2018/06/20(水) - 09:17
イーストンよりアルミホイールのトップグレードモデル「EA90 SLX」をインプレッション。ペア重量1400gという同クラス帯では際立つ軽さと、昨今注目を集めるロードチューブレス対応リムが特徴的なレーシングホイールを紹介しよう。
1922年創業のアメリカンブランド、イーストンはアルミニウム・カーボン素材のスペシャリストとして自転車を始め野球やアーチェリー、テニス、アイスホッケーなど多岐に渡るスポーツ用品を手がける老舗メーカーである。自転車部門であるイーストンサイクリングは1984年に発足し、高品質なハンドル・ステム・ホイール等を展開する総合パーツブランドとして世界中のサイクリストから支持を集めてきた。
そんなイーストンのホイールラインアップで、アルミモデルのトップグレードを担うのが「EA90 SLX」である。モデル名の通り同社アルミ素材の最上級グレードEA90を使用したリムは、前後とも高さ25mmのローハイト設計で、ベーシックなアルミホイールのルックスに仕上がりつつ実測重量1462g(チューブレスバルブ込み)をマークする軽量レーシングモデルとして展開される。
旧モデルからリム・ハブともにフルモデルチェンジを果たし2014モデルから登場したEA90 SLXは、ロードチューブレスに対応した”GEN5”と呼ばれる5世代目のリムを採用。マヴィックロードUST規格の登場もあり、昨今注目を集めるロードチューブレスに対応したホイールとなる。リムベッドにはニップルホールのない作りでリムテープは不要、かつチューブレスバルブが標準装備された仕様となる。もちろんチューブドのクリンチャー仕様でも運用可能だ。
リム内幅はワイドタイヤにマッチさせたやや幅広な17.5mmで、25~28mm幅のタイヤとも高い親和性を発揮する。特別なエアロフォルムや切削加工は用いないシンプルな台形型のリム形状で、ブラックカラーにアウトラインのみのブランドロゴを配した控えめなルックスに仕上がっている。
ハブにはイーストンが3年の歳月をかけて開発した「ECHO(エコー)」を採用。従来モデルに比べフランジ幅を広げることで剛性を確保しつつ、ボリュームあるアルミ製のボディによって強度や耐久性も両立、かつフランジの細部まで肉抜き加工を施すことで軽量化も図っている。加えて高いスポークテンションをかけてもフランジが変形しないようスチール製のリングを装備しているなど、手の込んだ設計が随所に窺える。
このECHOハブ最大の特徴は独自の内部構造、ひいてはベアリングの配置にある。リアハブに内蔵される2つのベアリングをフランジの外側に配し、ハブシャフトの端と端に来るよう設計することでたわみを抑えスムーズな回転をもたらすのだという。ベアリング間の距離は従来モデルの2倍に当たる95mmと大幅に広がっている。同時に走行中のガタが抑えられることでベアリングへのダメージも防ぎつつ、スチールベアリングによって耐久性も確保されている。
ラチェットの構造も一新され、ポール(爪)をハブボディ側に、ラチェットをフリーボディ側に配置する。ラチェットを大口径化することでノッチ数を増やし、従来モデルでは12°であった噛み合わせの角度も今作では7°とより細かく刻むことで反応性向上を図っている。またフリーボディに装着された2つのベアリングの内、片方はヘッドチューブにも使われる大口径サイズを用いることでねじれ剛性を高める役割を果たしている。また、フリーボディは引っ張るだけで外れるためメンテナンス性にも優れる。
サピム製のストレートプルスポークで組み上げるものの、トップグレードモデルながらスポーク形状はオーソドックスな丸型断面のモデルをチョイスしている。フロントは16本のラジアル組み、リアは20本で非駆動側が1クロス、駆動側が2クロスとされる。ニップルは軽量なアルミ製で外出し仕様、リムの耐久性を考え金属製のアイレットが設けられている。
