2010/01/18(月) - 10:18
フォーカスのラインナップにはカーボンフレームだけでなくアルミフレームも存在する。そのアルミのハイエンドに位置するのがこのクレブロだ。昨年モデルとは形状が異なり、ハイドロフォーミング成型により、より立体的なデザインを採用している。
フォーカス CULEBRO EXPERT (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
なかでも特徴的なのはバック三角だろう。上位モデルのイザルコを踏襲するような横扁平のチューブ形状を採用し、ショック吸収性を高めているようだ。またリアエンドのデザインもイザルコ譲りのユニークな形状だが、高い次元でスタビリティと剛性を実現しているという。
トップチューブには横扁平加工が施される。これはハイドロフォーミング成型による造形だ。ヘッドからシートに向かって細くなるチュービングも性能以上に高級感がある佇まいを演出している。
テーパードヘッドを採用している
無骨なまでに盛られた溶接ビード
スムーズな仕上げのシート集合部
ハイドロフォーミング製法によってチューブ形状を整える
ヘッドチューブは上下異径のテーパードヘッドを採用し、よりステアリング性能を安定させる。この構造は重量も軽く仕上がり、パフォーマンスアップに効果的である。
ハンガーの方式は流行のBB30を取り入れた。アルミフレームとはいえ、最新トレンドの取り入れ方などから考察すると妥協して製作したモデルではないことが伺える。アルミを1つの有効な素材として捉え、いかに性能を引き出しロードバイクとして完成させるかを考慮したフレームといえる。その結果、ハイエンドモデルといわしめる性能を手に入れたのだろう。時代はカーボンとはいえこのアルミフレームには期待がもてそうだ。
ダウンチューブは大口径だ
ハイドロフォーミング製法によってチューブ形状を整える
バックステーは横扁平デザイン
ハイドロフォーミング成型のよるアルミフレームを持つこのモデルを、元プロライダーの三船雅彦氏と分析能力に定評のある山本健一氏はどう評価したのだろうか? 早速、両氏によるインプレッションをお届けしよう。
※このインプレに使用したのは試乗車であり、市販車のカラーはホワイトになります(ファイル下部参照)。
― インプレッション
「アルミなのに高水準のショック吸収性」 三船雅彦
ほぼすべてのメーカーのラインナップにおいてはアルミニウムフレームは廉価モデル、もしくはエントリーモデルの意味合いをもつのだが、このクレブロにおいては少し考え方を変えないと整理が付かなくなる。
クレブロはあくまでフォーカス・アルミニウムカテゴリーのハイエンドモデル。乗ってみればよくわかるが、そういう位置づけが一番的を得ているだろう。
「カーボンに比肩するポテンシャルを持つアルミフレームだ」 三船雅彦
フォークもCAYOやイザルコの一部モデルと共通のオリジナルカーボンフォークを採用し、フレームの剛性は相当高いものの、距離をこなしてもストレスを軽減しているのを感じられるぐらい、乗り心地は気持ちよい。
BB30の採用でハンガー周辺の剛性は高いはずなのだが意識はそこに向かず、むしろアルミフレームなのに高水準のショック吸収性ばかり目についた。ハンドリングもナチュラルな味付けで、まさにレースに通用するスペックだといえる。
元選手として、そして所有欲を満たしてくれるという意味ではイザルコは捨てがたいが、もし体が自由に、頻繁に自転車を交換しながら走り続けることができるのなら、ぜひクレブロも自分のバイクとして所有して走ってみたいと感じさせてくれる性能だった。
「アルミの雑味を排除したイメージ。軽快な走りが楽しめた」 山本健一(サイクルジャーナリスト)
「へたなカーボンフレームよりもずっと扱いやすい」 フルアルミフレームとして、ハイエンドモデルに名を連ねるモデルとして期待は大きかった。逞しいフレームチューブから繰り出されるダイレクト感と、ライダーのエンジンを試すようなピーキーなイメージがあったが、思った以上にシルキーな乗り味だった。アルミフレームに抱くいわゆる“硬質”なイメージ、雑味といったネガティブなイメージは生まれてこない。
平均的なカーボンフレームの性能と比較しても遜色ない。やや足回りが硬いものの、それほど大差ないレベルといえるだろうか。とにかくカーボンフレームに乗り慣れた身体でも、すんなりと受け入れることができた。
剛性は前述のとおり、適度でパワーロスもなくキビキビと進む。時速30kmほどでイーブンペースを刻むのにちょうど良いレベルではペダルに負荷を感じず爽快な走りを楽しめた。反面、高速域ではホイールの性能もあってか、ややオーバー気味に踏み込むようなイメージもある。ただしフレームが踏み負けているような雰囲気ではない。
アッセンブルされているコンポーネントはシマノ・105だが、全体の感触ではアルテグラ以上のコンポーネントが適正なフレームだと思う。ホイールも無論、上級モデルがよく似合う。レースやイベント用に、ワンランク上のホイールを用意することをオススメする。しかしながら完成車で23万円弱という驚きのプライスで一瞬、食指が動いてしまった。
実力的には実業団レベルのレースでもこのスペックならば通用するのではないだろうか。意外といっては失礼だが乗りやすいバイクだった。ショック吸収性に優れ、なおかつダイレクト感は失っていない。トレンドを忠実に守る機構の数々など、へたなカーボンフレームよりもずっと扱いやすいだろう。
フォーカス CULEBRO (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
フォーカス CULEBRO EXPERTホワイト(市販車はこのカラーになります)
サイズ 50、52、54、56cm
カラー ホワイト
フレーム ニューハイドロフォーミングトリプルバテッドアルミフレーム
フロントフォーク フォーカスカーボン
ホイール フルクラム・レーシング7
シマノ・105ブラック・コンパクト仕様完成車 ¥229,950(税抜¥219,000)
― インプレライダーのプロフィール
三船雅彦(みふねまさひこ) 三船雅彦(みふねまさひこ)
9シーズンをプロとして走り(プロチームとの契約年数は8年)プロで700レース以上、プロアマ通算1,000レース以上を経験した、日本屈指の元プロサイクルロードレーサー。入賞回数は実に200レースほどにのぼる。2003年より国内のチームに移籍し活動中。国内の主要レースを中心に各地を転戦。レース以外の活動も精力的に行い、2003年度よりJスポーツのサイクルロードレースではゲスト解説を。特にベルギーでのレースにおいては、10年間在住していた地理感などを生かした解説に定評がある。2005年より若手育成のためにチームマサヒコミフネドットコムを立ち上げ、オーナーとしてチーム運営も行っている。
過去数多くのバイクに乗り、実戦で闘ってきたばかりでなく、タイヤや各種スポーツバイクエキップメントの開発アドバイザーを担う。その評価の目は厳しく、辛辣だ。選手活動からは2009年を持って引退したが、今シーズンからはスポーツバイク普及のためのさまざまな活動を始めている。ホビー大会のゲスト参加やセミナー開催にも意欲的だ。
マサヒコ・ミフネ・ドットコム
山本健一(バイクジャーナリスト) 山本健一(バイクジャーナリスト)
身長187cm、体重68kg。かつては実業団トップカテゴリーで走った経歴をもつ。脚質はどちらかといえばスピードマンタイプで上りは苦手。1000mタイムトライアル1分10秒(10年前のベストタイム)がプチ自慢。インプレッションはじめ製品レビューなどがライフワーク的になっている。インプレ本のバイブル、ロードバイクインプレッション(エイ出版社)の統括エディターもつとめる。
text:山本 健一
photo&edit:綾野 真

