2010/03/07(日) - 09:50
最後のアルティジャーノ(職人)と評される、"生ける伝説"的フレームビルダー、ウーゴ・デローザが起ち上げたデローザは、1953年の創業時から現在に至るまで、常にレーシングブランドとして一級の評価を得てきた。
イタリアはミラノ近郊に工房を構えるデローザ。現在は3人の息子であるダニーロ、ドリアーノ、クリスティアーノが主となり工房を切り盛りしている。しかしウーゴは今でも現場に立ち、暖かくも鋭いまなざしで自社内でフレームが生産される様子を見守っている。
ウーゴのノウハウも含めて、新興ブランドにはない伝統と最新の技術を用いてバイク作りが行われている。その誉れ高い名声とはウラハラに小さな規模の工房ながら、従業員も含めて、心の通うファミリーが一丸となって作り上げているのが現在のデローザだ。
デローザはスチール、アルミ、チタン、カーボンとほぼすべての素材を扱い、そのラインナップは広いが、現在の主軸に立てるのはやはりレーシング素材の主流たるカーボンだ。
2010 年のデローザのコレクションは実に魅力的だ。キングシリーズに「RS」が追加され、さらに、アルミモデルの名機と呼ばれた「メラク」がフルカーボンになって復活。そして、アイドルがフルモデルチェンジを受けた。既存のネオプロ、キング3、アバントを含め、多彩なカーボンフレームのラインナップを誇っている。
2007年に処女作が発表されたアイドルだが、発表当初はフラッグシップモデルのキングを差し置き、イタリアのコンチネンタルプロチーム、アックア・エ・サポーネでプロ選手に供給されたほどの性能を誇った。そして2010年新たなるスペックを纏い、新生アイドルとして生まれ変わった。
先代モデルが全体的にトラディショナルでスマートな雰囲気を醸し出していたのに対して、今回の新生アイドルは非常にアグレッシブなデザインで、見るからに力強く、骨太なイメージを与える。各部分をつぶさに見ていけば、それがイメージだけではなく、導入されたオーバーサイズ規格がもたらした印象であることが分かる。
フロントフォークも昔ながらのベンドフォークから専用のストレートブレードに変更。ワンポイントファイブのヘッドパーツ下部に引けを取らないほどの重厚さ。そして各部の設計に劣らないほどインパクトのある極太四角形ダウンチューブとトップチューブ。一部のメーカーが取り入れつつある最新のチューブ形状だ。
ヘッドは下ワンにワンポイントファイブサイズを導入したテーパーヘッドチューブだ。それを受け止めるダウンチューブを辿り、BB部分に至ると、ここもBB30という既存の規格よりもオーバーサイズ化した部品が待ちかまえる。剛性の塊という表現は、おそらく間違ってはいないだろう。
前三角も特徴的なら、後ろ三角もまた同じ。インテグラルシートポストに解け合っていくようなシートステーは、塗装による錯覚ではない。実際に繋がっていて、なだらかな曲線を描いているのだ。そしてダウンチューブも通常のバイクとは違い、トップチューブ側に弓なりになっている。今流行のアーチデザインとは逆ベクトルの弧を描く、個性溢れるデザインを取り入れている。
デローザにおいてインテグラルシートポストは、先代のアイドルで初めて導入されたが、その基本構造は新作にも引き継がれている。しかしチューブ形状はエアロ形状ではなく、オーソドックスなラウンド形状だ。ここは快適性を重視した気配がある。
またケーブル処理も再び流行しつつある内蔵式を採用し、ケーブル類が存在感のあるフレームシルエットを邪魔しないようになっている。フレームの製作方法は先代を引き継ぎ、3つの部材を組み合わせるトリプルモノコック製法を採用。機能と生産性を両立している。
はっきり言って先代アイドルの面影はまったくない。それほどまでにダイナミックで剛性を重視したという設計意図が明確に伝わってくるモデルチェンジだ。いや、ただのモデルチェンジではない。旧規格からの完全なる脱却と言ってもいい。最新スペックを完全に押さえたバイクになっている。
それではインプレッションに移ろう。この非常なるボリューム感とフォルムをもつバイクを、2人のテスターはどう評価したのだろうか?