チューブレスバルブとともに、バルブコア外し、クイックリリースレバーが付属する。価格はフロント64,000円(税抜)、リア86,000円(税抜)で前後セットにするとちょうど15万円(税抜)での販売だ。取り扱いは東商会。
― 編集部インプレッション
イーストンのホイールと言うと、近年はカーボンのEC90シリーズの方が見かけることも多く、モデルチェンジ後のアルミホイールはやや影に隠れがちな印象だった。しかし、いざ乗ってみればそんな印象はどこへやら。従来モデルから定評のあった優れた剛性や組み立て精度の高さに加え新型ハブによる滑らかな回転性能も合わさり、主張の少ない外見に隠された高い総合力に驚かされた。
軽量ローハイトホイールらしい踏み出しの軽さと登坂性能は文句なし。横剛性の高さとECHOハブのかかりの良さが合わさり、ひと踏みひと踏みでリニアに加速していく抜群の反応性の良さが味わえる。どちらかと言えば大トルクをかけるよりも軽い力でスッスッとペダリングしていくのが気持ちよく、かけたパワー以上に後ろから押されているような感覚を返してくれる。
ホイール自体の軽さもあり踏み込んだ瞬間に加速する感覚で、走りのリズムはやや早め。ローハイトリムのため速度の減衰も早いので、平地の高速巡航はさすがにディープリムに軍配が上がる。ホイールの性格的には、大パワーを受け止めタメのある伸びが好きなライダーにはマッチしないだろう。その分、体重が軽いクライマーや軽快な走りを求める一般サイクリストに幅広くオススメできる製品に仕上がっている。普段使いできるヒルクライム決戦ホイールとしても重宝するはず。
高剛性と言っても、例えばアルミスポークを使用したフルクラムのレーシングゼロのようにガチガチな硬さではないため長距離を乗っていても足当たりは良い。シンプルなステンレスの丸型スポークで組んであるためエアロ性能は感じないが、ハブの優れた回転性能が転がりを軽くしている他、ダンシングやコーナリングもクセがなく非常に扱いやすい印象だ。
また今回IRCのチューブレスタイヤ FORMULA PROを合わせてみたのだが、タイヤレバーを使うことなくセットでき、かつ普通のフロアポンプにてビードもきちんと上げることができた。チューブレス特有のバチンという音とともにビードが上がったことが確認できるため嵌合も問題はなさそう。タイヤの個体差もあるだろうがわずかに空気漏れが見られたのでシーラントを入れて対応したところ、全く問題なく運用出来ている。それでもロードチューブレスとしての扱いやすさはマヴィックのロードUSTホイールに劣らないものがある。
ワイドリム設計のおかげで今回使用した25mmタイヤがきっちりリム幅とマッチし、見た目もスマートに決まる。チューブレスならではの軽い走行感が軽量ホイールの良さをさらに引き出しているし、ローハイトホイール特有のスピード維持のしにくさをチューブレスタイヤの優れた転がり性能が補ってくれるため、その相性は最高だ。
個人的にはタイヤは5.5気圧ほどがベストで、体重50kg前半の筆者であれば4気圧台でも十分に走ることができる。空気圧を下げられることでトラクション性能も増しており、軽量ホイールにありがちな浮遊感のある落ち着かない走りは皆無。安定性やパワー伝達性、グリップ力いずれも強化された走りを感じることができた。
総評するとアルミホイールのハイエンドモデルとして不満のない仕上がりと言えるだろう。見た目の派手さはないが、堅実な高性能アルミホイールを探している人、他人と被らない個性を出したい人、ロードチューブレスを試してみたい人はぜひチェックしてみて欲しい。(CW編集部:村田悠人)
イーストン EA90 SLX
リムタイプ:ロードチューブレス/クリンチャー
リムプロファイル:ハイト25mm、内幅17.5mm、外幅22mm
ハブ:イーストンECHO
対応スプロケット:シマノ11S/スラム、カンパ
スポーク:サピム ストレートプル ダブルバテッド ブラック(F16本、R20本)
ニップル:アルミ ブラック
平均重量:1,400g(前後セット)
