2019/05/26(日) - 05:11
獲得標高差が4,000mに達する5つのカテゴリー山岳が詰め込まれた131kmで行われたジロ・デ・イタリア第14ステージで、終盤の1級山岳で独走に持ち込んだリチャル・カラパス(エクアドル、モビスター)がステージ2勝目をマーク。同時にマリアローザに初めて袖を通した。
131kmという短い距離に獲得標高差4,000mの登りが詰め込まれた、破壊力抜群のジロ・デ・イタリア第14ステージ。サンヴィンセントをスタートして渓谷を駆け上がり、ヴァッレ=ダオスタ州らしい急峻な4つのカテゴリー山岳を越える。終盤に登場する標高1,951mの1級山岳サンカルロ峠は今大会を代表する高難度の登りであり、激しいマリアローザ争いが予想された。
ジロ第14ステージに設定されたカテゴリー山岳
13.8km地点 2級山岳ヴェライェス(距離6.7km/平均8%)
51.5km地点 1級山岳ヴェローニュ(全長13.8km/平均7.1%)
75.9km地点 2級山岳トルク・ダルブ(全長8.2km/平均7%)
106.1km地点 1級山岳サンカルロ峠(全長10.5km/平均9.8%/最大15%)
131.0km地点 3級山岳クールマイユール(距離8km/平均3.2%)
この日も総合系チームが戦略的に逃げに選手を送り込もうとアタック合戦に加わったためレースは序盤から荒れ模様となる。2級山岳ヴェライェスで早くもメイン集団が崩壊する勢いで、サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)やリチャル・カラパス(エクアドル、モビスター)らがアタック。この動きを容認しないプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)やヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)といった総合上位陣が反応したため、一時的に27名の精鋭集団が形成される。
ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)を先頭に2級山岳ヴェライェスをクリアすると、下り区間でダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・メリダ)とペリョ・ビルバオ(スペイン、アスタナ)がアタックを仕掛けたが決まらない。平坦区間に入ったところでチッコーネ、クリストファー・ユールイェンセン(デンマーク、ミッチェルトン・スコット)、ファウスト・マスナダ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)、マティア・カッタネオ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)、アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)、ルーカス・ハミルトン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)、ヒュー・カーシー(イギリス、EFエデュケーションファースト)、イバン・ソーサ(コロンビア、チームイネオス)のという8名が先行したところでようやくレースは落ち着いた。最初の2級山岳ヴェライェスで脱落していたピュアスプリンターたちや初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)はメイン集団復帰を果たしている。
タイム差2分30秒で1級山岳ヴェローニュに突入するとメイン集団の牽引役はUAEチームエミレーツからユンボ・ヴィズマにスイッチ。この2つ目のカテゴリー山岳でもレースは活発化し、登りでカウンターアタックを仕掛けたカルーゾとヨン・イサギレ(スペイン、アスタナ)、トニー・ガロパン(フランス、アージェードゥーゼール)、ユベール・デュポン(フランス、アージェードゥーゼール)が下り区間で逃げグループにジョイン。こうして12名に人数を増やした逃げグループが、1分25秒差で続く2級山岳トルク・ダルブを越えた。3つのカテゴリー山岳を先頭通過したチッコーネは山岳賞首位を揺るぎないものにしている。
この日最大の難所である1級山岳サンカルロ峠に突入するとユンボ・ヴィズマに代わってバーレーン・メリダがペースアップを開始。マリアローザのヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ)をふるい落とすとともに、ログリッチェの防御を崩したところでニバリがアタックを仕掛ける。
イタリアの期待を背負う男のペースアップに対応できたのはログリッチェ、カラパス、ミケル・ランダ(スペイン、モビスター)、ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)、ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)、ジョセフロイド・ドンブロウスキー(アメリカ、EFエデュケーションファースト)のみ。逃げグループから下がったカルーゾのペースメイクにより、先頭で逃げ続けていたチッコーネは吸収された。
頂上まで3kmを残して動いたのは、チームメイトのランダとともに精鋭グループに残ったカラパスだった。ログリッチェとニバリ、ロペスがそれぞれ追走をかけたが、カラパスは独走に持ち込むとともにリードを30秒まで広げた状態で1級山岳サンカルロ峠をクリアする。精鋭グループでは最もニバリが積極的に動いたもののライバルたちを振り切ることはできず、頂上手前で再度アタックして得意の下り区間を攻めた。
競り合いながら1級山岳サンカルロ峠を下った追走4名は一時的にカラパスの17秒後方にまで迫ったものの、逆にカラパスがリードを広げながら最後の3級山岳クールマイユールに突入。後方ではニバリ、ログリッチェ、ロペス、ランダ、マイカに、遅れていたイェーツとドンブロウスキー、シヴァコフ、カルーゾが合流。牽制状態に陥ってスピードを失った追走グループからイェーツが飛び出したものの、先頭カラパスは1分30秒以上のリードを築いた状態でフィニッシュへ。
総合でマリアローザから4分22秒遅れ(ログリッチェから1分57秒遅れ)のカラパスが少しでもリードを広げるために緩斜面を踏み続け、平均スピード32.427km/hの難関ステージを制覇。1分32秒遅れで2番手イェーツがフィニッシュに飛び込み、ボーナスタイム4秒を獲得するためにスプリントしたニバリを先頭に精鋭集団が1分54秒遅れでフィニッシュした。
「実を言うと、チームとしてあらかじめ予定していた作戦を実行に移したんだ。ミケル・ランダとともに調子の良さを感じていたので、タイミングを見計らってアタックした。全て作戦通りだった」。決して展開の"あや"ではなく、力でステージ2勝目をもぎ取ったカラパスは初めてマリアローザに袖を通した。
