マウンテンバイクJシリーズの開幕戦であるJシリーズ八幡浜 エリート男子で自身初の優勝を飾った山本和弘(キャノンデール・ファクトリーレーシングチーム)による優勝レポートをお届けする。

山本和弘(キャノンデール・ファクトリーレーシングチーム)山本和弘(キャノンデール・ファクトリーレーシングチーム) photo:Akihiro Nakao

以下、山本和弘本人による参戦レポート。

2010 年国内初戦となるJ シリーズ開幕戦に参戦してきた。結果は自身初となるJ シリーズ戦初優勝という結果を残せた。
昨年の最終戦3位入賞から、メンタルトレーニングを積み、タイ合宿をし、タイでのMTB レースで実戦感覚を磨いて、国内で調整。身体のメンテナンスに気を使う。この一連の行動が今回の優勝、そして今現在の体調に繋がっているのだと感じる。

正直、「やっと勝てた。」が一番初めの気持ちだった。ここまで8 年。長かった。

やっと今やっている事に対して、メンタルが追いついたのだと思う。今になって思う。気持ちが一番大切だと。レース当日、天候は快晴。気持ち良く目が覚め、会場へと向かった。気持ちはいつも通り、日常の一部。

レーススタート20 分前に召集場所に向かった。スタート位置は最前列真ん中、気持ちの良いストレートコースが見えている。太陽が気持ちいい。スタート30 秒前にペダルをはめ、スタートを待った。大きく深呼吸。これはいつもの儀式だ。

バンッ!の合図とともにレースがスタートした。2008オーストラリアチャンプのディラン選手がいった! 武井選手がいった! 松本選手がいった! すべて冷静に見える。

エリート男子スタート ディラン・クーパー(TREK)が先頭にエリート男子スタート ディラン・クーパー(TREK)が先頭に photo:Akihiro Nakao

シングルトラックに入るところで3 番手に上がり、今の自分を考える。このまま進んで大丈夫か。今日は勝つ事が大切だ、と。
先頭を行くディラン選手ともそれほど離れていかないので、このまま進むことを決意。

初めのループの終盤、武井選手がスリップでコースラインが空いたので、前に出る事にした。この状態で2位。すぐにディラン選手の後ろに行き、ともに走る。周回半分のグランドに出てくる所で、ディラン選手、自分と少し抜け出る形となった。

勝つ事を意識してるのでこのまま2人で行っても良いのだが、自分がスピードを上げた方が良いと判断し、先頭でペースを作って通称「さくら坂」を上っていった。この時点でトップ。まだレースが始まったばかりであることから3分くらいの簡易舗装部分は自分のペースで上っていった。後ろは離れた。
頂上付近で小野寺選手が近づいてくるのが分かったので、合流を決意し、一緒になる形で1周目をクリアした。



彼は先週までアメリカのレースで非常に良い走りをしていたので、一緒にレースを展開するのに最適なレースパートナーだと感じ、その後は得意部分での先頭交代でペースを一定にし、2周目3周目とコースを回っていった。レース中、コース脇の観衆からタイム差が聞こえてくる。走るほどに3位集団との差が広がっていっているのがわかった。

4周目。レースのちょうど半分。ペースを上げて後ろとの差を確実にしたかったので、簡易舗装部分をこれまでよりもハイペースで上っていくことを決意。小野寺選手も同調してペースアップに応戦してきたので、良いペースのまま簡易舗装を上りきった。

この時は上り坂なのに「加速を感じるスピード」だった。その後、一緒になって下っていき、5周目へ突入。このあたりから一部分の速さよりもトータルでの速さを意識し、スムーズライドでレースは進んでいった。先頭は自分。シングルトラックを流れるように進んでいく。1つ目のループの終盤の上り坂で小野寺選手が少し遅れるのが分かった。

メカトラか? 疲れか? 判断はできないが、何か声を発していたのはわかった。どうした? グランドに出てくるときには差が空いていた。どうする?残り約40 分をどう走る?と考えながらグランド横を通過していった。

5周目・先頭に立つ山本和弘(キャノンデール・ファクトリーレーシングチーム)5周目・先頭に立つ山本和弘(キャノンデール・ファクトリーレーシングチーム) photo:Akihiro Nakao

そして、「さくら坂」で、「このままいく!」と決意。簡易舗装もこれまでよりもスピードを上げて、下りも攻めていった。差は30 秒。5 周目が終了。6 周目へ。頭の中は「自分スタイル。」

自分をコントロールできる範囲で走り続けた。そして、7 周目ラストラップへ。小野寺選手との差は広がっている事が確認できたので、転倒とパンクに気をつけながら、下りは慎重に下っていった。そしてグランド。これまでは前に選手がいる事が悔しく、全力でゴールラインをくぐる事が多かったが、今回はゆっくりとゴールラインをくぐる事ができた。

初優勝のゴールに飛び込む山本和弘(キャノンデール・ファクトリーレーシングチーム)初優勝のゴールに飛び込む山本和弘(キャノンデール・ファクトリーレーシングチーム) photo:Akihiro Nakano

称え合う小野寺健と山本和弘称え合う小野寺健と山本和弘 photo:Akihiro Nakao

これまで自分を支え続けてくれた家族に感謝、自分をサポートし続けてくれたキャノンデールに感謝、多くのスポンサーに感謝。そして、応援し続けてくれたファンのみんなに感謝。手は自然と「ありがとう!」になっていた。夢であったJ シリーズ戦優勝が叶ったのである。

今回の自分。レースを終始冷静に見る事ができた。次に何をやって、それがどうなっているか。常に自分の上から自分を見ているかのような精神状態でレースを走る事ができた。

昨年から取り組んできた総合的な体力UP が形となってきているのが感じられる。そして、今年1 月から行ったタイ合宿でこれまでにない持久力を手にしているのが大きいと感じる。上り、平坦はもちろんの事、下りも落ち着いて走る事ができている。勝利に対する経験値が浅くレース展開のワンパターン化を避けなければいけない。レース中はいつもの自分、「自分スタイル」で走る事ができた。自分の強みに気がついた。

これから。勝ち星を増やす事。勝つことの喜びを知ったので、また勝つレースをする。固定概念に縛られることなく、柔軟な精神状態でトレーニングに臨む。ここからが新たな自分。ここからが次のスタートである。

エリート男子表彰エリート男子表彰 photo:Akihiro Nakano

機材に関して

バイクはキャノンデールFLASH を選択。軽量8.5kg(フレーム重量950g)のフルカーボン製ハートテールバイクFLASHの投入は、今回のレース勝利に大きく貢献してくれた。軽さは最大の武器だ。それでいて、SAVE 機能によって、平坦&下りでの衝撃緩和が大きく、後半になっても身体のダメージを感じられなかった。(SAVE 機能搭載:シートポスト、チェーンステー)

KMC チェーンについて。軽量なチェーンのためシフトチェンジがスムーズでレース集中に大きく貢献。

EVERS チェーンオイル。今回はDRY を使用。スムーズなチェーンの動きがよりスムーズに。チェーン抵抗の軽減は大きなメリットを生む。

サングラス「evil eye」。レンズは「シルバーグラデーション」を使用。シングルトラック内の急な明暗にストレスなく対応できた。

クランクブラザース cobaltホイール。今回のコースに最適なチョイスだったと思う。ホイール外周が軽量なために踏み出しが軽く、まず加速感が非常に良かった。そして、しなやかなホイールなためにハードテールを選択した自分の身体をサポートしてくれた。加速したい時の伸び感&バネ感が凄い。そして、スピードに乗るとその維持性能が非常に高い。

クランクブラザース egg beaterペダル。ピンポイントで力が入るので、クリート位置が分かれば物凄い威力を発揮できる。

MAXXIS ASPENタイヤ。走りが軽い!グリップが適度で良い!ベタ褒めだがホントの話。このタイヤを使って、チューブドタイヤのイメージが変わった。ドライレースの最強版。

BELL VOLTヘルメット。フィット感が高いから、どんな根っこ区間に行っても暴れる事がない。

MAGURA ブレーキ。指一本でコントロールできるから、下りの高速区間でハンドリングが安定。無駄な力がいらないので走りがスマートに。

フィジークANTARESサドル。後方の広い座面がどの場面でも安定感を増してくれる。これを使って、腰が安定するので腰痛がなくなった。



report 山本和弘
photo:中尾亮弘