2021/03/15(月) - 11:05
短縮周回コースが呼び起こした波乱の展開。ここまで盤石だったプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)は2度の落車で遅れ、精鋭グループの勝負をマグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーションNIPPO)が制す。マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)が2連覇を達成した。
ここまで7日間に渡るスケジュールをこなし、いよいよ最終日まで到達した第79回パリ〜ニース(UCIワールドツアー)。前日に引き続き新型コロナウイルス感染拡大に伴う週末ロックダウンによって、レースはニース北部の山間の街ル・プラン・デュ・ヴァールをスタートする周回コースに変更。エズ峠を含む本来の山岳レイアウトは2級山岳を含む周回コースx3周=92.7kmに短縮されたものの、関係者の尽力により2年連続の前倒し閉幕は回避されている。
コース変更により、逃げ切りも、総合争いの可能性も増したパリ〜ニース最終日。序盤から激しくアタック合戦が掛かる中、スタート後22km地点のダウンヒルでマイヨ・ジョーヌのプリモシュ・ログリッチ(ユンボ・ヴィスマ)が落車するアクシデントが発生した。
共に落車したダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)は膝を痛めてリタイアを喫したが、肩を打ち付け、腿に大きな擦過傷を負ったログリッチはチームメイトの助けを借りて集団復帰に成功。2周目に入ったタイミングでヨナス・ルッチ(ドイツ、EFエデュケーションNIPPO)とエドワード・トゥーンス(ベルギー、トレック・セガフレード)、ティム・デクレルク(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)、スヴェンエリック・ビストラム(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)が逃げを決めたものの、それでもレースは落ち着くことがなかった。
第2ステージで勝利したケース・ボル(オランダ、チームDSM)とワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)、ステファノ・オルダーニ(イタリア、ロット・スーダル)、そしてローレンス・デプルス(ベルギー、イネオス・グレナディアーズ)が逃げに追いついた一方、メイン集団前方では今大会アグレッシブに動いたアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ・プレミアテック)が岩壁に衝突してリタイアに終わっている。
次々とアタックが掛かる状況で、登りとテクニカルダウンヒルを消化する高強度なショートレース。フィニッシュまで40kmを切ると、メイン集団からはルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ・プレミアテック)のアタックをきっかけに、ジュリアン・ベルナール(フランス、トレック・セガフレード)やマイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ)、マッテオ・トレンティン(イタリア、UAEチームエミレーツ)を含む強力な追走グループが生まれ、先頭グループへの合流を目指した。
2周目の2級山岳を越え、先頭と追走が合流したタイミングでは、メイン集団内で再びログリッチが落車してしまう。傷ついたマイヨジョーヌはチームメイトや、遅れていたナセル・ブアニ(フランス、アルケア・サムシック)の助けを借りて集団後方目前まで迫ったが、総合2位マキシミリアン・シャフマン(ドイツ)擁するボーラ・ハンスグローエや、総合3位アレクサンドル・ウラソフ(ロシア)&総合4位ヨン・イサギレ(スペイン)を擁するアスタナ・プレミアテックがペースアップを断行したことで再び距離が離れていく。ここまでステージ3勝、盤石の戦いを見せていたログリッチはバーチャルリーダーをシャフマンに明け渡した。
ペースアップを続けるメイン集団は、力尽きた選手を振り落としながら先頭グループを飲み込み、レース全体の先頭となって突き進む。2017年の総合覇者セルヒオルイス・エナオ(コロンビア、クベカ・アソス)のアタックは封じ込められ、残り3.5kmになると前日逃げ切り叶わず2位に終わったジーノ・マーダー(スイス、バーレーン・ヴィクトリアス)とクリスツ・ニーランズ(ラトビア、イスラエル・スタートアップネイション)、そしてギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)が飛び出すも決まらない。シャフマンを含め、約20名に絞られた集団がひと塊となってフィニッシュを目指した。
ティシュ・ベノート(ベルギー、チームDSM)とディラン・ファンバーレ(オランダ、イネオス・グレナディアーズ)が激しく位置取るその前方で、後方の様子を伺いながら先行したマグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーションNIPPO)が加速する。急加速して追い込むクリストフ・ラポルト(フランス、コフィディス)は届かず、コルトがパリ〜ニース最終ステージを制した。
「パーフェクトなフィニッシュだった。最高に嬉しい。次々と逃げが生まれては吸収され、ログリッチが二度落車し、僕たちの集団がスプリント争いをするという予測不可能な緊張感高いレースだった。ラスト数kmはどのチームも列車を組めず、自分自身でポジションを争うカオスな状況だった。2度フィニッシュを通過した時、高速かつフィニッシュ前に緩いコーナーがあることを掴んでいたんだ。真っ先にコーナーに入れば誰も追い上げてこれないと思った。全てがうまくいった」と、2時間少々のショートステージで今季初勝利を掴んだコルトは言う。EFにとっては第3ステージのシュテファン・ビッセガー(スイス)に続く今大会2勝目だ。
