今年もやってきたツール・ド・フランスさいたまクリテリウム。大会本番の前日にはお馴染みの交流会が開催された。今年は空手の型の演武を見学したのち、選手達を代表しユキヤやクウィアトコウスキー、トレンティンらが空手を体験。マイヨジョーヌのベルナルらは埼玉を代表するプロサッカーチームのOBたちとサッカーと自転車で対決をした。



J SPORTSの解説を務める栗村修さん、新城幸也、実況の永田実さんが来年のツールのコースを語るJ SPORTSの解説を務める栗村修さん、新城幸也、実況の永田実さんが来年のツールのコースを語る photo: Gakuto Fujiwara
笑顔が弾ける新城幸也(バーレーン・メリダ)笑顔が弾ける新城幸也(バーレーン・メリダ) photo: Gakuto Fujiwara気さくにセルフィーに応じてくれるエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)気さくにセルフィーに応じてくれるエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) photo: Gakuto Fujiwara

さいたま市国際ジュニア大使の皆さんが、日本語と英語で空手を紹介さいたま市国際ジュニア大使の皆さんが、日本語と英語で空手を紹介 photo:Yuichiro Hosodaさいたま市空手道連盟と埼玉栄高校空手部による空手体験プログラムが行われたさいたま市空手道連盟と埼玉栄高校空手部による空手体験プログラムが行われた photo:Yuichiro Hosoda

大会前日のステージイベントは毎年お馴染みの行事。今年は新城幸也とJ SPORTS実況解説陣による2020年大会のコースプレゼンテーションから大会のプログラムはスタートした。実際に欧州で長くプロ生活を続けているユキヤがコース解説やステージの展望、東京五輪とのタイトなスケジュールについて選手目線で語った。

ユキヤのコメントは経験豊富な栗村修さんや永田実さんらも驚き。「新城選手が引退してしまっては解説の座が危ぶまれる。あと10年、いや20年は現役を続けてもらいたい」と保身しつつ、ユキヤにエールを飛ばす栗村さん。ユキヤも五輪とツールを狙っているよう。来年の活躍も期待したい。

埼玉栄高校の空手部のみなさんが演舞を披露した埼玉栄高校の空手部のみなさんが演舞を披露した photo: Gakuto Fujiwara
動きだけでなく、表情までも研ぎ澄まされている動きだけでなく、表情までも研ぎ澄まされている photo:Yuichiro Hosoda団体型では女子選手の皆さんも鋭い動きを披露した団体型では女子選手の皆さんも鋭い動きを披露した photo:Yuichiro Hosoda

ミカル・クヴィアトコウスキーが道着をまとってやってきたミカル・クヴィアトコウスキーが道着をまとってやってきた photo:Yuichiro Hosoda笑顔で溢れるステージ上笑顔で溢れるステージ上 photo: Gakuto Fujiwara


コースプレゼンテーションの後はチームプレゼンを挟み、選手たちが日本文化に触れ合う市内交流会が開催された。今年は空手とサッカーの2本立て。空手は日本の伝統的な格闘技として世界的に競技者がおり、東京五輪から競技に組み込まれるため、日本文化を伝えるにはちょうど良いホットな競技だ。

選手たちが実際に空手を体験する前には、さいたま市空手道連盟と埼玉栄高校空手部による型の演武から始まる。数分前まで栗村さんと永田さんの掛け合いで盛り上がっていたさいたまスーパーアリーナが静寂に包まれる。その中で聞こえる音は演武の動きと演者の息遣いのみ。拳を突くとビシッ、ビシッと衣擦れの音、シュッというブレス、床を踏み込む音がホールにこだまする。演者からの圧で押されるかのよう。最前列で演武を見ていた選手たちもその気迫を感じていたはずだ。

その後、空手を体験するためにステージ上に現れたのは、ミカル・クウィアトコウスキー(チームイネオス)、リリアン・カルメジャーヌ(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)、マッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)、新城幸也(バーレーン・メリダ)、そして大会アンバサダーとして来日しているマルセル・キッテル。

元気に声を出すミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームイネオス)元気に声を出すミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームイネオス) photo:Kei Tsuji空手を披露するマッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)空手を披露するマッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット) photo:Kei Tsuji

発泡スチロールの板を割って見せるリリアン・カルメジャーヌ(トタルディレクトエネルジー)発泡スチロールの板を割って見せるリリアン・カルメジャーヌ(トタルディレクトエネルジー) photo:Satoru Kato
クウィアトコウスキーは道着を着用しスイッチが入っていたようで、コメントを求められると「…strong…」とだけ答える。ものを多く語らないその所作はもはやカラテマスターであり、力が全身に漲っているようだ。対してトレンティンは終始ニコニコ。リラックスしきっているようだが、敵が襲いかかってきたら恐らく目にも止まらないスピードの正拳突きで倒してしまうのだろう。

選手たちはまず突きの型をさいたま市空手道連盟と埼玉栄高校空手部の皆さんの動きを見よう見まねでトレース。右、左と高速で突きを繰り出し、空手の基本動作を習得したらいよいよ実践に移る。今回用意されたのは、発泡スチロールを正拳突きで破壊するというもの。柔らかい素材を使用するのは、クリテリウムのために来日しているのに空手で怪我をしてしまっては元も子もないという主催者の配慮だ。

