2018/11/03(土) - 14:36
キャノンデールから満を持して登場したブランド初のエアロロード「SYSTEMSIX」をインプレッション。ディスクブレーキに最適化されたインテグレートデザイン、専用に開発されたコックピットパーツやホイールなどバイク全体のシステムで空力性能を追求したハイスピードマシンを紹介しよう。
ここ10年間に渡り軽量オールラウンドモデルのSUPERSIXシリーズをロードバイクのフラッグシップに据え、世界のレースを戦ってきたキャノンデール。リクイガスから現在のEFエデュケーションファースト・ドラパックまで続くワールドツアーのサポートチームは、いずれもSUPERSIXそしてSUPERSIX EVOをメインバイクとしてプロレースを駆けてきた。
春のクラシックレースではエンデュランスモデルのSYNAPSEもレースに投入される一方で、キャノンデールのラインアップに唯一欠けていたエアロロードのカテゴリーに今年、満を持して登場したのが「SYSTEMSIX」である。2006年にアルミとカーボンのハイブリッドフレームとしてデビューした、当時のフラッグシップバイク”SYSTEMSIX”の名が再度ラインアップに帰ってきた流れだ。
エアロロード後発ブランドとして市場にあるどのモデルよりも速い世界最速の性能を目指し、エアロダイナミクスを徹底的に追求して開発されたSYSTEMSIX。”Faster everywhere”という開発コンセプトの通り、いかなる条件下でもハイスピード走行を可能とするパフォーマンスモデルとして誕生した。高速レースを戦うトッププロはもちろんのこと、高いスピード領域をより手軽に、そしてどんなシーンでも楽しみたいサイクリストに向けて送る1台に仕上がる。
開発に当たりフレーム、フォーク、シートポスト、ステム、ハンドルバー、ホイールの6つの要素に切り分け、これらの包括的なデザインによって最高の空力性能を発揮する設計に。勾配6%までの登りならエアロ効果が有意に働き、SUPERSIX EVOよりも速く走れる性能を獲得しているという。また優れた空力特性は効率的なスピード維持を可能とし、30km/hを目安とした一般ライダーのペースで10%のパワーセーブを実現している。
コンピュータによるCFD解析と風洞実験を元にフレーム形状は煮詰められ、各所に翼断面形状の後端を切り落としたエアロチュービングを採用。ホリゾンタル基調のトップチューブやコンパクトなリア三角、前後輪に沿ったカットオフ形状やボトルが隠れるようワイドになったダウンチューブなど、エアロロードらしい造形を随所に盛り込んでいる。
またディスクブレーキ専用に最適化されたインテグレーションシステムもSYSTEMSIXの大きな特徴だ。ケーブルの完全内装化を図るため、ヘッドチューブ先端にはコラム部分と分離されたケーブル配線用のスペースを設けたユニークなデザインを採用。ハンドル内部からステム下部を通り、専用のコラムスペーサーに導かれヘッドチューブへと収納されることで、ケーブルが一切露出しないスマートでエアロなルックスを獲得している。
フレームやフォーク形状もディスクブレーキ専用に開発を行うことで、キャリパーブレーキでは実現不可だったエアロデザインを纏う。フォーククラウンを限りなく詰めるとともに、ダウンチューブにかけて流れるように繋がったchine(チャイン)と呼ばれる造形を採用することで整流効果を高めている。シートステーもよりワイドスタンスを可能とし、スムーズで効率的な風抜けを可能とした。
シートポスト、ステム、ハンドルバー、ホイールにはKNØT(ノット)と言う統一名称を与え、それぞれ空力性能の向上を図るSYSTEMSIX専用パーツとして新開発された。ケーブルの内装化にも貢献しているカーボンハンドルバーとアルミステムは、ツライチとなる一体化したようなデザインながら2ピース構造とすることでフィッティング性を向上させている。
同じくバイクシステムの一つとしてアセンブルされるホイールは64mmハイトのエアロディープリムを採用する。外幅32mm、内幅21mmという超ワイドリム設計がタイヤとの段差をなくし、あらゆるヨー角においても空気がリム面に沿って流れる理想的な気流を生み出す。さらにはリム幅が広がったことでタイヤのエアボリュームが増し快適性の向上にも一役買っている。
