「U23のツール・ド・フランス」と呼ばれる世界最高峰レース「ツール・ド・ラヴニールが開幕。6人の選手による日本ナショナルチームが参戦。第1ステージは平均時速44km超の高速レースとなるも、日本U23は落ち着きを持ちながら順調な滑り出しを見せた。日本ナショナルチームによるレースレポートをお届けする。

近未来のスターに会いに子供達が集まる近未来のスターに会いに子供達が集まる photo:cyclismejapon
青空にブルターニュの旗が翻る青空にブルターニュの旗が翻る photo:cyclismejapon晴天よりも雨の日が多いとされるフランス西岸部ブルターニュ地方の都市、ルデアックからスタートするU23版ツール・ド・フランス「ツール・ド・ラヴニール」(「未来へのツール」の意味)。18日から27日までの全9ステージ(休息日1日有)、総走行距離1,201km、獲得標高16,673mにて争われる”世界最高峰のU23(23歳未満)選手限定レース”である。

国別対抗戦である本大会には、イギリス、フランス、イタリア、スペインを始め、世界のU23トップが出場。今年の日本U23は招待枠ではなく、自力で出場枠を獲得しての出場ということもあり、日本自転車ロードレース界にとっては、歴史に残る第一歩となる。

悪天候で有名なブルターニュ地方スタートという云うことで誰もが雨のレースを覚悟をするも、皆の期待?を裏切る見事な晴天に恵まれ、気温も24度。夏らしい天候の中、1,201kmで争われる世界最高のU23選手向けレースが幕を開けた。

27日のレース終了まで、このレポートでは日本選手はもとより国外チームの動向や、現地観光情報も交えて様々なニュースをお届けしたい。

子供にサインを求められる石上優大子供にサインを求められる石上優大 photo:cyclismejapon自転車の調整について高橋優平メカと話す雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン)自転車の調整について高橋優平メカと話す雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン) photo:cyclismejapon


U23日本ナショナルチームメンバー
雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン)
石上優大(EQADS/Amical Vélo Club Aix en Provence)
岡 篤志(宇都宮ブリッツェン)
岡本 隼(日本大学/愛三工業レーシング)
小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)
山本大喜(鹿屋体育大学)
監督:浅田顕

■レース基本情報
レース名:Le Tour de l'Avenir
https://www.tourdelavenir.com/
カテゴリー:UCI Europe Tour (2.Ncup)
期間:2017年8月18日(金)-27日(日)
距離:全9ステージ=総走行距離1,201km、総獲得標高=16,673m
出場国(各チーム6名、24チーム=計144人):
ドイツ/オーストラリア/オーストリア/ローヌアルプ・オーヴェルニュ地方選抜(開催国特別枠)/ベラルーシ/ベルギー/ブルターニュ地方選抜(開催国特別枠)/コロンビア/デンマーク/アメリカ合衆国/イギリス/アイルランド/イタリア/日本/ルクセンブルグ/モロッコ/ノルウェイ/オランダ/ポーランド/ポルトガル/チェコ/ロシア/スイス

■第1ステージ「ルデアック>ルデアック」=134km(獲得標高1673m)

フランス西部のブルターニュ地方は、フランスで最も自転車レースが盛んな地域であり、過去にツール5度優勝のベルナール・イノーや、フランスが今最も期待するワレン・バルギルなどを輩出。正にU23世界最高峰大会のスタートに打ってつけの地域である。バカンス中のフランス人が地中海や海外へと脱出する時期の平日にも関わらず、沿道にはツール・ド・フランスと見間違えるような観客が集い、近未来のスター達を品定めするような眼差しで観戦する。

来季チームスカイへの移籍が噂されるパヴェル・シバコフを含む強力な逃げが終盤まで集団に抵抗来季チームスカイへの移籍が噂されるパヴェル・シバコフを含む強力な逃げが終盤まで集団に抵抗 photo:Le Tour de l'Avenir2017
コースは135kmのライントレースで、最後の20kmはルデアックの周回コースを3周。コースプロファイル図だけを見ると「フラット(平坦)気味」の優しいコースに見えるものの、実際は細かいアップダウンの延々とした繰り返しで、本レースの第1ステージに相応しい、全く気の抜けないステージ。

