2017/09/25(月) - 05:54
9月24日にノルウェー・ベルゲンで開催されたロード世界選手権のエリート男子ロードレースは26名の集団スプリントで決着。アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー)を写真判定の僅差で下したペテル・サガン(スロバキア)が史上初の大会3連覇を達成した。
2017年の世界チャンピオンを決めるのはベルゲンの19.1km周回コース。北海に浮かぶロンゴイ島をスタート後、トンネルや橋が連続する幹線道路を39.5km走ってベルゲンへ。そこからサーモンヒル(長さ1.5km/平均6.4%)を含む周回コースを12周弱する267.5kmで行われた。1日の獲得標高差は約3,400m。
曇り空のロンゴイ島から晴れ空のベルゲンに向かう道中、先頭ではアンドレイ・アマドール(コスタリカ)やコノール・デューン(アイルランド)を含む10名の逃げグループが生まれる。先頭10名はベルギーやノルウェー、フランスが牛耳るメイン集団から10分のリードを得た状態でベルゲンの周回を開始した。
地元のベルゲン市民が「こんな良い天気が続く1週間は本当に珍しい」と驚く最高気温18度ほどの陽気の中、逃げグループは人数とタイム差を失いながら周回をこなしていく。残り6周回に差し掛かるとタイム差の縮小は加速し、ジュリアン・ヴェルモート(ベルギー)らの献身的な集団牽引によって逃げグループは残り4周回で吸収。続くサーモンヒルでマルコ・ハラー(オーストリア)がアタックするとレースは新たな局面を迎えた。
フィニッシュまで67kmを残したこのハラーにはティム・ウェレンス(ベルギー)やアレッサンドロ・デマルキ(イタリア)、ヤルリンソン・パンタノ(コロンビア)、ダビ・デラクルス(スペイン)、ジャック・ハイグ(オーストラリア)、ラルス・ボーム(オランダ)、オドクリスティアン・エイキング(ノルウェー)という主要強豪国のサブエース級選手が反応する。それまでレースは平均スピード40〜41km/hで周回していたが、8周目の平均スピードは45.5km/hまで上がっている。
優勝候補の一角でもあるウェレンスやボームを含む逃げグループに、メイン集団は大きなタイム差を与えなかった。主にフランスやポーランドが率いるメイン集団はハイペースを刻み続けた状態でレースは残り2周回に突入。サーモンヒルで仕掛けたトム・デュムラン(オランダ)のアタックは決まらず、先頭で逃げ続けたウェレンス、ハイグ、デラクルス、エイキングも残り25km地点で吸収される。新城幸也(バーレーン・メリダ)を含む110名の巨大な集団のままレースは最終周回に入った。
最終周回の前半に飛び出したポール・マルテンス(ドイツ)とセバスティアン・ラングフェルド(オランダ)はすぐに引き戻され、集団はキンキンに伸びた状態で最後のサーモンヒルに突入。コーナーの入り口で発生したイェンス・クークレール(ベルギー)らを含む落車によって集団が割れ、ブレーキングを強いられた新城はそこで遅れてしまう。
真っ先にアタックしたトニー・ガロパン(フランス)が吸収されると今度はジュリアン・アラフィリップ(フランス)が勢いよく加速する。普段クイックステップフロアーズのチームメイトとして走るフィリップ・ジルベール(ベルギー)とニキ・テルプストラ(オランダ)を振り切ったアラフィリップがサーモンヒルの頂上に単独で到着。単独追走を仕掛けたジャンニ・モスコン(イタリア)だけがアラフィリップに追いついた。
下りをこなして平坦区間に入ったアラフィリップとモスコンは10秒リードで残り5km。後方ではヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ)とルーカス・ペストルベルガー(ポーランド)の2人が追走を組織するが届かず、その後方に20名を超える集団が迫る。残り4kmでモスコンを振り切ったアラフィリップが独走に持ち込んだものの海沿いの平坦路でリードは縮小。アラフィリップの独走は残り1kmアーチ通過とともに終わった。
マグナスコルト・ニールセン(デンマーク)のロングスパートはアルベルト・ベッティオール(イタリア)による集団牽引によって引き戻され、最終的に勝負は26名によるスプリントに。ベティオール、クリストフ、サガンの並びで残り250mの最終コーナーを駆け抜ける。下り基調のストレートで最初に仕掛けたクリストフが伸びたが、少しタイミングを遅らせて加速したサガンが勢いよく迫った。
