梅雨入りしたものの、なかなか雨は降らない。例年梅雨時期での開催のため、雨のイメージが強い第2戦SRAM PARK大会だが、今年は珍しく晴天でのレースとなった。



コース中盤にあるS字の「スラムコーナー」辺りに立つと、スタート、フィニッシュを含めたコースの全てが見えるコース中盤にあるS字の「スラムコーナー」辺りに立つと、スタート、フィニッシュを含めたコースの全てが見える (c)DOWNHILL SERIES
元々、SRAM代理店であるダートフリークが部品開発のためのテストコースとして採石場跡地を買い取り、整備されたこの会場。現在は会員制のモトクロスバイク&MTB専用のライディングパークとして一般にも解放されており、年間を通して走り込んでいるローカルライダーたちの姿が目立つ。昨年、一昨年と2年連続でPROクラスライダーを退け、賞金10万円を持って帰っている18歳の若者・井岡佑介選手(重力技研/GLcomponents)もその一人である。今年も勝って井岡選手が3連覇を果たすのか、それともPROライダーたちが意地を見せるのかに注目が集まった。

コースは約430m、標高差48m。常設コースを基本に、コーステープを使用してレイアウトをアレンジ。昨年よりもコーナーの数が増え、中間地点は2ルートから選択できる設定へと変更された。左右に連続するバンクとジャンプを組み合わせたレイアウトは、バイクコントロールのあらゆる要素が問われるごまかしの効かないコース。梅雨を飛び越した夏のような暑さに、ただでさえ水はけの良いコースはバフバフに乾き、風の強さも相まって砂埃が盛大に舞い上がる。

ここのポイントは、コース全てが見えること。名古屋から1時間というアクセスの良さあって、コース脇にはたくさんの観客が並ぶ。だからこそ気合いが入ると同時に、ストレスも感じるだろう。メンタルの強さもこのコース攻略の鍵だ。

この会場での搬送は軽トラスタイルこの会場での搬送は軽トラスタイル (c)DOWNHILL SERIESショートコースのため、レースはコンマ差の闘い。ライバルの走りを観察したり、反復練習を重ねるライダーの姿も多く見られたショートコースのため、レースはコンマ差の闘い。ライバルの走りを観察したり、反復練習を重ねるライダーの姿も多く見られた (c)DOWNHILL SERIES
北海道から1人で遠征してきた大学生、北村匠世選手(北海道科学大学自転車部)。レース後、「こんなたくさんの観客のなかを走ったのは初めてで、気持ちよかったです!」と話してくれた北海道から1人で遠征してきた大学生、北村匠世選手(北海道科学大学自転車部)。レース後、「こんなたくさんの観客のなかを走ったのは初めてで、気持ちよかったです!」と話してくれた (c)DOWNHILL SERIES
タイムドセッションは、開幕戦十種ヶ峰(山口県)で優勝したPROクラスの泉野龍雅選手が53秒208で1位。0.627秒差の53秒835で井岡佑介選手が2位、そして弟の井岡計太選手(重力技研/GLcomponents)が54秒096で3位、そして4位と5位にはローカルライダーの山田淳一選手(重力技研/GLcomponents)、山川瑠偉選手(グローカルバイク)が続いた。

日曜日。太陽には薄く雲がかかり、前日よりは走りやすい気温だが、相変わらずスーパードライなコンディションで、スタッフは朝からコースに水を撒く。

本戦のエリートクラスではやはり井岡佑介選手が前日の泉野選手のタイムを上回る、51秒864のタイムでサラリと優勝をさらい、2位に続いた弟の計太選手と共にPROクラスに挑戦する下克上の権利を得た。

