2020/02/18(火) - 12:40
XC界の絶対王者ニノ・シューターが駆るXCバイク、スコット SPARK RCをインプレッション。ニノとともにクロスカントリー界の常勝バイクの座を8年守り続けるフルサスXCバイクの実力はいかに。レース、里山ライドで実際に長期乗ってのインプレをお届けする。
リオオリンピックのMTBクロスカントリー競技の金メダル、MTB世界選手権で8回の世界チャンピオン獲得、MTBワールドカップでの32勝、7回の総合優勝と、まさに数え切れない勝利を挙げ続けるXC界の巨人ニノ・シューター(スイス、スコット・スラムレーシング)。「神様」ニノとともに、勝利の記録を更新し続けているスコットのフルサスXCバイクがSPARK(スパーク)だ。女子XC界においてもやケイト・コートニー(アメリカ)をワールドカップ連勝へと導き、SPARKはまさに無敵のXCバイクの名を恣(ほしいまま)にしている。
スコットが「究極のフルサスペンションクロスカントリーバイク」を目指し、妥協なく設計したSPARK RC。かつて27.5インチで頂点を極めたモデルは、より高速&テクニカル化するXCレースの流れに乗り、29インチ化&前後サス100mmストロークでの速さを追求したバイクとして2017年に現在のカタチとなった。スコットの独創的なアイデアにより低重心化による操作性と高い剛性、そして驚異的なトラクション性能を誇り、多くのXCレーサーに愛されるモデルとして熟成された。
「カーボンエキスパート」を掲げるスコットの技術陣がFEA(有限要素解析)を用いてレイアップを計算し、EVOLAP製法によって軽量性と強靭さを追求して造られたHMX-SLカーボンフレームは、リアサスペンションを含めても1,779g以下という超軽量に仕上がり、史上最軽量のフルサスペンションフレームのひとつとなる。
SPARKの性能を大幅に押し上げたコアテクノロジーがFOXと共同開発した「トラニオンマウント」と呼ばれるリアショックユニットの搭載方式だ。従来のリアショックユニットがエンドアイを通して1本のボルトでマウントされるのに対し、トラニオンマウントはボディ側面に2つのアイレットを設けることでフレーム及びリンクにマウントされる。
そしてショックユニットを通常とは上下逆にすることで、フレームに完全に統合。ユニット取り付け部の幅を広くとることができ、高い取り付け剛性を得ている。そしてその方式はBB付近の剛性アップにも貢献し、ペダリングパワーをロスなく受け止める。リンク部の幅は狭くでき、ペダリングの邪魔をしないスマートなデザインとなっている。
天地逆に取り付けられたショックユニットは重量部が下に来ることで重心を下げ、安定感も高くなるだけでなく、サスの動作反応も早くなるなどメリットが多く、それが路面追従性の高さにつながっている。フレームから引き出されるユニットの動きを制御するケーブルの長さも最短となり、操作ロスさえも少なくなる。
SPARKのWサスシステムを特徴づけているのがサス作動をコントロールするスコット独自のリモートシステム「TwinLoc(ツインロック)」だ。左グリップ部に設けたレバーの操作だけで前後のサスペンションの動きを同時にコントロールすることが出来るシステムは、下り用のディセンドモード、コンプレッションを効かせたトラクションコントロールモード、そしてロックアウトの3つをひとつのレバーで素早く切り替えることができる。
そしてSPARK RCシリーズのメインフレームは1Xドライブトレインに最適な設計となった。それまでFディレイラーがあることで必要だったBB周辺の逃げを減らし、メインピボットやシートチューブの幅を拡大、シンプル化と同時に高剛性化と泥はけ性能の両立を達成。ハイダイレクトマウントとブースト規格とともに、パワー伝達性能も大きく向上させた。
リアブレーキマウントはアクスルとチェーンステーの中間部分のみで保持する方式で、シートステーに応力を伝えることが無い構造。可動部の金属部品点数も少なく、過去モデル比で120gの軽量化を達成。効率的な作動とブレーキングにも貢献している。
