2009/11/16(月) - 12:23
FP1はアルミのメインフレームにカーボンシートステーを組み合わせたカーボンバックモデルである。カーボンバックモデルはもともと、ピナレロが90年代に完成させ、世に問うたものであり、その完成度は驚くほど高い。このFP1はシマノ・ティアグラをアッセンブルしたエントリーモデル。果たして、その実力はどのようなものなのだろうか?
ピナレロ FP1 (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
1998年、ピナレロはアルミのメインフレームにカーボン製のシートステーを組み合わせたカーボンバックモデル“プリンス”で一世を風靡した。それはあまりにも衝撃的であったため、多くのメーカーがこれに追随してカーボンバックモデルを作るに至った。
2000年代になるとフルカーボンの時代が到来し、多くのメーカーがカーボンバックを作るのをやめてしまったが、ピナレロは今でもカーボンバックの優秀性を認識し、じっくりと熟成させている。この「ぶれない哲学」もピナレロの大きな魅力だ。
ヘッドに燦然と輝くピナレロのマーク
メインフレームはトリプルバテッドの6061-T6アルミニウム製だ
チェーンステーはアルミ製で、パワー伝達効率重視の設計
ピナレロオリジナルのMOstハンドルバー&ステム
このFP1は6061-T6アルミのメインフレームに、ピナレロが誇るオンダカーボンシートステーとオンダフォークを組み合わせたモデルだ。アルミチューブはトリプルバテッドで、さらなる軽量化が施されている。
何といってもこのフレームの最大の魅力は、上級モデルと同じ30HM3Kカーボンを採用したオンダフォーク&バックが奢られていることだ。そのハンドリング、乗り味の素晴らしさはアレハンドロ・バルベルデを始めとして多くのプロが絶賛するところであり、それがこの価格で楽しめるのであるから、お買い得感は非常に高い。
上級モデルと同じオンダフォークが奢られる
カーボンバックの元祖ピナレロの名に恥じない美しい仕上がり
シートステーもピナレロご自慢のオンダだ
そのハンドリングはまさにオン・ザ・レールの感覚で、「ピナレロ・ハンドリング」と称される。果たして、国内トップレベルのレースでも活躍しているインプレライダーの2人は、このピナレロ。ハンドリングをどのように評価したのだろうか?
― インプレッション
「振動吸収性が高くロングライドに向いている」 西谷 雅史(サイクルポイント オーベスト)
「振動吸収性が高くロングライドに向いている」 さすがにアルミのメインフレームを採用しているだけあって、とてもカッチリとした印象のバイクだった。そのくせ、振動吸収性も抜群に良いのは、オンダカーボンシートステーのおかげなのだろう。さすが、カーボンバックの元祖だ。わざわざ手の込んだ作りをしているだけのことはある。
踏み出しの加速感は、それほど鮮烈ではない。しかし、中速域からペダルにパワーをかけると、グイグイと加速していく。実用的な味付けだ。アルミらしいキビキビ感が感じられる部分である。
ハンドリングはとても素直で扱いやすい。若干アンダーステアの傾向があり、初心者でもラインの修正が容易だ。初心者にとって、あまりハンドルが切れすぎるバイクは怖いものだが、これならばまずまず安心して乗れる。こういうバイクに乗っていれば、上達も早いだろう。さすがヨーロッパのバイクだと思わせる味付けである。
振動吸収性はとても良い。オンダフォークとバックが実に有効に働いている。特にバックの振動吸収性は絶妙で、ロングライドで使っても疲労を最小限に抑えることができるだろう。この振動吸収性の良さが、このバイクの一番のオススメの部分だ。
ブレーキングは特に印象に残らなかったが、私ならブレーキシューをワンランク上の105のものに変えるだろう。そうすることによって、このバイクのブレーキングはレーシングバイクらしい強力なものに変貌するはずだ。あまりお金のかからないチューンナップであるし、これはぜひオススメしたい。
気になったのはスケルトンだ。ピナレロの他のモデルと比べて、トップチューブが短めなのである。そのためフロントセンターが小さく、シューズが前輪に当たってしまう。まっすぐ走っている分には問題ないのだが…。逆にMOstのハンドルバーはリーチが大きすぎて、小柄な人には向いていない。この2点は改善して欲しい部分だ。