カラパスは前日の第13ステージの終盤にアタックを仕掛け、ログリッチェとニバリに1分19秒差をつけてフィニッシュ。そこで総合6位まで順位を上げ、さらに第4ステージに続くステージ2勝目で総合1位まで一気にジャンプアップした。「マリアローザを着るなんて信じられない。この瞬間のためにトレーニングを積んできた。まさに夢の中にいるよう」。そう語るカラパスとログリッチェの総合タイム差は7秒。カラパスは「ヴェローナまでマリアローザを守り抜きたい」と語っており、2分50秒差の総合5位に浮上したチームメイトのランダとともにこれからはログリッチェやニバリの攻撃を受ける側となる。
初山を含む最終グルペットはタイムリミット内の40分55秒遅れでフィニッシュ。1つ目の2級山岳で遅れながらもメイン集団に復帰し、続く1級山岳ではピュアスプリンターよりも前の集団に入った初山。「最初の登りで脱落した時はやばいと思いました。集団に復帰してグルペットに入ってからは昨日より余裕を持って走れた」という初山が大きな山場を越えた。
い
131kmという短い距離に獲得標高差4,000mの登りが詰め込まれた、破壊力抜群のジロ・デ・イタリア第14ステージ。サンヴィンセントをスタートして渓谷を駆け上がり、ヴァッレ=ダオスタ州らしい急峻な4つのカテゴリー山岳を越える。終盤に登場する標高1,951mの1級山岳サンカルロ峠は今大会を代表する高難度の登りであり、激しいマリアローザ争いが予想された。
ジロ第14ステージに設定されたカテゴリー山岳
13.8km地点 2級山岳ヴェライェス(距離6.7km/平均8%)
51.5km地点 1級山岳ヴェローニュ(全長13.8km/平均7.1%)
75.9km地点 2級山岳トルク・ダルブ(全長8.2km/平均7%)
106.1km地点 1級山岳サンカルロ峠(全長10.5km/平均9.8%/最大15%)
131.0km地点 3級山岳クールマイユール(距離8km/平均3.2%)
この日も総合系チームが戦略的に逃げに選手を送り込もうとアタック合戦に加わったためレースは序盤から荒れ模様となる。2級山岳ヴェライェスで早くもメイン集団が崩壊する勢いで、サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)やリチャル・カラパス(エクアドル、モビスター)らがアタック。この動きを容認しないプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)やヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)といった総合上位陣が反応したため、一時的に27名の精鋭集団が形成される。
ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)を先頭に2級山岳ヴェライェスをクリアすると、下り区間でダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・メリダ)とペリョ・ビルバオ(スペイン、アスタナ)がアタックを仕掛けたが決まらない。平坦区間に入ったところでチッコーネ、クリストファー・ユールイェンセン(デンマーク、ミッチェルトン・スコット)、ファウスト・マスナダ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)、マティア・カッタネオ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)、アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)、ルーカス・ハミルトン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)、ヒュー・カーシー(イギリス、EFエデュケーションファースト)、イバン・ソーサ(コロンビア、チームイネオス)のという8名が先行したところでようやくレースは落ち着いた。最初の2級山岳ヴェライェスで脱落していたピュアスプリンターたちや初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)はメイン集団復帰を果たしている。
タイム差2分30秒で1級山岳ヴェローニュに突入するとメイン集団の牽引役はUAEチームエミレーツからユンボ・ヴィズマにスイッチ。この2つ目のカテゴリー山岳でもレースは活発化し、登りでカウンターアタックを仕掛けたカルーゾとヨン・イサギレ(スペイン、アスタナ)、トニー・ガロパン(フランス、アージェードゥーゼール)、ユベール・デュポン(フランス、アージェードゥーゼール)が下り区間で逃げグループにジョイン。こうして12名に人数を増やした逃げグループが、1分25秒差で続く2級山岳トルク・ダルブを越えた。3つのカテゴリー山岳を先頭通過したチッコーネは山岳賞首位を揺るぎないものにしている。
この日最大の難所である1級山岳サンカルロ峠に突入するとユンボ・ヴィズマに代わってバーレーン・メリダがペースアップを開始。マリアローザのヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ)をふるい落とすとともに、ログリッチェの防御を崩したところでニバリがアタックを仕掛ける。
イタリアの期待を背負う男のペースアップに対応できたのはログリッチェ、カラパス、ミケル・ランダ(スペイン、モビスター)、ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)、ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)、ジョセフロイド・ドンブロウスキー(アメリカ、EFエデュケーションファースト)のみ。逃げグループから下がったカルーゾのペースメイクにより、先頭で逃げ続けていたチッコーネは吸収された。
頂上まで3kmを残して動いたのは、チームメイトのランダとともに精鋭グループに残ったカラパスだった。ログリッチェとニバリ、ロペスがそれぞれ追走をかけたが、カラパスは独走に持ち込むとともにリードを30秒まで広げた状態で1級山岳サンカルロ峠をクリアする。精鋭グループでは最もニバリが積極的に動いたもののライバルたちを振り切ることはできず、頂上手前で再度アタックして得意の下り区間を攻めた。
競り合いながら1級山岳サンカルロ峠を下った追走4名は一時的にカラパスの17秒後方にまで迫ったものの、逆にカラパスがリードを広げながら最後の3級山岳クールマイユールに突入。後方ではニバリ、ログリッチェ、ロペス、ランダ、マイカに、遅れていたイェーツとドンブロウスキー、シヴァコフ、カルーゾが合流。牽制状態に陥ってスピードを失った追走グループからイェーツが飛び出したものの、先頭カラパスは1分30秒以上のリードを築いた状態でフィニッシュへ。
総合でマリアローザから4分22秒遅れ(ログリッチェから1分57秒遅れ)のカラパスが少しでもリードを広げるために緩斜面を踏み続け、平均スピード32.427km/hの難関ステージを制覇。1分32秒遅れで2番手イェーツがフィニッシュに飛び込み、ボーナスタイム4秒を獲得するためにスプリントしたニバリを先頭に精鋭集団が1分54秒遅れでフィニッシュした。