国内でもCoupe de Japonシリーズやセルフディスカバリーアドベンチャー王滝など、XCレースで高いシェアを誇る超人気バイクとなっているSPARK RC。今回はラインナップ中のハイエンドに位置するモデル群の中からSPARK RC 900 PROを長期インプレッションした。
インプレッション
2019年8月にCW編集部・綾野が購入して半年使用したSPARK RC 900 PRO(My19)を長期乗ってのインプレッションを紹介する。My19は2019年シーズン後期にデリバリーが開始された2020年継続モデルだ。
リオ五輪では男女共に金メダルを獲得。昨年の東京五輪テストイベント
READY STEADY TOKYOでもニノ・シュルターによって勝利を掴んだSPARK RCは、来る2020東京五輪でももっとも金メダルに近いバイクだと言えるだろう。
インプレに使用したバイクは昨秋に購入したマイバイク(つまり自腹インプレだ)。普段は里山でのトレイルライドを楽しむこと、SDA王滝などクロスカントリー系耐久レースにも出ることを目的に「どうせなら最高評価のXCバイクを」と選んだモデル。シマノのミックスコンポ仕様のモデルをフルXTRに換装し、マグラの電動ドロッパーポスト「VYRON」も装着して約半年間乗り込んだ。
シェイクダウンレースの秋のSDA王滝100km(9月)は7時間16分で完走でき、「最高の機材のおかげ」を十分に実感することができた。SDA王滝のようなロングライドXC耐久レースには間違いなく最高のモデルだ。
SPARK RC の性能で際立つのはまずその軽さ。カタログスペックの車重10.80kgは29erMTBとしては驚きの軽さで、その状態でホイールは中級グレードのDT Swiss X1700 Splineがセットされた状態というから、まだダイエットの余地はある。つまり手の入れ方ではアンダー10kgも十分現実的。しかしとくに軽量化することなく挑んだSDA王滝で感じた車重の軽さは、距離の長さと標高差の大きなコースでは大いに助けになった。
サスのストロークは前後100mmで、低いスタックハイト、長いリーチ、短いステム、寝たヘッドアングルの攻撃的なXCレースポジションが出せるジオメトリー。それ以上に低いハンドル位置を望むなら(ニノも使う)純正のシンクロス製一体型モノコックハンドルも用意されているため、XC系ライダーには最高の選択肢となるだろう。
前後サスは非常にスムーズに動き、路面のギャップにも追従し続けてくれる。独自のTwinlockレバーは、登り・平坦・下りと、路面の荒れ具合に応じて左手の親指のプッシュ操作のみで前後のサスの動きを同時に・3段階で切り替えが可能で、ダンピング状態を素早くコントロールできる。スムーズな路面ならロックアウトで、ギャップが有るならトラクションコントロールモードで、下りに入ればディセンドモードで。このTwinlocレバーによる素早いサス操作の利便性こそがSPARKの武器だ。
FサスとRサスを別々に操作することなく、ワンプッシュで同時操作可能なのはこのうえない便利さだ。そのぶん生じる余裕でドロッパーポストを操作することができるため、それらの操作も含めて最速のバイクの特長を決定的にしている。実際、ニノ・シューターもレース中に頻繁にTwinlocレバーを操作している様子をYoutubeで公開しており、このシステムがSparkの大きな優位性のひとつとなっているのは間違いない。
ロックアウトとフル作動の間の「トラクションコントロールモード」は路面追従の良さが光る。ペダリングロスが少なく、路面のギャップをいなしてくれるこのモード。木の根っこが連続したり、タイヤが弾かれる大きな石が転がる上り坂であっても、サスがフルでストロークする「ディセンドモード」と素早く切り替えることで凹凸を乗り越えながらペダリングし続けることができ、ハードテイルやサスの動きすぎるフルサスモデルに差をつけることができるのだ。舗装路やハードパックではロックアウトモードで。しかしトラクションコントロールモードのペダリングロスが少ないため、ロックアウトするシーンはかなり限定的だ。
