2016/05/09(月) - 04:43
ジロ・デ・イタリア第3ステージで再びマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)が勝利。2日間連続でチーム力とスプリント力を誇示したキッテルがボーナスタイムによってマリアローザを手にした。
前日の第2ステージと大きく代わり映えしないコースレイアウトの第3ステージ。スタート&フィニッシュ地点が第2ステージとは逆のパターンで、ナイメーヘンからぐるっと平野を走ってアーネムに向かう。残り53.1km地点の4級山岳ポスバンク(2.2km/最大12%)を除いて大きな起伏はなく、オランダ最終日もスプリンターのためのステージだ。
スプリンターチームが戦力100%残しているため逃げにはチャンスが薄いステージだが、フィニッシュ地点アーネムに住むマーティン・チャリンギ(オランダ、ロットNLユンボ)と、前日に逃げながらもジャージ獲得を逃したジャコモ・ベルラート(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)が2日連続で逃げた。
この日はヨハン・ヴァンジル(南アフリカ、ディメンションデータ)とフレン・アメルスケタ(スペイン、ウィリエール・サウスイースト)がチャリンギとベルラートの旅の伴侶となる。フィニッシュまで140kmを残してタイム差は8分まで拡大。最高気温27度の暑さの中、コース両脇の大勢の観客に見守られながらレースは進んだ。
マリアローザを守る立場のジャイアント・アルペシンに加えて、この日はマリアローザを奪う立場のエティックス・クイックステップが積極的に集団コントロールに加わった。総合系チームが心配するような荒れた展開にはならなかったものの、頻出するロータリーで落車したチームメイトに乗り上げる形でジャンクリストフ・ペロー(フランス、AG2Rラモンディアール)が転倒してしまう。
今シーズン限りでの引退が有力視されている38歳のペローが今大会最初のリタイア者となる。病院に搬送されたペローは一部記憶を失っているものの骨折は無し。レース復帰には時間がかからないと見られている。
ドイツ国境に近い平野部を進むメイン集団はロット・ソウダルやティンコフ勢のペースアップによって分裂するシーンも見られたが、完全に集団を分断するような事態は起こらない。一方の逃げグループの中で4級山岳をかけたバトルが繰り広げられ、チャリンギが頂上を先頭通過する。前日の2ポイントに3ポイントを上乗せしたチャリンギがマリアアッズーラ(山岳賞ジャージ)獲得を決めた。
合計2周するアーネムの14km周回コースに入る頃にはタイム差は2分半に。エティックス・クイックステップの集団牽引によってタイム差は縮まり、同時に集団後方では脱落者が出始める。
横風区間での分裂に落車が重なって集団は縮小。総合2位プリモス・ログリッチ(スロベニア、ロットNLユンボ)や総合8位シルヴァン・ディリエル(スイス、BMCレーシング)、山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)はメイン集団から脱落した。
1分リードで最終周回に入った先頭4名の中からディメンションデータのヴァンジルが飛び出して独走を開始する。残り10kmで1分近いリードを保ったヴァンジルだったが、さすがにスプリンターチームを相手にした平坦路での独走は不利。懸命の力走が逃げ切りの可能性を臭わせたが、残り1.7kmでエティックス・クイックステップ率いるメイン集団に吸収された。
ワール川にかかる橋をエティックス・クイックステップ先頭のメイン集団が駆け抜ける。マリアロッサのキッテルを従えたベルギーチームは、単発的なバルディアーニCSFの干渉も落ち着いて対処する。トレック・セガフレードとロット・ソウダルが被せにかかるが、マッテオ・トレンティンとファビオ・サバティーニのイタリアンリードアウトがキッテルのポジションを守り続けた。
最後はサバティーニが芸術的なリードアウトを見せ、絶好の位置から緩い左コーナーのベストラインを突き進んだキッテルが後続を引き離す。エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)とジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)の追撃も届かず、先に後ろで手を挙げるサバティーニに見守られながら赤いキッテルが両手を挙げた。
圧倒的とも言えるスプリントで2連勝を飾ったキッテル。「この素晴らしいチームを誇りに思う。逃げを捕まえて、スプリントまでスムーズに持ち込んでくれたんだ。間違いなく今日最強のチームだった。チームにはマッテオ・トレンティンとファビオ・サバティーニという素晴らしいパイロットがいる。他のチームメイトが常に風よけになってくれて、最後に彼らがいつも最高のポジションに連れて行ってくれるんだ。一人でも欠けていたらこの成功は掴めなかった」と、エティックス・クイックステップの完璧な仕事ぶりを讃える。
「ステージ優勝に集中していた」というキッテルはボーナスタイム10秒獲得によって総合首位に。トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)から9秒リードし、キッテルが自身初のマリアローザに袖を通した。
オランダでの3ステージを終えてジロは南イタリアに移動する。1日の休息日を挟んでカタンツァーロをスタートする第4ステージにキッテルはマリアローザを着て挑む。チャリンギがマリアアッズーラ、ヴィヴィアーニがマリアロッサ、そしてトビアス・ルドヴィグソン(スウェーデン、ジャイアント・アルペシン)がマリアビアンカを着て走る予定だ。
ジロ・デ・イタリア2016第3ステージ結果
