2010/05/17(月) - 08:39
ジロ・デ・イタリア第8ステージはキアンチァーノ・テルメ〜テルミニッロ間の189kmで行われ、逃げに乗った集団から最後の1級山岳で飛び出したクリスアンケル・セレンセン(デンマーク、サクソバンク)が山頂ゴールを制した。総合上位は大きく動かなかった。
オランダの3ステージとはまったく違う過酷さを見せた未舗装路ストラーデビアンケでの激闘から一夜、第8ステージもまた総合を占う上で重要なステージになると目されていた。
それは今ジロ初の山頂ゴールのため。このゴールの地、1級山岳モンテ・テルミニッロは2003年にもジロ・デ・イタリアに登場した厳しい登り。標高1668m、平均勾配7.3%の登りが16km続く。最大勾配は12%と激坂ではないが、総合成績に変動をもたらすには充分の山岳だ。
ここまでのステージがあまりに激しかったせいか、この日のレースの立ち上がりは比較的穏やかなもの。スタートしてからの1時間の平均時速が50kmを超えていた昨日とうってかわって、この日は44kmをマーク。集団はひとつのまま進んでいく。
46km地点に設定された3級の山岳ポイントを前にして、アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ファルネーゼヴィニ)がリタイヤ。地元にゴールする第6ステージでは単独アタックを見せるなど、存在感を見せていたペタッキだが、気管支炎の影響でコンディションが上がらずレースを降りた。
この3級山岳をトップで通過したのは山岳賞ジャージのマリアヴェルデを着るマシュー・ロイド(オーストラリア、オメガファーマ・ロット)。3ポイントを加え、計16ポイントを保持。この日最後の1級山岳をトップ通過すれば15ポイントが与えられるため、山岳ポイント保持者以外の選手がステージ優勝をすればロイドのマリアヴェルデキープは確定となった。
逃げが決まったのは60kmを過ぎてから。スティーブ・クミングス(イギリス、チームスカイ)とステフェン・クルイスウィック(オランダ、ラボバンク)の2人が集団から抜け出しに成功。さらに追走の15人が76km地点でこの2人に合流し、逃げ集団を形成した。
この集団にはトマ・ヴォクレール(フランス、Bboxブイグテレコム)、ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)、エフゲニー・ペトロフ(ロシア、カチューシャ)、カイエタノ・サルミエント(コロンビア、アックア・エ・サポーネ)、シモーネ・ストルトーニ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)、そして昨年のジャパンカップ覇者クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、サクソバンク)が入った。
メイン集団はランプレ・ファルネーゼヴィーニ勢が積極的にコントロール。ジルベルト・シモーニ(イタリア)もエースのダミアーノ・クネゴ(イタリア)のために集団のペースメイクに尽力する。
114km地点でこの17人は集団に対し2分45秒差をつける。ランプレの作るペースは大きく逃げとの差を開かせず、159km地点でも3分19秒差。
残り16km地点からゴールへ至るモンテ・テルミニッロへの登りが始まると、まずはセレンセンがアタックし、逃げ集団に揺さぶりをかける。メイン集団は1分55秒差でこの登りへ。逃げ集団、メイン集団ともに山岳に入ってから人数が減少。
残り12kmで再びセレンセンがアタック。これにより、先頭集団はペトロフ、サルミエント、ストルトーニ、クルイスウィック、モンクティエ、リゴベルト・ウラン(コロンビア、ケスデパーニュ)、カルロスホセ・オチョア(ベネズエラ、アンドローニ・ジョカトーリ)の8人に絞られる。
この先頭集団から一気に飛び出したのはストルトーニ。残り10.5kmの地点でアタックをかけ、単独で残り10kmのバナーを切る。このストルトーニを追って、ここまで積極的な走りを見せたセレンセレンが単独で逃げグループから抜け出す。
残り8kmでセレンセンはストルトーニに追いつき、2人でゴールを目指す。メイン集団との差はこの時点で2分11秒。濃霧の中、前後の状況が把握しにくい展開が逃げる2人に幸いした。
残り5.8kmでセレンセンがペースアップをすると、ストルトーニはこれにつけず、残り5kmのバナーを今度はセレンセンが単独先頭で通過した。
なかなか大きな動きの起こらないメイン集団だが、アスタナ、アックア・エ・サポーネ、アンドローニ・ジョカトーリのアシスト選手の牽引により人数は縮小。クライマー系の総合上位の選手はみなここに残ったが、強力なアタックが生まれない。
マリアローザグループから最初にアタックを仕掛けたのはミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)。これに続いたのはダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ファルネーゼヴィニ)だったが、他の選手たちもすかさずフォロー。マリアローザグループは10人強にまで絞られる。
