2010/05/07(金) - 07:00
1909年に第1回大会が開催され、今年で101年目・開催93回目を迎えるジロ・デ・イタリア。現世界チャンピオンやツール・ド・フランス覇者、ドーピングによる出場停止から復帰したカザフスタンの英雄など、今年も世界各国からトップオールラウンダーたちが集結。迎え撃つのはイタリアを代表するオールラウンダーたちだ。
久々にグランツールで総合優勝を狙える世界チャンピオンが現れた。昨年ロード世界選手権で優勝し、オーストラリア人として初めてアルカンシェルを獲得したカデル・エヴァンス(BMCレーシングチーム)がジロに戻ってくる。
エヴァンスは2002年のジロでグランツールデビューを飾り、同年オーストラリア人として初めてマリアローザを着用。総合14位でレースを終えた。2005年以降はツールに集中するためにジロはスキップ。8年ぶりの出場となるジロでの目標はもちろん総合優勝だ。
今年はティレーノ〜アドリアティコで総合3位に入り、フレーシュ・ワロンヌで優勝。しかしジロ開幕2日前に行なわれた記者会見でエヴァンスは「優勝候補に挙げられたレースで勝った試しがない。毎日様子を見て走りたい」と慎重な構え。「もちろんジロで勝ちたいという気持ちは強いよ」。グランツール初制覇の準備は整った。
2008年のツール・ド・フランス覇者カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)は、今年はジロに照準を合わす。昨年のジロでは総合4位(ディルーカ失格により繰り上げで3位)と振るわなかったが、難関モンテ・ペトラーノとモンテ・ヴェスヴィオの頂上ゴールを制し、その健在ぶりをアピールした。
記者会見でサストレは「今年のジロは最終週の山岳がとにかく厳しい。でもコース的には自分向きだ」と自信満々。今シーズンここまで目立った成績を残していないだけに、少し不気味な存在だ。
これまでツールに6回、ブエルタに5回出場(2006年総合優勝)しているアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)は、自ら立ち上げたアスタナを率いてジロデビューを飾る。
2007年のツール期間中にドーピング違反が発覚し、2年間の出場停止期間を経て昨年レースに復帰したアスタナチームの大将は、ジロの前哨戦として知られるジロ・デル・トレンティーノで総合優勝。更にリエージュ〜バストーニュ〜リエージュで2度目の優勝を飾った。
得意のタイムトライアルでリードを広げ、山岳でライバルの攻撃を抑え込むことが出来れば、ヴィノのマリアローザ獲得が現実味を帯びてくる。本人は「第一目標はマリアローザ獲得。初出場なのでコースを良く知らないけど、とにかく大会制覇を目指したい」と意気込んでいる。
昨年のツールで総合4位に入って周囲を驚かせたブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)は、純正イギリスチームのエースとして出場する。ウィギンズはこれまで3回ジロに出場しているが、総合ではいずれも70位以下。本命のツールに向けてこのジロでどんな走りを見せるのか?仮に総合成績を狙わない場合は、タイムトライアルや山岳ステージで優勝を狙ってくるだろう。
ここからは地元イタリア人選手に目を向けよう。2008年から2年連続で海外勢にタイトルを奪われているイタリア勢は、今年こそタイトルを取り戻すことが出来るか。なお、昨年イタリア人選手たちとバトルを繰り広げ、総合優勝に輝いたデニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)は欠場する。
2006年大会の総合優勝者イヴァン・バッソ(イタリア)擁するリクイガスは、直前に発覚したドーピング疑惑により、ダブルエースのフランコ・ペッリツォッティ(イタリア)を失った。チームは急遽ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)を招集したが、本来ツールに出場予定だったニーバリのコンディションは如何に。
当のバッソはジロ・デル・トレンティーノの個人タイムトライアルで遅れ、山岳でも失速。ジロに向けて不安を残す結果に。バッソは「残念ながらトップコンディションではない。総合表彰台が現実的」と、肩を落とし気味だ。