また、最後の2級山岳でアシストを欠きながらもライバルチームの攻撃に耐え、ステージ10位に食い込んだシャフマンがパリ〜ニース連覇を達成。最終的に3分8秒遅れたログリッチからマイヨジョーヌを奪う、筋書きの無い戦いを制した。
「クレイジーな1日だったよ。ログリッチが2度も落車するだなんて、いろいろな感情が頭の中を駆け巡っている。彼自身のミスだったかどうかは分からない。でも、僕が最初の登り前でパンクした時は誰も待ってはくれず、かなり追い込んで復帰した。ログリッチが最初に落車した時には待ったけれど、二度目に落車した時は逃げが先行している状態。そこから勝ちを狙いにいったんだ」と、混沌とした1日を振り返るシャフマン。
「嬉しく思えるかどうか分からない。こんな勝利は良いことじゃないし、とても難しい。ただいずれにせよ総合優勝は素晴らしい結果。連覇を目標にやってきたけれど、昨年とは違うシナリオの最後に突然表彰台に上がることになった。なんて言えば良いか分からないよ。ただし、合宿を終えて疲れで風邪をひいたけれど、そこから回復し、様々なことを改善できた。チームは素晴らしい仕事をしてくれたし、彼らを誇りに思いたい。これから総合優勝を楽しむことにするよ」と、マイヨジョーヌを手にしたシャフマンは複雑な心境を吐露している。
ここまで7日間に渡るスケジュールをこなし、いよいよ最終日まで到達した第79回パリ〜ニース(UCIワールドツアー)。前日に引き続き新型コロナウイルス感染拡大に伴う週末ロックダウンによって、レースはニース北部の山間の街ル・プラン・デュ・ヴァールをスタートする周回コースに変更。エズ峠を含む本来の山岳レイアウトは2級山岳を含む周回コースx3周=92.7kmに短縮されたものの、関係者の尽力により2年連続の前倒し閉幕は回避されている。
コース変更により、逃げ切りも、総合争いの可能性も増したパリ〜ニース最終日。序盤から激しくアタック合戦が掛かる中、スタート後22km地点のダウンヒルでマイヨ・ジョーヌのプリモシュ・ログリッチ(ユンボ・ヴィスマ)が落車するアクシデントが発生した。
共に落車したダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)は膝を痛めてリタイアを喫したが、肩を打ち付け、腿に大きな擦過傷を負ったログリッチはチームメイトの助けを借りて集団復帰に成功。2周目に入ったタイミングでヨナス・ルッチ(ドイツ、EFエデュケーションNIPPO)とエドワード・トゥーンス(ベルギー、トレック・セガフレード)、ティム・デクレルク(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)、スヴェンエリック・ビストラム(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)が逃げを決めたものの、それでもレースは落ち着くことがなかった。
第2ステージで勝利したケース・ボル(オランダ、チームDSM)とワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)、ステファノ・オルダーニ(イタリア、ロット・スーダル)、そしてローレンス・デプルス(ベルギー、イネオス・グレナディアーズ)が逃げに追いついた一方、メイン集団前方では今大会アグレッシブに動いたアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ・プレミアテック)が岩壁に衝突してリタイアに終わっている。
次々とアタックが掛かる状況で、登りとテクニカルダウンヒルを消化する高強度なショートレース。フィニッシュまで40kmを切ると、メイン集団からはルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ・プレミアテック)のアタックをきっかけに、ジュリアン・ベルナール(フランス、トレック・セガフレード)やマイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ)、マッテオ・トレンティン(イタリア、UAEチームエミレーツ)を含む強力な追走グループが生まれ、先頭グループへの合流を目指した。
2周目の2級山岳を越え、先頭と追走が合流したタイミングでは、メイン集団内で再びログリッチが落車してしまう。傷ついたマイヨジョーヌはチームメイトや、遅れていたナセル・ブアニ(フランス、アルケア・サムシック)の助けを借りて集団後方目前まで迫ったが、総合2位マキシミリアン・シャフマン(ドイツ)擁するボーラ・ハンスグローエや、総合3位アレクサンドル・ウラソフ(ロシア)&総合4位ヨン・イサギレ(スペイン)を擁するアスタナ・プレミアテックがペースアップを断行したことで再び距離が離れていく。ここまでステージ3勝、盤石の戦いを見せていたログリッチはバーチャルリーダーをシャフマンに明け渡した。
ペースアップを続けるメイン集団は、力尽きた選手を振り落としながら先頭グループを飲み込み、レース全体の先頭となって突き進む。2017年の総合覇者セルヒオルイス・エナオ(コロンビア、クベカ・アソス)のアタックは封じ込められ、残り3.5kmになると前日逃げ切り叶わず2位に終わったジーノ・マーダー(スイス、バーレーン・ヴィクトリアス)とクリスツ・ニーランズ(ラトビア、イスラエル・スタートアップネイション)、そしてギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)が飛び出すも決まらない。シャフマンを含め、約20名に絞られた集団がひと塊となってフィニッシュを目指した。
