2010/03/06(土) - 18:07
3月6日、頂上ゴールが設定された超級山岳ゲンティン・ハイランドで、ホセ・ルハノ(ベネズエラ、ISD・ネーリ)が本領を発揮した。集団から飛び出した「小さな巨人」は、後続を2分以上引き離す圧倒的な走りでステージ優勝。総合争いでも断トツトップに立ち、総合優勝に王手をかけた。
ランカウイ名物ゲンティン・ハイランドにゴールする第6ステージ。他のステージに大きな山岳が設定されていないため、総合争いはこの最終日前日のゲンティンで全て決すると言っていい。
標高1679mに作られた高原リゾート・ゲンティン・ハイランドに至る上りは、ヨーロッパにもその名を轟かすカテゴリー超級の難関山岳。ステージ全長は102kmと最短だが、その難易度は飛び抜けて高い。登坂距離が20km近いこの上りが、今年の総合優勝者を選び出す。
レースは序盤からアタックが繰り返され、32km地点でシルヴェール・アッカーマン(スイス、フォアアールベルク・コラテック)が単独でエスケープを開始。しかしISD・ネーリがコントロールするメイン集団は、アッカーマンのリードを30秒以内に抑え込んだ。
ポイント賞ジャージを着る前日のステージ優勝者アヌアル・マナン(マレーシア、クムサン・ジンセン・アジア)は、序盤のスプリントポイントで積極的に動いてポイント加算。ポイント賞争いにおけるマイケル・マシューズ(オーストラリア、チームジェイコ・スキンズ)との差を11ポイントまで広げることに成功した。
結局アッカーマンは61km地点で吸収され、集団はISD・ネーリが率いたままゲンティン・ハイランドの上りに突入。第2ステージ以降リーダージャージを着続けていたトビアス・エルラー(ドイツ、タブリス・ペトロケミカル)は直ぐさま集団から脱落した。
上りの序盤で攻撃に出たのは、身長162cmのピュアクライマー・ルハノ。ルハノのアタックに反応したのは、山岳賞ジャージを着るピーター・マクドナルド(オーストラリア、ドラパック・ポルシェ)やガーデル・ミズバニ(イラン、タブリス・ペトロケミカル)、ゴン・ヒュソク(韓国、ソウルサイクリング)ら5名のみ。早くも集団は崩壊した。
ルハノのハイペースに先頭グループは徐々に人数を減らし、最後まで食らいついたホセイン・アスカリ(イラン、タブリス・ペトロケミカル)もゴール10km手前で脱落。ルハノが単独でゲンティンを駆け上がるその後方では、ペースを崩さず上り続けたゴンがアスカリを抜いて2番手に。
結局ルハノは最後までハイペースを崩さず、後続を2分以上引き離してゴール。セッレイタリア時代の2005年ジロ・デ・イタリアでステージ優勝を飾るとともに総合3位&山岳賞を獲得したルハノが、ランカウイ初制覇に王手をかけた。
2位にはイラン勢でもカザフスタン勢でもなく、韓国の若きヒルクライマー、ゴンが入った。ステージ上位10名がほぼそのまま総合10位を独占する結果に。
実は今から5年前、2005年大会のゲンティンステージでルハノは苦い想いを経験している。当時もルハノは上りで積極的にアタックを仕掛けたが、最後までライアン・コックス(南アフリカ、当時バルロワールド)を振るい落とすことが出来ず、スプリント一騎打ちで敗れて2位に。コックスとの総合18秒差を最後まで埋めることが出来ないまま、総合2位でランカウイを終えていた。
今回はまさに2005年大会のリベンジ達成。今年ISD・ネーリに移籍したルハノはジロ・デ・イタリア出場を目指しており、出場すれば総合上位に絡む可能性は高い。特に今年のジロは山岳の厳しさが例年以上であり、ルハノ向きのコースであると言える。
山岳賞ジャージを着るマクドナルドはステージ4位に入り、12ポイントを獲得して合計25ポイントに。しかしステージ優勝を飾った(超級山岳を先頭で通過した)ルハノは一気に25ポイントを荒稼ぎ。山岳賞トップの座は規定によりルハノに移った。
ルハノがリーダージャージを獲得したため、マクドナルドは山岳賞ジャージを着て最終ステージを走る。最終ステージには2つのカテゴリー山岳が設定されており、逆転のチャンスはまだ残されている。何としてもマクドナルドはジャージを自分のものにしたいところだ。