スルーアクスルを採用しつつもホイールの着脱をスムーズに行えるよう、片側のエンドにスリットを設けたスピードリリース機構も搭載。Hi-MODグレードの完成車にはPower2Max製のパワーメーターを標準装備した点もポイントだ(使用には要課金)。ラインアップはトップグレードのHi-MODモデルと、カーボングレードを落としたCarbonモデルの2種類。今回はHi-MODモデルのシマノDURA-ACE完成車にてテストした。
― インプレッション
「風を切って進む高速域の伸びが非常に気持ち良い1台」藤岡徹也(シルベストサイクル)
まさにエアロダイナミクスの恩恵を感じる走りを見せてくれますね。スピード維持が容易で、レースペースでも一人だけ楽ができるような、集団先頭に出ても自分だけまるでドラフティングしているかのようなイメージです。エネルギーを節約しながらも高速巡航が可能で、「ああエアロ効果がめっちゃ効いているな」と誰もが体感できる仕上がりになっています。
ボリューミーなフレームとディープリムホイールが合わさって、バイク全体の剛性感は非常に高いですね。踏み込んだ時のかかりが良く、パワーを受け止めてどこまでもスピードが伸びていくような印象です。剛性の高さ故にバネ感やしなり感はありませんが、その分リニアに進んでくれる反応性がありました。高速域からさらにもう一段階スピードを上げていけるポテンシャルを持っており、ゴールスプリントで勝ちを狙う走りに最適だと思います。
優れた空力性能によって下りでのスピードの乗りも普通のロードバイクは一味違うものがありました。オールラウンドモデルと比較すると明らかに速い速度で駆け下りることができ、今回何車種かテストした中でSYSTEMSIXだけはブレーキをかけないと曲がりきれないなと感じたほどです。スーッとスピードが伸びていく転がりの良さは低速域でも感じることができ、20~25km/hほどでもエアロ感のある走りを楽しむことができるのも特徴ですね。
見た目のゴツさとは裏腹に登りも十分にこなせる性能を持っています。もちろんアタックをかけるならより軽量なSUPERSIX EVOなどの方が秀でていますが、緩斜面など一定ペースで登るなら不足はありません。エアロロードというと車重の重さから、登りでダンシングするとすぐに失速してしまうようなイメージですが、SYSTEMSIXはそこできちんとスピードが繋がっていくような印象がありましたね。
またSUPERSIX EVOのような許容範囲の広いしなやかさは持っていないため、ハンドリングやコーナリングにおいてはやや意識してバイクコントロールしてあげる必要がありそうです。対して高速域を得意とする特性に制動性能の高いディスクブレーキは相性良し。ハンドルも握りやすいドロップ形状で、かつ下ハン部分に潰しを入れてあるのは好印象でした。手の小さなライダーでも安心した操作性を発揮できるでしょう。
標準装備のディープリムホイールは平坦で逃げやスプリントをしたいレースレディなアセンブルで、完成車そのままでハイレベルな大会を戦える仕様ですね。その中でもうちょっと軽いセミディープほどのホイールを一組持っておくと走りの幅が広がりそうです。サーキットレースや平坦基調なロングライドにはもってこいの性能で、とにかく速さを求めるライダーにぜひ乗ってもらいたい1台です。
「エアロがもたらすパワーセーブの恩恵をあらゆるライダーに」遠藤誠(GROVE港北)
圧倒的なエアロダイナミクスと剛性感が印象的な1台です。意外と低速域から早くも空気抵抗の少なさを感じるほどで、そこからスピードが上がれば上がるほど優れた空力性能がプラスに働いているのが体感できますね。空気を切り裂いて進むような鋭さを持っており、とにかく”速い”と思わせてくれる走りが大きな特徴です。