― インプレッション
「大人のサイクリストに似合うユーティリティバイク」 佐藤 成彦(SPACE BIKES)
そのあまりに特徴的なビジュアルからはあまりキビキビと走りそうな感じを受けなかったのですが、その予想をいい意味で裏切ってくれる俊敏なバイクでした。
走りの性格的には「純粋なロードレーサー」という感じで、走行性能は非常に高いレベルにあります。
私はかつてアルミフレームだった頃のメラクなどにも乗っていたので、そのデローザ独特の乗り味を覚えているのですが、その当時と変わらず、なんの違和感もなく乗ることができました。「まさにデローザだな」と分かるほどの共通の乗りやすさが、このアイドルにも確かに備わっていますね。
圧倒的なボリュームを持つBBシェルの形状は、通常のネジ切りタイプではなく、ダイレクトにクランクをセットできるタイプを採用。これはいくつかのメーカーが採用していることからも、最近のトレンドとなっています。
この種のBB構造の狙いとしては、ハンガー周りの剛性を高めるための構造だと思うのですが、かといってペダルを踏んでみると硬すぎるような嫌な感覚がなく、いい意味での硬さを感じられる適度な剛性感に仕上げられています。
したがって、嫌なたわみもなく、しっかりとパワーをかけることができ、安定した走りができるフレーム形状と言えます。
極太のフロントフォークはごつい見た目の通りで、ヘッドパーツの下ワンも大型に設計されているので、非常にしっかりしていて安心感があるハンドリングを演出してくれます。そして、フォークとフレームのマッチング、フロントとバックセクションの剛性バランスもいいので、ダンシングなどでパワーをかけて走るような場合でも、前後が別々の動きをすることがなく、スムーズに走ることができます。
フレームは柔らかいという感覚はないのですが、それにしては振動吸収性も十分なレベルにあるので、レースバイクのように速く走らせることもできるし、ロングライドをゆっくり走らせても楽しめる汎用性の高いバイクに仕上げられています。フレーム形状の好みは分かれるところだと思いますが、特徴的なフォルムやデザインは所有欲も十二分に満たしてくれるバイクといえるでしょう。
価格がちょっと高めなので、40歳を過ぎたあたりの「いいオトナのライダー」が乗るとぴったりだと思います。個人的にはファーストインプレッションでルックスにちょっと違和感を覚えたのですが、乗ってしまうとそれを忘れさせてしまうほど良く、「これはこれでアリかなぁ」、と妙に納得。決してデザインだけで勝負しているバイクではなく、いい走りが伴っているんです。この形状でありながらそう思わせてしまうのも、デローザの技術の凄いところかもしれませんね。
「レーシーだけど、どんな使い方でも受け止めてくれる懐の深い性能」 鈴木 祐一(Rise Ride)
フレームがとても特徴的なフォルムをしているので、その先入観でエモーショナルな乗り味を想像してしまいます。でも、実際に乗ってみると、「エアロ性能が高い」とか「超軽量」みたいな、どこか傑出したキャラクターがあるわけでもなく、極めてオーソドックスなロードレーサーという性能が実現されています。
と、こんなことを言うと「フツーで退屈なバイク」と聞こえるかもしれませんが、ゆっくり走るロングライドでも、ガンガン走るレース的な走りでも、どんな使い方でも受け止めてくれる、器の深い性能が備わっているので、とっても扱いやすいモデルだと思います。
フレーム剛性は、乗り心地を重視した他のモデルのように特別柔らかいわけではありません。特にオーバーサイズのBBまわりを中心に、ボリューム感の高いフレーワークによってしっかりとした剛性感があるので、ペダリングトルクをガッチリ受け止めてくれます。
大きなギアでパワーをかけた時でもしっかりトルクが伝わるし、軽めのギヤで踏んでもパワーを余すことなく後輪に伝える感覚に優れているので、どんなシーンでもバイクが前に進もうとする力が強い。
ボリューム感あるフロントフォークとオーバーサイズのヘッドチューブのおかげか、フロント回りはとてもしっかりしているので、バイクコントロールがしやすく、ダウンヒルはとても速い。どんな条件でもライディングを心底楽しむことができます。
以前、デローザのクロモリフレームに乗っていたことがあるのですが、このアイドルにもそれに通じるフィーリングを感じました。特に40km/h以上の高速域になるといいですね。スピードを35km/hぐらいまで上げていって、さらにそこからもう一段上げて40km/h以上にしようとすると「スッ」と速度が伸びます。こうした高速域にかけての性能がいいと、レースではアドバンテージになりますね。もちろん下りが速い。
やはりデローザはイタリアンブランドの代表格ということで、「レースを知るイタリア人が、レースで性能を発揮させるために造っている」ということが分かります。
たとえ時代が変わって素材やフレーム形状が変わっても、ロードレースに必要な性能は変わらずしっかり受け継いでいるというのがデローザらしいですね。きっと自転車レースの真髄を知るイタリア人デザイナーのこだわりによって、デローザらしいフィーリングが再現されているんだろうなぁ。
ひとつ気になるのは、デローザの現在の車種ラインナップを見ると、アイドルの位置づけがちょっと分かりづらいことでしょうか。レースなら「キング3」シリーズがある。そして「ネオプロ」は乗り心地に優れているので、ロングライドやファストラン的な使い方に適している。
アイドルはレーシングな性格が強いので、まったりと走らせるツーリング的な使い方よりも、高速巡航する方が楽しいバイクです。しかしレースだとキングがあるし、ロングライドならネオプロがある。さしずめアイドルは「高速ツーリング向きグランツーリスモバイク」といった感じになるのでしょうか?
