2019/06/03(月) - 09:12
3週間に渡るジロ・デ・イタリアが閉幕。ステージ上位選手や、マリアローザを得たリチャル・カラパス(エクアドル、モビスター)ら総合トップスリー、そして「3週間がやっと終わった」と語る初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)らのコメントを紹介します。
ステージ優勝:チャド・ハガ(アメリカ、サンウェブ)
感情が溢れてきて、言葉が出てこない。テクニカルコーナーを含むハイスピードTTで、特に下りは今朝20回ほど映像で確認したんだ。登りはとてもペースを刻むのが難しく、リズムもなかった。前回のTTで好感触を得ていたので、チームの協力を得てなるべく脚を貯めていたんだ。今朝起きた段階から勝てるという自信があった。テクニカルなコーナーが多い高速コースで、グリッチェやニバリの走りをテレビで見ていたけど、間違いなく彼らは疲れていると思ったよ。
今年のジロはうまくスタートを切ることができたが、最終的にトム、ロブ、ルイ、そしてサムを失ってしまった。この勝利は自分にとってもチームにとっても意味のあるものとなった。
ステージ2位:ヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、ロット・スーダル)
もちろん2位と言う結果にはがっかり。今日のステージで勝つためにチームの知力を結集したんだ。パフォーマンスマネージャーのケヴィンは徹底的にコースを分析し、それがステージ2位と3位というチームの好成績に繋がった。
今日のレースはコンディションではなく、どれだけ下りを攻めることができるかで決まるレースだった。少しフラストレーションだが、下り前でチャド・ハガは僕よりも6秒遅れ。その段階で彼が数日間脚を溜めていたことに気が付いたんだ。完璧を期して作戦を立てたものの、下りではなるべく速くコーナリングするしかすべはない。チームカーからも的確な情報を得ていたものの、勝つにはアグレッシブさが足りなかったのかもしれない。メキシコでアワーレコードのために重ねてきたトレーニングは今日はあまり役立たなかった。確かに複数の目標を同時に達成するのは難しいけれど、今日もステージ優勝まであと一歩だった。
マリアローザ:リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター)
今何て話せば良いか良く分からない。独特な感情が自分を支配しているよ。自分にとってキャリアの中で間違いなく最大の出来事。人生にこんなことがやってくるなんて思いもしなかった。自分が夢見たことが現実になったんだ。今は不可能なことなんて無いと思えているよ。これまで積み重ねてきたこと、犠牲にしてきたことが全て報われた。この瞬間は本当に価値があることだ。
今日はスタートからフィニッシュまで全開で走り、苦しみながらヴェローナのアレーナにたどり着いた。正直に言ってこのようなTTの結果になるとは思わなかった。これまで無いほど苦しんだタイムトライアルだったよ。スタート、登り、そしてヴェローナのアレーナへの最後の石畳。純粋な苦しみでしかなかった。
この勝利は、ずっと僕をサポートし、奮い立たせてくれたチームがお膳立てしてくれたもの。自分を支えてくれる人、エクアドル、ラテンアメリカ、そして僕の勝利に満足してくれる全ての人のものだ。両親や妻、そして子供とこの瞬間を分かち合えるのはなおさら素敵な瞬間だった。
総合2位:ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)
後悔はしていない。今回のジロは成功したと思うし、チーム全体としてもパフォーマンスを発揮してくれたと思う。非常にタフで激しいレース。ライバル勢も非常に強力で総合優勝は簡単ではなかった。カラパスは並外れた強さを誇り、チーム戦力的にも鉄壁と呼べるものだった。様々なチーム同士が力比べをした中で僕たちがミスをしたとは言えない。カラパスに対して攻撃したものの、彼を崩すのは不可能だと思えたよ。マリアローザに値する走りだった。昨年ツールでの負傷を考えれば僕のジロは成功だったと思う。回復までに多くの犠牲を払ってきたので満足しているよ。
総合3位:プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)
表彰台に上がることができて満足している。ジロには総合優勝するためにやってきたが、体調面での問題や、ここ数日間直面してきた困難によって難しい展開になった。自分の3位という結果に不満はない。110%を尽くして戦い抜いた。今日のステージで、たくさんのスロベニアファンの声援を受けながらアレーナにフィニッシュした時、僕は勝者になった気分だった。3週間サポートを続けてくれたチームにも感謝したい。
マリアビアンカ、総合7位:ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)