レバーを親指で押し込むワンアクションで前後サスを繋ぐケーブル2本を同時に引くため、Twinlocレバーの操作は親指に力を込めなければならないが、操作頻度が高くともそれで指が疲れるほどではない。冷える真冬日でも操作できるトルク感で、むしろ前後サスを指一本で素早く同時に操作できるメリットが勝っている。レバーおよびサス周りのケーブルの潤滑に気を配っておけば良い操作状態がキープできる。
乗り込んで分かってきたのが、SparkはストイックなXCレースオンリーのバイクかと思いきや、オールマウンテン系を加味した里山バイクとしても十分に通用するポテンシャルがあること。2.3といった太めでノブの立ったタイヤ、ワイドリムのホイール、30Tのチェンリングなどを組み合わせればトレイルバイクとして十分に遊べるのだ。
29erの走破性の高さに加えて前後サスの動きのスムーズさとフレーム剛性の高さもあって、やや下り系の里山ライドであっても十分なパフォーマンスのバイクに仕立てることできるというのが使い込んでみた印象だ。この冬はワイドリム採用のシマノXTホイール(WH-M8120-TL-R12-B-29)にエンデューロ系の29×2.3タイヤ(IRC TANKEN)をセットし、上り・下り激しめのライドを楽しんでいる。
よく動きつつ撓みを感じさせない強靭なリアトライアングルは、100mmというサスストロークの数値以上に懐が深い。かつ平坦や上りセクションの漕ぎでもロスが少ないため速く、下りもかなり攻めることができる。ゲレンデDHでなければAM系バイクの出番を喰ってしまうほどオールマイティな里山バイクに仕立てることができる。
これは嬉しい誤算で、改めて「良くできた29erフルサスXCバイク」の万能性に感心している。もちろんSDA王滝やXCレースに出るときはホイールを軽いものにし、ドロッパーも外して軽量なセットアップにすれば良いだろう。もっともレースには出ず、下り系トレイルライドがメインの遊びになるなら「RC」がつかないSPARKをチョイスするのがいいだろう(サスストロークは120mm、タイヤは2.6となる)。
そして、待ち遠しいのが7月の東京オリンピック。自分が里山や耐久レース、林道ツーリングにとマルチに使うSPARK RCが、「ニノ様」が駆ることによってMTBクロスカントリーで金メダルを獲るかどうか。そんな楽しみも同時に味あわせてくれる究極のXCバイクだ。
SPARK RC 900 PRO
SIZE : S - M - L(記事のモデルはSサイズ)
PRICE : ¥689.000(税抜)
WEIGHT : 10.80kg
フレーム:Spark RC Carbon / IMP technology / HMF 1x optimized / BB92 /Carbon swingarm SW dropouts for Boost 12x148mm TBC Trunnion Box Construction
フォーク:RockShox SID RL3 Air custom Charger Damper with 3-Modes 15x110mm Maxle Stealth 100mm トラベル
リアショック:FOX NUDE EVOL Trunnion SCOTT custom 165X40mm
ハンドル:Syncros FL1.0 Carbon T-Bar
ステム:Syncros XR1.5 -8°
リアディレイラー:Shimano XTR RD-M9100 SGS Shadow Plus / 12 Speed
シフター:Shimano XTR SL-M9100
ブレーキキャリパー:Shimano XT M8000 Disc 180/F and 160/R
クランクセット:Raceface Next SL 32T
BB:SM-BB71-41A / shell 41x92mm
チェーン:CN-M9100
カセット:XTR CS-M9100-12 / 10-51 T
シートポスト:Syncros FL1.0 Carbon 10mm offset / 31.6x400mm
ホイールセット:DT Swiss X1700 Spline CL F: 15x110mm, R: 12x148mm Boost 25mm Tubeless ready rim / 28H / XTR Driver Ratchet System & RWS
