2017/03/10(金) - 09:43
嵐の前の静けさか、スプリンターのラストチャンスであるパリ〜ニース第5ステージは比較的平穏な進行。大集団スプリントで力強い加速を見せたアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)が圧勝した。
フランス南部のオーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏がパリ〜ニース第5ステージの舞台。別府史之(トレック・セガフレード)の拠点に近いカンシエ=アン=ボージョレーからブール=ド=ペアージュまでの大会最長199.5kmコースには2つのカテゴリー山岳が設定されている。
細かいアップダウンを繰り返すことから獲得標高差は2,300mに達するが、翌日から山岳3連戦が始まるため、スプリンターがこのラストチャンスを逃すはずはなかった。
気温が15度ほどまで上がったこの日、フランス人選手としてパリ〜ニースのタイムトライアルで25年ぶりの勝利を飾ったジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)がマイヨジョーヌを着てスタート地点に登場。スタート直後にアタックを成功させた6名が逃げた。
最大7分まで広がったアクセル・ドモン(フランス、アージェードゥーゼール)、ピエールリュック・ペリション(フランス、フォルトゥネオ・ヴィタルコンセプト)、ナトナエル・ベルハネ(エリトリア、ディメンションデータ)、リリアン・カルメジャーヌ(フランス、ディレクトエネルジー)、フェデリーコ・ズルロ(イタリア、UAEチームエミレーツ)、レミ・ディグレゴリオ(フランス、デルコ・マルセイユプロヴァンス)のリードは、エフデジやクイックステップフロアーズ、カチューシャ・アルペシンの追撃によって順調に縮小。
ズルロとカルメジャーヌが先頭から脱落したものの、残った4名はスピードを上げてメイン集団に抵抗する。ペリションが公開しているSTRAVAログによると、前半は40km/hに満たない平均スピードを刻んだが、後半は平均47km/hまでペースアップしている。
ロット・ソウダルやコフィディスの集団牽引によってタイム差は縮まり続けた。一時的に横風によってメイン集団が割れるシーンも見られたが、アラフィリップを含む第2集団は問題なく復帰している。
かつてエフデジやアスタナ、コフィディスに所属し、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネで山岳賞獲得、パリ〜ニースステージ優勝などを飾りながら2012年のツール・ド・フランス期間中にドーピング容疑で逮捕。証拠不十分として2013年に現在のデルコ・マルセイユプロヴァンスでキャリアを再スタートさせたディグレゴリオが独走に持ち込んだものの、結局すべての逃げは残り12km地点で吸収される。スプリンターチームがそれぞれ隊列を組み、長い直線路を走ってブール=ド=ペアージュに突入した。
オリカ・スコットやエフデジを先頭にフラムルージュを通過。70km/h前後のスピードで位置取りし、少し減速しながらゆるい最終コーナーを抜ける。わずかな上り勾配でスピードは約50km/hまで落ち、そこから踏み直す形でスプリントが始まった。
オランダチャンピオンジャージのディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)が残り250mで最初に腰を上げ、呼応するようにマイヨヴェールを着るアルノー・デマール(フランス、エフデジ)が身をよじりながら加速を試みる。しかしラインを変えてスプリントしたマッチョなグライペルの加速力が圧倒的だった。
総合2位につけるトニー・ガロパン(フランス)の援護にチームが戦力を割いているため、ほぼ自力でポジション取りし、タイミングよくスプリントに持ち込んだドイツチャンピオンのグライペルが勝利した。
「すべてのスプリンターが揃うパリ〜ニースでの勝利は大きな意味を持つ。チームの目標はガロパンのポジションをキープしながらステージ優勝を狙うこと。今日はその通りの成功をつかむことができた。終盤は向かい風が強かったのでポジション取りに苦戦したけど、そのおかげでどのチームもリードアウトを崩していた。タイミングやポジションを間違わずに勝負に持ち込めたよ」と今シーズン3勝目を飾ったグライペル。アブダビツアーでは不発に終わったが、フランスの地で並みいるスプリンターを打ち破って健在ぶりをアピールした。
パリ〜ニース2017第5ステージ結果
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) 4h43’35”
2位 アルノー・デマール(フランス、エフデジ)
3位 ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)
4位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)
5位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、トレック・セガフレード)
6位 マグナスコルト・ニールセン(デンマーク、オリカ・スコット)
7位 マルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)
8位 ブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー)
9位 ソニー・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ)
10位 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)
個人総合成績
1位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)17h20’02”
2位 トニー・ガロパン(フランス、ロット・ソウダル) +33”
3位 ゴルカ・イサギレ(スペイン、モビスター) +47”
4位 セルジオルイス・エナオ(コロンビア、チームスカイ) +1’05”
5位 ダニエル・マーティン(アイルランド、クイックステップフロアーズ) +1’20”
6位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ) +1’24”
7位 イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) +1’28”
8位 アルノー・デマール(フランス、エフデジ) +1’29”
9位 アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード) +1’31”
10位 ルディ・モラール(フランス、エフデジ) +1’32”
ポイント賞
1位 アルノー・デマール(フランス、エフデジ) 41pts
2位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、トレック・セガフレード) 30pts
3位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) 29pts
山岳賞
1位 ロマン・アルディ(フランス、フォルトゥネオ・ヴィタルコンセプト) 14pts
2位 ピエールリュック・ペリション(フランス、フォルトゥネオ・ヴィタルコンセプト)8pts
3位 ピエール・ラトゥール(フランス、アージェードゥーゼール) 8pts
ヤングライダー賞
1位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)17h20’02”
2位 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) +2’16”
3位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ドラパック) +2’18”
チーム総合成績
1位 クイックステップフロアーズ 52h92’36”