これだけのボリュームがあるフレームなので、やはり踏んだときにハイエンドモデルらしい硬さは感じますね。ホイールもかなりのディープリムですしワイド幅になっているのも効いていて、全体のパッケージで高い剛性を実現しています。ダンシングでパワーをかければひと踏み毎にグワッと伸びる加速感がありますし、ディープリムホイール特有の走行音も相まって走っていて自然と気分が上がりますね。
それでいて剛性が過剰すぎないフィーリングなのはリア三角が上手く機能しているのかなと思います。フロントトライアングルに比べ華奢なデザインで、快適性を生み出しているため特に長距離でも問題なく走り切ることができるでしょう。それだけではなく、エアロ性能強化のために工夫された各所の造形など、様々な箇所に目線をもっていくとさらにこだわりを感じられるデザインに仕上がっています。ぜひショップやイベントに足を運んで一度実車を見てもらいたいですね。
軽量バイクではないので斜度がキツい登りは流石に苦手だなとは感じますが、慣性が効くような緩い斜度なら持ち前のエアロが活きてそのまま押し切れるほどです。ですがエアロロードらしくパワーをかけて速いスピード域で走らせるのが非常に気持ち良いため踏み過ぎには注意。速度維持の性能は秀逸なので、自分で頑張らなくてもバイクが勝手に転がってくれるような、パワーセーブの恩恵を授かり楽に速く走れると最高だと思います。
身長175cmの私だとSUPERSIX EVOは52サイズを選びますが、このSYSTEMSIXだと54サイズがマッチするサイズ感でした。2車種でサイズ展開が異なるのでバイクを選ぶときには注意して欲しいですね。ケーブル内装のシステムも作業がしやすい機構となっておりメンテナンス性は悪くなさそうです。またフォーククラウンの特殊な形状によりハンドルが完全には切れないので、狭い通路などで急なUターンをする時は注意が必要です。
レースシーンであれば、いつもより速い速度域の集団にも付いていけそうなイメージで、今まで以上に積極的な走りが期待できますね。ハイペースでのローテーションにも普段より長く加われそうだなと感じます。一般的なライドにおいてはクリティカルな登りの場面はそこまで多くないと思うので、多くのシーンでメリットをもたらす1台として活躍してくれるでしょうね。
キャノンデール SYSTEMSIX Hi-MOD
フレーム:ALL-NEW SystemSix, BallisTec Hi-MOD Carbon
フォーク:ALL-NEW SystemSix, Ballistec Hi-MOD Carbon
ハンドル・ステム:Cannondale KNØT SystemBar
クランク:Cannondale HollowGram SiSL2, Power2MaxNG Eco Powermeter
ホイール:Hollowgram KNØT64
タイヤ:Vittoria Rubino Pro Speed 23c
サイズ:47, 51, 54, 56
価格:1,050,000円(税抜、Dura-Ace Di2), 790,000円(税抜、Ultegra Di2)
460,000円(税抜、フレームセット)
インプレッションライダーのプロフィール
藤岡徹也(シルベストサイクル)
大阪府箕面市にあるシルベストサイクルみのおキューズモール店で店長を務める。マトリックスやNIPPOに所属した経歴を持つ元プロロードレーサーで、ツール・ド・フクオカ優勝、ツール・ド・熊野の個人TT2位などの実績を持つ。現在は実業団レースやロングライド、トライアスロンなど幅広く自転車を嗜みスタッフとして「自転車の楽しさを伝える」ことをモットーに活動している。
CWレコメンドショップページ
シルベストサイクル ショップHP
遠藤誠(GROVE港北)
神奈川県横浜市のプロショップ、GROVE港北の店長。元々はMTB乗りとして自転車を嗜む内に現在の系列店舗スタッフとして働くように。自転車歴は10年以上でロードバイク、MTB両方に精通する豊富な知識と経験から、メカ・ポジション・乗り方まで幅広いアドバイスを提供する。”初心者にもわかりやすく”を常に心がけ、お客さんと一緒に自転車を楽しむことを重視している。
CWレコメンドショップページ
GROVE港北 ショップHP