今はフルカーボンフレーム全盛の時代である。しかし、このFP1に乗ってみると「アルミも捨てたものではないな」と感じられる。アルミ独特のキビキビ感とカーボンバックの振動吸収性が同時に楽しめるので、乗っていてとても楽しい。これはこれで、レーシングバイクのひとつの完成型であると言えるだろう。
使用用途としては、やはりロングライドが一番似つかわしいと思う。カーボンバックの振動吸収性の良さが、ロングライドでアドバンテージになるはずだ。また、イタリアンブランドに対する憧れを持っている人にもオススメ。なにせピナレロがこの値段で手に入るのだから、イタ車好きにとって間違いなくFP1は魅力的である。
「イタ車好きにとって間違いなくFP1は魅力的である。」
「オンダフォーク&バックがこの価格で楽しめるのはウレシイ」 三上 和志(サイクルハウス ミカミ)
「入門車としては最適のバイクであるといえよう。」 最近ではカーボンフレーム全盛になってしまったが、アルミのシャキッとした乗り味を好む人は今でも結構いる。しかし、今ではハイエンドモデルはフルカーボンばかりで、アルミは安っぽいモデルばかりになってしまった。作りの良いアルミフレームは、選択肢が少ないのが現状である。
そのような中で、このピナレロ・FP1は貴重な存在であると言える。ピナレロのラインナップの中では入門モデルであるが、一昔前ならば間違いなくハイエンドモデルだ。フォークとシートステーには、ピナレロのアイデンティティともいうべきオンダが奢られているのである。
乗り味は絶妙だ。グッと踏み込むとガツンと加速してくれて、「さすがアルミのメインフレームを持っているだけあるな」と思わされる。しかし、いざ路面の悪いところを走ってみるとカーボンフレームのような振動吸収性の良さがあるのだ。わざわざ手の込んだ作りをしている理由がよくわかる。オンダフォーク&バックがこの価格で楽しめることこそ、FP1の最大の魅力であると言うことができるだろう。
上りではダンシング時に良く進むのが印象に残った。大入力に対して、しっかりと反応してくれる証拠だろう。反面、シッティングではややもたつく感じがあったが、気になるほどのレベルではない。
コーナリング時の安定感も良く、とてもコントロール性に優れたバイクだ。初心者でも安心して乗ることができるだろう。この辺の設計の良さは、さすがに長年プロに供給してきた実績のあるピナレロだと思った。
ただ、ティアグラのブレーキはデュラやアルテグラ、105に慣れている人には少々プアだ。できれば105かアルテグラあたりのブレーキに交換して乗りたいところである。あるいはシューだけ105やアルテグラにしても良いだろう。
「オンダフォーク&バックがこの価格で楽しめるのはウレシイ」
マニア的な観点から見ても、とてもそそられるバイクである。何せ人気のピナレロがこの価格で買えるのであるから、イタ車好きにはたまらないだろう。おまけに上級モデルと同じオンダフォーク&シートステーが装備されているのであるから、入門車としては最適のバイクであるといえよう。
オススメしたいのは、ずばり「リーズナブルな価格でピナレロが欲しい!」という人。ロードバイクとしての基本がキッチリと押さえられたバイクだから、ピナレロ好きにとっては、またとない入門車になってくれるはずだ。
ピナレロ FP1 (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
ピナレロ・FP1
フレームマテリアル 6061-T6アルミ+カーボン30HM3Kコンポジット
フォーク ONDA FP 30HM3K
メインコンポ シマノ・ティアグラ9S
クランク シマノ・ティアグラコンパクト
ホイール シマノ・WH-R500
タイヤ MOst 700×23C
ハンドル/ステム MOst アルミ
ペダル 別売り
カラー レッド、ホワイト、ネイキッド
サイズ 440、460、500、520、540、560、580、600、620(580以上は受注発注)
希望小売価格(税込み) 188,000円(ティアグラ完成車)
― インプレライダーのプロフィール
西谷 雅史 西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)
東京都調布市にある「サイクルポイント オーベスト」店長。チームオーベストを率い、自らも積極的にレースに参戦。主なリザルトはツール・ド・おきなわ市民200km優勝、ジャパンカップアマチュアレース優勝など。2007年の実業団小川大会では、シマノの野寺秀徳、狩野智也を抑えて優勝している。まさに「日本最速の店長」だ!