ティシュ・ベノート(ベルギー、チームDSM)とディラン・ファンバーレ(オランダ、イネオス・グレナディアーズ)が激しく位置取るその前方で、後方の様子を伺いながら先行したマグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーションNIPPO)が加速する。急加速して追い込むクリストフ・ラポルト(フランス、コフィディス)は届かず、コルトがパリ〜ニース最終ステージを制した。
「パーフェクトなフィニッシュだった。最高に嬉しい。次々と逃げが生まれては吸収され、ログリッチが二度落車し、僕たちの集団がスプリント争いをするという予測不可能な緊張感高いレースだった。ラスト数kmはどのチームも列車を組めず、自分自身でポジションを争うカオスな状況だった。2度フィニッシュを通過した時、高速かつフィニッシュ前に緩いコーナーがあることを掴んでいたんだ。真っ先にコーナーに入れば誰も追い上げてこれないと思った。全てがうまくいった」と、2時間少々のショートステージで今季初勝利を掴んだコルトは言う。EFにとっては第3ステージのシュテファン・ビッセガー(スイス)に続く今大会2勝目だ。
また、最後の2級山岳でアシストを欠きながらもライバルチームの攻撃に耐え、ステージ10位に食い込んだシャフマンがパリ〜ニース連覇を達成。最終的に3分8秒遅れたログリッチからマイヨジョーヌを奪う、筋書きの無い戦いを制した。
「クレイジーな1日だったよ。ログリッチが2度も落車するだなんて、いろいろな感情が頭の中を駆け巡っている。彼自身のミスだったかどうかは分からない。でも、僕が最初の登り前でパンクした時は誰も待ってはくれず、かなり追い込んで復帰した。ログリッチが最初に落車した時には待ったけれど、二度目に落車した時は逃げが先行している状態。そこから勝ちを狙いにいったんだ」と、混沌とした1日を振り返るシャフマン。
「嬉しく思えるかどうか分からない。こんな勝利は良いことじゃないし、とても難しい。ただいずれにせよ総合優勝は素晴らしい結果。連覇を目標にやってきたけれど、昨年とは違うシナリオの最後に突然表彰台に上がることになった。なんて言えば良いか分からないよ。ただし、合宿を終えて疲れで風邪をひいたけれど、そこから回復し、様々なことを改善できた。チームは素晴らしい仕事をしてくれたし、彼らを誇りに思いたい。これから総合優勝を楽しむことにするよ」と、マイヨジョーヌを手にしたシャフマンは複雑な心境を吐露している。
パリ〜ニース2021第8ステージ結果
1位 | マグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーションNIPPO) | 2:16:58 |
2位 | クリストフ・ラポルト(フランス、コフィディス) | |
3位 | ピエール・ラトゥール(フランス、AG2Rシトロエン) | |
4位 | ディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
5位 | ワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック) | |
6位 | ディラン・ファンバーレ(オランダ、イネオス・グレナディアーズ) | |
7位 | ヨン・イサギレ(スペイン、アスタナ・プレミアテック) | |
8位 | マッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ、モビスター) | |
9位 | イヴ・ランパールト(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
10位 | マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | |
65位 | 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) | 4:10 |
個人総合成績
1位 | マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | 28:49:51 |
2位 | アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ・プレミアテック) | 0:19 |
3位 | ヨン・イサギレ(スペイン、アスタナ・プレミアテック) | 0:23 |
4位 | ルーカス・ハミルトン(オーストラリア、バイクエクスチェンジ) | 0:41 |
5位 | ティシュ・ベノート(ベルギー、チームDSM) | 0:42 |
6位 | ギヨーム・マルタン(フランス、バイクエクスチェンジ) | 1:14 |
7位 | ジャック・ヘイグ(オーストラリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | 1:18 |
8位 | マッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ、モビスター) | 1:29 |
9位 | オレリアン・パレパントル(フランス、AG2Rシトロエン) | 1:31 |
10位 | ジーノ・マーダー(スイス、バーレーン・ヴィクトリアス) | 1:32 |
その他の特別賞
ポイント賞 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) |
山岳賞 | アントニー・ペレス(フランス、コフィディス) |
ヤングライダー賞 | アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ・プレミアテック) |
チーム総合成績 | アスタナ・プレミアテック |
text:So Isobe
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