ルハノが下馬評通りの走りを見せたその一方で、この日のサプライズは、韓国のゴンがステージ2位に入ったことだろう。ゴンは1986年生まれの24歳で、2008年から2年連続TOJ(ツアー・オブ・ジャパン)に出場。2008年大会の富士山ステージ個人タイムトライアルで2位、総合7位。昨年再び富士山ステージで2位に入り、総合でアジア人最高位の2位に入っている。今回のゲンティン2位という結果で、世界に通用するヒルクライマーであることを今一度見せつけた。当然アジアンライダー賞トップだ。
日本勢は鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム)が31位、別府匠(愛三工業レーシングチーム)が32位。最終ステージでの活躍が期待される西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)は71位でゲンティンを上り終えた。
いよいよランカウイは翌第7ステージで完結する。最後は首都クアラルンプールにゴールする133.7km。フラットな11kmの市街地サーキットを6周してエンディングを迎える。最後はもちろん集団スプリントに持ち込まれる可能性が高い。
レース展開はレース公式サイトより。
ツール・ド・ランカウイ2010第6ステージ結果
1位 ホセ・ルハノ(ベネズエラ、ISD・ネーリ) 3h04'21"
2位 ゴン・ヒュソク(韓国、ソウルサイクリング) +2'09"
3位 ホセイン・アスカリ(イラン、タブリス・ペトロケミカル) +2'36"
4位 ピーター・マクドナルド(オーストラリア、ドラパック・ポルシェ) +3'22"
5位 アミール・ザルガリ(イラン、アサド大学チーム)
6位 アレクサンドル・シュシェモイン(カザフスタン、カザフスタンチーム) +4'27"
7位 マティアス・ブランドル(オーストリア、フットオン・セルヴェット) +4'52"
8位 マルクス・アイベッガー(オーストリア、フットオン・セルヴェット)
9位 ガーデル・ミズバニ(イラン、タブリス・ペトロケミカル) +5'02"
10位 アハド・カゼミ(イラン、タブリス・ペトロケミカル) +5'36"
31位 鈴木謙一(日本、愛三工業レーシングチーム) +9'15"
32位 別府匠(日本、愛三工業レーシングチーム) +9'54"
63位 品川真寛(日本、愛三工業レーシングチーム) +17'00"
65位 綾部勇成(日本、愛三工業レーシングチーム) +17'09"
71位 西谷泰治(日本、愛三工業レーシングチーム) +19'02"
87位 五十嵐丈士(日本、クムサン・ジンセン・アジア) +21'08"
99位 盛一大(日本、愛三工業レーシングチーム) +25'26"
個人総合成績
1位 ホセ・ルハノ(ベネズエラ、ISD・ネーリ) 21h06'58"
2位 ゴン・ヒュソク(韓国、ソウルサイクリング) +2'07"
3位 ホセイン・アスカリ(イラン、タブリス・ペトロケミカル) +2'42"
4位 ピーター・マクドナルド(オーストラリア、ドラパック・ポルシェ) +3'21"
5位 アミール・ザルガリ(イラン、アサド大学チーム) +3'24"
6位 アレクサンドル・シュシェモイン(カザフスタン、カザフスタンチーム) +4'32"
7位 マルクス・アイベッガー(オーストリア、フットオン・セルヴェット) +4'54"
8位 マティアス・ブランドル(オーストリア、フットオン・セルヴェット) +4'58"
9位 ガーデル・ミズバニ(イラン、タブリス・ペトロケミカル) +5'12"
10位 アハド・カゼミ(イラン、タブリス・ペトロケミカル) +5'46"
32位 別府匠(日本、愛三工業レーシングチーム) +10'04"
38位 鈴木謙一(日本、愛三工業レーシングチーム) +11'16"
62位 品川真寛(日本、愛三工業レーシングチーム) +17'10"
63位 綾部勇成(日本、愛三工業レーシングチーム) +17'11"
69位 西谷泰治(日本、愛三工業レーシングチーム) +18'54"
86位 五十嵐丈士(日本、クムサン・ジンセン・アジア) +21'18"
96位 盛一大(日本、愛三工業レーシングチーム) +25'28"
アジアンライダー賞
ゴン・ヒュソク(韓国、ソウルサイクリング)
ポイント賞
アヌアル・マナン(マレーシア、クムサン・ジンセン・アジア)
山岳賞
ホセ・ルハノ(ベネズエラ、ISD・ネーリ)
チーム総合成績
タブリス・ペトロケミカル