タイヤ:Maxxis Rekon Race / 2.35"
photo&text:Makoto.AYANO
リオオリンピックのMTBクロスカントリー競技の金メダル、MTB世界選手権で8回の世界チャンピオン獲得、MTBワールドカップでの32勝、7回の総合優勝と、まさに数え切れない勝利を挙げ続けるXC界の巨人ニノ・シューター(スイス、スコット・スラムレーシング)。「神様」ニノとともに、勝利の記録を更新し続けているスコットのフルサスXCバイクがSPARK(スパーク)だ。女子XC界においてもやケイト・コートニー(アメリカ)をワールドカップ連勝へと導き、SPARKはまさに無敵のXCバイクの名を恣(ほしいまま)にしている。
スコットが「究極のフルサスペンションクロスカントリーバイク」を目指し、妥協なく設計したSPARK RC。かつて27.5インチで頂点を極めたモデルは、より高速&テクニカル化するXCレースの流れに乗り、29インチ化&前後サス100mmストロークでの速さを追求したバイクとして2017年に現在のカタチとなった。スコットの独創的なアイデアにより低重心化による操作性と高い剛性、そして驚異的なトラクション性能を誇り、多くのXCレーサーに愛されるモデルとして熟成された。
「カーボンエキスパート」を掲げるスコットの技術陣がFEA(有限要素解析)を用いてレイアップを計算し、EVOLAP製法によって軽量性と強靭さを追求して造られたHMX-SLカーボンフレームは、リアサスペンションを含めても1,779g以下という超軽量に仕上がり、史上最軽量のフルサスペンションフレームのひとつとなる。
SPARKの性能を大幅に押し上げたコアテクノロジーがFOXと共同開発した「トラニオンマウント」と呼ばれるリアショックユニットの搭載方式だ。従来のリアショックユニットがエンドアイを通して1本のボルトでマウントされるのに対し、トラニオンマウントはボディ側面に2つのアイレットを設けることでフレーム及びリンクにマウントされる。
そしてショックユニットを通常とは上下逆にすることで、フレームに完全に統合。ユニット取り付け部の幅を広くとることができ、高い取り付け剛性を得ている。そしてその方式はBB付近の剛性アップにも貢献し、ペダリングパワーをロスなく受け止める。リンク部の幅は狭くでき、ペダリングの邪魔をしないスマートなデザインとなっている。
天地逆に取り付けられたショックユニットは重量部が下に来ることで重心を下げ、安定感も高くなるだけでなく、サスの動作反応も早くなるなどメリットが多く、それが路面追従性の高さにつながっている。フレームから引き出されるユニットの動きを制御するケーブルの長さも最短となり、操作ロスさえも少なくなる。
SPARKのWサスシステムを特徴づけているのがサス作動をコントロールするスコット独自のリモートシステム「TwinLoc(ツインロック)」だ。左グリップ部に設けたレバーの操作だけで前後のサスペンションの動きを同時にコントロールすることが出来るシステムは、下り用のディセンドモード、コンプレッションを効かせたトラクションコントロールモード、そしてロックアウトの3つをひとつのレバーで素早く切り替えることができる。
そしてSPARK RCシリーズのメインフレームは1Xドライブトレインに最適な設計となった。それまでFディレイラーがあることで必要だったBB周辺の逃げを減らし、メインピボットやシートチューブの幅を拡大、シンプル化と同時に高剛性化と泥はけ性能の両立を達成。ハイダイレクトマウントとブースト規格とともに、パワー伝達性能も大きく向上させた。
リアブレーキマウントはアクスルとチェーンステーの中間部分のみで保持する方式で、シートステーに応力を伝えることが無い構造。可動部の金属部品点数も少なく、過去モデル比で120gの軽量化を達成。効率的な作動とブレーキングにも貢献している。
国内でもCoupe de Japonシリーズやセルフディスカバリーアドベンチャー王滝など、XCレースで高いシェアを誇る超人気バイクとなっているSPARK RC。今回はラインナップ中のハイエンドに位置するモデル群の中からSPARK RC 900 PROを長期インプレッションした。
インプレッション