3週間に渡り不運に見舞われることが多く、ジロは非常に難しいレースだった。実際に最も重要な瞬間に少しだけ運に見放されてしまい、そこでのパフォーマンスに大きな影響がでてしまった。とにかくジロにあわせたコンディションに満足している。非常に良いレベルでレースに臨むことができていたし、僕はより多くの物を得られると確信している。マリアビアンカを2年連続で勝ち取ることができたのは、素晴らしいことであるし嬉しく思う。今はチームと次の目標を設定する前に、家族とともに過ごせる休みの時間を楽しみにしているよ。
マリアチクラミーノ:パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
レースが始まったときは自分に勝ち目がないように感じていたけど、今は私が何を達成できたかを我々はわかっている。このチームの一員になれて本当に嬉しい。ここには多くの友人がいて、平坦や山岳ステージ関係なく全てのレースで素晴らしい仕事を成し遂げてくれたんだ。彼らはレース中、レース外いつでも私を励ましてくれた。全員がハードに仕事をこなしたからこそ、この成績を勝ち取ることができた。私は本当にジロに参加したかったので、チームが私にメンバーに選んだという自信は、より良い成績を達成するモチベーションに繋がっていたんだ。最後に、我々は素晴らしい仕事を成し遂げた。私は彼らのサポートに本当に感謝をしたい。
初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)
3週間がやっと終わった、という感じです。明日は自転車に乗らなくていいし、パスタばかり食べる生活じゃなくなる。2週目から股ずれを起こしていたので、石畳など道の悪いセクションも出てくるとやはり痛みが出ました。
3週間走り切って感じる変化は正直まだわからないです。でも3週間という長い期間にわたってこれだけ辛い思いをしたのは初めて。とはいえ、大きく体調を崩すことなく3週間を走りきれたことに自分でもびっくりしました。新城選手や別府選手のように世界的に有名な選手ではない自分のことを、ジロという大舞台で『初山コール』が起こるほど応援してくれるというのは言葉では言い表すことができない気持ちでした。
第16ステージは山岳がきつくて寒くて、とにかくきつかった。監督から「リタイアするか?」と聞かれたら「はい」って答えていたと思います。やめれば楽になるけれど、後味の悪さも残ると思いました。開幕前から「完走が目的じゃない」と言ってきましたが、走り続けていると自分の完走を本気で応援したり祈ったりしてくれる人がたくさんいた。それを裏切ってしまうことはできないと思いました。
次は来週のハンマーシリーズ(リンブルフ)に出場して帰国します。長い目で見た時の次のステップアップは何かと言われると答えに困りますが、3週間走り切った後の身体の状態を確認しながら、チームとともに目の前のレースをこなしていきたいです。
text:So.Isobe,Kei.Tsuji
ステージ優勝:チャド・ハガ(アメリカ、サンウェブ)
感情が溢れてきて、言葉が出てこない。テクニカルコーナーを含むハイスピードTTで、特に下りは今朝20回ほど映像で確認したんだ。登りはとてもペースを刻むのが難しく、リズムもなかった。前回のTTで好感触を得ていたので、チームの協力を得てなるべく脚を貯めていたんだ。今朝起きた段階から勝てるという自信があった。テクニカルなコーナーが多い高速コースで、グリッチェやニバリの走りをテレビで見ていたけど、間違いなく彼らは疲れていると思ったよ。
今年のジロはうまくスタートを切ることができたが、最終的にトム、ロブ、ルイ、そしてサムを失ってしまった。この勝利は自分にとってもチームにとっても意味のあるものとなった。
ステージ2位:ヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、ロット・スーダル)
もちろん2位と言う結果にはがっかり。今日のステージで勝つためにチームの知力を結集したんだ。パフォーマンスマネージャーのケヴィンは徹底的にコースを分析し、それがステージ2位と3位というチームの好成績に繋がった。
今日のレースはコンディションではなく、どれだけ下りを攻めることができるかで決まるレースだった。少しフラストレーションだが、下り前でチャド・ハガは僕よりも6秒遅れ。その段階で彼が数日間脚を溜めていたことに気が付いたんだ。完璧を期して作戦を立てたものの、下りではなるべく速くコーナリングするしかすべはない。チームカーからも的確な情報を得ていたものの、勝つにはアグレッシブさが足りなかったのかもしれない。メキシコでアワーレコードのために重ねてきたトレーニングは今日はあまり役立たなかった。確かに複数の目標を同時に達成するのは難しいけれど、今日もステージ優勝まであと一歩だった。
マリアローザ:リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター)
今何て話せば良いか良く分からない。独特な感情が自分を支配しているよ。自分にとってキャリアの中で間違いなく最大の出来事。人生にこんなことがやってくるなんて思いもしなかった。自分が夢見たことが現実になったんだ。今は不可能なことなんて無いと思えているよ。これまで積み重ねてきたこと、犠牲にしてきたことが全て報われた。この瞬間は本当に価値があることだ。