アジアチーム総合成績
タブリス・ペトロケミカル
text:Kei Tsuji
photo:Yufta Omata, www.ltdl.com.my
ランカウイ名物ゲンティン・ハイランドにゴールする第6ステージ。他のステージに大きな山岳が設定されていないため、総合争いはこの最終日前日のゲンティンで全て決すると言っていい。
標高1679mに作られた高原リゾート・ゲンティン・ハイランドに至る上りは、ヨーロッパにもその名を轟かすカテゴリー超級の難関山岳。ステージ全長は102kmと最短だが、その難易度は飛び抜けて高い。登坂距離が20km近いこの上りが、今年の総合優勝者を選び出す。
レースは序盤からアタックが繰り返され、32km地点でシルヴェール・アッカーマン(スイス、フォアアールベルク・コラテック)が単独でエスケープを開始。しかしISD・ネーリがコントロールするメイン集団は、アッカーマンのリードを30秒以内に抑え込んだ。
ポイント賞ジャージを着る前日のステージ優勝者アヌアル・マナン(マレーシア、クムサン・ジンセン・アジア)は、序盤のスプリントポイントで積極的に動いてポイント加算。ポイント賞争いにおけるマイケル・マシューズ(オーストラリア、チームジェイコ・スキンズ)との差を11ポイントまで広げることに成功した。
結局アッカーマンは61km地点で吸収され、集団はISD・ネーリが率いたままゲンティン・ハイランドの上りに突入。第2ステージ以降リーダージャージを着続けていたトビアス・エルラー(ドイツ、タブリス・ペトロケミカル)は直ぐさま集団から脱落した。
上りの序盤で攻撃に出たのは、身長162cmのピュアクライマー・ルハノ。ルハノのアタックに反応したのは、山岳賞ジャージを着るピーター・マクドナルド(オーストラリア、ドラパック・ポルシェ)やガーデル・ミズバニ(イラン、タブリス・ペトロケミカル)、ゴン・ヒュソク(韓国、ソウルサイクリング)ら5名のみ。早くも集団は崩壊した。
ルハノのハイペースに先頭グループは徐々に人数を減らし、最後まで食らいついたホセイン・アスカリ(イラン、タブリス・ペトロケミカル)もゴール10km手前で脱落。ルハノが単独でゲンティンを駆け上がるその後方では、ペースを崩さず上り続けたゴンがアスカリを抜いて2番手に。
結局ルハノは最後までハイペースを崩さず、後続を2分以上引き離してゴール。セッレイタリア時代の2005年ジロ・デ・イタリアでステージ優勝を飾るとともに総合3位&山岳賞を獲得したルハノが、ランカウイ初制覇に王手をかけた。
2位にはイラン勢でもカザフスタン勢でもなく、韓国の若きヒルクライマー、ゴンが入った。ステージ上位10名がほぼそのまま総合10位を独占する結果に。
実は今から5年前、2005年大会のゲンティンステージでルハノは苦い想いを経験している。当時もルハノは上りで積極的にアタックを仕掛けたが、最後までライアン・コックス(南アフリカ、当時バルロワールド)を振るい落とすことが出来ず、スプリント一騎打ちで敗れて2位に。コックスとの総合18秒差を最後まで埋めることが出来ないまま、総合2位でランカウイを終えていた。
今回はまさに2005年大会のリベンジ達成。今年ISD・ネーリに移籍したルハノはジロ・デ・イタリア出場を目指しており、出場すれば総合上位に絡む可能性は高い。特に今年のジロは山岳の厳しさが例年以上であり、ルハノ向きのコースであると言える。
山岳賞ジャージを着るマクドナルドはステージ4位に入り、12ポイントを獲得して合計25ポイントに。しかしステージ優勝を飾った(超級山岳を先頭で通過した)ルハノは一気に25ポイントを荒稼ぎ。山岳賞トップの座は規定によりルハノに移った。
ルハノがリーダージャージを獲得したため、マクドナルドは山岳賞ジャージを着て最終ステージを走る。最終ステージには2つのカテゴリー山岳が設定されており、逆転のチャンスはまだ残されている。何としてもマクドナルドはジャージを自分のものにしたいところだ。
ルハノが下馬評通りの走りを見せたその一方で、この日のサプライズは、韓国のゴンがステージ2位に入ったことだろう。ゴンは1986年生まれの24歳で、2008年から2年連続TOJ(ツアー・オブ・ジャパン)に出場。2008年大会の富士山ステージ個人タイムトライアルで2位、総合7位。昨年再び富士山ステージで2位に入り、総合でアジア人最高位の2位に入っている。今回のゲンティン2位という結果で、世界に通用するヒルクライマーであることを今一度見せつけた。当然アジアンライダー賞トップだ。
