2019/01/21(月) - 09:17
機械式ディレイラーのワイヤーを無線電動で操作できる「Xシフター」の国内取扱いが開始されている。3~15速のディレイラーに対応しており、手持ちのパーツを半電動ドライブに変えることができるデバイスだ。スプロケットの各ギア一つずつ調整することが可能な点も魅力。編集部で取り付け&テストを行った。
シマノがディレイラーの電動化を実現してから10年が経過する。その間、シマノはDURA-ACEグレードだけではなくULTEGRAまでDi2化を行い、カンパニョーロはEPSをV4世代までアップデート。スラムは2社よりも遅れたものの無線というイノベーティブなシステムのeTapを開発し、FSAもWEを提げ電動コンポーネントに打って出た。
10年という長い間で各社それぞれが電動コンポの開発を行い、幅広い層のサイクリスト達に快適なシフティングを提供してきた。しかし、シマノALFINE Di2を除いた電動コンポのラインアップは、レース用として開発されただけあり上位グレードが多い。未だに高嶺の花で、手に入れたいと思ったら背伸びをしなければいけないのが現実だ。
そんな電動コンポのラインアップに風穴を開けるかのように、機械式ディレイラーを無線電動で操作できるデバイス「Xシフター」が登場した。電動コンポの場合ディレイラーにモーターを搭載しているが、Xシフターの場合は機械式ディレイラーを使い、ワイヤーの操作を電動のモーターで行うというシステムを採用している。
Xシフターは極論すればシフトワイヤーを引くだけのメカであるため、組み合わせるメーカーとモデルを選ばない。3速~15速まで対応しており、軽快車のインター3から、ローロフの内装14速ハブまで、さらにはワイヤーで操作するモデルであればいつの時代の変速機でも半電動コンポに様変わりさせることが原理上は可能だ。もちろん、フリクションレバーの時代に活躍したコンポでも使用することができる。
変速調整はスマホアプリから行うため、購入と同時にダウンロードしておく必要がある。アプリではギア段数に応じた自動セットアップに加え、0.1mmずつワイヤーを引く量を調整できるチューニングモードが備えられているため、愛車の変速機に応じた微調整が可能だ。
本体(E-LINK)はバッテリーと別体式とされており、電池を複数用意して使い回すことも可能だ。バッテリーは350mAhの容量で、microUSBで充電を行う。シフターはMinipodと呼ばれるボックス型のスイッチで、ボタン電池で駆動する。各デバイスの電池残量はアプリで確認することが可能。E-LINK、バッテリー、マウント、ボルトの合計重量は115g(実測値)、Minipodは11g(実測値)。インナーとアウターワイヤー、充電ケーブル、タイラップが付属する。価格は42,000円(税抜)。取扱はトライスポーツ。
CW編集部インプレッション
11月開催の台北ショーで展示され、話題となったXシフターが日本で展開されることとなった。早速シクロワイアードでもサンプルをお借りして、取り付けから調整、使用まで一通り行うことに。
ユーザーマニュアルを本国サイトからダウンロードし、試行錯誤しながら取付作業を開始。まずは、E-LINKを取り付けたい位置、ワイヤーの長さを決めてから作業に取り掛かると良いだろう。ある程度、固定する場所の目星がついたら、ブラケットをタイラップでフレームに締め付け、そのブラケットにE-LINKをボルトで留める。
デバイスを収める位置さえ決めてしまえば作業は難しくはない。しかし、位置決めの際に気をつけてもらいたいのは、クランクとシューズ、ホイール(スポーク)とのクリアランスだ。E-LINKはどこに装着しても支障ないのだが、何も考えずに取り付けると先述したいずれかがE-LINKに当たる。特にチェーンステーに取り付ける場合、シューズがステーに擦ってしまう人は要注意だ。タイラップを本締めするのはそれらのクリアランスを確認してから。どうかCW編集部の二の舞にはならず、スムースに作業を完了してもらいたい。
