2020/09/12(土) - 02:32
一緒に逃げたボーラ・ハンスグローエの2人を1級山岳ピュイマリーの急斜面で引き離したダニエル・マルティネス(EFプロサイクリング)がツール・ド・フランス第13ステージ優勝。総合争いはスロベニアのプリモシュ・ログリッチ(ユンボ・ヴィスマ)とタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)がリードを広げる結果に。
9月11日(金)第13ステージ
シャテル=ギヨン〜ピュイマリー
距離:191.5km
獲得標高差:4,400m
天候:晴れ時々曇り
気温:16〜24度
カテゴリー山岳とスプリントポイント
36km地点 1級山岳セサット峠(距離10.2km・平均6.1%)
63.5km地点 3級山岳ゲリー峠(距離7.8km・平均5%)
85.5km地点 2級山岳モンテ・ド・ラ・ステル(距離6.8km・平均5.7%)
111km地点 スプリントポイント
130.5km地点 3級山岳レスティアード峠(距離3.7km・平均6.9%)
157km地点 3級山岳アングラール=ド=サレ峠(距離3.5km・平均6.9%)
180.5km地点 ボーナスポイント/2級山岳ネロンヌ峠(距離3.8km・平均9.1%)
191.5km地点 1級山岳ピュイマリー(距離5.4km・平均8.1%・最大15%)
逃げ切りを狙うアタッカーたちの熾烈なアタック合戦に
1週間ぶりにツールが中央山塊にアタック。アルプス山脈やピレネー山脈のような標高のインパクトはないが、登りと下りしかないような『ノコギリ型』のコースプロフィールの難易度は高い。何しろ191.5kmのステージには今大会最も多い7つものカテゴリー山岳が散りばめられた。そしてその獲得標高差は今大会最大の4,400mにおよぶ。
1級山岳セサット峠を皮切りに、標高1,500m〜2,000m級の死火山が点在するヴォルカン・ドヴェルニュ自然公園に足を踏み入れると、後はフィニッシュまで平坦区間がない。残り31.5kmから先はひたすら標高1,589mのフィニッシュまで登り。まずはボーナスポイントが設定された急勾配の2級山岳ネロンヌ峠をクリアし、そこから短い平地&下りを挟んで1級山岳パ・ド・ペイロル/ピュイマリーを駆け上がる。ツール11回目の登場となるが、フィニッシュ地点としては初登場となる1級山岳パ・ド・ペイロル/ピュイマリーは最大勾配が15%に達する急坂だ。
(愛三工業レーシングのダミアン・モニエが住む)クレルモン=フェランの郊外に位置するシャテル=ギヨンのスタート地点に集まったのは160名の選手たち。レース離脱中のクリスティアン・プリュドム氏に代わってフランソワ・ルマルシャン氏がディレクターカーからスタートフラッグを振ると、最初の1級山岳セサット峠に向かって高速アタック合戦が始まる。
中でも積極性を見せたのは前日にステージ優勝を逃したジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)。地元クレルモン=フェラン出身のレミ・カヴァニャ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)という心強いエスコート役に案内されるように飛び出すと、ここにダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション)やマイヨアポワのブノワ・コヌフロワ(フランス、アージェードゥーゼール)らが飛びついた。
激しい出入りの末に、1級山岳セサット峠通過後に先頭グループは17名まで人数を増やした。マイヨアポワを守りたいコヌフロワは脱落したものの、ワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)やダビ・デラクルス(スペイン、UAEチームエミレーツ)、そしてパヴェル・シヴァコフ(ロシア、イネオス・グレナディアーズ)といった有力選手を含む逃げ。2日連続逃げとなるピエール・ロラン(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト)は総合で18分57秒遅れだが、ユンボ・ヴィスマ率いるメイン集団はこの逃げの先行を容認した。
逃げグループを形成した17名
ピエール・ロラン(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト)総合18分57秒遅れ
ワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)総合23分51秒遅れ
ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)
レミ・カヴァニャ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)
マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
レナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
ヒュー・カーシー(イギリス、EFプロサイクリング)
ニールソン・ポーレス(アメリカ、EFプロサイクリング)
ダニエル・マルティネス(コロンビア、EFプロサイクリング)
ヴァランタン・マデュアス(フランス、グルパマFDJ)
ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション)
ニコラ・エデ(フランス、コフィディス)
シモン・ゲシュケ(ドイツ、CCCチーム)
ダビ・デラクルス(スペイン、UAEチームエミレーツ)
パヴェル・シヴァコフ(ロシア、イネオス・グレナディアーズ)
マルク・ソレル(スペイン、モビスター)
ロメン・シカール(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)