セレンセンが苦しい表情を見せながらも快調に先頭をひた走る中、残り3kmでマリアローザグループからシャビエル・トンド(スペイン、アンダルシア・カハスール)が飛び出す。これを追う形でイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)、クネゴも飛び出すがこの2人は逃がせてもらえずマリアローザグループに引き戻される。
この隙を見てジョン・ガドレ(フランス、アージェードゥーゼル)も飛び出して前を追うが、その後マリアローザグループでは決定的な動きは生まれず。ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)が攻撃的な走りを見せるも、有力選手はみな離れずについていく。
ひとり山頂を目指したセレンセンは単独でゴールへやってきた。ジャパンカップでも見せたその登坂力を遺憾なく発揮し、力強いガッツポーズでグランツールの初優勝を山頂ゴールという最高の形で飾った。
2位にはセレンセンを追い続けたストルトーニ、3位には終盤追い込んだトンド、4位に集団から抜け出したガドレが入り、マリアローザグループは総合上位陣が揃ったまま56秒遅れでクネゴを先頭にゴール。細かなアタックはあったものの、結局総合順位はTT系の選手が後退しただけの変動に留まった。
優勝したセレンセンは昨年のジャパンカップの優勝で日本でもお馴染みの26歳。ジャパンカップでも独走で優勝したことからもわかる通り、登坂力が輝く大柄なクライマー。ジロの山頂を制したことで今後がより注目される選手となったはずだ。
マリアローザを守ったのは安定感ある走りを見せたヴィノクロフ。第9ステージからは平坦基調のステージが多いため、しばらくはこのジャージを着続けることになりそうだ。総合狙いの選手たちは最終週の山岳ステージ群をすでに見据えている。
ジロ・デ・イタリア2010第8ステージ結果
1位 クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、サクソバンク) 4h50'48"
2位 シモーネ・ストルトーニ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス) +30"
3位 シャビエル・トンド(スペイン、アンダルシア・カハスール) +36"
4位 エフゲニー・ペトロフ(ロシア、カチューシャ) +49"
5位 ジョン・ガドレ(フランス、アージェードゥーゼル) +55"
6位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ファルネーゼヴィニ) +56"
7位 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)
8位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)
9位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)
10位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)
138位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) +17'55"
総合成績
1位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ) 24h09'42"
2位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング) +1'12"
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス) +1'33"
4位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス) +1'51"
5位 マルコ・ピノッティ(イタリア、チームHTCコロンビア) +2'17"
6位 リッチー・ポルト(サクソバンク、オーストラリア) +2'26"
7位 ウラディミール・カルペツ(ロシア、カチューシャ) +2'34"
8位 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ) +2'47"
9位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ファルネーゼヴィニ) +3'08"
10位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ) +3'09"
163位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) +1h07'58"
ポイント賞 マリアロッサ
カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)
山岳賞 マリアヴェルデ
マシュー・ロイド(オーストラリア、オメガファーマ・ロット)
新人賞 マリアビアンカ
リッチー・ポルト(サクソバンク、オーストラリア)
チーム総合成績
リクイガス・ドイモ
敢闘賞
クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、サクソバンク)
フーガ(逃げ)賞
クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、サクソバンク)
