回転衝撃を受けると、シェル内部に配されたシート状構造体がスライドし、脳内に伝わるダメージを軽減するというテクノロジーである。
PREVAIL II VENTで採用されているのは独自開発のMIPS SL。通常のMIPSがシート状構造体をヘルメットと頭部の間に配置していたのに対し、MIPS SLはそれぞれのパッドに備えられているウォッチバンド(シリコンバンド兼留め具)が独立して10から15mmスライドすることでMIPSの機能を実現している。
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ANGiはスペシャライズド独自開発のクラッシュセンサー。落車や転倒時にヘルメットの衝撃を感知すると事前に登録した緊急連絡先に転倒したことと位置情報が送られるという電子デバイスだ。ライド中にアクシデントに見舞われた場合でも、誰かに通知してくれることで、様々なアクションを起こせる選択肢が広がるはずだ。
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サイズはアジアンフィットのSとM、Lのサイズ展開。カラーはMatte Gloss White/Chrome、Matte Sand/Gloss Dopio、Matte Maroon/Matte Black、Matte Blackの4色展開。価格は33,000円(税抜)。
― 編集部インプレッション
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今回インプレッションを行うのはアジアンフィットのヘルメットと相性が良いCW編集部員の高木。カスクだとMサイズ、カブトの場合はS/Mサイズを着用している。借り受けたS-WORKS PREVAIL II VENTのサイズはアジアンフィットのMサイズだ。
着用感としてはジャストフィット。帽体は若干楕円形だが額のインナーパッドのおかげもあり、頭とヘルメットに隙間がなく被れる設計となっている。また帽体が深めに作られているため、側頭部や後頭部などがしっかりと覆われ、頭を守られている安心感がある。クロージャーのダイヤルは縁に細かく凹凸が設けられているため、操作しやすく好印象だ。
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対してPREVAIL II VENTはヘルメット中央と側面のブリッジ7個を取り除いたことで、生まれた大きなエアインテークが大いに活躍してくれる。ブリッジに遮られない風は、前頭部と頭頂部に直接当たり続けるため、頭の熱がすべて流されていってしまうかのよう。
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週末にレースやサイクリングを楽しむ上でも、安全性は見逃せない大事な性能。帽体がしっかり作られていることはもちろん、回転衝撃をいなすMIPSが備えられていることは安心感に繋がる。ANGiもクラッシュを通知してくれるというシステムのおかげで、自宅から離れた位置でサイクリングを楽しむサイクリストとその家族、仲間が安心できるだろう。
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スペシャライズド S-WORKS PREVAIL II VENT
カラー:Matte Gloss White/Chrome、Matte Sand/Gloss Dopio、Matte Maroon/Matte Black、Matte Black
サイズ(アジアンフィット):S、M、L
価格:33,000円(税抜)
text:Michinari TAKAGI
photo:Gakuto Fujiwara
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