2019/06/27(木) - 09:15
先日よりチネリ、タイムの展示会を開催してきたポディウムが、カレラを中心としたディーラーショーを開いた。2020年モデルの先行発表や発売開始のニュースが続々リリースされていく中、カレラもまた2020年に向けたニュースをこのタイミングで発表した。
カレラのビッグニュースは、創業者であるダビデ・ボイファーヴァ氏が代表を退き、息子のシモーネ氏に代替わりすること。ダビデは元プロロード選手であり、メルクスやジモンディらと共にロードレース黄金期を支え、引退後はプロチームのマネージャーとしてレースを牽引してきた人物でもある。
ダビデ氏が立ち上げたカレラが造り上げたロードバイクはレースの最前線で活躍してきた。中でも1995年、マルコ・パンターニによってツール・ド・フランス第10ステージ、ラルプ・デュエズの頂上ゴールを制したことは白眉として挙げられるだろう。また、レース性能だけが魅力というわけでもなく、その独創的なデザインセンスも評価が高い。曲線を多用した「フィブラ」も唯一無二のロードバイクとして今もなお評価を得ているバイクだ。
そんなカレラを率いたダビデ氏が第一線から身を引くという。「若い頃からサイクルロードレースに情熱を注いできました。マネージャーとしてカレラチームを率いた後、立ち上げたカレラブランドと会社もその1つです。カレラは私の人生にとって重要なものでした。これからのカレラは、ミディアムからハイレベルのロードバイクのようなレーシングスピリットを大切にしつつ、グラベルバイクなども様々なジャンルにもラインアップして欲しいですね」とダビデ氏は言葉を残した。
これからのカレラを牽引していくシモーネ氏は「私の人生の多くはカレラと自転車が共にありました。私にとってカレラや自転車は仕事ではありますが、単純に働くということだけではなくライフスタイルの一部でもあります。父と同じ様に情熱を注いでいるため、良いアイデアを自転車づくりに活かしていきたい」という。
また、今回の代替わりとに合わせシモーネ氏はステートメントを用意してきていた。そこではカレラを取り巻く自転車業界の変化とブランドの現状、それらを踏まえた上で飛躍を遂げるため代替わりを進めると説明されていた。その一環として現在のヘッドクオーターを閉鎖し、新しいオフィスを構えるとも。カレラは今回の代替わりを機に大きな改革を進めていくという姿勢が表れている。
今後のヴィジョンは「プロの世界に挑戦する若いライダーや、自分の限界を超えようとしているアマチュアライダーをカレラバイクでサポート」していくことにあるという。そしてミッションは「世界に通用するイタリアンスタイル」を提案していくことだ。これらを実現するのは長年の経験を積んだスタッフたちによる研究、感度の高いデザイン力だ。カレラのバイクをさらに魅力的なものにするとシモーネ氏は意気込んでいる。
代替わりという大きなニュースにカレラは注力するため、その過渡期となる2020年シーズンは新型ロードバイクのリリースは見送るとも。2019年モデルに登場したPHIBRA NEXTにクロモベラートというメタリックシルバーカラー、AR-01にはメタリックブルーが追加される。
また、グラベルロードがラインアップに登場。カーボンフレームとされており、現代のグラベルスタンダードと言えるようなスペックが盛り込まれている。一方でフェンダー用の台座はフロントのみ。フレーム造形が特徴的であり、ダウンチューブは横に扁平した形状を採用。ヘッド側とBB側で造形が変化していることもポイントだ。日本での展開詳細は未定とのこと。
今回の展示会では、エルゴビューという会社が開発した「idmatch Bike Lab」が国内導入されることがアナウンスされた。セッレイタリアのサドルマッチシステム「idmatch」を知る方は多いと思うが、今回のバイクラボはその発展形である自転車のフィッティングシステムのこと。サドルだけではなく、ハンドル幅やポジションなどをソフトウェアが導き出してくれるハイテクなシステムとなっている。
