2017/12/10(日) - 09:40
知る人ぞ知るイギリスのハンドメイドバイクブランド、Condor(コンドール)。ロンドンの老舗サイクルショップがプロデュースする自社ブランドである。国内では東京・新橋にあるアヴァンサイクルが取り扱う同ブランドより、エンデュランスロードの「BARACCHI(バラッキ)」をインプレッションした。
1948年に創業し今年で70周年を迎えたイギリスのCondor(コンドール)。ロンドンに店舗を構える同名の老舗サイクルショップがプロデュースする自社ブランドである。ハンドメイドフレームを長年に渡って手がけ、今日ではスチール、アルミ、カーボンの各種バイクが揃う一大ショップブランドとして確立しており、オシャレかつ独自性のある路線で世界各地にファンを抱えている。
創業当初はレイノルズのスチールパイプを用い、イギリスの工房にて1台1台溶接して仕上げていたという。その後アルミやカーボンフレームが台頭してくると多くのブランドが台湾生産へと移行してく中、コンドールはすべてのバイクでヨーロッパ生産を貫き、現在はイギリスデザインのイタリアメイドという方式を取ることで高品質なバイクを作り続けている。
ハンドメイドブランドとあって細かいカスタムに対応するのも大きな特徴で、カラーオーダーはもちろんジオメトリーオーダーやデカールの種類を選べるといったオプションも用意している。ノーマルなロードバイクだけでなくコミューターやシングルスピード、シクロクロス、オールロードといった幅広いジャンルにまで展開しており、ショップブランドながらバイクの種類は全部で30弱にも及ぶ。
レースシーンとも深い関わりを持っており、1960年代にはすでにプロチームへのサポートを開始。トラックのワールドカップやオリンピックでもコンドールバイクは活躍を見せ、1968年にはパシュート種目の世界チャンピオンも輩出した。その後もイギリスと関係の深いチームに継続して機材供給を行っており、1990年代にはブラドレー・ウィギンズ(イギリス)にも個人サポートをしていたのだという。
コンドールの名が日本にも届くキッカケとなったのが、2006年に結成したコンチネンタルチーム「Rapha Condor」の存在だろう。スポンサーの入れ替わりによりチーム名の変更はあるものの、同チームは2010年と2014年の二度ツアー・オブ・ジャパン出場のため来日しており、コンドールバイクが実際にレースで走る姿を見た人も少なくないはず。現在も「JLT Condor」として活動しており、チームとともにレースバイクの開発に取り組んでいる。
そんな同ブランドにおいてエンデュランスカーボンロードとしてラインアップするのが、今回インプレッションを行った「BARACCHI(バラッキ)」である。快適性を追求したフレーム設計により上質な乗り心地を獲得するとともに、スムーズに登りをこなせる軽量性も両立させることで、より長距離ライドを楽しむバイクとして生み出されている。
特徴的なフレームデザインとして真っ先に目がいくのが、弓なりに緩くカーブしたダウンチューブだろう。振動吸収性を高めるために各社トップチューブやシートステーに趣向を凝らした設計を施しがちだが、同バイクはそこをあえてダウンチューブに盛り込むことで、ルックスにも独自性のあるデザインを獲得している。
同じく絶妙なベンド加工を施したフロントフォークや細身のシートステーも路面からの突き上げをいなす形状で、フレーム全体で快適性の向上を実現している。対してトップチューブは下部を縦方向に、上部を横方向に扁平させたT型断面のような複雑なチュービングが行われており、ねじれ剛性強化に一役買っている。フロント部分も上下異径のテーパードヘッドにより剛性を確保し、安定したハンドリングをもたらす設計だ。
フレーム素材には樹脂配合量を抑えた高品質なオリジナルのカーボンが用いられており、より最適化されたレイアップを行うことで、エンデュランスモデルながら同ブランドで2番目に軽いフレーム重量1000gを達成している。またヘッドとホイールベースがやや長めのエンデュランスジオメトリーが採用されることで、よりロングライドに適したポジションと安定した走行性能も両立している。
ケーブルは内装仕様で、機械式/電動式コンポーネント両対応。BBはメンテナンスも容易なBSA規格で、フロントディレイラーはバンド式となる。国内では東京都の港区新橋にあるプロショップ「Avant Cycles(アヴァンサイクル)」にて取り扱い、価格はフレームセットで319,000円(税抜)だ。今回はコンポーネントにシマノのR8000系ULTEGRA、ホイールに同WH-RS500を組み合わせた試乗車にてテストした。
― インプレッション
「マイルドな味付けが特徴的な紛うことなきエンデュランスバイク」杉山友則(Bicicletta IL CUORE)
レーシングな要素を省いたまさにエンデュランスバイクといった印象で、長い時間、長い距離のライドを楽しむことに振り切った設計だと感じました。踏み味もマイルドという感触で、レーシングバイクのような素早い加速感ではありません。大きなトルクを掛けてアタックするとか、ペダルを速く回してハイペースで走ると言うよりは優雅にロングライドを楽しむためのバイクですね。
ただ、フレームが柔らかいというのとは少し違う感覚であくまでもマイルド、踏み込んだ時に力が逃げていくような感覚はありません。ウィップのある走りという訳でもないのですが、力が逃げていく寸前で前に進んでいくような感じで絶妙な踏み味です。穏やかに加速していくので、自分の走りやすいぺースにスピードを乗せてあげて維持していくのが得意なイメージですね。
エンデュランス性能に振り切ったバイクではありますが、ロードバイクとして抑えるべきポイントはしっかり抑えて作ってあります。例えばコーナリング時のブレーキでフレームがビビることもないですし、ハンドリングも癖なく思い通りに曲がってくれます。ヘッド周りとフロントフォークの剛性がしっかりしているため、ストレス無く止まったり曲がったりが可能で、加えて下りでの安定感も演出していますね。
今回のR8000系アルテグラとWH-RS500のホイールを組み合わせたアセンブルもフレームとのまとまりがあって好印象でした。このくらいのグレードのホイールを履かせていれば十分気持ちよく走れますね。また美しい塗装や、弓なりに弧を描くダウンチューブの造形もポイントですね。なかなかこういったデザインのバイクは無いですので、プレミア感があるのではないでしょうか。
路面からの突き上げ感も少なく、エンデュランスバイクとしてコンフォート性能は十分でしょう。いつまでも走っていられそうな乗り味から、ロードバイク初心者の人でも「自転車って思ったより遠くに行けるじゃないか」とその良さを体感してもらえるようなバイクだと思います。
コンドール BARACCHI フレームセット
フレーム:Condor optimised custom carbon with nano resins
フォーク:Deda Surf full carbon 1-1/8" to 1-1/2"
BB規格:BSA
重 量:フレーム1000g(55cm、塗装済み)、フォーク340g
カラー:Deep Purple/Sky、Grey/Melon
サイズ:46、49、52、55、58、61cm
価 格:319,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
杉山友則(Bicicletta IL CUORE)
東京都台東区のBicicletta IL CUORE 下谷本店店長。ダミアーノ・クネゴがジュニアチャンピオンだったころからクネゴのファンだという、自他ともに認めるミーハー系自転車乗り。グエルチョッティやコルナゴ、ルックなどヨーロピアンブランドへの造詣が深い。ショップ店長としては、ユーザーがサイクルライフを楽しめる遊び方の提案を心がけている。
CWレコメンドショップページ
Bicicletta IL CUORE ショップHP
ウェア協力:ルコック
ヘルメット協力:MET
text:Yuto.Murata
photo:Makoto.AYANO
1948年に創業し今年で70周年を迎えたイギリスのCondor(コンドール)。ロンドンに店舗を構える同名の老舗サイクルショップがプロデュースする自社ブランドである。ハンドメイドフレームを長年に渡って手がけ、今日ではスチール、アルミ、カーボンの各種バイクが揃う一大ショップブランドとして確立しており、オシャレかつ独自性のある路線で世界各地にファンを抱えている。
創業当初はレイノルズのスチールパイプを用い、イギリスの工房にて1台1台溶接して仕上げていたという。その後アルミやカーボンフレームが台頭してくると多くのブランドが台湾生産へと移行してく中、コンドールはすべてのバイクでヨーロッパ生産を貫き、現在はイギリスデザインのイタリアメイドという方式を取ることで高品質なバイクを作り続けている。
ハンドメイドブランドとあって細かいカスタムに対応するのも大きな特徴で、カラーオーダーはもちろんジオメトリーオーダーやデカールの種類を選べるといったオプションも用意している。ノーマルなロードバイクだけでなくコミューターやシングルスピード、シクロクロス、オールロードといった幅広いジャンルにまで展開しており、ショップブランドながらバイクの種類は全部で30弱にも及ぶ。
レースシーンとも深い関わりを持っており、1960年代にはすでにプロチームへのサポートを開始。トラックのワールドカップやオリンピックでもコンドールバイクは活躍を見せ、1968年にはパシュート種目の世界チャンピオンも輩出した。その後もイギリスと関係の深いチームに継続して機材供給を行っており、1990年代にはブラドレー・ウィギンズ(イギリス)にも個人サポートをしていたのだという。
コンドールの名が日本にも届くキッカケとなったのが、2006年に結成したコンチネンタルチーム「Rapha Condor」の存在だろう。スポンサーの入れ替わりによりチーム名の変更はあるものの、同チームは2010年と2014年の二度ツアー・オブ・ジャパン出場のため来日しており、コンドールバイクが実際にレースで走る姿を見た人も少なくないはず。現在も「JLT Condor」として活動しており、チームとともにレースバイクの開発に取り組んでいる。
そんな同ブランドにおいてエンデュランスカーボンロードとしてラインアップするのが、今回インプレッションを行った「BARACCHI(バラッキ)」である。快適性を追求したフレーム設計により上質な乗り心地を獲得するとともに、スムーズに登りをこなせる軽量性も両立させることで、より長距離ライドを楽しむバイクとして生み出されている。