なかでも特徴的なのはバック三角だろう。上位モデルのイザルコを踏襲するような横扁平のチューブ形状を採用し、ショック吸収性を高めているようだ。またリアエンドのデザインもイザルコ譲りのユニークな形状だが、高い次元でスタビリティと剛性を実現しているという。
トップチューブには横扁平加工が施される。これはハイドロフォーミング成型による造形だ。ヘッドからシートに向かって細くなるチュービングも性能以上に高級感がある佇まいを演出している。




ヘッドチューブは上下異径のテーパードヘッドを採用し、よりステアリング性能を安定させる。この構造は重量も軽く仕上がり、パフォーマンスアップに効果的である。
ハンガーの方式は流行のBB30を取り入れた。アルミフレームとはいえ、最新トレンドの取り入れ方などから考察すると妥協して製作したモデルではないことが伺える。アルミを1つの有効な素材として捉え、いかに性能を引き出しロードバイクとして完成させるかを考慮したフレームといえる。その結果、ハイエンドモデルといわしめる性能を手に入れたのだろう。時代はカーボンとはいえこのアルミフレームには期待がもてそうだ。



ハイドロフォーミング成型のよるアルミフレームを持つこのモデルを、元プロライダーの三船雅彦氏と分析能力に定評のある山本健一氏はどう評価したのだろうか? 早速、両氏によるインプレッションをお届けしよう。
※このインプレに使用したのは試乗車であり、市販車のカラーはホワイトになります(ファイル下部参照)。
― インプレッション
「アルミなのに高水準のショック吸収性」 三船雅彦
ほぼすべてのメーカーのラインナップにおいてはアルミニウムフレームは廉価モデル、もしくはエントリーモデルの意味合いをもつのだが、このクレブロにおいては少し考え方を変えないと整理が付かなくなる。
クレブロはあくまでフォーカス・アルミニウムカテゴリーのハイエンドモデル。乗ってみればよくわかるが、そういう位置づけが一番的を得ているだろう。