ウェア協力:Funkier(ファンキアー)
text:Yuto.Murata
photo:Makoto.AYANO
ここ10年間に渡り軽量オールラウンドモデルのSUPERSIXシリーズをロードバイクのフラッグシップに据え、世界のレースを戦ってきたキャノンデール。リクイガスから現在のEFエデュケーションファースト・ドラパックまで続くワールドツアーのサポートチームは、いずれもSUPERSIXそしてSUPERSIX EVOをメインバイクとしてプロレースを駆けてきた。
春のクラシックレースではエンデュランスモデルのSYNAPSEもレースに投入される一方で、キャノンデールのラインアップに唯一欠けていたエアロロードのカテゴリーに今年、満を持して登場したのが「SYSTEMSIX」である。2006年にアルミとカーボンのハイブリッドフレームとしてデビューした、当時のフラッグシップバイク”SYSTEMSIX”の名が再度ラインアップに帰ってきた流れだ。
エアロロード後発ブランドとして市場にあるどのモデルよりも速い世界最速の性能を目指し、エアロダイナミクスを徹底的に追求して開発されたSYSTEMSIX。”Faster everywhere”という開発コンセプトの通り、いかなる条件下でもハイスピード走行を可能とするパフォーマンスモデルとして誕生した。高速レースを戦うトッププロはもちろんのこと、高いスピード領域をより手軽に、そしてどんなシーンでも楽しみたいサイクリストに向けて送る1台に仕上がる。
開発に当たりフレーム、フォーク、シートポスト、ステム、ハンドルバー、ホイールの6つの要素に切り分け、これらの包括的なデザインによって最高の空力性能を発揮する設計に。勾配6%までの登りならエアロ効果が有意に働き、SUPERSIX EVOよりも速く走れる性能を獲得しているという。また優れた空力特性は効率的なスピード維持を可能とし、30km/hを目安とした一般ライダーのペースで10%のパワーセーブを実現している。
コンピュータによるCFD解析と風洞実験を元にフレーム形状は煮詰められ、各所に翼断面形状の後端を切り落としたエアロチュービングを採用。ホリゾンタル基調のトップチューブやコンパクトなリア三角、前後輪に沿ったカットオフ形状やボトルが隠れるようワイドになったダウンチューブなど、エアロロードらしい造形を随所に盛り込んでいる。
またディスクブレーキ専用に最適化されたインテグレーションシステムもSYSTEMSIXの大きな特徴だ。ケーブルの完全内装化を図るため、ヘッドチューブ先端にはコラム部分と分離されたケーブル配線用のスペースを設けたユニークなデザインを採用。ハンドル内部からステム下部を通り、専用のコラムスペーサーに導かれヘッドチューブへと収納されることで、ケーブルが一切露出しないスマートでエアロなルックスを獲得している。
フレームやフォーク形状もディスクブレーキ専用に開発を行うことで、キャリパーブレーキでは実現不可だったエアロデザインを纏う。フォーククラウンを限りなく詰めるとともに、ダウンチューブにかけて流れるように繋がったchine(チャイン)と呼ばれる造形を採用することで整流効果を高めている。シートステーもよりワイドスタンスを可能とし、スムーズで効率的な風抜けを可能とした。
シートポスト、ステム、ハンドルバー、ホイールにはKNØT(ノット)と言う統一名称を与え、それぞれ空力性能の向上を図るSYSTEMSIX専用パーツとして新開発された。ケーブルの内装化にも貢献しているカーボンハンドルバーとアルミステムは、ツライチとなる一体化したようなデザインながら2ピース構造とすることでフィッティング性を向上させている。
同じくバイクシステムの一つとしてアセンブルされるホイールは64mmハイトのエアロディープリムを採用する。外幅32mm、内幅21mmという超ワイドリム設計がタイヤとの段差をなくし、あらゆるヨー角においても空気がリム面に沿って流れる理想的な気流を生み出す。さらにはリム幅が広がったことでタイヤのエアボリュームが増し快適性の向上にも一役買っている。