対抗するマイケル・マシューズ(オーストラリア)を置き去りにする加速でサガンがクリストフに並び、ハンドルを投げ込んでフィニッシュ。接戦のため勝利を確信することができず、サガンとクリストフは手を挙げることができない。写真判定の結果、差し切ったサガンがおよそ30cmの差で勝利した。ラップタイムを見るとサガンは最終周回を24分21秒で駆け抜けており、その平均スピードは47.0km/hに達した。
「ただただアンビリーバブルだ。地元ノルウェーのクリストフを負かしてしまったことは申し訳なく思う。でもとにかくこの勝利を嬉しく思うし、とても特別なものだ」。2015年のリッチモンド大会、2016年のカタール大会に続くロード世界選手権3連覇を達成したサガンは「アンビリーバブル」という言葉を多用してインタビューに答える。これまで世界選手権で3回優勝している選手は4名(ビンダ、ヴァンステーンベルヘン、フレイレ、メルクス)いるが、3連覇を果たした選手は未だかつていない。
「残り5kmの時点で今日の勝利はないかもしれないと思っていた。最終周回のサーモンヒルで集団は3つに分裂していたし、後ろから追いついてくる選手もいて、前ではアタックがかかって選手が逃げていた。最後の最後まで集団はまとまらなかったし、このスプリント勝利は予想していなかった」と、刺激的なフィナーレを振り返るサガン。「この勝利を明日が誕生日の故ミケーレ・スカルポーニ、第一子を妊娠している妻に捧げたい。最高の形でシーズンを締めくくることができて本当に良かった」。
クリストフが地元ノルウェーに銀メダルをもたらし、マシューズが2015年の銀メダルに続く銅メダルを獲得。その後ろにマッテオ・トレンティン(イタリア)やベン・スウィフト(イギリス)、グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー)が続いた。なお、残り2周で落車が発生した際、チームカーに押されて集団復帰したモスコンには失格処分が下されている。
最終周回の落車で足止めを食らった新城は2分32秒遅れの大きな集団でフィニッシュ。「サーモンヒルを登り始める時に起きた落車で減速してしまい、そこで集団が行ってしまった」と新城。「常に集団の先頭が見える位置で周回していました。残り2周のサーモンヒルで集団のペースが上がった時、全開を出さずに余裕を持ってアウターを踏んでついていけたので、これは最終周回に全開を出せば勝負に残れると思っていた」。
「もうちょっと前で(サーモンヒルに)入ればよかった」と遠くを眺めながら新城は語る。「ジーロングに似ている『あまり登らない自分向きのコース』だと事前から言われていたので、チャンスがあると思っていた。サーモンヒルもちょうどアウターかインナーかを迷う勾配で、実際に自分向きだったと思います」。自身が日本人歴代最高位の9位に入った2010年のジーロング大会に似た難易度のコース設定だっただけに悔しさが溢れ出す。
ツール・ド・フランス終了後、カナダ2連戦を含めて毎週末レースをこなしてきた新城。レースが空いた前週は230kmロングを走り、ベルゲン到着後もモーターペーサーで乗り込んで好調のまま挑んだ今回のロード世界選手権。良い状態をキープする新城は中国の新たなUCIワールドツアーレースである10月19日開幕のツアー・オブ・広西に出場する予定だ。
2017年の世界チャンピオンを決めるのはベルゲンの19.1km周回コース。北海に浮かぶロンゴイ島をスタート後、トンネルや橋が連続する幹線道路を39.5km走ってベルゲンへ。そこからサーモンヒル(長さ1.5km/平均6.4%)を含む周回コースを12周弱する267.5kmで行われた。1日の獲得標高差は約3,400m。
曇り空のロンゴイ島から晴れ空のベルゲンに向かう道中、先頭ではアンドレイ・アマドール(コスタリカ)やコノール・デューン(アイルランド)を含む10名の逃げグループが生まれる。先頭10名はベルギーやノルウェー、フランスが牛耳るメイン集団から10分のリードを得た状態でベルゲンの周回を開始した。
