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満を持してキャノンデールが発表した新型SuperSix EVO Hi-Modを、発表会会場となったスペイン・ジローナ周辺のワインディングコースでインプレッション。さらに帰国後にキャノンデールを知り尽くしたショップ店長と共にLAB71グレードを国内でテストした。2つの視点からなるインプレッションをお届けする。

ジローナのワインディングコースでSuperSix EVO Hi-Modを走らせる

テストライドを待つSuperSix EVO Hi-Mod。シャンパンゴールドのフレームが街に映えていた (c)Brazo de Hierro Photography

筆者と新型SuperSix EVO Hi-Mod。1日半の行程でワインディングロードを走った (c)Brazo de Hierro Photography
参加者にはアソス製のキャノンデールジャージが配られた。EFとのコラボが発表される前のことだった (c)Brazo de Hierro Photography


シャープ、鋭敏、緻密、そして高級感。我々ジャーナリストの前に姿を現した新型SuperSix EVOを見て頭に浮かんだのは、そんな言葉の数々だった。

今回テストバイクとして借り受けたセカンドグレードの「Hi-Mod(国内フレームセットのみ展開)」ですら、その佇まいはトップグレードと見紛うばかりに優美だ。高級感溢れるシャンパンゴールドと艶やかなブラックのペイントに、鈍く光るヘアライン仕立てのブロンズロゴ。折り目が美しく光に浮かぶトップチューブやハンドルのカーボン地...。先代の面影を残しながらも、より鋭く、より滑らかさを増した立ち姿は、美食と優雅な滞在が楽しめる、歴史あるジローナの街並みによく馴染んでいた。

フランス国境にまたがるピレネー山脈の麓までわずか20km。温暖な気候と変化に富んだ地形に恵まれたジローナという街は、キャノンデールにとって、そして欧州の自転車カルチャーにとっても切っても切り離せない場所だ。ヨーロッパ各地へのアクセスも良いこの街の郊外に、キャノンデールと強固な絆で結ばれたEFエデュケーション・イージーポストが15年ほど前にサービスコース(機材拠点)を構えたことで、ジローナは英語圏のプロ選手たちのハブとなった。現在ではジェイコ・アルウラーやイスラエル・プレミアテックなど複数のプロチームが拠点を置き、市内には100名を超えるプロ選手が居住していると言われている。

同じくジローナに本拠地を置くEFエデュケーション・イージーポストのベン・ヒーリーたちが同行。豪華なライドになった photo:So Isobe

街の治安は日本と遜色ないほどに良好。ふらふらと石造りの美しい旧市街を歩けば、今回の発表会場となった場所を含めて数多くのサイクルカフェに行き当たる。そこではプロアマ問わず、ライドを終えたサイクリストたちがコーヒーとスイーツを囲みながら気分良さそうにしゃべっていて、街中では私服姿でハイエンドバイクを転がしている人を見かけることもしょっちゅうだ。自転車が溶け込むこの街で、キャノンデールは先代SuperSix EVOも含め、過去数回に渡って重要なプロダクトローンチを行ってきた。

ほぼ同じコースで開催された先代発表会に続き、ジローナ周辺の丘陵地帯を新型SuperSix EVOで走る機会に恵まれたのは、筆者ことシクロワイアード編集スタッフの磯部。52サイズでトップ幅340mmのハンドルを装備したHi-Modにまたがり、ホテルを出てすぐに伝わってきたのは、とてつもないスムーズさだった。