日本勢は鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム)が31位、別府匠(愛三工業レーシングチーム)が32位。最終ステージでの活躍が期待される西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)は71位でゲンティンを上り終えた。
いよいよランカウイは翌第7ステージで完結する。最後は首都クアラルンプールにゴールする133.7km。フラットな11kmの市街地サーキットを6周してエンディングを迎える。最後はもちろん集団スプリントに持ち込まれる可能性が高い。
レース展開はレース公式サイトより。
ツール・ド・ランカウイ2010第6ステージ結果
1位 ホセ・ルハノ(ベネズエラ、ISD・ネーリ) 3h04'21"
2位 ゴン・ヒュソク(韓国、ソウルサイクリング) +2'09"
3位 ホセイン・アスカリ(イラン、タブリス・ペトロケミカル) +2'36"
4位 ピーター・マクドナルド(オーストラリア、ドラパック・ポルシェ) +3'22"
5位 アミール・ザルガリ(イラン、アサド大学チーム)
6位 アレクサンドル・シュシェモイン(カザフスタン、カザフスタンチーム) +4'27"
7位 マティアス・ブランドル(オーストリア、フットオン・セルヴェット) +4'52"
8位 マルクス・アイベッガー(オーストリア、フットオン・セルヴェット)
9位 ガーデル・ミズバニ(イラン、タブリス・ペトロケミカル) +5'02"
10位 アハド・カゼミ(イラン、タブリス・ペトロケミカル) +5'36"
31位 鈴木謙一(日本、愛三工業レーシングチーム) +9'15"
32位 別府匠(日本、愛三工業レーシングチーム) +9'54"
63位 品川真寛(日本、愛三工業レーシングチーム) +17'00"
65位 綾部勇成(日本、愛三工業レーシングチーム) +17'09"
71位 西谷泰治(日本、愛三工業レーシングチーム) +19'02"
87位 五十嵐丈士(日本、クムサン・ジンセン・アジア) +21'08"
99位 盛一大(日本、愛三工業レーシングチーム) +25'26"
個人総合成績
1位 ホセ・ルハノ(ベネズエラ、ISD・ネーリ) 21h06'58"
2位 ゴン・ヒュソク(韓国、ソウルサイクリング) +2'07"
3位 ホセイン・アスカリ(イラン、タブリス・ペトロケミカル) +2'42"
4位 ピーター・マクドナルド(オーストラリア、ドラパック・ポルシェ) +3'21"
5位 アミール・ザルガリ(イラン、アサド大学チーム) +3'24"
6位 アレクサンドル・シュシェモイン(カザフスタン、カザフスタンチーム) +4'32"
7位 マルクス・アイベッガー(オーストリア、フットオン・セルヴェット) +4'54"
8位 マティアス・ブランドル(オーストリア、フットオン・セルヴェット) +4'58"
9位 ガーデル・ミズバニ(イラン、タブリス・ペトロケミカル) +5'12"
10位 アハド・カゼミ(イラン、タブリス・ペトロケミカル) +5'46"
32位 別府匠(日本、愛三工業レーシングチーム) +10'04"
38位 鈴木謙一(日本、愛三工業レーシングチーム) +11'16"
62位 品川真寛(日本、愛三工業レーシングチーム) +17'10"
63位 綾部勇成(日本、愛三工業レーシングチーム) +17'11"
69位 西谷泰治(日本、愛三工業レーシングチーム) +18'54"
86位 五十嵐丈士(日本、クムサン・ジンセン・アジア) +21'18"
96位 盛一大(日本、愛三工業レーシングチーム) +25'28"
アジアンライダー賞
ゴン・ヒュソク(韓国、ソウルサイクリング)
ポイント賞
アヌアル・マナン(マレーシア、クムサン・ジンセン・アジア)
山岳賞
ホセ・ルハノ(ベネズエラ、ISD・ネーリ)
チーム総合成績
タブリス・ペトロケミカル
アジアチーム総合成績
タブリス・ペトロケミカル
text:Kei Tsuji
photo:Yufta Omata, www.ltdl.com.my
フォトギャラリー