特徴的なフレームデザインとして真っ先に目がいくのが、弓なりに緩くカーブしたダウンチューブだろう。振動吸収性を高めるために各社トップチューブやシートステーに趣向を凝らした設計を施しがちだが、同バイクはそこをあえてダウンチューブに盛り込むことで、ルックスにも独自性のあるデザインを獲得している。
同じく絶妙なベンド加工を施したフロントフォークや細身のシートステーも路面からの突き上げをいなす形状で、フレーム全体で快適性の向上を実現している。対してトップチューブは下部を縦方向に、上部を横方向に扁平させたT型断面のような複雑なチュービングが行われており、ねじれ剛性強化に一役買っている。フロント部分も上下異径のテーパードヘッドにより剛性を確保し、安定したハンドリングをもたらす設計だ。
フレーム素材には樹脂配合量を抑えた高品質なオリジナルのカーボンが用いられており、より最適化されたレイアップを行うことで、エンデュランスモデルながら同ブランドで2番目に軽いフレーム重量1000gを達成している。またヘッドとホイールベースがやや長めのエンデュランスジオメトリーが採用されることで、よりロングライドに適したポジションと安定した走行性能も両立している。
ケーブルは内装仕様で、機械式/電動式コンポーネント両対応。BBはメンテナンスも容易なBSA規格で、フロントディレイラーはバンド式となる。国内では東京都の港区新橋にあるプロショップ「Avant Cycles(アヴァンサイクル)」にて取り扱い、価格はフレームセットで319,000円(税抜)だ。今回はコンポーネントにシマノのR8000系ULTEGRA、ホイールに同WH-RS500を組み合わせた試乗車にてテストした。
― インプレッション
「マイルドな味付けが特徴的な紛うことなきエンデュランスバイク」杉山友則(Bicicletta IL CUORE)
レーシングな要素を省いたまさにエンデュランスバイクといった印象で、長い時間、長い距離のライドを楽しむことに振り切った設計だと感じました。踏み味もマイルドという感触で、レーシングバイクのような素早い加速感ではありません。大きなトルクを掛けてアタックするとか、ペダルを速く回してハイペースで走ると言うよりは優雅にロングライドを楽しむためのバイクですね。
ただ、フレームが柔らかいというのとは少し違う感覚であくまでもマイルド、踏み込んだ時に力が逃げていくような感覚はありません。ウィップのある走りという訳でもないのですが、力が逃げていく寸前で前に進んでいくような感じで絶妙な踏み味です。穏やかに加速していくので、自分の走りやすいぺースにスピードを乗せてあげて維持していくのが得意なイメージですね。
エンデュランス性能に振り切ったバイクではありますが、ロードバイクとして抑えるべきポイントはしっかり抑えて作ってあります。例えばコーナリング時のブレーキでフレームがビビることもないですし、ハンドリングも癖なく思い通りに曲がってくれます。ヘッド周りとフロントフォークの剛性がしっかりしているため、ストレス無く止まったり曲がったりが可能で、加えて下りでの安定感も演出していますね。
今回のR8000系アルテグラとWH-RS500のホイールを組み合わせたアセンブルもフレームとのまとまりがあって好印象でした。このくらいのグレードのホイールを履かせていれば十分気持ちよく走れますね。また美しい塗装や、弓なりに弧を描くダウンチューブの造形もポイントですね。なかなかこういったデザインのバイクは無いですので、プレミア感があるのではないでしょうか。
路面からの突き上げ感も少なく、エンデュランスバイクとしてコンフォート性能は十分でしょう。いつまでも走っていられそうな乗り味から、ロードバイク初心者の人でも「自転車って思ったより遠くに行けるじゃないか」とその良さを体感してもらえるようなバイクだと思います。
コンドール BARACCHI フレームセット
フレーム:Condor optimised custom carbon with nano resins
フォーク:Deda Surf full carbon 1-1/8" to 1-1/2"
BB規格:BSA
重 量:フレーム1000g(55cm、塗装済み)、フォーク340g
カラー:Deep Purple/Sky、Grey/Melon
サイズ:46、49、52、55、58、61cm
価 格:319,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
杉山友則(Bicicletta IL CUORE)
東京都台東区のBicicletta IL CUORE 下谷本店店長。ダミアーノ・クネゴがジュニアチャンピオンだったころからクネゴのファンだという、自他ともに認めるミーハー系自転車乗り。グエルチョッティやコルナゴ、ルックなどヨーロピアンブランドへの造詣が深い。ショップ店長としては、ユーザーがサイクルライフを楽しめる遊び方の提案を心がけている。
CWレコメンドショップページ
Bicicletta IL CUORE ショップHP
ウェア協力:ルコック
ヘルメット協力:MET
text:Yuto.Murata
photo:Makoto.AYANO
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