フォークもCAYOやイザルコの一部モデルと共通のオリジナルカーボンフォークを採用し、フレームの剛性は相当高いものの、距離をこなしてもストレスを軽減しているのを感じられるぐらい、乗り心地は気持ちよい。
BB30の採用でハンガー周辺の剛性は高いはずなのだが意識はそこに向かず、むしろアルミフレームなのに高水準のショック吸収性ばかり目についた。ハンドリングもナチュラルな味付けで、まさにレースに通用するスペックだといえる。
元選手として、そして所有欲を満たしてくれるという意味ではイザルコは捨てがたいが、もし体が自由に、頻繁に自転車を交換しながら走り続けることができるのなら、ぜひクレブロも自分のバイクとして所有して走ってみたいと感じさせてくれる性能だった。
「アルミの雑味を排除したイメージ。軽快な走りが楽しめた」 山本健一(サイクルジャーナリスト)

平均的なカーボンフレームの性能と比較しても遜色ない。やや足回りが硬いものの、それほど大差ないレベルといえるだろうか。とにかくカーボンフレームに乗り慣れた身体でも、すんなりと受け入れることができた。
剛性は前述のとおり、適度でパワーロスもなくキビキビと進む。時速30kmほどでイーブンペースを刻むのにちょうど良いレベルではペダルに負荷を感じず爽快な走りを楽しめた。反面、高速域ではホイールの性能もあってか、ややオーバー気味に踏み込むようなイメージもある。ただしフレームが踏み負けているような雰囲気ではない。
アッセンブルされているコンポーネントはシマノ・105だが、全体の感触ではアルテグラ以上のコンポーネントが適正なフレームだと思う。ホイールも無論、上級モデルがよく似合う。レースやイベント用に、ワンランク上のホイールを用意することをオススメする。しかしながら完成車で23万円弱という驚きのプライスで一瞬、食指が動いてしまった。
実力的には実業団レベルのレースでもこのスペックならば通用するのではないだろうか。意外といっては失礼だが乗りやすいバイクだった。ショック吸収性に優れ、なおかつダイレクト感は失っていない。トレンドを忠実に守る機構の数々など、へたなカーボンフレームよりもずっと扱いやすいだろう。


フォーカス CULEBRO EXPERT
サイズ 50、52、54、56cm
カラー ホワイト
フレーム ニューハイドロフォーミングトリプルバテッドアルミフレーム
フロントフォーク フォーカスカーボン
ホイール フルクラム・レーシング7
シマノ・105ブラック・コンパクト仕様完成車 ¥229,950(税抜¥219,000)
― インプレライダーのプロフィール

9シーズンをプロとして走り(プロチームとの契約年数は8年)プロで700レース以上、プロアマ通算1,000レース以上を経験した、日本屈指の元プロサイクルロードレーサー。入賞回数は実に200レースほどにのぼる。2003年より国内のチームに移籍し活動中。国内の主要レースを中心に各地を転戦。レース以外の活動も精力的に行い、2003年度よりJスポーツのサイクルロードレースではゲスト解説を。特にベルギーでのレースにおいては、10年間在住していた地理感などを生かした解説に定評がある。2005年より若手育成のためにチームマサヒコミフネドットコムを立ち上げ、オーナーとしてチーム運営も行っている。
過去数多くのバイクに乗り、実戦で闘ってきたばかりでなく、タイヤや各種スポーツバイクエキップメントの開発アドバイザーを担う。その評価の目は厳しく、辛辣だ。選手活動からは2009年を持って引退したが、今シーズンからはスポーツバイク普及のためのさまざまな活動を始めている。ホビー大会のゲスト参加やセミナー開催にも意欲的だ。
マサヒコ・ミフネ・ドットコム

身長187cm、体重68kg。かつては実業団トップカテゴリーで走った経歴をもつ。脚質はどちらかといえばスピードマンタイプで上りは苦手。1000mタイムトライアル1分10秒(10年前のベストタイム)がプチ自慢。インプレッションはじめ製品レビューなどがライフワーク的になっている。インプレ本のバイブル、ロードバイクインプレッション(エイ出版社)の統括エディターもつとめる。
text:山本 健一
photo&edit:綾野 真
フォトギャラリー