text:Yufta Omata
photo:Kei Tsuji,Riccardo Scanferla
オランダの3ステージとはまったく違う過酷さを見せた未舗装路ストラーデビアンケでの激闘から一夜、第8ステージもまた総合を占う上で重要なステージになると目されていた。
それは今ジロ初の山頂ゴールのため。このゴールの地、1級山岳モンテ・テルミニッロは2003年にもジロ・デ・イタリアに登場した厳しい登り。標高1668m、平均勾配7.3%の登りが16km続く。最大勾配は12%と激坂ではないが、総合成績に変動をもたらすには充分の山岳だ。
ここまでのステージがあまりに激しかったせいか、この日のレースの立ち上がりは比較的穏やかなもの。スタートしてからの1時間の平均時速が50kmを超えていた昨日とうってかわって、この日は44kmをマーク。集団はひとつのまま進んでいく。
46km地点に設定された3級の山岳ポイントを前にして、アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ファルネーゼヴィニ)がリタイヤ。地元にゴールする第6ステージでは単独アタックを見せるなど、存在感を見せていたペタッキだが、気管支炎の影響でコンディションが上がらずレースを降りた。
この3級山岳をトップで通過したのは山岳賞ジャージのマリアヴェルデを着るマシュー・ロイド(オーストラリア、オメガファーマ・ロット)。3ポイントを加え、計16ポイントを保持。この日最後の1級山岳をトップ通過すれば15ポイントが与えられるため、山岳ポイント保持者以外の選手がステージ優勝をすればロイドのマリアヴェルデキープは確定となった。
逃げが決まったのは60kmを過ぎてから。スティーブ・クミングス(イギリス、チームスカイ)とステフェン・クルイスウィック(オランダ、ラボバンク)の2人が集団から抜け出しに成功。さらに追走の15人が76km地点でこの2人に合流し、逃げ集団を形成した。
この集団にはトマ・ヴォクレール(フランス、Bboxブイグテレコム)、ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)、エフゲニー・ペトロフ(ロシア、カチューシャ)、カイエタノ・サルミエント(コロンビア、アックア・エ・サポーネ)、シモーネ・ストルトーニ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)、そして昨年のジャパンカップ覇者クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、サクソバンク)が入った。
メイン集団はランプレ・ファルネーゼヴィーニ勢が積極的にコントロール。ジルベルト・シモーニ(イタリア)もエースのダミアーノ・クネゴ(イタリア)のために集団のペースメイクに尽力する。
114km地点でこの17人は集団に対し2分45秒差をつける。ランプレの作るペースは大きく逃げとの差を開かせず、159km地点でも3分19秒差。
残り16km地点からゴールへ至るモンテ・テルミニッロへの登りが始まると、まずはセレンセンがアタックし、逃げ集団に揺さぶりをかける。メイン集団は1分55秒差でこの登りへ。逃げ集団、メイン集団ともに山岳に入ってから人数が減少。
残り12kmで再びセレンセンがアタック。これにより、先頭集団はペトロフ、サルミエント、ストルトーニ、クルイスウィック、モンクティエ、リゴベルト・ウラン(コロンビア、ケスデパーニュ)、カルロスホセ・オチョア(ベネズエラ、アンドローニ・ジョカトーリ)の8人に絞られる。
この先頭集団から一気に飛び出したのはストルトーニ。残り10.5kmの地点でアタックをかけ、単独で残り10kmのバナーを切る。このストルトーニを追って、ここまで積極的な走りを見せたセレンセレンが単独で逃げグループから抜け出す。
残り8kmでセレンセンはストルトーニに追いつき、2人でゴールを目指す。メイン集団との差はこの時点で2分11秒。濃霧の中、前後の状況が把握しにくい展開が逃げる2人に幸いした。
残り5.8kmでセレンセンがペースアップをすると、ストルトーニはこれにつけず、残り5kmのバナーを今度はセレンセンが単独先頭で通過した。
なかなか大きな動きの起こらないメイン集団だが、アスタナ、アックア・エ・サポーネ、アンドローニ・ジョカトーリのアシスト選手の牽引により人数は縮小。クライマー系の総合上位の選手はみなここに残ったが、強力なアタックが生まれない。
マリアローザグループから最初にアタックを仕掛けたのはミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)。これに続いたのはダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ファルネーゼヴィニ)だったが、他の選手たちもすかさずフォロー。マリアローザグループは10人強にまで絞られる。
セレンセンが苦しい表情を見せながらも快調に先頭をひた走る中、残り3kmでマリアローザグループからシャビエル・トンド(スペイン、アンダルシア・カハスール)が飛び出す。これを追う形でイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)、クネゴも飛び出すがこの2人は逃がせてもらえずマリアローザグループに引き戻される。