昨年のジロで山岳賞を獲得したステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)は、2000年大会の総合優勝者。今年のティレーノ〜アドリアティコでは総合優勝に輝いている。厳しい山岳が幾つも設定された今年のコースは、ガルゼッリに有利に働くだろう。
生粋のクライマーとしてドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)の活躍にも期待したい。ポッツォヴィーヴォのジロ出場はこれが4回目。2007年大会で総合17位、2008年大会で総合9位に入っている。今年は直前のジロ・デル・トレンティーノの最終頂上ゴールで優勝して総合3位。クライマーにとって鬼門のタイムトライアルでタイムロスを抑えることが出来れば、間違いなく総合上位に絡んでくる。
2人の優勝経験者を擁するのがイタリアのランプレ・ファルネーゼヴィーニ。2001年と2003年大会の総合優勝者ジルベルト・シモーニは、このジロを最後に現役を引退する。ジロで7回表彰台に上り、グランツール全てでステージ優勝を果たしているシモーニは、4月中旬にチームに合流。直後に開催されたジロ・デル・トレンティーノでは思うような走りが出来なかったが、シモーニは「これが正真正銘最後のジロ。100%の力で闘ってみせる」と、やる気に満ちている。
シモーニは再びダミアーノ・クネゴと同チームでジロに出場することになった。2004年のジロでアシスト役のクネゴが総合優勝を飾って以来ずっと両者の関係は冷えきっていたが、現在は和解しており、チームワークに支障は無い。記者会見の中でクネゴは、総合成績ではなくステージ優勝狙いであることを明らかにした。
歴代ジロ・デ・イタリア総合優勝者
2009年 デニス・メンショフ(ロシア)
2008年 アルベルト・コンタドール(スペイン)
2007年 ダニーロ・ディルーカ(イタリア)
2006年 イヴァン・バッソ(イタリア)
2005年 パオロ・サヴォルデッリ(イタリア)
2004年 ダミアーノ・クネゴ(イタリア)
2003年 ジルベルト・シモーニ(イタリア)
2002年 パオロ・サヴォルデッリ(イタリア)
2001年 ジルベルト・シモーニ(イタリア)
2000年 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア)
text: Kei Tsuji in Amsterdam
photo: Cor Vos, Kei Tsuji
久々にグランツールで総合優勝を狙える世界チャンピオンが現れた。昨年ロード世界選手権で優勝し、オーストラリア人として初めてアルカンシェルを獲得したカデル・エヴァンス(BMCレーシングチーム)がジロに戻ってくる。
エヴァンスは2002年のジロでグランツールデビューを飾り、同年オーストラリア人として初めてマリアローザを着用。総合14位でレースを終えた。2005年以降はツールに集中するためにジロはスキップ。8年ぶりの出場となるジロでの目標はもちろん総合優勝だ。
今年はティレーノ〜アドリアティコで総合3位に入り、フレーシュ・ワロンヌで優勝。しかしジロ開幕2日前に行なわれた記者会見でエヴァンスは「優勝候補に挙げられたレースで勝った試しがない。毎日様子を見て走りたい」と慎重な構え。「もちろんジロで勝ちたいという気持ちは強いよ」。グランツール初制覇の準備は整った。
2008年のツール・ド・フランス覇者カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)は、今年はジロに照準を合わす。昨年のジロでは総合4位(ディルーカ失格により繰り上げで3位)と振るわなかったが、難関モンテ・ペトラーノとモンテ・ヴェスヴィオの頂上ゴールを制し、その健在ぶりをアピールした。
記者会見でサストレは「今年のジロは最終週の山岳がとにかく厳しい。でもコース的には自分向きだ」と自信満々。今シーズンここまで目立った成績を残していないだけに、少し不気味な存在だ。
これまでツールに6回、ブエルタに5回出場(2006年総合優勝)しているアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)は、自ら立ち上げたアスタナを率いてジロデビューを飾る。
2007年のツール期間中にドーピング違反が発覚し、2年間の出場停止期間を経て昨年レースに復帰したアスタナチームの大将は、ジロの前哨戦として知られるジロ・デル・トレンティーノで総合優勝。更にリエージュ〜バストーニュ〜リエージュで2度目の優勝を飾った。