レース序盤。最初の山岳賞ポイントである25km地点で、本レース総合優勝本命で先日のジロ・デ・イタリアU23で優勝したパヴェル・シバコフ(ロシア)を含む11名の逃げが形成される。逃げが集団に対して稼いだタイム差は最大で4分。ベルギーやポーランドがメイン集団を強力に牽引したため逃げ切りは不可に見えたものの、人数を3名ほどまで減らしつつ最終局面まで抵抗する逃げ集団。

最後は8月3日に行われたヨーロッパ選手権のU23タイムトライアルチャンピオンであるカスパー・アスグリーン(デンマーク)が、得意の独走力を活かして見事な逃げ切り優勝を飾った。

強力なベルギーやポーランドチームの追い上げに抵抗し、ソロ逃げ切り優勝を掻っ攫ったキャスパー・アスグリーン(デンマーク)強力なベルギーやポーランドチームの追い上げに抵抗し、ソロ逃げ切り優勝を掻っ攫ったキャスパー・アスグリーン(デンマーク) photo:Le Tour de l'Avenir2017
日本人選手はトップから4秒遅れのメイン集団で、19位の小野寺玲(19位)を筆頭に、岡篤志、岡本隼、山本大喜、雨澤毅明、石上優大の6人全員がフィニッシュした。

■U23ジャパンナショナルチーム浅田顕監督のコメント
「ナショナルチームとして雨澤を中心とした個人総合成績20位以内を狙う。前半各ステージでも個々の持ち味を生かし好成績も狙ってゆく。
第1ステージはレース序盤からアタックが続き高速な展開になり、11名が先頭グループを形成。日本チームもアタックには加わるが逃げには残れず集団でゴールを目指す。11名の逃げは小周回に入りゴール直前で捕まるが、その直前に単独でアタックしたデンマークのASGREENが唯一集団に飲まれず4秒差をつけて優勝した。日本チームはスプリントに参加した小野寺が19位でゴール。他のメンバーも全員同タイムのゴールとなった。明日も同様の展開が予測される中、積極的に逃げに乗る動きを続けて行きたい。

今日はこれまで重ねてきた準備の成果を確かめる事、そして久しぶりのレースなのでスピードへの順応とリズムを取り戻すことが重要だった。皆序盤はハイペースに苦しんだものの徐々に身体も動きはじめ全員良い感触でゴールする事ができた。」

レース直後に風格を漂わせながら佇む小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)レース直後に風格を漂わせながら佇む小野寺玲(宇都宮ブリッツェン) photo:cyclismejaponレース直後の雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン)。計画どおり落ち着いてレースをこなし、勝負どころに備えるレース直後の雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン)。計画どおり落ち着いてレースをこなし、勝負どころに備える photo:cyclismejaponレース直後、ビッグレースに興奮の面持ちの石上優大レース直後、ビッグレースに興奮の面持ちの石上優大 photo:cyclismejapon


■各選手のコメント

・1位:キャスパー・アスグリーン(デンマーク)
「今日はチームが集団内で働かなくても良いように、はじめから誰かを逃げに送り込む予定だったんだ。更にこのレースでは第1ステージでの逃げ切り成功が過去にも多かったから、逃げ切りは意識していたね。逃げにはパヴェル・シバコフ(ロシア)ら強豪が居たので警戒はしていたけど、まずは逃げ切ることを考えて皆協調して走った。最後はスプリントを避けたかったので、集団から単独で飛び出したんだ。ゴール2km手前でメイン集団がすぐ後ろに見えていたので、ゴールまで全精力を出し切って踏んだ。明日からはこのマイヨジョーヌをチームで守るつもりだけど、監督と作戦会議をしてチームとしての出方を決めるよ」