セッレイタリアとの結びつきがあるだけに、推奨されるサドルは同社のものだけかと思いがちだが、そうではない。主要メーカーのデータを収録しており、幅のサイズなどからオススメのものを導き出してくれるのだ。また、バイクやハンドルも各メーカーの各モデルのデータが揃えられているため、フィッティング終了後に使用中や購入検討しているバイク/パーツの推奨サイズを教えてくれるのだ。つまりセッレイタリアのサドルは合わない…という方もidmatch Bike Labのフィッティングは受ける価値が生まれている。
このフィッティングシステムの美点は幾つかある。1つはマーカーを使わない3Dスキャンで体の各部位と可動域をリアルタイム計測が行える点。筆者もデモンストレーションのモデルとしてフィッティングを受けさせてもらったが、身長や股下、膝下など各関節から末端までの長さを一瞬で計測してくれるのだ。被験者としては立っているだけだったので、本当に計測されているのか心配だったが、最終的に出力されるフィッティングシートにはミリ単位で数値が記載されていたので一安心。
体の各部をスケールで計測するだけでも非常に時間がかかるものだが、idmatch Bike Labならあっという間。股下を計測する時に恥ずかしい思いもしなくれも良い上に、フィッターに体を触られないのは非常に精神的に楽である。
2つ目はフィッティングマシーンが自動的にハンドルとサドルの前後位置を調整してくれること。1分おきにミリ単位でポジションが変更され、各関節角度などから最適なポジションを見つけ出してくれる。時間にしては約15分程度ペダルを漕いでいれば終了だ。3つ目はこの時間の短さ。初期ポジションを出すための所要時間は非常に短い。
自動的に導き出されたポジションで満足できれば良いのだが、人体はそんなに簡単ではない。idmatch Bike Labにはマニュアルモードが用意されているため、フィッターとハンドルが遠い、近いなどのやりとりを行いポジションを煮詰めていってくれる。もちろんマニュアルモードでも関節角度の計測は行われているため、希望に寄り添いつつ膨大なデータベースから導き出されるポジションをすり合わせていく。
フィッターの経験値に左右されないことがこのフィッティングシステムのメリットであるが、計算で解決できない部分をフィッターの経験でカバーできる余地を残している。例えば、適切なクランク長も計算で出してくれるのだが、165mmのショートクランクを試したい場合もそのクランクありきのポジションを出してくれるのだ。新しいパーツを試したい場合にもこのフィッティングシステムは活躍してくれるかもしれない。
フィット可能なバイクタイプも豊富でロード、MTB、TTなど様々。各バイクタイプでもライド強度(レース、グランフォンド)を選択することができるため、ライダーのシチュエーションにマッチしたフィッティングを受けることが可能だ。専用のバイクポジション計測治具が用意されているため、現在のポジションからフィッティングを開始することができる。バイクを持っていない方の場合は、3Dスキャンのデータから導き出される理想であろうポジションから自動フィッティングが始まる。
また、フィッティング開始前には肩や腰、膝、足首など体の各部位の痛みがあるか、その期間もidmatch bike labに入力する。この問診を受けてシステムは痛みの発生を抑えるようなポジションを出してくれるという。これまでは経験則で語られていた自転車ライドでの不調を解決するフィッティングを機械がおこなってくれるようになる。
今回の展示会にはセッレイタリアよりマッテオ・パガネッリ氏が来日。idmatch Bike Labについて次のように説明する。「体型や乗り方、体の可動域は人それぞれであり、フィッティングは全ての人が異なる結果となるでしょう。それらのフィッティングデータは全てクラウドで管理されており、最適なフィッティングデータを見つけるためのデータベースとなります。データが蓄積されていくことで、フィッティングの分析精度が向上していくシステムとなっています。現在は1万人以上のデータがすでに蓄積されています。」
これまでフィッターは自身の経験とフィッティング実績、各フィッターの知識によって、ライダーの最適なポジションを導き出してきた。それらと世界中のフィッティングデータと融合することのできるidmatch bike labはフィッティングの新たな道を切り開いてくれそうだ。日本での展開の詳細は未定とのこと。詳細はセッレイタリア本社で取材したレポートを参照して欲しい(リンクはこちら)