EFプロサイクリングが3名、ドゥクーニンク・クイックステップとボーラ・ハンスグローエが2名を送り込み、ステージ優勝に闘志を燃やす17名もの大きな逃げグループ。ステージ中盤に7分まで拡大したタイム差を縮めることにユンボ・ヴィスマをはじめとする総合系チームは興味を示さなかった。比較的平穏に進むメイン集団の中ではロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)やナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック)を巻き込む落車が発生し、総合13位バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)は手首骨折によりレースを去っている。
1級山岳ピュイマリーでステージ優勝争いと総合争いが同時進行
フィニッシュまで45km、山岳を3つ残した段階で逃げグループとメイン集団のタイム差は10分の大台に。逃げ切りが確実となった先頭グループの中から3級山岳アングラール=ド=サレ峠でEFプロサイクリングのポーレスが独走に持ち込み、シャフマンが単独追走を仕掛ける展開。ポーレスに追いついたシャフマンは、続く2級山岳ネロンヌ峠で独走に持ち込んだ。
追走グループの中からアタックしたマルティネスとケムナがシャフマンから25秒遅れ、ソレル、ロラン、エデが55秒遅れで2級山岳ネロンヌ峠の山頂に到着。一方のメイン集団はユンボ・ヴィスマからイネオス・グレナディアーズのコントロールに切り替わり、イギリスチームが作り出すハイペースによりメイン集団は13名に絞られる。ここで総合3位ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)や総合4位バルデはふるい落とされた。
残すは最後の1級山岳ピュイマリーのみ。ステージ敢闘賞を早々に決めたシャフマンがステージ優勝に向けてひた走ったが、後方からマルティネスとケムナが追い上げる。残り3kmを切って勾配がコンスタントに10%を刻み始めると追走2名の勢いが増し、残り1.6km地点で先頭は3名(シャフマン、ケムナ、マルティネス)にまとまった。
人数で勝るボーラ・ハンスグローエだったが、クリテリウム・デュ・ドーフィネ総合優勝者マルティネスの登坂力には敵わなかった。それまで独走していたパリ〜ニース総合優勝者シャフマンが脱落し、残り1km地点通過後のケムナのアタックにマルティネスが反応。登坂力勝負でケムナを振り切ったマルティネスが勝利を飾った。
先頭から約8分遅れで1級山岳ピュイマリーの登坂を開始したメイン集団内では総合争いが活発化。直前の2級山岳ネロンヌ峠でメイン集団を絞り込んだイネオス・グレナディアーズが姿を消すとバーレーン・マクラーレンが先頭に立ち、続いてセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)がペースメイクを開始する。真っ先に動いたのはこの日もタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)。スロベニア人同士で申し合わせたような動きで、ポガチャルの加速にプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)がついて行った。
ポガチャルとログリッチのスロベニアコンビが抜け出した一方で、マイヨブランを着るエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)は失速。モレマのリタイアにより単独エースとなったリッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード)、ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)、ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・マクラーレン)の3名が懸命に追走したが、スロベニアコンビの背中は離れて行った。
1級山岳ピュイマリーを最も速く駆け上がったログリッチとポガチャルは、先頭マルティネスから6分05秒遅れでフィニッシュ。マイヨジョーヌのログリッチを起点にすると、ポートとランダは13秒、ロペスは16秒、ベルナルとリゴベルト・ウラン(コロンビア、EFプロサイクリング)は38秒失う結果に。終始安定した走りを見せたログリッチが総合リードを広げるとともに、ポガチャルが総合2位に浮上した。
マルティネスの勝利と、スロベニアコンビの躍進
前哨戦クリテリウム・デュ・ドーフィネで総合優勝を飾りながら、序盤ステージの落車で総合順位を落としていたマルティネスが自身初のステージ優勝。「数日後に2歳の誕生日を迎える息子にこの勝利を捧げたい」と語る通り、両手でハートを作ってフィニッシュした。
「最後の登りが始まった時点で、シャフマンに届かずにステージ2位争いになるかと思った。でも諦めずに追走を続けてシャフマンをキャッチ。すでにシャフマンには力が残っていないと思ったし、ケムナとのスプリントになれば勝てると思っていた。ツール・ド・フランスでステージ優勝を飾るなんて。本当に特別な勝利だ」。EFプロサイクリングはこの日3名(マルティネス、カーシー、ポーレス)が逃げ切りを達成。チーム総合成績トップの座をモビスターから奪い返すことに成功している。
第13ステージのスタート時点でログリッチとベルナルの総合タイム差は21秒。ログリッチは合計21秒のボーナスタイムを獲得していたため、両者はタイム差0秒で第12ステージまでを走っていたことになる。しかしこの日ついにベルナルが38秒遅れたため、両者の総合タイム差は59秒に。マイヨブランまでポガチャルに明け渡すことになった若きイネオスのチームリーダーは、フィニッシュ後にハンドルに顔を沈めた。
「今日はスロベニアン・デーだ」と語るのはマイヨジョーヌのリードを広げたログリッチ。第13ステージを終えてポガチャルが44秒差で続いている。「まだまだ道のりは長く、来週は別のシナリオが待っているかもしれない。これまでもこれからも、自分たちの走りに集中したい」。
スロベニア勢が総合トップ2を固め、総合3位から総合6位までコロンビア勢が独占。イェーツ、ランダ、ポート、エンリク・マス(スペイン、モビスター)が総合順位を上げた一方で、フランスのバルデとマルタンは総合トップ10圏外へと陥落した。