サイクルポイント オーベスト
三上 和志 三上和志(サイクルハウスMIKAMI)
埼玉県飯能市にある「サイクルハウスMIKAMI」店主。MTBクロスカントリー全日本シリーズ大会で活躍した経験を生かし、MTBに関してはハード・ソフトともに造詣が深い。トレーニングの一環としてロードバイクにも乗っており、使用目的に合った車種の選択や適正サイズに関するアドバイスなど、特に実走派のライダーに定評が高い。
サイクルハウスMIKAMI
ウェア協力:マヴィック
アイウェア協力:オークリー・ジャパン
edit:仲沢 隆
photo:綾野 真
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1998年、ピナレロはアルミのメインフレームにカーボン製のシートステーを組み合わせたカーボンバックモデル“プリンス”で一世を風靡した。それはあまりにも衝撃的であったため、多くのメーカーがこれに追随してカーボンバックモデルを作るに至った。
2000年代になるとフルカーボンの時代が到来し、多くのメーカーがカーボンバックを作るのをやめてしまったが、ピナレロは今でもカーボンバックの優秀性を認識し、じっくりと熟成させている。この「ぶれない哲学」もピナレロの大きな魅力だ。
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このFP1は6061-T6アルミのメインフレームに、ピナレロが誇るオンダカーボンシートステーとオンダフォークを組み合わせたモデルだ。アルミチューブはトリプルバテッドで、さらなる軽量化が施されている。
何といってもこのフレームの最大の魅力は、上級モデルと同じ30HM3Kカーボンを採用したオンダフォーク&バックが奢られていることだ。そのハンドリング、乗り味の素晴らしさはアレハンドロ・バルベルデを始めとして多くのプロが絶賛するところであり、それがこの価格で楽しめるのであるから、お買い得感は非常に高い。
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そのハンドリングはまさにオン・ザ・レールの感覚で、「ピナレロ・ハンドリング」と称される。果たして、国内トップレベルのレースでも活躍しているインプレライダーの2人は、このピナレロ。ハンドリングをどのように評価したのだろうか?
― インプレッション
「振動吸収性が高くロングライドに向いている」 西谷 雅史(サイクルポイント オーベスト)
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踏み出しの加速感は、それほど鮮烈ではない。しかし、中速域からペダルにパワーをかけると、グイグイと加速していく。実用的な味付けだ。アルミらしいキビキビ感が感じられる部分である。
ハンドリングはとても素直で扱いやすい。若干アンダーステアの傾向があり、初心者でもラインの修正が容易だ。初心者にとって、あまりハンドルが切れすぎるバイクは怖いものだが、これならばまずまず安心して乗れる。こういうバイクに乗っていれば、上達も早いだろう。さすがヨーロッパのバイクだと思わせる味付けである。
振動吸収性はとても良い。オンダフォークとバックが実に有効に働いている。特にバックの振動吸収性は絶妙で、ロングライドで使っても疲労を最小限に抑えることができるだろう。この振動吸収性の良さが、このバイクの一番のオススメの部分だ。
ブレーキングは特に印象に残らなかったが、私ならブレーキシューをワンランク上の105のものに変えるだろう。そうすることによって、このバイクのブレーキングはレーシングバイクらしい強力なものに変貌するはずだ。あまりお金のかからないチューンナップであるし、これはぜひオススメしたい。
気になったのはスケルトンだ。ピナレロの他のモデルと比べて、トップチューブが短めなのである。そのためフロントセンターが小さく、シューズが前輪に当たってしまう。まっすぐ走っている分には問題ないのだが…。逆にMOstのハンドルバーはリーチが大きすぎて、小柄な人には向いていない。この2点は改善して欲しい部分だ。
今はフルカーボンフレーム全盛の時代である。しかし、このFP1に乗ってみると「アルミも捨てたものではないな」と感じられる。アルミ独特のキビキビ感とカーボンバックの振動吸収性が同時に楽しめるので、乗っていてとても楽しい。これはこれで、レーシングバイクのひとつの完成型であると言えるだろう。
使用用途としては、やはりロングライドが一番似つかわしいと思う。カーボンバックの振動吸収性の良さが、ロングライドでアドバンテージになるはずだ。また、イタリアンブランドに対する憧れを持っている人にもオススメ。なにせピナレロがこの値段で手に入るのだから、イタ車好きにとって間違いなくFP1は魅力的である。
