イタリア北部ロンバルディア州のマントヴァに住む薬剤師グイード・ニグレッリ氏に関するドーピング捜査が、同国のロードレース界を揺るがせている。ガゼッタ紙によると、ニグレッリと関係をもっていたとされる35人(うち選手は16人)について、イタリア当局は捜査を開始。同氏と関係していたランプレ・ファルネーゼヴィーニの選手たちに疑いの目が向けられている。

パイスバスコ第5ステージ 25km地点でバイクを降りたダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)パイスバスコ第5ステージ 25km地点でバイクを降りたダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ) photo:vueltapaisvasco.diariovasco.comイタリアのガゼッタ・デッロ・スポルト紙は、連日大きなスペースを割いて一連のドーピングスキャンダルを報じている。同紙によると、組織的なドーピング疑惑の中心人物は、薬剤師でトレーナーのグイード・ニグレッリ氏だ。

ガゼッタ紙によると、ニグレッリ氏はランプレのチームドクターに(合法の)薬物を供給されていたとされる人物で、ランプレのチームマネージャーを務めるジュゼッペ・サロンニ氏の旧友。ニグレッリ氏は違法薬物の供給を全面的に否定している。

昨年までランプレに所属していたアレッサンドロ・バッラン(イタリア、BMCレーシングチーム)昨年までランプレに所属していたアレッサンドロ・バッラン(イタリア、BMCレーシングチーム) photo:Cor Vos捜査開始のきっかけとなったのは、2008年にCERA(第3世代EPO)陽性が発覚し、後に禁止薬物使用を認めたエマヌエーレ・セッラ(イタリア)の自供内容だ。2年間に渡って捜査を続けたイタリア警察は、ニグレッリ氏と関係を持っていたとされる35人(うち選手は16人)の捜査を始めた。

捜査線上に浮かんだのは、ランプレに所属している/所属していた選手たち、そしてチームのコーチやマッサージャー。

ガゼッタ紙が公表したリストの中には、ダミアーノ・クネゴ(イタリア)やフランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア)、ミルコ・ロレンツェット(イタリア)、マヌエーレ・モーリ(イタリア)、そして昨年までランプレに所属し、現在BMCレーシングチーム所属のアレッサンドロ・バッラン(イタリア)とマウロ・サンタンブロジオ(イタリア)の名前が含まれている。

ランプレチームは急遽プレスリリースを出し、ドーピングへの関与を否定するとともに、一連の報道を行なったガゼッタ紙を批判。チームはクネゴらのレース活動を禁止していない。クネゴはブエルタ・アル・パイスバスコを第5ステージでリタイアしたが、チームは胃腸のトラブルによるものだと主張している。

一方、BMCレーシングチームは、UCI(国際自転車競技連合)の倫理規定に沿って、ドーピング疑惑が晴れるまでの間、バッランとサンタンブロジオを暫定的に出場停止に。バッランは4月11日に開催されるパリ〜ルーベを欠場することが決まっている。

また、別の捜査の一環として、イタリア警察はランプレ所属のアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)とロレンツォ・ベルヌッチ(イタリア)の家宅捜索を行なった。ペタッキの家宅捜索は問題なく終わったが、ベルヌッチの自宅からいくつかの禁止薬物が発見された。ベルヌッチは禁止薬物が家族の所有物であると主張。疑惑が晴れるまで、ランプレはベルヌッチに暫定出場停止処分を与えている。

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos