3月13日、ペニエ~トゥレット・シュル・ルーの220kmで行われたパリ~ニース第6ステージは最後の1級山岳ヴァンス峠で逃げ集団からアタックを決めたシャビエル・トンド(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)が独走でゴールに飛び込んだ。

快晴に恵まれたスタート地点。4勝ジャージが並ぶ快晴に恵まれたスタート地点。4勝ジャージが並ぶ (c)A.S.O.実に8つのカテゴリー山岳が設定された第6ステージは、5つの3級、2つの2級、ひとつの1級山岳の合計8つもの峠を攻略することになる。距離が220kmと長いだけでなく、連続的にアップダウンが続く厳しい難関ステージだ。しかも峠は後半にかけて難易度がアップしてゆく。

この日最初のヴァル・ローズ峠(3級山岳)でアタックがかかり、13人の逃げができる。逃げに向いたコースに、この動きに続けとばかり総合順位の入れ替えを狙う選手たちが逃げ列車に乗ることを狙って次々とアタックを仕掛けて行く。

第2山岳ポイントのバルジョルス峠の下りで、23人の逃げ集団が形成された。メンバーは次のとおり。
繰り返すアップダウンと続くアタックで集団は長く伸びる繰り返すアップダウンと続くアタックで集団は長く伸びる (c)A.S.O.
シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)
アマエル・モワナール(フランス、コフィディス)
リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)
ティアゴ・マシャド(ポルトガル、レディオシャック)
ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ファルネーゼヴィーニ)
トニ・マルティン(ドイツ、チームHTC・コロンビア)
サンディ・カザール(フランス、フランセーズデジュー)
ミカエル・シュレル(フランス、フランセーズデジュー)
ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
ケヴィン・シールドライヤース(ベルギー、クイックステップ)
シリル・ゴティエ(フランス、Bboxブイグテレコム)
決まった22人の逃げ。しかし逃げ切れたのはひとりだ決まった22人の逃げ。しかし逃げ切れたのはひとりだ (c)CorVosディミトリ・シャンピオン(フランス、アージェードゥーゼル)
アレクサンドル・コロブネフ(ロシア、カチューシャ)
エドゥアルト・ヴォルガノフ(ロシア、カチューシャ)
マチュー・ペルジェ(フランス、ケースデパーニュ)
オスカル・ペレイロ(スペイン、アスタナ)
クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、サクソバンク)
デミトリ・フォフォノフ(フランス、アスタナ)
シャビエル・トンド(スペイン、サーヴェロテストチーム)
ロメン・シカール(スペイン、エウスカルテル)
スティーブ・クミングス(イギリス、チームスカイ)
サイモン・ゲスク(ドイツ、スキル・シマノ)
セバスティアン・テュルゴー(フランス、Bboxブイグテレコム)

一日中逃げ集団をリードし続けたトニ・マルティン(ドイツ、チームHTC・コロンビア)一日中逃げ集団をリードし続けたトニ・マルティン(ドイツ、チームHTC・コロンビア) (c)A.S.O.この逃げグループの中で総合順位14位ともっともいい位置につけるシャバネルは、この日設定された2つの中間スプリントポイントでボーナスタイムを集め、総合順位を13位に上げることに成功した。途中テュルゴーが脱落し22人になった逃げは、メイン集団に1分20秒程度の差を保って距離を重ねる。

この差は残り70kmで2分になったが、メイン集団はリクイガス、ガーミン・トランジションズ、ケースデパーニュ勢などが交代しながら先頭を牽く。

逃げ集団に入り、第3・4・5・6山岳ポイントをすべて先頭通過してポイントを荒稼ぎしたアマエル・モワナール(フランス、コフィディス)は、自ら着る山岳賞ジャージをほぼ確実なものにした。

山岳の厳しいコースに孤立するリーダージャージのコンタドール山岳の厳しいコースに孤立するリーダージャージのコンタドール (c)A.S.O.ラスト48kmはゴール地点のトゥレット・シュル・ルーの街を一度通過して、郊外の周回コースへ。この日最大の勝負どころになるであろうゴール33km手前の1級山岳ヴァンス峠(登坂距離9.7km・平均勾配6.6%)をクリアすると、大きく下ってからさらに上り返してのゴールだ。
ゴール地点は上り基調に設定されているため、上りスプリントでの勝利とボーナスタイムを狙うチーム、選手たちの駆け引きが繰り広げられることが予想された。

残り38km、ヴァンス峠へ登り始めた逃げ集団から、シャビエル・トンド(スペイン、サーヴェロテストチーム)がアタック開始!これにクネゴ、シリル・ゴティエ(フランス、Bboxブイグテレコム)が続いた。

アマエル・モワナール(フランス、コフィディス)は山岳ポイントを荒稼ぎアマエル・モワナール(フランス、コフィディス)は山岳ポイントを荒稼ぎ (c)A.S.O.協調し、いいペースで逃げる3人。しかし残り36km、峠まで2kmほどを残してトンドが軽やなダンシングでペースを上げ、クネゴとゴティエを置き去りにした。

1級山岳ヴォンス峠を単独で越えて、ダウンヒルに入るトンドとメイン集団の差は1分30秒ほど。追いつかれまいと下りでもフルペダリングを続けるトンドは、最後まで逃げ切る意志を貫き通す。

後方メイン集団は上りスプリントが得意なバルベルデでステージを狙いたいケースデパーニュ勢が前を牽く。それをコンタドールがピッタリとマークする。

シャビエル・トンド(スペイン、サーヴェロテストチーム)がアタック開始!これにダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)、シリル・ゴティエ(フランス、Bboxブイグテレコム)が続くシャビエル・トンド(スペイン、サーヴェロテストチーム)がアタック開始!これにダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)、シリル・ゴティエ(フランス、Bboxブイグテレコム)が続く (c)A.S.O.クネゴは残り14kmでメイン集団に捕まり、集団の前を行くのはトンドだけに。
残り6kmを切った時点で後続から盛んにアタックがかかるようになる。タディ・ヴァリャベッチ(スロベニア、アージェードゥーゼル)、トマ・ヴォクレール(フランス、Bboxブイグテレコム)、シャヴァネルがアタック! それに イェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)も続く。リーダージャージのコンタドールは安定した走りで後方に控えるが、チームメイトは盛んになる動きに対応できない状況に。

ゴールまでの上りに入り、苦しみながらも諦めなかったトンド。残り1kmのフラムルージュを通過したとき、差は15秒だった。そしてゴールまで逃げ切った。
トンドは両手を広げ、投げキッスしながら逃げ切った自らを祝福する。
諦めずに逃げ続けたシャビエル・トンド(スペイン、サーヴェロテストチーム)諦めずに逃げ続けたシャビエル・トンド(スペイン、サーヴェロテストチーム) (c)A.S.O.
トンドに続くこと5秒、コーナーを抜け立ち上がってのスプリントで集団の頭をとったのはバルベルデ。3位に続いたのはマイヨヴェールを着たサガン。
バルベルデはステージ勝利こそ逃したが、6秒のボーナスタイムを得てコンタドールとのタイム差を14秒まで縮めることに成功した。

勝利したスペイン人のトンドは1978年生まれの31歳。2003年にプロ入りし、パテルニナ、レラックス、アンダルシア・カハスールなどスペインチームを経て今季からサーヴェロテストチーム入り。
タイムトライアルとヒルクライムを得意とし、これまでプロ8勝を挙げている経験豊富な選手だが、スペイン以外のレースでは勝ったことがなかった。もちろんこの勝利がキャリア最高の勝利になる。チームではカルロス・サストレのグランツールでのアシスト役を期待されている。

2位はバルベルデ、3位はサガン。トンドを逃がしていなければより成功だったが2位はバルベルデ、3位はサガン。トンドを逃がしていなければより成功だったが (c)CorVosトンドは言う「昨日のステージではミスを犯し、ホイール交換をしなくてはならない不運に見舞われて2分30秒を失った。そのことで逃げ集団にいることが許されたんだ。今日は上りでとても調子が良かった。クネゴはとても速い選手だから、彼を待つことはしたくなかった。
最後の僕のリードは15秒ほどで、本当に困難な状況だった。しかしけっきょくは数秒差で逃げきることができた。信じられないよ。サーヴェロに加入して最初の年で、これが僕のプロ10勝目にあたる。過去は小さなチームでだけ走ってきた。僕にとって今までで最大のレースで、最高の勝利を手にいれたよ」。


マイヨジョーヌを含む4勝ジャージ保持者は変わらず。そして最終日は今年もニースを発着する119kmの名物山岳コースが待っている。1級山岳ポルト峠、1級ラ・トゥルビー、1級山岳エズ峠の3つの難関山岳はいったいどんなドラマを見せてくれるのだろう?
キャリア最高の勝利を挙げたシャビエル・トンド(スペイン、サーヴェロテストチーム)キャリア最高の勝利を挙げたシャビエル・トンド(スペイン、サーヴェロテストチーム) (c)A.S.O.













パリ~ニース2010第6ステージ結果
1位 シャビエル・トンド(スペイン、サーヴェロテストチーム)   5h01'39"
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケスデパーニュ)      +5"
3位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス)
4位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)
5位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
6位 レオナルド・ドゥケ(コロンビア、コフィディス)
7位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケスデパーニュ)
8位 クリストフ・リブロン(フランス、アージェードゥーゼル)
9位 レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)
10位 ダニエーレ・リーギ(イタリア、ランプレ・ファルネーゼヴィーニ)

個人総合成績
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)       25h43'24"
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)    +14"
3位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)      +25"
4位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)    +26"
5位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)+29"
6位 イェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)         +34"
7位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)        +36"
8位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・ドイモ)      +38"
9位 デーヴィット・ミラー(イギリス、ガーミン・トランジションズ) +1'02"
10位 レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)        +1'06"

ポイント賞
ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス)

山岳賞
アマエル・モワナール(フランス、コフィディス)

新人賞
ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)

チーム総合成績
ケースデパーニュ

text:Makoto.AYANO
photo:Cor Vos, A.S.O.

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