鬼のようなスムーズさ。瞬発力と、風を切り裂くエアロ性能

走りのキレ味は先代を大きく上回る。レースバイクたる設計意図が走りに現れていた (c)Brazo de Hierro Photography

非常にスムーズ、恐ろしくスムーズ。

確かに前作よりも剛性が増し、キレ味が増していることは伝わってくるものの、それより何より、踏み込みに対する反発がとにかく絶妙だ。単純な乗り心地だけではなく、滑らかな踏み味と鋭い加速感のマッチングが素晴らしく、脚が続く限りどこまでも踏んでいたくなるかのよう。ほぼ同じコースで先代SuperSix EVO(同じくHi-Mod)を試した前回発表会のテストでも「一度走り出してしまえばそこからの踏み込みや、速度を乗せてからの巡航は極めてスムーズ」と書いたものの、今回のHi-Modは、軽量化やカーボン積層の妙も相まってか、低速域や、巡航時から踏みたす時にも先代モデルを遥かに上回って走りのフィーリングがクリアで気持ち良い。

我々メディアは高剛性の硬いバイクを(少々の乗りにくさも込めて)「塊感」という言葉で表現するが、この新型SuperSix EVOにその言葉は全くもって浮かばない。フレーム全体の剛性バランスが良く、リアバックの質量的な軽さと細さが、絶妙なウィップ感を伴って加速に繋げていく様は高揚感すら感じるレベル。高速域に入ってもなお、打ち止め感なくスルスルと加速するのは、前作同様という空力性能と、この全体的な剛性バランスの妙あってこそだと思う。

勢いをつけてアウターで駆け上がるような勾配はSuperSix EVOの真骨頂。小気味良いリズムで登りをこなせた (c)Brazo de Hierro Photography

先代まで独自開発していたホログラムホイールの開発をやめ、上級グレードの完成車にキャノンデールと同じPONグループのリザーブホイールがセットされるようになったのは、バイク全体のトータル性能を底上げする上での良い取捨選択だったと思う。「52|63」のモデルチェンジとしてリリースされたばかりの「57|64」ホイールは、DT 240ハブ仕様で1574gというカタログ数値以上に走りが軽く、踏み込んだ以上にスッとスピードが乗り続け、それでいて路面の凹凸をキャンセルしてくれるほどになめらか。登り特化型のバイクに仕上げるなら他の選択肢があるはずだが、平坦や丘陵コースを速く走りたい人なら、SuperSix EVOとのマッチングは非常に良い。国内で「57|64」をセットした完成車はLAB71グレードのみだが、新型SuperSix EVOとリザーブホイールの相性の良さは特筆すべきであることを覚えておくべきだろう。

「本当に満足できるバイクになった」とヒーリーは言う

テストライドはEFエデュケーション・イージーポストのベン・ヒーリー(アイルランド)とリチャル・カラパス(エクアドル)、そして女子チームのセドリーヌ・ケルバオル(フランス、EFエデュケーション・オートリー)が同行するという豪華なものだった。この3人、特にEFのエースを担うヒーリーは、数日前に受け取ったばかりという新型SuperSix EVOの乗り味に満足している様子だった。

メディア勢と夕食を共にしたヒーリーたち。SuperSix EVOの乗り味に満足している様子だった (c)Brazo de Hierro Photography

こちらも新型バイクに上機嫌だったリチャル・カラパス(エクアドル)。五輪を制した日本は良い思い出の地、とも (c)Brazo de Hierro Photography
(筆者を含めて)ジャーナリスト勢から質問攻めに遭うカラパス (c)Brazo de Hierro Photography


「とにかく気に入っているよ。良くなったポイント?そうだね、反応性が上がって俊敏になったことと、ハンドル位置も下がったことの2つ。先代は正直僕にとっては少しダルかった。今まで以上にエアロポジションが取れるのも良い。本当に満足できるバイクになったよ」。

ヒーリーは休憩ポイントで配られたパニーニを食べながら、来季を共に戦う相棒に目を落とす。昨年はマイヨジョーヌを数日間着用し、世界選手権で3位。EFのエースを担う25歳は、新しいバイクを前にとても気分が良さそうだった。

女子チームのエースを担うセドリーヌ・ケルバオル(フランス、EFエデュケーション・オートリー)。彼女もまた、新型バイクを気に入っていた一人だ (c)Brazo de Hierro Photography