デイリーハイライト: J SPORTSでツール・ド・フランス全21ステージ独占生中継
9月11日(金)第13ステージ
シャテル=ギヨン〜ピュイマリー
距離:191.5km
獲得標高差:4,400m
天候:晴れ時々曇り
気温:16〜24度
カテゴリー山岳とスプリントポイント
36km地点 1級山岳セサット峠(距離10.2km・平均6.1%)
63.5km地点 3級山岳ゲリー峠(距離7.8km・平均5%)
85.5km地点 2級山岳モンテ・ド・ラ・ステル(距離6.8km・平均5.7%)
111km地点 スプリントポイント
130.5km地点 3級山岳レスティアード峠(距離3.7km・平均6.9%)
157km地点 3級山岳アングラール=ド=サレ峠(距離3.5km・平均6.9%)
180.5km地点 ボーナスポイント/2級山岳ネロンヌ峠(距離3.8km・平均9.1%)
191.5km地点 1級山岳ピュイマリー(距離5.4km・平均8.1%・最大15%)
逃げ切りを狙うアタッカーたちの熾烈なアタック合戦に
1週間ぶりにツールが中央山塊にアタック。アルプス山脈やピレネー山脈のような標高のインパクトはないが、登りと下りしかないような『ノコギリ型』のコースプロフィールの難易度は高い。何しろ191.5kmのステージには今大会最も多い7つものカテゴリー山岳が散りばめられた。そしてその獲得標高差は今大会最大の4,400mにおよぶ。
1級山岳セサット峠を皮切りに、標高1,500m〜2,000m級の死火山が点在するヴォルカン・ドヴェルニュ自然公園に足を踏み入れると、後はフィニッシュまで平坦区間がない。残り31.5kmから先はひたすら標高1,589mのフィニッシュまで登り。まずはボーナスポイントが設定された急勾配の2級山岳ネロンヌ峠をクリアし、そこから短い平地&下りを挟んで1級山岳パ・ド・ペイロル/ピュイマリーを駆け上がる。ツール11回目の登場となるが、フィニッシュ地点としては初登場となる1級山岳パ・ド・ペイロル/ピュイマリーは最大勾配が15%に達する急坂だ。
(愛三工業レーシングのダミアン・モニエが住む)クレルモン=フェランの郊外に位置するシャテル=ギヨンのスタート地点に集まったのは160名の選手たち。レース離脱中のクリスティアン・プリュドム氏に代わってフランソワ・ルマルシャン氏がディレクターカーからスタートフラッグを振ると、最初の1級山岳セサット峠に向かって高速アタック合戦が始まる。
中でも積極性を見せたのは前日にステージ優勝を逃したジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)。地元クレルモン=フェラン出身のレミ・カヴァニャ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)という心強いエスコート役に案内されるように飛び出すと、ここにダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション)やマイヨアポワのブノワ・コヌフロワ(フランス、アージェードゥーゼール)らが飛びついた。
激しい出入りの末に、1級山岳セサット峠通過後に先頭グループは17名まで人数を増やした。マイヨアポワを守りたいコヌフロワは脱落したものの、ワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)やダビ・デラクルス(スペイン、UAEチームエミレーツ)、そしてパヴェル・シヴァコフ(ロシア、イネオス・グレナディアーズ)といった有力選手を含む逃げ。2日連続逃げとなるピエール・ロラン(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト)は総合で18分57秒遅れだが、ユンボ・ヴィスマ率いるメイン集団はこの逃げの先行を容認した。
逃げグループを形成した17名
ピエール・ロラン(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト)総合18分57秒遅れ
ワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)総合23分51秒遅れ
ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)
レミ・カヴァニャ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)
マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
レナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
ヒュー・カーシー(イギリス、EFプロサイクリング)
ニールソン・ポーレス(アメリカ、EFプロサイクリング)
ダニエル・マルティネス(コロンビア、EFプロサイクリング)
ヴァランタン・マデュアス(フランス、グルパマFDJ)
ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション)
ニコラ・エデ(フランス、コフィディス)
シモン・ゲシュケ(ドイツ、CCCチーム)
ダビ・デラクルス(スペイン、UAEチームエミレーツ)
パヴェル・シヴァコフ(ロシア、イネオス・グレナディアーズ)
マルク・ソレル(スペイン、モビスター)
ロメン・シカール(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)
EFプロサイクリングが3名、ドゥクーニンク・クイックステップとボーラ・ハンスグローエが2名を送り込み、ステージ優勝に闘志を燃やす17名もの大きな逃げグループ。ステージ中盤に7分まで拡大したタイム差を縮めることにユンボ・ヴィスマをはじめとする総合系チームは興味を示さなかった。比較的平穏に進むメイン集団の中ではロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)やナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック)を巻き込む落車が発生し、総合13位バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)は手首骨折によりレースを去っている。