スルーアクスルを採用しつつもホイールの着脱をスムーズに行えるよう、片側のエンドにスリットを設けたスピードリリース機構も搭載。Hi-MODグレードの完成車にはPower2Max製のパワーメーターを標準装備した点もポイントだ(使用には要課金)。ラインアップはトップグレードのHi-MODモデルと、カーボングレードを落としたCarbonモデルの2種類。今回はHi-MODモデルのシマノDURA-ACE完成車にてテストした。
― インプレッション
「風を切って進む高速域の伸びが非常に気持ち良い1台」藤岡徹也(シルベストサイクル)
まさにエアロダイナミクスの恩恵を感じる走りを見せてくれますね。スピード維持が容易で、レースペースでも一人だけ楽ができるような、集団先頭に出ても自分だけまるでドラフティングしているかのようなイメージです。エネルギーを節約しながらも高速巡航が可能で、「ああエアロ効果がめっちゃ効いているな」と誰もが体感できる仕上がりになっています。
ボリューミーなフレームとディープリムホイールが合わさって、バイク全体の剛性感は非常に高いですね。踏み込んだ時のかかりが良く、パワーを受け止めてどこまでもスピードが伸びていくような印象です。剛性の高さ故にバネ感やしなり感はありませんが、その分リニアに進んでくれる反応性がありました。高速域からさらにもう一段階スピードを上げていけるポテンシャルを持っており、ゴールスプリントで勝ちを狙う走りに最適だと思います。
優れた空力性能によって下りでのスピードの乗りも普通のロードバイクは一味違うものがありました。オールラウンドモデルと比較すると明らかに速い速度で駆け下りることができ、今回何車種かテストした中でSYSTEMSIXだけはブレーキをかけないと曲がりきれないなと感じたほどです。スーッとスピードが伸びていく転がりの良さは低速域でも感じることができ、20~25km/hほどでもエアロ感のある走りを楽しむことができるのも特徴ですね。
見た目のゴツさとは裏腹に登りも十分にこなせる性能を持っています。もちろんアタックをかけるならより軽量なSUPERSIX EVOなどの方が秀でていますが、緩斜面など一定ペースで登るなら不足はありません。エアロロードというと車重の重さから、登りでダンシングするとすぐに失速してしまうようなイメージですが、SYSTEMSIXはそこできちんとスピードが繋がっていくような印象がありましたね。
またSUPERSIX EVOのような許容範囲の広いしなやかさは持っていないため、ハンドリングやコーナリングにおいてはやや意識してバイクコントロールしてあげる必要がありそうです。対して高速域を得意とする特性に制動性能の高いディスクブレーキは相性良し。ハンドルも握りやすいドロップ形状で、かつ下ハン部分に潰しを入れてあるのは好印象でした。手の小さなライダーでも安心した操作性を発揮できるでしょう。
標準装備のディープリムホイールは平坦で逃げやスプリントをしたいレースレディなアセンブルで、完成車そのままでハイレベルな大会を戦える仕様ですね。その中でもうちょっと軽いセミディープほどのホイールを一組持っておくと走りの幅が広がりそうです。サーキットレースや平坦基調なロングライドにはもってこいの性能で、とにかく速さを求めるライダーにぜひ乗ってもらいたい1台です。
「エアロがもたらすパワーセーブの恩恵をあらゆるライダーに」遠藤誠(GROVE港北)
圧倒的なエアロダイナミクスと剛性感が印象的な1台です。意外と低速域から早くも空気抵抗の少なさを感じるほどで、そこからスピードが上がれば上がるほど優れた空力性能がプラスに働いているのが体感できますね。空気を切り裂いて進むような鋭さを持っており、とにかく”速い”と思わせてくれる走りが大きな特徴です。
これだけのボリュームがあるフレームなので、やはり踏んだときにハイエンドモデルらしい硬さは感じますね。ホイールもかなりのディープリムですしワイド幅になっているのも効いていて、全体のパッケージで高い剛性を実現しています。ダンシングでパワーをかければひと踏み毎にグワッと伸びる加速感がありますし、ディープリムホイール特有の走行音も相まって走っていて自然と気分が上がりますね。