価格:フロント64,000円(税抜)、リア86,000円(税抜)
前後セット150,000円(税抜)
1922年創業のアメリカンブランド、イーストンはアルミニウム・カーボン素材のスペシャリストとして自転車を始め野球やアーチェリー、テニス、アイスホッケーなど多岐に渡るスポーツ用品を手がける老舗メーカーである。自転車部門であるイーストンサイクリングは1984年に発足し、高品質なハンドル・ステム・ホイール等を展開する総合パーツブランドとして世界中のサイクリストから支持を集めてきた。
そんなイーストンのホイールラインアップで、アルミモデルのトップグレードを担うのが「EA90 SLX」である。モデル名の通り同社アルミ素材の最上級グレードEA90を使用したリムは、前後とも高さ25mmのローハイト設計で、ベーシックなアルミホイールのルックスに仕上がりつつ実測重量1462g(チューブレスバルブ込み)をマークする軽量レーシングモデルとして展開される。
旧モデルからリム・ハブともにフルモデルチェンジを果たし2014モデルから登場したEA90 SLXは、ロードチューブレスに対応した”GEN5”と呼ばれる5世代目のリムを採用。マヴィックロードUST規格の登場もあり、昨今注目を集めるロードチューブレスに対応したホイールとなる。リムベッドにはニップルホールのない作りでリムテープは不要、かつチューブレスバルブが標準装備された仕様となる。もちろんチューブドのクリンチャー仕様でも運用可能だ。
リム内幅はワイドタイヤにマッチさせたやや幅広な17.5mmで、25~28mm幅のタイヤとも高い親和性を発揮する。特別なエアロフォルムや切削加工は用いないシンプルな台形型のリム形状で、ブラックカラーにアウトラインのみのブランドロゴを配した控えめなルックスに仕上がっている。
ハブにはイーストンが3年の歳月をかけて開発した「ECHO(エコー)」を採用。従来モデルに比べフランジ幅を広げることで剛性を確保しつつ、ボリュームあるアルミ製のボディによって強度や耐久性も両立、かつフランジの細部まで肉抜き加工を施すことで軽量化も図っている。加えて高いスポークテンションをかけてもフランジが変形しないようスチール製のリングを装備しているなど、手の込んだ設計が随所に窺える。
このECHOハブ最大の特徴は独自の内部構造、ひいてはベアリングの配置にある。リアハブに内蔵される2つのベアリングをフランジの外側に配し、ハブシャフトの端と端に来るよう設計することでたわみを抑えスムーズな回転をもたらすのだという。ベアリング間の距離は従来モデルの2倍に当たる95mmと大幅に広がっている。同時に走行中のガタが抑えられることでベアリングへのダメージも防ぎつつ、スチールベアリングによって耐久性も確保されている。
ラチェットの構造も一新され、ポール(爪)をハブボディ側に、ラチェットをフリーボディ側に配置する。ラチェットを大口径化することでノッチ数を増やし、従来モデルでは12°であった噛み合わせの角度も今作では7°とより細かく刻むことで反応性向上を図っている。またフリーボディに装着された2つのベアリングの内、片方はヘッドチューブにも使われる大口径サイズを用いることでねじれ剛性を高める役割を果たしている。また、フリーボディは引っ張るだけで外れるためメンテナンス性にも優れる。
サピム製のストレートプルスポークで組み上げるものの、トップグレードモデルながらスポーク形状はオーソドックスな丸型断面のモデルをチョイスしている。フロントは16本のラジアル組み、リアは20本で非駆動側が1クロス、駆動側が2クロスとされる。ニップルは軽量なアルミ製で外出し仕様、リムの耐久性を考え金属製のアイレットが設けられている。
チューブレスバルブとともに、バルブコア外し、クイックリリースレバーが付属する。価格はフロント64,000円(税抜)、リア86,000円(税抜)で前後セットにするとちょうど15万円(税抜)での販売だ。取り扱いは東商会。
― 編集部インプレッション