「実を言うと、チームとしてあらかじめ予定していた作戦を実行に移したんだ。ミケル・ランダとともに調子の良さを感じていたので、タイミングを見計らってアタックした。全て作戦通りだった」。決して展開の"あや"ではなく、力でステージ2勝目をもぎ取ったカラパスは初めてマリアローザに袖を通した。
カラパスは前日の第13ステージの終盤にアタックを仕掛け、ログリッチェとニバリに1分19秒差をつけてフィニッシュ。そこで総合6位まで順位を上げ、さらに第4ステージに続くステージ2勝目で総合1位まで一気にジャンプアップした。「マリアローザを着るなんて信じられない。この瞬間のためにトレーニングを積んできた。まさに夢の中にいるよう」。そう語るカラパスとログリッチェの総合タイム差は7秒。カラパスは「ヴェローナまでマリアローザを守り抜きたい」と語っており、2分50秒差の総合5位に浮上したチームメイトのランダとともにこれからはログリッチェやニバリの攻撃を受ける側となる。
初山を含む最終グルペットはタイムリミット内の40分55秒遅れでフィニッシュ。1つ目の2級山岳で遅れながらもメイン集団に復帰し、続く1級山岳ではピュアスプリンターよりも前の集団に入った初山。「最初の登りで脱落した時はやばいと思いました。集団に復帰してグルペットに入ってからは昨日より余裕を持って走れた」という初山が大きな山場を越えた。
い
ジロ・デ・イタリア2019第14ステージ結果
1位 | リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター) | 4:02:23 |
2位 | サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | 0:01:32 |
3位 | ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) | 0:01:54 |
4位 | ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) | |
5位 | ミケル・ランダ(スペイン、モビスター) | |
6位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | |
7位 | パヴェル・シヴァコフ(ロシア、チームイネオス) | |
8位 | プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) | |
9位 | ジョセフロイド・ドンブロウスキー(アメリカ、EFエデュケーションファースト) | |
10位 | ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・メリダ) | 0:02:01 |
12位 | バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) | 0:04:04 |
20位 | イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) | 0:07:20 |
28位 | ヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ | |
144位 | 初山翔(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ) | 0:40:55 |
DNF | サム・オーメン(オランダ、サンウェブ) | |
DNF | エンリーコ・バルビン(イタリア、バルディアーニCSF) |
マリアローザ 個人総合成績
1位 | リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター) | 58:35:34 |
2位 | プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) | 0:00:07 |
3位 | ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) | 0:01:47 |
4位 | ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:02:10 |
5位 | ミケル・ランダ(スペイン、モビスター) | 0:02:50 |
6位 | バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) | 0:02:58 |
7位 | ヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 0:03:29 |
8位 | パヴェル・シヴァコフ(ロシア、チームイネオス) | 0:04:55 |
9位 | サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | 0:05:28 |
10位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 0:05:30 |
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 | アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) | 194pts |
2位 | パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | 183pts |
3位 | リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター) | 72pts |
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード) | 166pts |
2位 | リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター) | 64pts |
3位 | イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) | 42pts |
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 | パヴェル・シヴァコフ(ロシア、チームイネオス) | 58:40:29 |
2位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 0:00:35 |
3位 | ヴァランタン・マデュアス(フランス、グルパマFDJ) | 0:08:15 |
チーム総合成績
1位 | モビスター | 175:55:50 |
2位 | EFエデュケーションファースト | 0:27:37 |
3位 | バーレーン・メリダ | 0:31:18 |
text&photo:Kei Tsuji in Courmayeur, Italy
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