・8位&山岳賞:ヴァランタン・マドゥアス(フランス)
「25km地点の山岳賞の登りで出来た逃げは常に協調体制で進んだんだけど、最終局面での向かい風でちょっと崩壊気味になってしまった。今日はボク向きのコースだったんだから狙っていたんだよね。最終局面でもっとうまく立ち回れたら勝てた可能性もある。この山岳賞を守るには相当なエネルギーを使ってしまうから、守りを優先にした走りをするかはわからないね」

・19位:小野寺 玲(日本U23/宇都宮ブリッツェン)
「普段は日本で走っているものの、日本代表U23チームで海外遠征にも多く出させて貰っているので、今は欧州のレースでもアウエイ感はありませんね。今日の逃げは最終周回コースに入ってからは目視出来る所まで追い詰めたし、ベルギーを筆頭とする集団の強力な牽引ぶりからして最終的には吸収されるかと思っていたものの、逃げ切ってしまった。やはり世界のトップU23選手が集まるレースだけあって、選手レベルが普通では無いですね。やっぱりラヴニールは違う。」

・26位:岡 篤志(日本U23/宇都宮ブリッツェン)
「まだ全日本選手権で折った鎖骨がビリビリしますが(笑)、体調はこの上なく万全。とにかく骨折からの復帰だと云うのにボクの可能性を信じてくれて、U23に於ける世界最高峰レースへのメンバーに選んで貰えたので、結果で恩返しをしたいです。まだ第1ステージですが、この舞台に居られることにワクワクしていますね。」

・41位:岡本 隼(日本U23/日本大学/愛三工業レーシング)
「世界の強豪チームが集まっているため、平均時速も44km超。特にベルギーチームは他チームを苦しめるためはどの地点でスピードアップすればよいか?などのコツを熟知しており、流石だと思いましたね。しかし他チームのそのような動きを冷静に読み取れる落ち着きを我々U23ジャパンは持っている。後手後手に回っていたこれまでとはひと味違う戦いをする準備は整っています。」

・102位:山本大喜(日本U23/鹿屋体育大学)
「逃げたかった。とにかくレース初めから逃げたくてウズウズしていましたが、丁度自分の脚が一時的にきつい時に、レースが動くタイミングが重なってしまい、今日の勝ち逃げに乗り遅れてしまった。とはいえ、調子もモチベーションもすこぶる良いので、明日以降のステージでも期待していて下さい。」

・110位:雨澤毅明(日本U23/宇都宮ブリッツェン)
「コースプロフィールだけを見ると若干簡単なコースに見えるんですが、ブルターニュ地方特有の細かいアップダウンが多く、全く休むところがなかったので、十分キツかったですね。しかし事前キャンプではレース強度まで身体を追い込めなかったので、非常にきつく感じた第1ステージは最高の”レーススピード順応ステージ”となりました。明日からはもっと調子よく走れると思います。まずは休息日前の第6ステージまで、大きな逃げは逃さないように走っていきます。」

・113位:石上優大(日本U23/EQADS/Amical Vélo Club Aix en Provence)
「25km付近の最初の山岳賞ポイントへと向かう登りで決定的な逃げに乗りかけたんですが、重要な瞬間に脚が足らず、後続集団に戻ってしまった。とはいえ、まだ第1ステージなので、走りながら調子を上げていきますよ。見てて下さい。」
リザルト
1位 カスパー・アスグリーン ASGREEN Kasper(デンマーク) 3時間3分54秒
(平均時速44.274km/h)
2位 クリストファー・ハルフォルセン HALVORSEN Kristoffer(ノルウェイ) +4秒
3位 イメリオ・チマ CIMA Imerio(イタリア) 以下同タイム
 
19位 小野寺 玲(宇都宮ブリッツェン)
26位 岡 篤志(宇都宮ブリッツェン)
41位 岡本 隼(日本大学/愛三工業レーシング)
102位 山本大喜(鹿屋体育大学) +4秒
110位 雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン) +4秒
113位 石上優大(EQADS/Amical Vélo Club Aix en Provence)
*フルリザルトへのリンク(PDF)
https://www.tourdelavenir.com/wp-content/uploads/1990/01/Stage-1.pdf

photo&text:Kenichi.YAMAZAKI(Cyclisme Japon)

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