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「オンダフォーク&バックがこの価格で楽しめるのはウレシイ」 三上 和志(サイクルハウス ミカミ)
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そのような中で、このピナレロ・FP1は貴重な存在であると言える。ピナレロのラインナップの中では入門モデルであるが、一昔前ならば間違いなくハイエンドモデルだ。フォークとシートステーには、ピナレロのアイデンティティともいうべきオンダが奢られているのである。
乗り味は絶妙だ。グッと踏み込むとガツンと加速してくれて、「さすがアルミのメインフレームを持っているだけあるな」と思わされる。しかし、いざ路面の悪いところを走ってみるとカーボンフレームのような振動吸収性の良さがあるのだ。わざわざ手の込んだ作りをしている理由がよくわかる。オンダフォーク&バックがこの価格で楽しめることこそ、FP1の最大の魅力であると言うことができるだろう。
上りではダンシング時に良く進むのが印象に残った。大入力に対して、しっかりと反応してくれる証拠だろう。反面、シッティングではややもたつく感じがあったが、気になるほどのレベルではない。
コーナリング時の安定感も良く、とてもコントロール性に優れたバイクだ。初心者でも安心して乗ることができるだろう。この辺の設計の良さは、さすがに長年プロに供給してきた実績のあるピナレロだと思った。
ただ、ティアグラのブレーキはデュラやアルテグラ、105に慣れている人には少々プアだ。できれば105かアルテグラあたりのブレーキに交換して乗りたいところである。あるいはシューだけ105やアルテグラにしても良いだろう。
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マニア的な観点から見ても、とてもそそられるバイクである。何せ人気のピナレロがこの価格で買えるのであるから、イタ車好きにはたまらないだろう。おまけに上級モデルと同じオンダフォーク&シートステーが装備されているのであるから、入門車としては最適のバイクであるといえよう。
オススメしたいのは、ずばり「リーズナブルな価格でピナレロが欲しい!」という人。ロードバイクとしての基本がキッチリと押さえられたバイクだから、ピナレロ好きにとっては、またとない入門車になってくれるはずだ。
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ピナレロ・FP1
フレームマテリアル 6061-T6アルミ+カーボン30HM3Kコンポジット
フォーク ONDA FP 30HM3K
メインコンポ シマノ・ティアグラ9S
クランク シマノ・ティアグラコンパクト
ホイール シマノ・WH-R500
タイヤ MOst 700×23C
ハンドル/ステム MOst アルミ
ペダル 別売り
カラー レッド、ホワイト、ネイキッド
サイズ 440、460、500、520、540、560、580、600、620(580以上は受注発注)
希望小売価格(税込み) 188,000円(ティアグラ完成車)
― インプレライダーのプロフィール
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東京都調布市にある「サイクルポイント オーベスト」店長。チームオーベストを率い、自らも積極的にレースに参戦。主なリザルトはツール・ド・おきなわ市民200km優勝、ジャパンカップアマチュアレース優勝など。2007年の実業団小川大会では、シマノの野寺秀徳、狩野智也を抑えて優勝している。まさに「日本最速の店長」だ!
サイクルポイント オーベスト
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埼玉県飯能市にある「サイクルハウスMIKAMI」店主。MTBクロスカントリー全日本シリーズ大会で活躍した経験を生かし、MTBに関してはハード・ソフトともに造詣が深い。トレーニングの一環としてロードバイクにも乗っており、使用目的に合った車種の選択や適正サイズに関するアドバイスなど、特に実走派のライダーに定評が高い。
サイクルハウスMIKAMI
ウェア協力:マヴィック
アイウェア協力:オークリー・ジャパン
edit:仲沢 隆
photo:綾野 真
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