マリアローザ最有力候補がジロ・デ・イタリアを去る。第3ステージのニュートラルゾーンで落車し、12分遅れで1級山岳エトナの山頂フィニッシュにたどり着いたゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)。精密検査の結果、骨盤下部に小さな骨折が見つかったため、トーマスは第4ステージをスタートしないことを決めた。


痛々しい姿でフィニッシュを目指すゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)痛々しい姿でフィニッシュを目指すゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos
第3ステージの正式スタート前、ニュートラル走行中に地面を転がる他チームのボトルを踏み、バランスを崩して落車したトーマス。再スタートしながらも勝負どころを前にメイン集団から遅れたトーマスは、ステージ優勝者から12分以上遅れて1級山岳エトナにフィニッシュした。大会3日目にして、マリアローザ候補の最有力候補に挙げられていたトーマスが実質的に総合争いから脱落した。

第3ステージ終了後のX線検査では骨折が見つからなかったが、翌朝(10月6日)のMRIとCT検査により骨盤下部に小さな骨折が認められた。レースを継続した場合に怪我が悪化することが考えられるため、チームドクターの判断によりイネオス・グレナディアーズはトーマスのリタイアを決めた。

エトナ山を前に脱落したゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)エトナ山を前に脱落したゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos

ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)のコメント

「とても悔しい。このレースのために全てを捧げて、勝つための準備は整っていた。(2018年に)ツールで勝った時よりも調子が良いと思うほどに、本当に調子が良かった。こんな形でレースが終わることは失望以外の何ものでもない。今朝の時点ではスタートするつもりでいた。朝起きて、チームメイトたちとスタートして、この先のステージで彼らをサポートするつもりだったんだ。でも何か身体の深いところに違和感があって、精密検査を受けることになった。骨折がある場合、そしてレースを継続することで悪化することが考えられる場合、リタイアという判断は妥当だった」

マリアローザ候補の中で最も良いタイムをマークしたゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)マリアローザ候補の中で最も良いタイムをマークしたゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos
2018年にツール・ド・フランスを制し、2019年にエガン・ベルナル(コロンビア)をアシストしながら総合2位に入ったトーマス。今シーズンはレース再開後に精彩を欠き、クリテリウム・デュ・ドーフィネを総合37位でフィニッシュ。調整不足としてツールのエースの座をベルナルに譲り、自身4度目の出場となるジロにフォーカスしていた。9月のティレーノ〜アドリアティコで総合2位に入って順調なコンディショニングをアピール。ジロ初日の個人タイムトライアルでは総合ライバルたちを圧倒する走りを見せていた。

トーマスのリタイアによりイネオス・グレナディアーズは作戦変更を強いられる。第4ステージスタート時点でマリアビアンカ対象選手のテイオ・ゲイガンハート(イギリス)が総合24位。第3ステージの終盤にアタックしたジョナタン・カストロビエホ(スペイン)とゲイガンハートが山岳ステージで、ベン・スウィフト(イギリス)が平坦ステージで、そしてフィリッポ・ガンナ(イタリア)とローハン・デニス(オーストラリア)が残る2つの個人タイムトライアルで優勝を狙うことになるだろう。チーム力でレースをコントロールすると見られたイネオス・グレナディアーズのエースリタイアは、マリアローザ争いの展開にも大きな影響を及ぼしそうだ。

12分19秒遅れたゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)12分19秒遅れたゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos

text:Kei Tsuji
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