ともかく、非常に懐の深い性能を持ったバイクなので、どんな用途であれユーザーなりの使い方ができるバイクだと思いますが。
デローザidol
サイズ(AF) 57・59・61.5・64・67・69
カラー Red BlackGreyMatt WhiteSilver
フレーム価格 ¥418,950(本体価格 ¥399,000)
完成車参考価格 ¥1,178,000(本体価格 ¥1,122,000)Record 11v/Bora one wheels
佐藤 成彦(SPACE BIKES)
千葉県松戸市の「バイクショップ・スペース」のオーナー。身長179cm、体重64kg。実業団のBR-1クラスを走る現役のレーサーでもあり、近所に住んでいるシマノレーシングの鈴木真理選手と共にトレーニングをこなすほどの実力を有している。2009年の戦歴は全日本実業団BR1クラス3位、実業団富士SW BR1クラス2位など。ハードなロードレースで自らが試して得た実戦的なパーツ選び、ポジションのアドバイスに定評がある。
SPACE BIKES
鈴木 祐一(Rise Ride)
サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストン MTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。各種レースにも参戦中。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライド
ウェア協力:Santini, Sportful(日直商会)
text&edit :Tsukasa.Yoshimoto
photo:Makoto.AYANO
イタリアはミラノ近郊に工房を構えるデローザ。現在は3人の息子であるダニーロ、ドリアーノ、クリスティアーノが主となり工房を切り盛りしている。しかしウーゴは今でも現場に立ち、暖かくも鋭いまなざしで自社内でフレームが生産される様子を見守っている。
ウーゴのノウハウも含めて、新興ブランドにはない伝統と最新の技術を用いてバイク作りが行われている。その誉れ高い名声とはウラハラに小さな規模の工房ながら、従業員も含めて、心の通うファミリーが一丸となって作り上げているのが現在のデローザだ。
デローザはスチール、アルミ、チタン、カーボンとほぼすべての素材を扱い、そのラインナップは広いが、現在の主軸に立てるのはやはりレーシング素材の主流たるカーボンだ。
2010 年のデローザのコレクションは実に魅力的だ。キングシリーズに「RS」が追加され、さらに、アルミモデルの名機と呼ばれた「メラク」がフルカーボンになって復活。そして、アイドルがフルモデルチェンジを受けた。既存のネオプロ、キング3、アバントを含め、多彩なカーボンフレームのラインナップを誇っている。
2007年に処女作が発表されたアイドルだが、発表当初はフラッグシップモデルのキングを差し置き、イタリアのコンチネンタルプロチーム、アックア・エ・サポーネでプロ選手に供給されたほどの性能を誇った。そして2010年新たなるスペックを纏い、新生アイドルとして生まれ変わった。
先代モデルが全体的にトラディショナルでスマートな雰囲気を醸し出していたのに対して、今回の新生アイドルは非常にアグレッシブなデザインで、見るからに力強く、骨太なイメージを与える。各部分をつぶさに見ていけば、それがイメージだけではなく、導入されたオーバーサイズ規格がもたらした印象であることが分かる。
フロントフォークも昔ながらのベンドフォークから専用のストレートブレードに変更。ワンポイントファイブのヘッドパーツ下部に引けを取らないほどの重厚さ。そして各部の設計に劣らないほどインパクトのある極太四角形ダウンチューブとトップチューブ。一部のメーカーが取り入れつつある最新のチューブ形状だ。
ヘッドは下ワンにワンポイントファイブサイズを導入したテーパーヘッドチューブだ。それを受け止めるダウンチューブを辿り、BB部分に至ると、ここもBB30という既存の規格よりもオーバーサイズ化した部品が待ちかまえる。剛性の塊という表現は、おそらく間違ってはいないだろう。
前三角も特徴的なら、後ろ三角もまた同じ。インテグラルシートポストに解け合っていくようなシートステーは、塗装による錯覚ではない。実際に繋がっていて、なだらかな曲線を描いているのだ。そしてダウンチューブも通常のバイクとは違い、トップチューブ側に弓なりになっている。今流行のアーチデザインとは逆ベクトルの弧を描く、個性溢れるデザインを取り入れている。