クランク、シューズ、ホイールとE-LINKが干渉しないことを確認したら、アプリを用いてのセットアップに移る。最初は「E-LINK SETUP」で作業することになる。Auto Setup(自動)とManual Setup(手動)を選べるメニューが出現するが、多くの人はManual Setupとなるだろう。何故なら2019年1月16日現在、Autoで調整できるコンポーネントが以下のモデルに限られているためだ。実際にセットアップする時は、アップデートが行われている可能性もあるため、一度確認しておいても良いだろう。
<Auto Setupに対応するコンポーネント>
スラムEagle(12速)、スラムXX1(11速)
シマノXTR(11速)、シマノAltus(9速)
シマノNexus(8速)
Manualでセットアップする際は、最大と最小ギアにチェーンが掛かるワイヤーの引き量を実際にディレイラーを動かしながら決定するため、クランクを回しギアチェンジできる環境が必要となる。メンテナンススタンドや三角スタンド、これらがなければ固定ローラー台を用意しておこう。
この作業の際に気をつけたいのは、アプリとE-LINKの交信速度が速いわけではないので、ワイヤーの引きを調整するマークを連打しすぎるとディレイラーが動きすぎてしまい、ホイールに絡む可能性があること。なので、あらかじめ変速機のロー側アジャストボルトはしっかりと調整しておいた方がよいだろう。ちなみに編集部で調整したカンパニョーロ ATHENA 11速のワイヤー引き量はトップギア「2.4」、ローギア「25.0」だった。参考までに。
この最大と最小ギアにチェーンが掛かるワイヤー引き量を決定すると、残りの9段分は自動計算を行ってくれる。自動計算を行う際に「NATURAL」か「LINER」を選ぶことができる。LINERの場合は、ワイヤーの引き量をギア段数に応じた等分のセットアップとなる。対して、NATURALはギアの歯数が大きくなるに連れて引き量も大きくなるセットだ。
マウンテンバイクのようにワイドレシオのギア構成の場合、引き量が等分だと変速が上手くいかない可能性が考えられる。今回のテストでは、比較的クロスレシオの11-28Tのギアを使用していたため、2つの設定で顕著な違いは感じ取れなかったが、どちらかというとNATURALの方がスムースなように感じた。これはディレイラーとギアの相性もあると思うので、あくまで参考程度の意見として受け取ってもらいたい。
このセットアップで十分に変速は決まるが、それ以上に調整を追い込む時は「TUNE」で行う。これは各ギアそれぞれに対してワイヤー引き量を調整することができるモードで、特定のギアにおいて変速できない場合に重宝する。さらにいえば、力技ではあるが、出先でディレイラーハンガーを曲げてしまった時なども、Xシフターのアプリで変速不良を解消することが可能となる。
また、0.1mm刻みで視覚化された調整を行えるのは非常に魅力的。工具を用意する必要もなく、普段から身の回りにあるスマホのアプリを起動するだけ。変速するポイントをデジタルな数値で認識できるため、アナログな従来の機械式変速の調整よりも作業が行いやすいと感じた。
走行時の変速性能に関しては、十分に日頃のサイクリングで活躍してくれそうなほど、しっかりとギアチェンジは決まってくれた。メンテスタンド上での変速フィールとは若干の違いは感じられたが、これは実際に走行環境で調整を追い込めば更に良い感触が得られそうだ。
ボタンの反応性は良好で、押し込んだ瞬間にE-LINKのモーターが駆動し始める。ただモーター、ワイヤー、ディレイラーの順で動いていくため、直接ディレイラー内のアクチュエーターを駆動する既存の電動変速システムに比べるとワンクッション置いた操作感となる。正直に言うとレースで使用するのであれば他の選択肢を考えたほうが良い。
Xシフターはリニアな変速速度を求めるシリアスライダー向けではないかもしれないが、機械式変速のストロークをストレスに感じる方や、ディレイラー調整を楽に行いたいサイクリング派ライダーにとっては大きなメリットをもたらしてくれる。特に筆者のように、煩わしいセッティングのストレスから開放されたい人にとっては福音となるプロダクトだ。
Xシフター Mini Pod
サイズ:13.7×4.5×2.5cm
重量:115g(E-LINK、バッテリー、マウント、ボルト)