この隙を見てジョン・ガドレ(フランス、アージェードゥーゼル)も飛び出して前を追うが、その後マリアローザグループでは決定的な動きは生まれず。ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)が攻撃的な走りを見せるも、有力選手はみな離れずについていく。
ひとり山頂を目指したセレンセンは単独でゴールへやってきた。ジャパンカップでも見せたその登坂力を遺憾なく発揮し、力強いガッツポーズでグランツールの初優勝を山頂ゴールという最高の形で飾った。
2位にはセレンセンを追い続けたストルトーニ、3位には終盤追い込んだトンド、4位に集団から抜け出したガドレが入り、マリアローザグループは総合上位陣が揃ったまま56秒遅れでクネゴを先頭にゴール。細かなアタックはあったものの、結局総合順位はTT系の選手が後退しただけの変動に留まった。
優勝したセレンセンは昨年のジャパンカップの優勝で日本でもお馴染みの26歳。ジャパンカップでも独走で優勝したことからもわかる通り、登坂力が輝く大柄なクライマー。ジロの山頂を制したことで今後がより注目される選手となったはずだ。
マリアローザを守ったのは安定感ある走りを見せたヴィノクロフ。第9ステージからは平坦基調のステージが多いため、しばらくはこのジャージを着続けることになりそうだ。総合狙いの選手たちは最終週の山岳ステージ群をすでに見据えている。
ジロ・デ・イタリア2010第8ステージ結果
1位 クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、サクソバンク) 4h50'48"
2位 シモーネ・ストルトーニ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス) +30"
3位 シャビエル・トンド(スペイン、アンダルシア・カハスール) +36"
4位 エフゲニー・ペトロフ(ロシア、カチューシャ) +49"
5位 ジョン・ガドレ(フランス、アージェードゥーゼル) +55"
6位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ファルネーゼヴィニ) +56"
7位 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)
8位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)
9位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)
10位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)
138位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) +17'55"
総合成績
1位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ) 24h09'42"
2位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング) +1'12"
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス) +1'33"
4位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス) +1'51"
5位 マルコ・ピノッティ(イタリア、チームHTCコロンビア) +2'17"
6位 リッチー・ポルト(サクソバンク、オーストラリア) +2'26"
7位 ウラディミール・カルペツ(ロシア、カチューシャ) +2'34"
8位 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ) +2'47"
9位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ファルネーゼヴィニ) +3'08"
10位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ) +3'09"
163位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) +1h07'58"
ポイント賞 マリアロッサ
カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)
山岳賞 マリアヴェルデ
マシュー・ロイド(オーストラリア、オメガファーマ・ロット)
新人賞 マリアビアンカ
リッチー・ポルト(サクソバンク、オーストラリア)
チーム総合成績
リクイガス・ドイモ
敢闘賞
クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、サクソバンク)
フーガ(逃げ)賞
クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、サクソバンク)
text:Yufta Omata
photo:Kei Tsuji,Riccardo Scanferla
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