地元のベルゲン市民が「こんな良い天気が続く1週間は本当に珍しい」と驚く最高気温18度ほどの陽気の中、逃げグループは人数とタイム差を失いながら周回をこなしていく。残り6周回に差し掛かるとタイム差の縮小は加速し、ジュリアン・ヴェルモート(ベルギー)らの献身的な集団牽引によって逃げグループは残り4周回で吸収。続くサーモンヒルでマルコ・ハラー(オーストリア)がアタックするとレースは新たな局面を迎えた。
フィニッシュまで67kmを残したこのハラーにはティム・ウェレンス(ベルギー)やアレッサンドロ・デマルキ(イタリア)、ヤルリンソン・パンタノ(コロンビア)、ダビ・デラクルス(スペイン)、ジャック・ハイグ(オーストラリア)、ラルス・ボーム(オランダ)、オドクリスティアン・エイキング(ノルウェー)という主要強豪国のサブエース級選手が反応する。それまでレースは平均スピード40〜41km/hで周回していたが、8周目の平均スピードは45.5km/hまで上がっている。
優勝候補の一角でもあるウェレンスやボームを含む逃げグループに、メイン集団は大きなタイム差を与えなかった。主にフランスやポーランドが率いるメイン集団はハイペースを刻み続けた状態でレースは残り2周回に突入。サーモンヒルで仕掛けたトム・デュムラン(オランダ)のアタックは決まらず、先頭で逃げ続けたウェレンス、ハイグ、デラクルス、エイキングも残り25km地点で吸収される。新城幸也(バーレーン・メリダ)を含む110名の巨大な集団のままレースは最終周回に入った。
最終周回の前半に飛び出したポール・マルテンス(ドイツ)とセバスティアン・ラングフェルド(オランダ)はすぐに引き戻され、集団はキンキンに伸びた状態で最後のサーモンヒルに突入。コーナーの入り口で発生したイェンス・クークレール(ベルギー)らを含む落車によって集団が割れ、ブレーキングを強いられた新城はそこで遅れてしまう。
真っ先にアタックしたトニー・ガロパン(フランス)が吸収されると今度はジュリアン・アラフィリップ(フランス)が勢いよく加速する。普段クイックステップフロアーズのチームメイトとして走るフィリップ・ジルベール(ベルギー)とニキ・テルプストラ(オランダ)を振り切ったアラフィリップがサーモンヒルの頂上に単独で到着。単独追走を仕掛けたジャンニ・モスコン(イタリア)だけがアラフィリップに追いついた。
下りをこなして平坦区間に入ったアラフィリップとモスコンは10秒リードで残り5km。後方ではヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ)とルーカス・ペストルベルガー(ポーランド)の2人が追走を組織するが届かず、その後方に20名を超える集団が迫る。残り4kmでモスコンを振り切ったアラフィリップが独走に持ち込んだものの海沿いの平坦路でリードは縮小。アラフィリップの独走は残り1kmアーチ通過とともに終わった。
マグナスコルト・ニールセン(デンマーク)のロングスパートはアルベルト・ベッティオール(イタリア)による集団牽引によって引き戻され、最終的に勝負は26名によるスプリントに。ベティオール、クリストフ、サガンの並びで残り250mの最終コーナーを駆け抜ける。下り基調のストレートで最初に仕掛けたクリストフが伸びたが、少しタイミングを遅らせて加速したサガンが勢いよく迫った。
対抗するマイケル・マシューズ(オーストラリア)を置き去りにする加速でサガンがクリストフに並び、ハンドルを投げ込んでフィニッシュ。接戦のため勝利を確信することができず、サガンとクリストフは手を挙げることができない。写真判定の結果、差し切ったサガンがおよそ30cmの差で勝利した。ラップタイムを見るとサガンは最終周回を24分21秒で駆け抜けており、その平均スピードは47.0km/hに達した。
「ただただアンビリーバブルだ。地元ノルウェーのクリストフを負かしてしまったことは申し訳なく思う。でもとにかくこの勝利を嬉しく思うし、とても特別なものだ」。2015年のリッチモンド大会、2016年のカタール大会に続くロード世界選手権3連覇を達成したサガンは「アンビリーバブル」という言葉を多用してインタビューに答える。これまで世界選手権で3回優勝している選手は4名(ビンダ、ヴァンステーンベルヘン、フレイレ、メルクス)いるが、3連覇を果たした選手は未だかつていない。