付属品:本体、バッテリー、マウント4種類、microUSBケーブル、インナーワイヤー、アウターワイヤー、ワイヤーキャップ
価格:42,000円(税抜)
シマノがディレイラーの電動化を実現してから10年が経過する。その間、シマノはDURA-ACEグレードだけではなくULTEGRAまでDi2化を行い、カンパニョーロはEPSをV4世代までアップデート。スラムは2社よりも遅れたものの無線というイノベーティブなシステムのeTapを開発し、FSAもWEを提げ電動コンポーネントに打って出た。
10年という長い間で各社それぞれが電動コンポの開発を行い、幅広い層のサイクリスト達に快適なシフティングを提供してきた。しかし、シマノALFINE Di2を除いた電動コンポのラインアップは、レース用として開発されただけあり上位グレードが多い。未だに高嶺の花で、手に入れたいと思ったら背伸びをしなければいけないのが現実だ。
そんな電動コンポのラインアップに風穴を開けるかのように、機械式ディレイラーを無線電動で操作できるデバイス「Xシフター」が登場した。電動コンポの場合ディレイラーにモーターを搭載しているが、Xシフターの場合は機械式ディレイラーを使い、ワイヤーの操作を電動のモーターで行うというシステムを採用している。
Xシフターは極論すればシフトワイヤーを引くだけのメカであるため、組み合わせるメーカーとモデルを選ばない。3速~15速まで対応しており、軽快車のインター3から、ローロフの内装14速ハブまで、さらにはワイヤーで操作するモデルであればいつの時代の変速機でも半電動コンポに様変わりさせることが原理上は可能だ。もちろん、フリクションレバーの時代に活躍したコンポでも使用することができる。
変速調整はスマホアプリから行うため、購入と同時にダウンロードしておく必要がある。アプリではギア段数に応じた自動セットアップに加え、0.1mmずつワイヤーを引く量を調整できるチューニングモードが備えられているため、愛車の変速機に応じた微調整が可能だ。
本体(E-LINK)はバッテリーと別体式とされており、電池を複数用意して使い回すことも可能だ。バッテリーは350mAhの容量で、microUSBで充電を行う。シフターはMinipodと呼ばれるボックス型のスイッチで、ボタン電池で駆動する。各デバイスの電池残量はアプリで確認することが可能。E-LINK、バッテリー、マウント、ボルトの合計重量は115g(実測値)、Minipodは11g(実測値)。インナーとアウターワイヤー、充電ケーブル、タイラップが付属する。価格は42,000円(税抜)。取扱はトライスポーツ。
CW編集部インプレッション
11月開催の台北ショーで展示され、話題となったXシフターが日本で展開されることとなった。早速シクロワイアードでもサンプルをお借りして、取り付けから調整、使用まで一通り行うことに。
ユーザーマニュアルを本国サイトからダウンロードし、試行錯誤しながら取付作業を開始。まずは、E-LINKを取り付けたい位置、ワイヤーの長さを決めてから作業に取り掛かると良いだろう。ある程度、固定する場所の目星がついたら、ブラケットをタイラップでフレームに締め付け、そのブラケットにE-LINKをボルトで留める。
デバイスを収める位置さえ決めてしまえば作業は難しくはない。しかし、位置決めの際に気をつけてもらいたいのは、クランクとシューズ、ホイール(スポーク)とのクリアランスだ。E-LINKはどこに装着しても支障ないのだが、何も考えずに取り付けると先述したいずれかがE-LINKに当たる。特にチェーンステーに取り付ける場合、シューズがステーに擦ってしまう人は要注意だ。タイラップを本締めするのはそれらのクリアランスを確認してから。どうかCW編集部の二の舞にはならず、スムースに作業を完了してもらいたい。
クランク、シューズ、ホイールとE-LINKが干渉しないことを確認したら、アプリを用いてのセットアップに移る。最初は「E-LINK SETUP」で作業することになる。Auto Setup(自動)とManual Setup(手動)を選べるメニューが出現するが、多くの人はManual Setupとなるだろう。何故なら2019年1月16日現在、Autoで調整できるコンポーネントが以下のモデルに限られているためだ。実際にセットアップする時は、アップデートが行われている可能性もあるため、一度確認しておいても良いだろう。