それでいて剛性が過剰すぎないフィーリングなのはリア三角が上手く機能しているのかなと思います。フロントトライアングルに比べ華奢なデザインで、快適性を生み出しているため特に長距離でも問題なく走り切ることができるでしょう。それだけではなく、エアロ性能強化のために工夫された各所の造形など、様々な箇所に目線をもっていくとさらにこだわりを感じられるデザインに仕上がっています。ぜひショップやイベントに足を運んで一度実車を見てもらいたいですね。
軽量バイクではないので斜度がキツい登りは流石に苦手だなとは感じますが、慣性が効くような緩い斜度なら持ち前のエアロが活きてそのまま押し切れるほどです。ですがエアロロードらしくパワーをかけて速いスピード域で走らせるのが非常に気持ち良いため踏み過ぎには注意。速度維持の性能は秀逸なので、自分で頑張らなくてもバイクが勝手に転がってくれるような、パワーセーブの恩恵を授かり楽に速く走れると最高だと思います。
身長175cmの私だとSUPERSIX EVOは52サイズを選びますが、このSYSTEMSIXだと54サイズがマッチするサイズ感でした。2車種でサイズ展開が異なるのでバイクを選ぶときには注意して欲しいですね。ケーブル内装のシステムも作業がしやすい機構となっておりメンテナンス性は悪くなさそうです。またフォーククラウンの特殊な形状によりハンドルが完全には切れないので、狭い通路などで急なUターンをする時は注意が必要です。
レースシーンであれば、いつもより速い速度域の集団にも付いていけそうなイメージで、今まで以上に積極的な走りが期待できますね。ハイペースでのローテーションにも普段より長く加われそうだなと感じます。一般的なライドにおいてはクリティカルな登りの場面はそこまで多くないと思うので、多くのシーンでメリットをもたらす1台として活躍してくれるでしょうね。
キャノンデール SYSTEMSIX Hi-MOD
フレーム:ALL-NEW SystemSix, BallisTec Hi-MOD Carbon
フォーク:ALL-NEW SystemSix, Ballistec Hi-MOD Carbon
ハンドル・ステム:Cannondale KNØT SystemBar
クランク:Cannondale HollowGram SiSL2, Power2MaxNG Eco Powermeter
ホイール:Hollowgram KNØT64
タイヤ:Vittoria Rubino Pro Speed 23c
サイズ:47, 51, 54, 56
価格:1,050,000円(税抜、Dura-Ace Di2), 790,000円(税抜、Ultegra Di2)
460,000円(税抜、フレームセット)
インプレッションライダーのプロフィール
藤岡徹也(シルベストサイクル)
大阪府箕面市にあるシルベストサイクルみのおキューズモール店で店長を務める。マトリックスやNIPPOに所属した経歴を持つ元プロロードレーサーで、ツール・ド・フクオカ優勝、ツール・ド・熊野の個人TT2位などの実績を持つ。現在は実業団レースやロングライド、トライアスロンなど幅広く自転車を嗜みスタッフとして「自転車の楽しさを伝える」ことをモットーに活動している。
CWレコメンドショップページ
シルベストサイクル ショップHP
遠藤誠(GROVE港北)
神奈川県横浜市のプロショップ、GROVE港北の店長。元々はMTB乗りとして自転車を嗜む内に現在の系列店舗スタッフとして働くように。自転車歴は10年以上でロードバイク、MTB両方に精通する豊富な知識と経験から、メカ・ポジション・乗り方まで幅広いアドバイスを提供する。”初心者にもわかりやすく”を常に心がけ、お客さんと一緒に自転車を楽しむことを重視している。
CWレコメンドショップページ
GROVE港北 ショップHP
ウェア協力:Funkier(ファンキアー)
text:Yuto.Murata
photo:Makoto.AYANO
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