今日はスタートからフィニッシュまで全開で走り、苦しみながらヴェローナのアレーナにたどり着いた。正直に言ってこのようなTTの結果になるとは思わなかった。これまで無いほど苦しんだタイムトライアルだったよ。スタート、登り、そしてヴェローナのアレーナへの最後の石畳。純粋な苦しみでしかなかった。
この勝利は、ずっと僕をサポートし、奮い立たせてくれたチームがお膳立てしてくれたもの。自分を支えてくれる人、エクアドル、ラテンアメリカ、そして僕の勝利に満足してくれる全ての人のものだ。両親や妻、そして子供とこの瞬間を分かち合えるのはなおさら素敵な瞬間だった。
総合2位:ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)
後悔はしていない。今回のジロは成功したと思うし、チーム全体としてもパフォーマンスを発揮してくれたと思う。非常にタフで激しいレース。ライバル勢も非常に強力で総合優勝は簡単ではなかった。カラパスは並外れた強さを誇り、チーム戦力的にも鉄壁と呼べるものだった。様々なチーム同士が力比べをした中で僕たちがミスをしたとは言えない。カラパスに対して攻撃したものの、彼を崩すのは不可能だと思えたよ。マリアローザに値する走りだった。昨年ツールでの負傷を考えれば僕のジロは成功だったと思う。回復までに多くの犠牲を払ってきたので満足しているよ。
総合3位:プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)
表彰台に上がることができて満足している。ジロには総合優勝するためにやってきたが、体調面での問題や、ここ数日間直面してきた困難によって難しい展開になった。自分の3位という結果に不満はない。110%を尽くして戦い抜いた。今日のステージで、たくさんのスロベニアファンの声援を受けながらアレーナにフィニッシュした時、僕は勝者になった気分だった。3週間サポートを続けてくれたチームにも感謝したい。
マリアビアンカ、総合7位:ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)
3週間に渡り不運に見舞われることが多く、ジロは非常に難しいレースだった。実際に最も重要な瞬間に少しだけ運に見放されてしまい、そこでのパフォーマンスに大きな影響がでてしまった。とにかくジロにあわせたコンディションに満足している。非常に良いレベルでレースに臨むことができていたし、僕はより多くの物を得られると確信している。マリアビアンカを2年連続で勝ち取ることができたのは、素晴らしいことであるし嬉しく思う。今はチームと次の目標を設定する前に、家族とともに過ごせる休みの時間を楽しみにしているよ。
マリアチクラミーノ:パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
レースが始まったときは自分に勝ち目がないように感じていたけど、今は私が何を達成できたかを我々はわかっている。このチームの一員になれて本当に嬉しい。ここには多くの友人がいて、平坦や山岳ステージ関係なく全てのレースで素晴らしい仕事を成し遂げてくれたんだ。彼らはレース中、レース外いつでも私を励ましてくれた。全員がハードに仕事をこなしたからこそ、この成績を勝ち取ることができた。私は本当にジロに参加したかったので、チームが私にメンバーに選んだという自信は、より良い成績を達成するモチベーションに繋がっていたんだ。最後に、我々は素晴らしい仕事を成し遂げた。私は彼らのサポートに本当に感謝をしたい。
初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)
3週間がやっと終わった、という感じです。明日は自転車に乗らなくていいし、パスタばかり食べる生活じゃなくなる。2週目から股ずれを起こしていたので、石畳など道の悪いセクションも出てくるとやはり痛みが出ました。
3週間走り切って感じる変化は正直まだわからないです。でも3週間という長い期間にわたってこれだけ辛い思いをしたのは初めて。とはいえ、大きく体調を崩すことなく3週間を走りきれたことに自分でもびっくりしました。新城選手や別府選手のように世界的に有名な選手ではない自分のことを、ジロという大舞台で『初山コール』が起こるほど応援してくれるというのは言葉では言い表すことができない気持ちでした。
第16ステージは山岳がきつくて寒くて、とにかくきつかった。監督から「リタイアするか?」と聞かれたら「はい」って答えていたと思います。やめれば楽になるけれど、後味の悪さも残ると思いました。開幕前から「完走が目的じゃない」と言ってきましたが、走り続けていると自分の完走を本気で応援したり祈ったりしてくれる人がたくさんいた。それを裏切ってしまうことはできないと思いました。
次は来週のハンマーシリーズ(リンブルフ)に出場して帰国します。長い目で見た時の次のステップアップは何かと言われると答えに困りますが、3週間走り切った後の身体の状態を確認しながら、チームとともに目の前のレースをこなしていきたいです。
text:So.Isobe,Kei.Tsuji
Amazon.co.jp