1級山岳ピュイマリーでステージ優勝争いと総合争いが同時進行
フィニッシュまで45km、山岳を3つ残した段階で逃げグループとメイン集団のタイム差は10分の大台に。逃げ切りが確実となった先頭グループの中から3級山岳アングラール=ド=サレ峠でEFプロサイクリングのポーレスが独走に持ち込み、シャフマンが単独追走を仕掛ける展開。ポーレスに追いついたシャフマンは、続く2級山岳ネロンヌ峠で独走に持ち込んだ。
追走グループの中からアタックしたマルティネスとケムナがシャフマンから25秒遅れ、ソレル、ロラン、エデが55秒遅れで2級山岳ネロンヌ峠の山頂に到着。一方のメイン集団はユンボ・ヴィスマからイネオス・グレナディアーズのコントロールに切り替わり、イギリスチームが作り出すハイペースによりメイン集団は13名に絞られる。ここで総合3位ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)や総合4位バルデはふるい落とされた。
残すは最後の1級山岳ピュイマリーのみ。ステージ敢闘賞を早々に決めたシャフマンがステージ優勝に向けてひた走ったが、後方からマルティネスとケムナが追い上げる。残り3kmを切って勾配がコンスタントに10%を刻み始めると追走2名の勢いが増し、残り1.6km地点で先頭は3名(シャフマン、ケムナ、マルティネス)にまとまった。
人数で勝るボーラ・ハンスグローエだったが、クリテリウム・デュ・ドーフィネ総合優勝者マルティネスの登坂力には敵わなかった。それまで独走していたパリ〜ニース総合優勝者シャフマンが脱落し、残り1km地点通過後のケムナのアタックにマルティネスが反応。登坂力勝負でケムナを振り切ったマルティネスが勝利を飾った。
先頭から約8分遅れで1級山岳ピュイマリーの登坂を開始したメイン集団内では総合争いが活発化。直前の2級山岳ネロンヌ峠でメイン集団を絞り込んだイネオス・グレナディアーズが姿を消すとバーレーン・マクラーレンが先頭に立ち、続いてセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)がペースメイクを開始する。真っ先に動いたのはこの日もタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)。スロベニア人同士で申し合わせたような動きで、ポガチャルの加速にプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)がついて行った。
ポガチャルとログリッチのスロベニアコンビが抜け出した一方で、マイヨブランを着るエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)は失速。モレマのリタイアにより単独エースとなったリッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード)、ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)、ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・マクラーレン)の3名が懸命に追走したが、スロベニアコンビの背中は離れて行った。
1級山岳ピュイマリーを最も速く駆け上がったログリッチとポガチャルは、先頭マルティネスから6分05秒遅れでフィニッシュ。マイヨジョーヌのログリッチを起点にすると、ポートとランダは13秒、ロペスは16秒、ベルナルとリゴベルト・ウラン(コロンビア、EFプロサイクリング)は38秒失う結果に。終始安定した走りを見せたログリッチが総合リードを広げるとともに、ポガチャルが総合2位に浮上した。
マルティネスの勝利と、スロベニアコンビの躍進
前哨戦クリテリウム・デュ・ドーフィネで総合優勝を飾りながら、序盤ステージの落車で総合順位を落としていたマルティネスが自身初のステージ優勝。「数日後に2歳の誕生日を迎える息子にこの勝利を捧げたい」と語る通り、両手でハートを作ってフィニッシュした。
「最後の登りが始まった時点で、シャフマンに届かずにステージ2位争いになるかと思った。でも諦めずに追走を続けてシャフマンをキャッチ。すでにシャフマンには力が残っていないと思ったし、ケムナとのスプリントになれば勝てると思っていた。ツール・ド・フランスでステージ優勝を飾るなんて。本当に特別な勝利だ」。EFプロサイクリングはこの日3名(マルティネス、カーシー、ポーレス)が逃げ切りを達成。チーム総合成績トップの座をモビスターから奪い返すことに成功している。
第13ステージのスタート時点でログリッチとベルナルの総合タイム差は21秒。ログリッチは合計21秒のボーナスタイムを獲得していたため、両者はタイム差0秒で第12ステージまでを走っていたことになる。しかしこの日ついにベルナルが38秒遅れたため、両者の総合タイム差は59秒に。マイヨブランまでポガチャルに明け渡すことになった若きイネオスのチームリーダーは、フィニッシュ後にハンドルに顔を沈めた。
「今日はスロベニアン・デーだ」と語るのはマイヨジョーヌのリードを広げたログリッチ。第13ステージを終えてポガチャルが44秒差で続いている。「まだまだ道のりは長く、来週は別のシナリオが待っているかもしれない。これまでもこれからも、自分たちの走りに集中したい」。
スロベニア勢が総合トップ2を固め、総合3位から総合6位までコロンビア勢が独占。イェーツ、ランダ、ポート、エンリク・マス(スペイン、モビスター)が総合順位を上げた一方で、フランスのバルデとマルタンは総合トップ10圏外へと陥落した。
デイリーハイライト: J SPORTSでツール・ド・フランス全21ステージ独占生中継
ツール・ド・フランス2020 第13ステージ結果
1位 | ダニエル・マルティネス(コロンビア、EFプロサイクリング) | 5:01:47 |
2位 | レナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:00:04 |