<Auto Setupに対応するコンポーネント>
スラムEagle(12速)、スラムXX1(11速)
シマノXTR(11速)、シマノAltus(9速)
シマノNexus(8速)
Manualでセットアップする際は、最大と最小ギアにチェーンが掛かるワイヤーの引き量を実際にディレイラーを動かしながら決定するため、クランクを回しギアチェンジできる環境が必要となる。メンテナンススタンドや三角スタンド、これらがなければ固定ローラー台を用意しておこう。
この作業の際に気をつけたいのは、アプリとE-LINKの交信速度が速いわけではないので、ワイヤーの引きを調整するマークを連打しすぎるとディレイラーが動きすぎてしまい、ホイールに絡む可能性があること。なので、あらかじめ変速機のロー側アジャストボルトはしっかりと調整しておいた方がよいだろう。ちなみに編集部で調整したカンパニョーロ ATHENA 11速のワイヤー引き量はトップギア「2.4」、ローギア「25.0」だった。参考までに。
この最大と最小ギアにチェーンが掛かるワイヤー引き量を決定すると、残りの9段分は自動計算を行ってくれる。自動計算を行う際に「NATURAL」か「LINER」を選ぶことができる。LINERの場合は、ワイヤーの引き量をギア段数に応じた等分のセットアップとなる。対して、NATURALはギアの歯数が大きくなるに連れて引き量も大きくなるセットだ。
マウンテンバイクのようにワイドレシオのギア構成の場合、引き量が等分だと変速が上手くいかない可能性が考えられる。今回のテストでは、比較的クロスレシオの11-28Tのギアを使用していたため、2つの設定で顕著な違いは感じ取れなかったが、どちらかというとNATURALの方がスムースなように感じた。これはディレイラーとギアの相性もあると思うので、あくまで参考程度の意見として受け取ってもらいたい。
このセットアップで十分に変速は決まるが、それ以上に調整を追い込む時は「TUNE」で行う。これは各ギアそれぞれに対してワイヤー引き量を調整することができるモードで、特定のギアにおいて変速できない場合に重宝する。さらにいえば、力技ではあるが、出先でディレイラーハンガーを曲げてしまった時なども、Xシフターのアプリで変速不良を解消することが可能となる。
また、0.1mm刻みで視覚化された調整を行えるのは非常に魅力的。工具を用意する必要もなく、普段から身の回りにあるスマホのアプリを起動するだけ。変速するポイントをデジタルな数値で認識できるため、アナログな従来の機械式変速の調整よりも作業が行いやすいと感じた。
走行時の変速性能に関しては、十分に日頃のサイクリングで活躍してくれそうなほど、しっかりとギアチェンジは決まってくれた。メンテスタンド上での変速フィールとは若干の違いは感じられたが、これは実際に走行環境で調整を追い込めば更に良い感触が得られそうだ。
ボタンの反応性は良好で、押し込んだ瞬間にE-LINKのモーターが駆動し始める。ただモーター、ワイヤー、ディレイラーの順で動いていくため、直接ディレイラー内のアクチュエーターを駆動する既存の電動変速システムに比べるとワンクッション置いた操作感となる。正直に言うとレースで使用するのであれば他の選択肢を考えたほうが良い。
Xシフターはリニアな変速速度を求めるシリアスライダー向けではないかもしれないが、機械式変速のストロークをストレスに感じる方や、ディレイラー調整を楽に行いたいサイクリング派ライダーにとっては大きなメリットをもたらしてくれる。特に筆者のように、煩わしいセッティングのストレスから開放されたい人にとっては福音となるプロダクトだ。
Xシフター Mini Pod
サイズ:13.7×4.5×2.5cm
重量:115g(E-LINK、バッテリー、マウント、ボルト)
付属品:本体、バッテリー、マウント4種類、microUSBケーブル、インナーワイヤー、アウターワイヤー、ワイヤーキャップ
価格:42,000円(税抜)
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