text&photo:Gakuto Fujiwara
カレラのビッグニュースは、創業者であるダビデ・ボイファーヴァ氏が代表を退き、息子のシモーネ氏に代替わりすること。ダビデは元プロロード選手であり、メルクスやジモンディらと共にロードレース黄金期を支え、引退後はプロチームのマネージャーとしてレースを牽引してきた人物でもある。
ダビデ氏が立ち上げたカレラが造り上げたロードバイクはレースの最前線で活躍してきた。中でも1995年、マルコ・パンターニによってツール・ド・フランス第10ステージ、ラルプ・デュエズの頂上ゴールを制したことは白眉として挙げられるだろう。また、レース性能だけが魅力というわけでもなく、その独創的なデザインセンスも評価が高い。曲線を多用した「フィブラ」も唯一無二のロードバイクとして今もなお評価を得ているバイクだ。
そんなカレラを率いたダビデ氏が第一線から身を引くという。「若い頃からサイクルロードレースに情熱を注いできました。マネージャーとしてカレラチームを率いた後、立ち上げたカレラブランドと会社もその1つです。カレラは私の人生にとって重要なものでした。これからのカレラは、ミディアムからハイレベルのロードバイクのようなレーシングスピリットを大切にしつつ、グラベルバイクなども様々なジャンルにもラインアップして欲しいですね」とダビデ氏は言葉を残した。
これからのカレラを牽引していくシモーネ氏は「私の人生の多くはカレラと自転車が共にありました。私にとってカレラや自転車は仕事ではありますが、単純に働くということだけではなくライフスタイルの一部でもあります。父と同じ様に情熱を注いでいるため、良いアイデアを自転車づくりに活かしていきたい」という。
また、今回の代替わりとに合わせシモーネ氏はステートメントを用意してきていた。そこではカレラを取り巻く自転車業界の変化とブランドの現状、それらを踏まえた上で飛躍を遂げるため代替わりを進めると説明されていた。その一環として現在のヘッドクオーターを閉鎖し、新しいオフィスを構えるとも。カレラは今回の代替わりを機に大きな改革を進めていくという姿勢が表れている。
今後のヴィジョンは「プロの世界に挑戦する若いライダーや、自分の限界を超えようとしているアマチュアライダーをカレラバイクでサポート」していくことにあるという。そしてミッションは「世界に通用するイタリアンスタイル」を提案していくことだ。これらを実現するのは長年の経験を積んだスタッフたちによる研究、感度の高いデザイン力だ。カレラのバイクをさらに魅力的なものにするとシモーネ氏は意気込んでいる。
代替わりという大きなニュースにカレラは注力するため、その過渡期となる2020年シーズンは新型ロードバイクのリリースは見送るとも。2019年モデルに登場したPHIBRA NEXTにクロモベラートというメタリックシルバーカラー、AR-01にはメタリックブルーが追加される。
また、グラベルロードがラインアップに登場。カーボンフレームとされており、現代のグラベルスタンダードと言えるようなスペックが盛り込まれている。一方でフェンダー用の台座はフロントのみ。フレーム造形が特徴的であり、ダウンチューブは横に扁平した形状を採用。ヘッド側とBB側で造形が変化していることもポイントだ。日本での展開詳細は未定とのこと。
今回の展示会では、エルゴビューという会社が開発した「idmatch Bike Lab」が国内導入されることがアナウンスされた。セッレイタリアのサドルマッチシステム「idmatch」を知る方は多いと思うが、今回のバイクラボはその発展形である自転車のフィッティングシステムのこと。サドルだけではなく、ハンドル幅やポジションなどをソフトウェアが導き出してくれるハイテクなシステムとなっている。
セッレイタリアとの結びつきがあるだけに、推奨されるサドルは同社のものだけかと思いがちだが、そうではない。主要メーカーのデータを収録しており、幅のサイズなどからオススメのものを導き出してくれるのだ。また、バイクやハンドルも各メーカーの各モデルのデータが揃えられているため、フィッティング終了後に使用中や購入検討しているバイク/パーツの推奨サイズを教えてくれるのだ。つまりセッレイタリアのサドルは合わない…という方もidmatch Bike Labのフィッティングは受ける価値が生まれている。