3位 | マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:00:51 |
4位 | ヴァランタン・マデュアス(フランス、グルパマFDJ) | 0:01:33 |
5位 | ピエール・ロラン(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト) | 0:01:42 |
6位 | ニコラ・エデ(フランス、コフィディス) | 0:01:53 |
7位 | シモン・ゲシュケ(ドイツ、CCCチーム) | 0:02:35 |
8位 | マルク・ソレル(スペイン、モビスター) | 0:02:43 |
9位 | ヒュー・カーシー(イギリス、EFプロサイクリング) | 0:03:18 |
10位 | ダビ・デラクルス(スペイン、UAEチームエミレーツ) | 0:03:52 |
11位 | ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション) | 0:04:31 |
12位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 0:06:05 |
13位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | |
14位 | リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード) | 0:06:18 |
15位 | ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・マクラーレン) | |
16位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 0:06:21 |
18位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | 0:06:43 |
19位 | リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFプロサイクリング) | |
20位 | アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | 0:06:45 |
21位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック) | |
22位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | 0:06:57 |
DNF | バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 56:34:35 |
2位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 0:00:44 |
3位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | 0:00:59 |
4位 | リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFプロサイクリング) | 0:01:10 |
5位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック) | 0:01:12 |
6位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 0:01:31 |
7位 | アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | 0:01:42 |
8位 | ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・マクラーレン) | 0:01:55 |
9位 | リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード) | 0:02:06 |
10位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | 0:02:54 |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | サム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 252pts |
2位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | 186pts |
3位 | ブライアン・コカール(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト) | 162pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | ブノワ・コヌフロワ(フランス、アージェードゥーゼール) | 36pts |
2位 | ナンズ・ピーターズ(フランス、アージェードゥーゼール) | 31pts |
3位 | マルク・ヒルシ(スイス、サンウェブ) | 31pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 56:35:19 |
2位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | 0:00:15 |
3位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | 0:02:10 |
チーム総合成績
1位 | EFプロサイクリング | 169:47:21 |
2位 | モビスター | 0:03:00 |
3位 | ユンボ・ヴィスマ | 0:23:02 |
text:Kei Tsuji
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