2位 カチューシャ・アルペシン +3’26”
3位 ロット・ソウダル +3’59”
text:Kei Tsuji
photo:TDWsport
フランス南部のオーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏がパリ〜ニース第5ステージの舞台。別府史之(トレック・セガフレード)の拠点に近いカンシエ=アン=ボージョレーからブール=ド=ペアージュまでの大会最長199.5kmコースには2つのカテゴリー山岳が設定されている。
細かいアップダウンを繰り返すことから獲得標高差は2,300mに達するが、翌日から山岳3連戦が始まるため、スプリンターがこのラストチャンスを逃すはずはなかった。
気温が15度ほどまで上がったこの日、フランス人選手としてパリ〜ニースのタイムトライアルで25年ぶりの勝利を飾ったジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)がマイヨジョーヌを着てスタート地点に登場。スタート直後にアタックを成功させた6名が逃げた。
最大7分まで広がったアクセル・ドモン(フランス、アージェードゥーゼール)、ピエールリュック・ペリション(フランス、フォルトゥネオ・ヴィタルコンセプト)、ナトナエル・ベルハネ(エリトリア、ディメンションデータ)、リリアン・カルメジャーヌ(フランス、ディレクトエネルジー)、フェデリーコ・ズルロ(イタリア、UAEチームエミレーツ)、レミ・ディグレゴリオ(フランス、デルコ・マルセイユプロヴァンス)のリードは、エフデジやクイックステップフロアーズ、カチューシャ・アルペシンの追撃によって順調に縮小。
ズルロとカルメジャーヌが先頭から脱落したものの、残った4名はスピードを上げてメイン集団に抵抗する。ペリションが公開しているSTRAVAログによると、前半は40km/hに満たない平均スピードを刻んだが、後半は平均47km/hまでペースアップしている。
ロット・ソウダルやコフィディスの集団牽引によってタイム差は縮まり続けた。一時的に横風によってメイン集団が割れるシーンも見られたが、アラフィリップを含む第2集団は問題なく復帰している。
かつてエフデジやアスタナ、コフィディスに所属し、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネで山岳賞獲得、パリ〜ニースステージ優勝などを飾りながら2012年のツール・ド・フランス期間中にドーピング容疑で逮捕。証拠不十分として2013年に現在のデルコ・マルセイユプロヴァンスでキャリアを再スタートさせたディグレゴリオが独走に持ち込んだものの、結局すべての逃げは残り12km地点で吸収される。スプリンターチームがそれぞれ隊列を組み、長い直線路を走ってブール=ド=ペアージュに突入した。
オリカ・スコットやエフデジを先頭にフラムルージュを通過。70km/h前後のスピードで位置取りし、少し減速しながらゆるい最終コーナーを抜ける。わずかな上り勾配でスピードは約50km/hまで落ち、そこから踏み直す形でスプリントが始まった。
オランダチャンピオンジャージのディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)が残り250mで最初に腰を上げ、呼応するようにマイヨヴェールを着るアルノー・デマール(フランス、エフデジ)が身をよじりながら加速を試みる。しかしラインを変えてスプリントしたマッチョなグライペルの加速力が圧倒的だった。
総合2位につけるトニー・ガロパン(フランス)の援護にチームが戦力を割いているため、ほぼ自力でポジション取りし、タイミングよくスプリントに持ち込んだドイツチャンピオンのグライペルが勝利した。
「すべてのスプリンターが揃うパリ〜ニースでの勝利は大きな意味を持つ。チームの目標はガロパンのポジションをキープしながらステージ優勝を狙うこと。今日はその通りの成功をつかむことができた。終盤は向かい風が強かったのでポジション取りに苦戦したけど、そのおかげでどのチームもリードアウトを崩していた。タイミングやポジションを間違わずに勝負に持ち込めたよ」と今シーズン3勝目を飾ったグライペル。アブダビツアーでは不発に終わったが、フランスの地で並みいるスプリンターを打ち破って健在ぶりをアピールした。
パリ〜ニース2017第5ステージ結果
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) 4h43’35”
2位 アルノー・デマール(フランス、エフデジ)
3位 ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)
4位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)
5位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、トレック・セガフレード)
6位 マグナスコルト・ニールセン(デンマーク、オリカ・スコット)
7位 マルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)
8位 ブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー)
9位 ソニー・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ)
10位 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)
個人総合成績
1位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)17h20’02”
2位 トニー・ガロパン(フランス、ロット・ソウダル) +33”
3位 ゴルカ・イサギレ(スペイン、モビスター) +47”
4位 セルジオルイス・エナオ(コロンビア、チームスカイ) +1’05”
5位 ダニエル・マーティン(アイルランド、クイックステップフロアーズ) +1’20”
6位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ) +1’24”
7位 イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) +1’28”
8位 アルノー・デマール(フランス、エフデジ) +1’29”
9位 アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード) +1’31”
10位 ルディ・モラール(フランス、エフデジ) +1’32”
ポイント賞
1位 アルノー・デマール(フランス、エフデジ) 41pts
2位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、トレック・セガフレード) 30pts
3位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) 29pts
山岳賞
1位 ロマン・アルディ(フランス、フォルトゥネオ・ヴィタルコンセプト) 14pts
2位 ピエールリュック・ペリション(フランス、フォルトゥネオ・ヴィタルコンセプト)8pts
3位 ピエール・ラトゥール(フランス、アージェードゥーゼール) 8pts
ヤングライダー賞
1位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)17h20’02”
2位 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) +2’16”
3位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ドラパック) +2’18”
チーム総合成績
1位 クイックステップフロアーズ 52h92’36”
2位 カチューシャ・アルペシン +3’26”
3位 ロット・ソウダル +3’59”
text:Kei Tsuji
photo:TDWsport