2019年8月にCW編集部・綾野が購入して半年使用したSPARK RC 900 PRO(My19)を長期乗ってのインプレッションを紹介する。My19は2019年シーズン後期にデリバリーが開始された2020年継続モデルだ。
リオ五輪では男女共に金メダルを獲得。昨年の東京五輪テストイベント
READY STEADY TOKYOでもニノ・シュルターによって勝利を掴んだSPARK RCは、来る2020東京五輪でももっとも金メダルに近いバイクだと言えるだろう。
インプレに使用したバイクは昨秋に購入したマイバイク(つまり自腹インプレだ)。普段は里山でのトレイルライドを楽しむこと、SDA王滝などクロスカントリー系耐久レースにも出ることを目的に「どうせなら最高評価のXCバイクを」と選んだモデル。シマノのミックスコンポ仕様のモデルをフルXTRに換装し、マグラの電動ドロッパーポスト「VYRON」も装着して約半年間乗り込んだ。
シェイクダウンレースの秋のSDA王滝100km(9月)は7時間16分で完走でき、「最高の機材のおかげ」を十分に実感することができた。SDA王滝のようなロングライドXC耐久レースには間違いなく最高のモデルだ。
SPARK RC の性能で際立つのはまずその軽さ。カタログスペックの車重10.80kgは29erMTBとしては驚きの軽さで、その状態でホイールは中級グレードのDT Swiss X1700 Splineがセットされた状態というから、まだダイエットの余地はある。つまり手の入れ方ではアンダー10kgも十分現実的。しかしとくに軽量化することなく挑んだSDA王滝で感じた車重の軽さは、距離の長さと標高差の大きなコースでは大いに助けになった。
サスのストロークは前後100mmで、低いスタックハイト、長いリーチ、短いステム、寝たヘッドアングルの攻撃的なXCレースポジションが出せるジオメトリー。それ以上に低いハンドル位置を望むなら(ニノも使う)純正のシンクロス製一体型モノコックハンドルも用意されているため、XC系ライダーには最高の選択肢となるだろう。
前後サスは非常にスムーズに動き、路面のギャップにも追従し続けてくれる。独自のTwinlockレバーは、登り・平坦・下りと、路面の荒れ具合に応じて左手の親指のプッシュ操作のみで前後のサスの動きを同時に・3段階で切り替えが可能で、ダンピング状態を素早くコントロールできる。スムーズな路面ならロックアウトで、ギャップが有るならトラクションコントロールモードで、下りに入ればディセンドモードで。このTwinlocレバーによる素早いサス操作の利便性こそがSPARKの武器だ。
FサスとRサスを別々に操作することなく、ワンプッシュで同時操作可能なのはこのうえない便利さだ。そのぶん生じる余裕でドロッパーポストを操作することができるため、それらの操作も含めて最速のバイクの特長を決定的にしている。実際、ニノ・シューターもレース中に頻繁にTwinlocレバーを操作している様子をYoutubeで公開しており、このシステムがSparkの大きな優位性のひとつとなっているのは間違いない。
ロックアウトとフル作動の間の「トラクションコントロールモード」は路面追従の良さが光る。ペダリングロスが少なく、路面のギャップをいなしてくれるこのモード。木の根っこが連続したり、タイヤが弾かれる大きな石が転がる上り坂であっても、サスがフルでストロークする「ディセンドモード」と素早く切り替えることで凹凸を乗り越えながらペダリングし続けることができ、ハードテイルやサスの動きすぎるフルサスモデルに差をつけることができるのだ。舗装路やハードパックではロックアウトモードで。しかしトラクションコントロールモードのペダリングロスが少ないため、ロックアウトするシーンはかなり限定的だ。
レバーを親指で押し込むワンアクションで前後サスを繋ぐケーブル2本を同時に引くため、Twinlocレバーの操作は親指に力を込めなければならないが、操作頻度が高くともそれで指が疲れるほどではない。冷える真冬日でも操作できるトルク感で、むしろ前後サスを指一本で素早く同時に操作できるメリットが勝っている。レバーおよびサス周りのケーブルの潤滑に気を配っておけば良い操作状態がキープできる。