「残り5kmの時点で今日の勝利はないかもしれないと思っていた。最終周回のサーモンヒルで集団は3つに分裂していたし、後ろから追いついてくる選手もいて、前ではアタックがかかって選手が逃げていた。最後の最後まで集団はまとまらなかったし、このスプリント勝利は予想していなかった」と、刺激的なフィナーレを振り返るサガン。「この勝利を明日が誕生日の故ミケーレ・スカルポーニ、第一子を妊娠している妻に捧げたい。最高の形でシーズンを締めくくることができて本当に良かった」。
クリストフが地元ノルウェーに銀メダルをもたらし、マシューズが2015年の銀メダルに続く銅メダルを獲得。その後ろにマッテオ・トレンティン(イタリア)やベン・スウィフト(イギリス)、グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー)が続いた。なお、残り2周で落車が発生した際、チームカーに押されて集団復帰したモスコンには失格処分が下されている。
最終周回の落車で足止めを食らった新城は2分32秒遅れの大きな集団でフィニッシュ。「サーモンヒルを登り始める時に起きた落車で減速してしまい、そこで集団が行ってしまった」と新城。「常に集団の先頭が見える位置で周回していました。残り2周のサーモンヒルで集団のペースが上がった時、全開を出さずに余裕を持ってアウターを踏んでついていけたので、これは最終周回に全開を出せば勝負に残れると思っていた」。
「もうちょっと前で(サーモンヒルに)入ればよかった」と遠くを眺めながら新城は語る。「ジーロングに似ている『あまり登らない自分向きのコース』だと事前から言われていたので、チャンスがあると思っていた。サーモンヒルもちょうどアウターかインナーかを迷う勾配で、実際に自分向きだったと思います」。自身が日本人歴代最高位の9位に入った2010年のジーロング大会に似た難易度のコース設定だっただけに悔しさが溢れ出す。
ツール・ド・フランス終了後、カナダ2連戦を含めて毎週末レースをこなしてきた新城。レースが空いた前週は230kmロングを走り、ベルゲン到着後もモーターペーサーで乗り込んで好調のまま挑んだ今回のロード世界選手権。良い状態をキープする新城は中国の新たなUCIワールドツアーレースである10月19日開幕のツアー・オブ・広西に出場する予定だ。
1位 | ペテル・サガン(スロバキア) | 6:28:11 |
2位 | アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー) | |
3位 | マイケル・マシューズ(オーストラリア) | |
4位 | マッテオ・トレンティン(イタリア) | |
5位 | ベン・スウィフト(イギリス) | |
6位 | グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー) | |
7位 | ミヒャエル・アルバジーニ(スイス) | |
8位 | フェルナンド・ガビリア(コロンビア) | |
9位 | アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン) | |
10位 | ジュリアン・アラフィリップ(フランス) | |
11位 | ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド) | |
12位 | ソーレンクラーク・アンデルセン(デンマーク) | |
13位 | トニー・ガロパン(フランス) | |
14位 | ゼネク・スティバル(チェコ) | |
15位 | ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ) | |
16位 | ビアチェスラフ・クズネツォフ(ロシア) | |
17位 | フィリップ・ジルベール(ベルギー) | |
18位 | セルゲイ・チェルネツキー(ロシア) | |
19位 | ルイ・コスタ(ポルトガル) | |
20位 | サイモン・ゲシュケ(ドイツ) | |
47位 | 新城幸也(バーレーン・メリダ) | 0:02:32 |
Amazon.co.jp