ピンク色のジャージを先頭に進むトレインは平均勾配5%ほどの峠を駆け上がり、そのままツイスティなダウンヒルへ。登りで立ち上がってバイクを振る時、トップ340mmの幅狭ハンドルには最後まで慣れることができなかったが、バイク自体の登坂力は二重丸。Hi-Modでこれなんだから、トップモデルのLAB71はどうなってしまうんだろう、と思ったほどだ(だからこそ帰国後にLAB71インプレの場を設けた。記事後編に続く)。

ダウンヒルの扱いやすさに舌を巻いた

そして何より、ダウンヒルでの扱いやすさには舌を巻くほかなかった。幅狭ハンドルをつけているにも関わらず倒し込みの自然さはピカイチで、狙ったラインをスパスパ通せるどころか、結構際どいラインを攻めてもなお、フロントタイヤ〜フォークが地面を柔らかく掴んでいる感覚が強く、ダウンヒルで70~80km/hに達する場面でも安心感は一切損なわれない。

コーナーに向けて倒し込んでいるとき、出口に向けて立ち上がって加速に移るときなど、荷重変化が起きている時の感覚が、リニアなのにしっとりしていて驚くほど気持ちが良い。「オンザレール」という表現よりもしっとり感があるのに、機敏で、コントローラブル。「操る感覚」が好きでスポーツバイクに乗り続けている自分にとって、コーナリングの気持ち良さは過去乗ってきたバイクの中でも一番だった。

ダウンヒルの扱いやすさはピカイチ。ホイールやタイヤとのマッチングもあるが、多く試してきたバイクの中で、間違いなく一番下りが気持ち良いバイクだった (c)Brazo de Hierro Photography

しなやかな乗り味が持ち味のリザーブホイールと、それ用に設計された29CのヴィットリアCORSA PROとのマッチングなど複数の要素が絡み合っているのだろうが、CORSA PROは普段乗るマイバイクにも取り付けているから、この感覚の大部分は車体に起因するものなのだろう。カーボンレイアップはもちろん、74度のシートアングルとゼロオフセットのシートポストを軸に、52サイズで536mmと少し長めに感じるトップチューブと、410mmの短めのチェーンステー、そしてスラックな71.2度ヘッドアングルによる妙ではないだろうか。

現代レーサーが求めるポジションに、安定感と機敏な動きをミックスしたジオメトリー。特に中間サイズを求める日本人ユーザーにとって、これまでの「51」サイズを「50」と「52」に細分化されたことは、この良いフィーリングをベストサイズで味わう上で大きな意味があると思う。

血の気の多いジャーナリストたちがダウンヒル勝負を繰り広げていたが、心にある程度余裕を持ってついていけたのは、このコントロール性の良さに他ならない。エアロモデルと軽量モデルのまさに中間、とても良い感触を得たまま贅沢なスペイン試乗を終えたのだった。

最高峰のLAB71をテスト 56サイズ、フルパッケージで6.8kg

帰国後に風魔横浜の高木友明さんを招き、LAB71(SL仕様)のテストを行なった。筆者、磯部は引き続きHi-Modを乗った photo:Naoki Yasuoka

ジローナの峠でHi-Modが見せた走りはセカンドグレードという枠を大きく踏み越え、ひとつの完成形を示しているかのようだった。しかし、キャノンデールの真の牙は、そのさらに上の領域に隠されている。

Hi-Modでこれほどまでに走るのなら、最高峰のLAB71、しかもあの極限まで削ぎ落とされたSL完成車は一体どんな世界を見せてくれるのか。帰国後にインターテックの協力を仰ぎ、すでに国内に準備されていたLAB71フレームに超軽量な「SystemBar Road SL」ハンドルと軽量ホイールを組み合わせたハイエンド軽量モデルを借り受けてテストを行なった。インプレを担当したのは国内屈指のキャノンデール・スペシャリストであり、走れる店長としても知られるキャノンデール横浜/アウトドアスペース風魔横浜の高木友明さんだ。
「とにかく軽い。サイコーです。僕が乗った56サイズで、ペダルもサイコンもつけた状態で6.8kgジャスト。それに、この反応性。山に行って全開でもがきに行きたくなりますよね」そう語る高木さんの視線は、単なる重量の数字はもちろん、バイクが持つ「キレ」の質に向けられていた。