デローザにおいてインテグラルシートポストは、先代のアイドルで初めて導入されたが、その基本構造は新作にも引き継がれている。しかしチューブ形状はエアロ形状ではなく、オーソドックスなラウンド形状だ。ここは快適性を重視した気配がある。
またケーブル処理も再び流行しつつある内蔵式を採用し、ケーブル類が存在感のあるフレームシルエットを邪魔しないようになっている。フレームの製作方法は先代を引き継ぎ、3つの部材を組み合わせるトリプルモノコック製法を採用。機能と生産性を両立している。
はっきり言って先代アイドルの面影はまったくない。それほどまでにダイナミックで剛性を重視したという設計意図が明確に伝わってくるモデルチェンジだ。いや、ただのモデルチェンジではない。旧規格からの完全なる脱却と言ってもいい。最新スペックを完全に押さえたバイクになっている。
それではインプレッションに移ろう。この非常なるボリューム感とフォルムをもつバイクを、2人のテスターはどう評価したのだろうか?
― インプレッション
「大人のサイクリストに似合うユーティリティバイク」 佐藤 成彦(SPACE BIKES)
そのあまりに特徴的なビジュアルからはあまりキビキビと走りそうな感じを受けなかったのですが、その予想をいい意味で裏切ってくれる俊敏なバイクでした。
走りの性格的には「純粋なロードレーサー」という感じで、走行性能は非常に高いレベルにあります。
私はかつてアルミフレームだった頃のメラクなどにも乗っていたので、そのデローザ独特の乗り味を覚えているのですが、その当時と変わらず、なんの違和感もなく乗ることができました。「まさにデローザだな」と分かるほどの共通の乗りやすさが、このアイドルにも確かに備わっていますね。
圧倒的なボリュームを持つBBシェルの形状は、通常のネジ切りタイプではなく、ダイレクトにクランクをセットできるタイプを採用。これはいくつかのメーカーが採用していることからも、最近のトレンドとなっています。
この種のBB構造の狙いとしては、ハンガー周りの剛性を高めるための構造だと思うのですが、かといってペダルを踏んでみると硬すぎるような嫌な感覚がなく、いい意味での硬さを感じられる適度な剛性感に仕上げられています。
したがって、嫌なたわみもなく、しっかりとパワーをかけることができ、安定した走りができるフレーム形状と言えます。
極太のフロントフォークはごつい見た目の通りで、ヘッドパーツの下ワンも大型に設計されているので、非常にしっかりしていて安心感があるハンドリングを演出してくれます。そして、フォークとフレームのマッチング、フロントとバックセクションの剛性バランスもいいので、ダンシングなどでパワーをかけて走るような場合でも、前後が別々の動きをすることがなく、スムーズに走ることができます。
フレームは柔らかいという感覚はないのですが、それにしては振動吸収性も十分なレベルにあるので、レースバイクのように速く走らせることもできるし、ロングライドをゆっくり走らせても楽しめる汎用性の高いバイクに仕上げられています。フレーム形状の好みは分かれるところだと思いますが、特徴的なフォルムやデザインは所有欲も十二分に満たしてくれるバイクといえるでしょう。
価格がちょっと高めなので、40歳を過ぎたあたりの「いいオトナのライダー」が乗るとぴったりだと思います。個人的にはファーストインプレッションでルックスにちょっと違和感を覚えたのですが、乗ってしまうとそれを忘れさせてしまうほど良く、「これはこれでアリかなぁ」、と妙に納得。決してデザインだけで勝負しているバイクではなく、いい走りが伴っているんです。この形状でありながらそう思わせてしまうのも、デローザの技術の凄いところかもしれませんね。
「レーシーだけど、どんな使い方でも受け止めてくれる懐の深い性能」 鈴木 祐一(Rise Ride)
フレームがとても特徴的なフォルムをしているので、その先入観でエモーショナルな乗り味を想像してしまいます。でも、実際に乗ってみると、「エアロ性能が高い」とか「超軽量」みたいな、どこか傑出したキャラクターがあるわけでもなく、極めてオーソドックスなロードレーサーという性能が実現されています。