最後にそれぞれポーズを決める新城幸也(バーレーン・メリダ)ら最後にそれぞれポーズを決める新城幸也(バーレーン・メリダ)ら photo:Kei Tsuji
空手の感想をインタビューされるミカル・クヴィアトコフスキー(チームイネオス)空手の感想をインタビューされるミカル・クヴィアトコフスキー(チームイネオス) photo:Satoru Katoステージに見入るダリル・インピー(ミッチェルトン・スコット)ステージに見入るダリル・インピー(ミッチェルトン・スコット) photo:Satoru Kato

「エイ!」との掛け声で発泡スチロールを破る選手の目は本気。全てを真剣に取り組むのはプロ選手だからだろう。イージーな課題を前にクウィアトコウスキーは木の板を割らせてくれと言っていたようだ。彼は今回の空手演習で一番力を得た選手だろう。

空手に続いて行われたのはサッカー。さいたま市といえば浦和レッズと大宮アルディージャが本拠を構えるフットボールタウンでもある。ちなみに交流会が行われた土曜日は、ルヴァンカップの決勝が埼玉スタジアム2002で開催されていたようだ。交流会の盛り上がりはその熱気に負けないはず。

浦和レッズOBの水内猛さん、永井雄一郎さん浦和レッズOBの水内猛さん、永井雄一郎さん photo: Gakuto Fujiwara大宮アルディージャOBの塚本泰史さん、村山祐介さん大宮アルディージャOBの塚本泰史さん、村山祐介さん photo: Gakuto Fujiwara

子供の頃のサッカーの経験について語るエガン・ベルナル子供の頃のサッカーの経験について語るエガン・ベルナル photo:Yuichiro Hosoda
サッカーの部に登場したのはベルナル、バルデ、ログリッチェ、ヤコブ・フルサング(カザフスタン、アスタナ)。登場したほとんどの選手の出身国はサッカー人気が高く、強豪国として知られている。小さい頃から親しんでいるのかと思ったが、意外にも「小さい頃に少しやったことがあるだけだよ」と謙遜する選手がほとんど。

サッカーは日本代表チームとの対決企画となっており、浦和レッズOBである水内猛さん、永井雄一郎さん、大宮アルディージャOBである塚本泰史さん、村山祐介さんがクリテリウムチームを迎え討つ。対決内容はダーツの的にボールを蹴り込むフリーキック対決と、スピニングマシンを使用した500mスプリント対決の2本立て。

慣れたステップでボールを蹴るエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)慣れたステップでボールを蹴るエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) photo:Kei Tsuji左でボールを蹴る塚本泰史さん左でボールを蹴る塚本泰史さん photo:Yuichiro Hosoda

的に向かってボールを蹴るロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)的に向かってボールを蹴るロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール) photo:Kei Tsuji
バルデの蹴ったボールは14のトリプル!バルデの蹴ったボールは14のトリプル! photo:Yuichiro Hosoda最初のキックは外したプリモシュ・ログリッチェ。でも2度目は…最初のキックは外したプリモシュ・ログリッチェ。でも2度目は… photo:Yuichiro Hosoda


対決が始まってみると自信なさげであったクリテチームの面々が高得点を叩き出す。素人目だがバルデやベルナルのフォームは非常に綺麗で、サッカー大国出身を感じさせる。ただログリッチェはあまり得意では無い模様。一方、元々本職であったサッカーチームは意外と点数に伸び悩む。これは大人の配慮なのか、体が鈍っていたのか真相は不明だ。

フリーキック対決はクリテチームに軍配が上がり、勝負はサイクリングに移る。自転車選手の圧勝かと思っていだが、なんとフルサングとバルデはサッカーチームに下されてしまった。まさかトップ選手がそんなことあるのか。そう思っているとステージ下で観覧していたクウィアトコウスキーが、スピニングマシンを交換してくれとオーダーを出す。プロ選手はいつだって本気なのである。

水内猛さんがキツそうな表情でペダルを回す水内猛さんがキツそうな表情でペダルを回す photo:Yuichiro Hosoda
(なんか設定がおかしく無いか・・・?)と考えていそうなヤコブ・フルサング(カザフスタン、アスタナ)(なんか設定がおかしく無いか・・・?)と考えていそうなヤコブ・フルサング(カザフスタン、アスタナ) photo: Gakuto Fujiwara「バイクを交換して!」と訴えるミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームイネオス)「バイクを交換して!」と訴えるミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームイネオス) photo: Gakuto Fujiwara

500mTTに挑むエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)500mTTに挑むエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) photo:Kei Tsuji
サッカー対決に勝利したエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)らサッカー対決に勝利したエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)ら photo:Kei Tsuji
バイク交換を交換した後のログリッチェとベルナルは非常に早いケイデンスでペダルを回し、サッカー選手に相手に勝利を収める。今年のグランツールで総合優勝を果たした二人の本気のスプリントは、観客たちの目を惹き付けた。自転車対決は2勝2敗ずつの引き分け。FKでリードしていたクリテチームが、レッズ とアルディージャOBに競り勝った。


text&photo:Gakuto Fujiwara
photo: Kei Tsuji, Satoru Kato, Yuichiro Hosoda, Michinari Takagi