 「FOXシングル」の根っこセクションを走る山本ブルノ選手(Brotherhood)はスポーツ男子クラスで優勝 「FOXシングル」の根っこセクションを走る山本ブルノ選手(Brotherhood)はスポーツ男子クラスで優勝 (c)DOWNHILL SERIES小学生ライダーの伊藤新太選手も難しいシングルトラックを走り抜ける小学生ライダーの伊藤新太選手も難しいシングルトラックを走り抜ける (c)DOWNHILL SERIES
 木漏れ日が差し込むシングル区間を走る山本恵子選手 木漏れ日が差し込むシングル区間を走る山本恵子選手 (c)DOWNHILL SERIES
注目のPROクラス、下克上の井岡佑介選手が暫定トップタイムとなる51秒712、井岡計太選手は52秒457、持病のヘルニアからくる腰痛で前日のタイムドセッションを走れなかった阿藤選手は54秒260、田丸裕選手もクラッシュで及ばず、残すライダーは一人。最終走者としてスタート地点でのプレッシャーはいかばかりだったか、観客もみな息をのむなかで泉野選手がスタート。丁寧でスムーズな走り。そして、読み上げられたタイムは51秒039! 井岡選手のタイムを0.673秒上回り、井岡選手の3年連続優勝はならず。同時に、泉野選手の2連勝が決まった。

レース後、悔しそうな表情を隠すことなく表彰台へ立った井岡選手。「悔しいです。どこでタイムが開いているかもよく分かっているので、次は圧倒的なタイム差で勝てるようにします。ここが到達点ではないので。」と話した。一方、怪我で監督業に専念する井手川直樹選手(AKI FACTORY/STRIDER)と共に、試走では動画を撮ってコースのライン取りを何度も見返し、情報交換をしながら繰り返し練習を重ねた泉野選手は、「シーズンオフの間からジムへ通い、カラダを作っています。やるべきことをやっていますから。」と自身の優勝を、勝者としてしっかり受け止めていた。ちなみに、泉野選手は18歳、井岡佑介選手も18歳、計太選手は16歳と、20歳以下の若者達の熱い闘いでもあった。

スラムコーナーではいかにスピードを落とさず走り抜けるかがポイントだが、勢い余っての転倒も多発スラムコーナーではいかにスピードを落とさず走り抜けるかがポイントだが、勢い余っての転倒も多発 (c)DOWNHILL SERIES
エリート女子クラスは、普段はオートバイライダーだという山口恵子選手が初出場で初優勝。エキスパート男子クラスは、ローカルである吉川邦岳選手(DKMC)が優勝し、次戦からエリートクラスへ。スポーツ男子は山本ファビアノ選手(Brotherhood)が優勝。ファーストタイマー男子では玉置勝孝選手(ダブルナットレーシング)、XC BIKEクラスでは渡辺速人選手が優勝した。

今会場のエントリー費には大人より安く設定された小学生料金があることもあって、10人の小学生がエントリー。DOWNHILL SERIESは原則としての参加資格は中学生以上だが、小学生だからといって特別扱いはせず、大人と同じコースを大人に混じって練習をする、DH競技はあくまでも速い者が優先ということを理解してもらった場合にだけ小学生を受け入れている。

小学生ライダーとエリートライダーが一緒に走っているのはDOWNHILL SERIESならではの光景小学生ライダーとエリートライダーが一緒に走っているのはDOWNHILL SERIESならではの光景 (c)DOWNHILL SERIES
最年少ライダー、小学1年生の吉村慶之介選手最年少ライダー、小学1年生の吉村慶之介選手 (c)DOWNHILL SERIESキッズライダーと保護者を対象に行われた小学生ミーティングキッズライダーと保護者を対象に行われた小学生ミーティング (c)DOWNHILL SERIES


今回も試走前に小学生ライダーとその保護者に向けたミーティングを行った。フルフェイスヘルメットが大きく見えるほど小さなカラダでコースを下ってくる姿にはヒヤヒヤもするが、みんな一人前にライダーだ。DOWNHILL SERIESを始めてから4年。そうやって小学生のうちから大人に混じって走っていた子供達が中学生になり、CJへ挑戦していく。これからのMTB界を担うライダーを育てるという意味では、小学生ライダーの受け入れもDOWNHILL SERIESの存在意義かもしれない。10人もの小学生が走る姿、そして同じコースで10代の若手が日本トップクラスの熱い闘いを繰り広げる姿を見てそう思わされた第2戦SRAMPARKだった。

第3戦福井和泉MTB PARKは7月1-2日に開催される。

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