と、こんなことを言うと「フツーで退屈なバイク」と聞こえるかもしれませんが、ゆっくり走るロングライドでも、ガンガン走るレース的な走りでも、どんな使い方でも受け止めてくれる、器の深い性能が備わっているので、とっても扱いやすいモデルだと思います。
フレーム剛性は、乗り心地を重視した他のモデルのように特別柔らかいわけではありません。特にオーバーサイズのBBまわりを中心に、ボリューム感の高いフレーワークによってしっかりとした剛性感があるので、ペダリングトルクをガッチリ受け止めてくれます。
大きなギアでパワーをかけた時でもしっかりトルクが伝わるし、軽めのギヤで踏んでもパワーを余すことなく後輪に伝える感覚に優れているので、どんなシーンでもバイクが前に進もうとする力が強い。
ボリューム感あるフロントフォークとオーバーサイズのヘッドチューブのおかげか、フロント回りはとてもしっかりしているので、バイクコントロールがしやすく、ダウンヒルはとても速い。どんな条件でもライディングを心底楽しむことができます。
以前、デローザのクロモリフレームに乗っていたことがあるのですが、このアイドルにもそれに通じるフィーリングを感じました。特に40km/h以上の高速域になるといいですね。スピードを35km/hぐらいまで上げていって、さらにそこからもう一段上げて40km/h以上にしようとすると「スッ」と速度が伸びます。こうした高速域にかけての性能がいいと、レースではアドバンテージになりますね。もちろん下りが速い。
やはりデローザはイタリアンブランドの代表格ということで、「レースを知るイタリア人が、レースで性能を発揮させるために造っている」ということが分かります。
たとえ時代が変わって素材やフレーム形状が変わっても、ロードレースに必要な性能は変わらずしっかり受け継いでいるというのがデローザらしいですね。きっと自転車レースの真髄を知るイタリア人デザイナーのこだわりによって、デローザらしいフィーリングが再現されているんだろうなぁ。
ひとつ気になるのは、デローザの現在の車種ラインナップを見ると、アイドルの位置づけがちょっと分かりづらいことでしょうか。レースなら「キング3」シリーズがある。そして「ネオプロ」は乗り心地に優れているので、ロングライドやファストラン的な使い方に適している。
アイドルはレーシングな性格が強いので、まったりと走らせるツーリング的な使い方よりも、高速巡航する方が楽しいバイクです。しかしレースだとキングがあるし、ロングライドならネオプロがある。さしずめアイドルは「高速ツーリング向きグランツーリスモバイク」といった感じになるのでしょうか?
ともかく、非常に懐の深い性能を持ったバイクなので、どんな用途であれユーザーなりの使い方ができるバイクだと思いますが。
デローザidol
サイズ(AF) 57・59・61.5・64・67・69
カラー Red BlackGreyMatt WhiteSilver
フレーム価格 ¥418,950(本体価格 ¥399,000)
完成車参考価格 ¥1,178,000(本体価格 ¥1,122,000)Record 11v/Bora one wheels
インプレライダーのプロフィール
佐藤 成彦(SPACE BIKES)
千葉県松戸市の「バイクショップ・スペース」のオーナー。身長179cm、体重64kg。実業団のBR-1クラスを走る現役のレーサーでもあり、近所に住んでいるシマノレーシングの鈴木真理選手と共にトレーニングをこなすほどの実力を有している。2009年の戦歴は全日本実業団BR1クラス3位、実業団富士SW BR1クラス2位など。ハードなロードレースで自らが試して得た実戦的なパーツ選び、ポジションのアドバイスに定評がある。
SPACE BIKES
鈴木 祐一(Rise Ride)
サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストン MTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。各種レースにも参戦中。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライド
ウェア協力:Santini, Sportful(日直商会)
text&edit :Tsukasa.Yoshimoto
photo:Makoto.AYANO
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