乗り込んで分かってきたのが、SparkはストイックなXCレースオンリーのバイクかと思いきや、オールマウンテン系を加味した里山バイクとしても十分に通用するポテンシャルがあること。2.3といった太めでノブの立ったタイヤ、ワイドリムのホイール、30Tのチェンリングなどを組み合わせればトレイルバイクとして十分に遊べるのだ。
29erの走破性の高さに加えて前後サスの動きのスムーズさとフレーム剛性の高さもあって、やや下り系の里山ライドであっても十分なパフォーマンスのバイクに仕立てることできるというのが使い込んでみた印象だ。この冬はワイドリム採用のシマノXTホイール(WH-M8120-TL-R12-B-29)にエンデューロ系の29×2.3タイヤ(IRC TANKEN)をセットし、上り・下り激しめのライドを楽しんでいる。
よく動きつつ撓みを感じさせない強靭なリアトライアングルは、100mmというサスストロークの数値以上に懐が深い。かつ平坦や上りセクションの漕ぎでもロスが少ないため速く、下りもかなり攻めることができる。ゲレンデDHでなければAM系バイクの出番を喰ってしまうほどオールマイティな里山バイクに仕立てることができる。
これは嬉しい誤算で、改めて「良くできた29erフルサスXCバイク」の万能性に感心している。もちろんSDA王滝やXCレースに出るときはホイールを軽いものにし、ドロッパーも外して軽量なセットアップにすれば良いだろう。もっともレースには出ず、下り系トレイルライドがメインの遊びになるなら「RC」がつかないSPARKをチョイスするのがいいだろう(サスストロークは120mm、タイヤは2.6となる)。
そして、待ち遠しいのが7月の東京オリンピック。自分が里山や耐久レース、林道ツーリングにとマルチに使うSPARK RCが、「ニノ様」が駆ることによってMTBクロスカントリーで金メダルを獲るかどうか。そんな楽しみも同時に味あわせてくれる究極のXCバイクだ。
SPARK RC 900 PRO
SIZE : S - M - L(記事のモデルはSサイズ)
PRICE : ¥689.000(税抜)
WEIGHT : 10.80kg
フレーム:Spark RC Carbon / IMP technology / HMF 1x optimized / BB92 /Carbon swingarm SW dropouts for Boost 12x148mm TBC Trunnion Box Construction
フォーク:RockShox SID RL3 Air custom Charger Damper with 3-Modes 15x110mm Maxle Stealth 100mm トラベル
リアショック:FOX NUDE EVOL Trunnion SCOTT custom 165X40mm
ハンドル:Syncros FL1.0 Carbon T-Bar
ステム:Syncros XR1.5 -8°
リアディレイラー:Shimano XTR RD-M9100 SGS Shadow Plus / 12 Speed
シフター:Shimano XTR SL-M9100
ブレーキキャリパー:Shimano XT M8000 Disc 180/F and 160/R
クランクセット:Raceface Next SL 32T
BB:SM-BB71-41A / shell 41x92mm
チェーン:CN-M9100
カセット:XTR CS-M9100-12 / 10-51 T
シートポスト:Syncros FL1.0 Carbon 10mm offset / 31.6x400mm
ホイールセット:DT Swiss X1700 Spline CL F: 15x110mm, R: 12x148mm Boost 25mm Tubeless ready rim / 28H / XTR Driver Ratchet System & RWS
タイヤ:Maxxis Rekon Race / 2.35"
photo&text:Makoto.AYANO
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