このフィッティングシステムの美点は幾つかある。1つはマーカーを使わない3Dスキャンで体の各部位と可動域をリアルタイム計測が行える点。筆者もデモンストレーションのモデルとしてフィッティングを受けさせてもらったが、身長や股下、膝下など各関節から末端までの長さを一瞬で計測してくれるのだ。被験者としては立っているだけだったので、本当に計測されているのか心配だったが、最終的に出力されるフィッティングシートにはミリ単位で数値が記載されていたので一安心。
体の各部をスケールで計測するだけでも非常に時間がかかるものだが、idmatch Bike Labならあっという間。股下を計測する時に恥ずかしい思いもしなくれも良い上に、フィッターに体を触られないのは非常に精神的に楽である。
2つ目はフィッティングマシーンが自動的にハンドルとサドルの前後位置を調整してくれること。1分おきにミリ単位でポジションが変更され、各関節角度などから最適なポジションを見つけ出してくれる。時間にしては約15分程度ペダルを漕いでいれば終了だ。3つ目はこの時間の短さ。初期ポジションを出すための所要時間は非常に短い。
自動的に導き出されたポジションで満足できれば良いのだが、人体はそんなに簡単ではない。idmatch Bike Labにはマニュアルモードが用意されているため、フィッターとハンドルが遠い、近いなどのやりとりを行いポジションを煮詰めていってくれる。もちろんマニュアルモードでも関節角度の計測は行われているため、希望に寄り添いつつ膨大なデータベースから導き出されるポジションをすり合わせていく。
フィッターの経験値に左右されないことがこのフィッティングシステムのメリットであるが、計算で解決できない部分をフィッターの経験でカバーできる余地を残している。例えば、適切なクランク長も計算で出してくれるのだが、165mmのショートクランクを試したい場合もそのクランクありきのポジションを出してくれるのだ。新しいパーツを試したい場合にもこのフィッティングシステムは活躍してくれるかもしれない。
フィット可能なバイクタイプも豊富でロード、MTB、TTなど様々。各バイクタイプでもライド強度(レース、グランフォンド)を選択することができるため、ライダーのシチュエーションにマッチしたフィッティングを受けることが可能だ。専用のバイクポジション計測治具が用意されているため、現在のポジションからフィッティングを開始することができる。バイクを持っていない方の場合は、3Dスキャンのデータから導き出される理想であろうポジションから自動フィッティングが始まる。
また、フィッティング開始前には肩や腰、膝、足首など体の各部位の痛みがあるか、その期間もidmatch bike labに入力する。この問診を受けてシステムは痛みの発生を抑えるようなポジションを出してくれるという。これまでは経験則で語られていた自転車ライドでの不調を解決するフィッティングを機械がおこなってくれるようになる。
今回の展示会にはセッレイタリアよりマッテオ・パガネッリ氏が来日。idmatch Bike Labについて次のように説明する。「体型や乗り方、体の可動域は人それぞれであり、フィッティングは全ての人が異なる結果となるでしょう。それらのフィッティングデータは全てクラウドで管理されており、最適なフィッティングデータを見つけるためのデータベースとなります。データが蓄積されていくことで、フィッティングの分析精度が向上していくシステムとなっています。現在は1万人以上のデータがすでに蓄積されています。」
これまでフィッターは自身の経験とフィッティング実績、各フィッターの知識によって、ライダーの最適なポジションを導き出してきた。それらと世界中のフィッティングデータと融合することのできるidmatch bike labはフィッティングの新たな道を切り開いてくれそうだ。日本での展開の詳細は未定とのこと。詳細はセッレイタリア本社で取材したレポートを参照して欲しい(リンクはこちら)
text&photo:Gakuto Fujiwara
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