得意のタイムトライアルでリードを広げ、山岳でライバルの攻撃を抑え込むことが出来れば、ヴィノのマリアローザ獲得が現実味を帯びてくる。本人は「第一目標はマリアローザ獲得。初出場なのでコースを良く知らないけど、とにかく大会制覇を目指したい」と意気込んでいる。
昨年のツールで総合4位に入って周囲を驚かせたブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)は、純正イギリスチームのエースとして出場する。ウィギンズはこれまで3回ジロに出場しているが、総合ではいずれも70位以下。本命のツールに向けてこのジロでどんな走りを見せるのか?仮に総合成績を狙わない場合は、タイムトライアルや山岳ステージで優勝を狙ってくるだろう。
ここからは地元イタリア人選手に目を向けよう。2008年から2年連続で海外勢にタイトルを奪われているイタリア勢は、今年こそタイトルを取り戻すことが出来るか。なお、昨年イタリア人選手たちとバトルを繰り広げ、総合優勝に輝いたデニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)は欠場する。
2006年大会の総合優勝者イヴァン・バッソ(イタリア)擁するリクイガスは、直前に発覚したドーピング疑惑により、ダブルエースのフランコ・ペッリツォッティ(イタリア)を失った。チームは急遽ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)を招集したが、本来ツールに出場予定だったニーバリのコンディションは如何に。
当のバッソはジロ・デル・トレンティーノの個人タイムトライアルで遅れ、山岳でも失速。ジロに向けて不安を残す結果に。バッソは「残念ながらトップコンディションではない。総合表彰台が現実的」と、肩を落とし気味だ。
昨年のジロで山岳賞を獲得したステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)は、2000年大会の総合優勝者。今年のティレーノ〜アドリアティコでは総合優勝に輝いている。厳しい山岳が幾つも設定された今年のコースは、ガルゼッリに有利に働くだろう。
生粋のクライマーとしてドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)の活躍にも期待したい。ポッツォヴィーヴォのジロ出場はこれが4回目。2007年大会で総合17位、2008年大会で総合9位に入っている。今年は直前のジロ・デル・トレンティーノの最終頂上ゴールで優勝して総合3位。クライマーにとって鬼門のタイムトライアルでタイムロスを抑えることが出来れば、間違いなく総合上位に絡んでくる。
2人の優勝経験者を擁するのがイタリアのランプレ・ファルネーゼヴィーニ。2001年と2003年大会の総合優勝者ジルベルト・シモーニは、このジロを最後に現役を引退する。ジロで7回表彰台に上り、グランツール全てでステージ優勝を果たしているシモーニは、4月中旬にチームに合流。直後に開催されたジロ・デル・トレンティーノでは思うような走りが出来なかったが、シモーニは「これが正真正銘最後のジロ。100%の力で闘ってみせる」と、やる気に満ちている。
シモーニは再びダミアーノ・クネゴと同チームでジロに出場することになった。2004年のジロでアシスト役のクネゴが総合優勝を飾って以来ずっと両者の関係は冷えきっていたが、現在は和解しており、チームワークに支障は無い。記者会見の中でクネゴは、総合成績ではなくステージ優勝狙いであることを明らかにした。
歴代ジロ・デ・イタリア総合優勝者
2009年 デニス・メンショフ(ロシア)
2008年 アルベルト・コンタドール(スペイン)
2007年 ダニーロ・ディルーカ(イタリア)
2006年 イヴァン・バッソ(イタリア)
2005年 パオロ・サヴォルデッリ(イタリア)
2004年 ダミアーノ・クネゴ(イタリア)
2003年 ジルベルト・シモーニ(イタリア)
2002年 パオロ・サヴォルデッリ(イタリア)
2001年 ジルベルト・シモーニ(イタリア)
2000年 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア)
text: Kei Tsuji in Amsterdam
photo: Cor Vos, Kei Tsuji
フォトギャラリー