イーストンのホイールと言うと、近年はカーボンのEC90シリーズの方が見かけることも多く、モデルチェンジ後のアルミホイールはやや影に隠れがちな印象だった。しかし、いざ乗ってみればそんな印象はどこへやら。従来モデルから定評のあった優れた剛性や組み立て精度の高さに加え新型ハブによる滑らかな回転性能も合わさり、主張の少ない外見に隠された高い総合力に驚かされた。
軽量ローハイトホイールらしい踏み出しの軽さと登坂性能は文句なし。横剛性の高さとECHOハブのかかりの良さが合わさり、ひと踏みひと踏みでリニアに加速していく抜群の反応性の良さが味わえる。どちらかと言えば大トルクをかけるよりも軽い力でスッスッとペダリングしていくのが気持ちよく、かけたパワー以上に後ろから押されているような感覚を返してくれる。
ホイール自体の軽さもあり踏み込んだ瞬間に加速する感覚で、走りのリズムはやや早め。ローハイトリムのため速度の減衰も早いので、平地の高速巡航はさすがにディープリムに軍配が上がる。ホイールの性格的には、大パワーを受け止めタメのある伸びが好きなライダーにはマッチしないだろう。その分、体重が軽いクライマーや軽快な走りを求める一般サイクリストに幅広くオススメできる製品に仕上がっている。普段使いできるヒルクライム決戦ホイールとしても重宝するはず。
高剛性と言っても、例えばアルミスポークを使用したフルクラムのレーシングゼロのようにガチガチな硬さではないため長距離を乗っていても足当たりは良い。シンプルなステンレスの丸型スポークで組んであるためエアロ性能は感じないが、ハブの優れた回転性能が転がりを軽くしている他、ダンシングやコーナリングもクセがなく非常に扱いやすい印象だ。
また今回IRCのチューブレスタイヤ FORMULA PROを合わせてみたのだが、タイヤレバーを使うことなくセットでき、かつ普通のフロアポンプにてビードもきちんと上げることができた。チューブレス特有のバチンという音とともにビードが上がったことが確認できるため嵌合も問題はなさそう。タイヤの個体差もあるだろうがわずかに空気漏れが見られたのでシーラントを入れて対応したところ、全く問題なく運用出来ている。それでもロードチューブレスとしての扱いやすさはマヴィックのロードUSTホイールに劣らないものがある。
ワイドリム設計のおかげで今回使用した25mmタイヤがきっちりリム幅とマッチし、見た目もスマートに決まる。チューブレスならではの軽い走行感が軽量ホイールの良さをさらに引き出しているし、ローハイトホイール特有のスピード維持のしにくさをチューブレスタイヤの優れた転がり性能が補ってくれるため、その相性は最高だ。
個人的にはタイヤは5.5気圧ほどがベストで、体重50kg前半の筆者であれば4気圧台でも十分に走ることができる。空気圧を下げられることでトラクション性能も増しており、軽量ホイールにありがちな浮遊感のある落ち着かない走りは皆無。安定性やパワー伝達性、グリップ力いずれも強化された走りを感じることができた。
総評するとアルミホイールのハイエンドモデルとして不満のない仕上がりと言えるだろう。見た目の派手さはないが、堅実な高性能アルミホイールを探している人、他人と被らない個性を出したい人、ロードチューブレスを試してみたい人はぜひチェックしてみて欲しい。(CW編集部:村田悠人)
イーストン EA90 SLX
リムタイプ:ロードチューブレス/クリンチャー
リムプロファイル:ハイト25mm、内幅17.5mm、外幅22mm
ハブ:イーストンECHO
対応スプロケット:シマノ11S/スラム、カンパ
スポーク:サピム ストレートプル ダブルバテッド ブラック(F16本、R20本)
ニップル:アルミ ブラック
平均重量:1,400g(前後セット)
価格:フロント64,000円(税抜)、リア86,000円(税抜)
前後セット150,000円(税抜)
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