新型SuperSix EVOは各社の最新トップモデルと比べても全く引けを取らず、さらに芯の通った俊敏性が備わっているのに脚に来る嫌な硬さはない。加えて乗り心地も良いという、トータル性能で見ると一歩上のレベルを行く。そのバランス感こそ高木店長が惚れ込むポイントだ。

「走りのキレ味が抜群に良くなった。登りで全開もがきしたくなる」と高木店長は評価する photo:Naoki Yasuoka

「俊敏なのに脚にこない。グッと前に進む」と高木店長 photo:Naoki Yasuoka
高木店長が乗った LAB71 SLはDT Swiss ARC 1100 Spline 38を装備。エアロ仕様のHi-Modとも乗り比べた photo:Naoki Yasuoka



「キャノンデールはバランスに優れたバイクを作るのが本当に上手い。歴代のEVOはずっとそうでしたよね。どこかの要素が突出しているのではなく、バランスを保ったまま正統進化している。今回もあれだけ完成されていた前作から、さらに良くなるのかと驚かされました。Hi-Modと乗り比べましたが、LAB71はもう一段上をいって走りが軽い。これは凄いですね」。と、高木店長は歴代モデルを振り返りながらトップモデルの走りに驚きを隠さない。

各世代を通じてトータル性能は優秀で、実際、ショップユーザーの反響も大きく人気だった。その中で改善されてきた部分も多かったという。

「例えば、第3世代モデルにはハンドルの切れ角制限があって、切り込みすぎてコラムを破損する事例もありました。それが第4世代でデルタコラム化されてクリアになった。第4世代ではスマートセンスのグロメットや、DI2バッテリーの蓋が脱落するケースがありましたが、それらも改善されているようですね。専用ボトルケージも保持力が上がっているし、全体的な作り込みが上がっていると思いますよ」と、ひとしきり走り終えた高木店長はバイクを眺めながら言う。

「先代から更に良くなるんだ、と思わされました」と高木店長は驚きを隠さない photo:Naoki Yasuoka

「Hi-Modの高級感も凄いですね。専用ボトルケージの使い勝手も上がったように感じます」 photo:Naoki Yasuoka
DI2バッテリーの蓋もアップデート。細部まで抜かりはない photo:Naoki Yasuoka



特に新型の軽量ハンドル「SystemBar Road SL」への評価は高い。モモデザインより150gも軽いことがダンシングの振りの軽快さに直結し、下側のフレア形状による収まりの良さも含め、SuperSix EVOの軽量マシンとしての使い勝手をさらに広げる重要なピースだという。さらに高木さんは、いちサイクリストとしての視点で言葉を続けた。

「乗り心地が良く、反応性に優れ、そしてエアロで速い。それはつまり、レースだけでなく、日々のトレーニングからロングライドまで、あらゆる場所へ連れ出していけるということです。そんな使いやすさこそがキャノンデールの、そしてSuperSix EVOの真骨頂ですね」。

あらゆる場面で味方になる乗り味、それがSuperSix EVOの真骨頂だと高木店長は断言する。ストップ&ゴーの多い市街地ライドでもその特徴を確認できたのだった photo:Naoki Yasuoka

「カタログには現れない部分ですが、日々の相棒としてストレスなく付き合っていけることは、趣味のバイク選びにおいて、何より重要なことだと思うんです。新型SuperSix EVOは、どんなライダーが乗ってもここが嫌だなと感じる隙がない。今のロードバイクシーンに対する、キャノンデールからの最も誠実な回答ではないでしょうか」。
提供:インターテック | text:So Isobe