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) 4h23’45”
2位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)
3位 ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)
4位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)
5位 アレクサンドル・ポルセフ(ロシア、カチューシャ)
6位 クリスティアン・ズバラーリ(イタリア、ディメンションデータ)
7位 モレーノ・ホフランド(オランダ、ロットNLユンボ)
8位 アルノー・デマール(フランス、FDJ)
9位 リック・ツァベル(ドイツ、BMCレーシング)
10位 マテイ・モホリッチ(スロベニア、ランプレ・メリダ)
185位 山本元喜(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ) +7’39”
マリアローザ 個人総合成績
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) 9h13’10”
2位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) +09”
3位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター) +15”
4位 トビアス・ルドヴィグソン(スウェーデン、ジャイアント・アルペシン) +17”
5位 モレーノ・モゼール(イタリア、キャノンデール) +21”
6位 ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ) +22”
7位 マティアス・ブランドル(オーストリア、IAMサイクリング) +23”
8位 ロジェ・クルーゲ(ドイツ、IAMサイクリング) +25”
9位 チャド・ハガ(アメリカ、ジャイアント・アルペシン)
10位 ゲオルグ・プレイドラー(オーストリア、ジャイアント・アルペシン) +26”
マリアロッサ ポイント賞
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) 106pts
2位 マーティン・チャリンギ(オランダ、ロットNLユンボ) 80pts
3位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ) 49pts
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 マーティン・チャリンギ(オランダ、ロットNLユンボ) 5pts
2位 オマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ) 3pts
3位 フレン・アメルスケタ(スペイン) 2pts
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 トビアス・ルドヴィグソン(スウェーデン、ジャイアント・アルペシン) 9h13’27”
2位 ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ) +05”
3位 ルーカス・ヴィスニオフスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)+12”
チーム総合成績
1位 ジャイアント・アルペシン 27h40’21”
2位 ロットNLユンボ +15”
3位 エティックス・クイックステップ +20”
text&photo:Kei Tsuji in Arnhem, Netherlands
前日の第2ステージと大きく代わり映えしないコースレイアウトの第3ステージ。スタート&フィニッシュ地点が第2ステージとは逆のパターンで、ナイメーヘンからぐるっと平野を走ってアーネムに向かう。残り53.1km地点の4級山岳ポスバンク(2.2km/最大12%)を除いて大きな起伏はなく、オランダ最終日もスプリンターのためのステージだ。
スプリンターチームが戦力100%残しているため逃げにはチャンスが薄いステージだが、フィニッシュ地点アーネムに住むマーティン・チャリンギ(オランダ、ロットNLユンボ)と、前日に逃げながらもジャージ獲得を逃したジャコモ・ベルラート(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)が2日連続で逃げた。
この日はヨハン・ヴァンジル(南アフリカ、ディメンションデータ)とフレン・アメルスケタ(スペイン、ウィリエール・サウスイースト)がチャリンギとベルラートの旅の伴侶となる。フィニッシュまで140kmを残してタイム差は8分まで拡大。最高気温27度の暑さの中、コース両脇の大勢の観客に見守られながらレースは進んだ。
マリアローザを守る立場のジャイアント・アルペシンに加えて、この日はマリアローザを奪う立場のエティックス・クイックステップが積極的に集団コントロールに加わった。総合系チームが心配するような荒れた展開にはならなかったものの、頻出するロータリーで落車したチームメイトに乗り上げる形でジャンクリストフ・ペロー(フランス、AG2Rラモンディアール)が転倒してしまう。
今シーズン限りでの引退が有力視されている38歳のペローが今大会最初のリタイア者となる。病院に搬送されたペローは一部記憶を失っているものの骨折は無し。レース復帰には時間がかからないと見られている。
ドイツ国境に近い平野部を進むメイン集団はロット・ソウダルやティンコフ勢のペースアップによって分裂するシーンも見られたが、完全に集団を分断するような事態は起こらない。一方の逃げグループの中で4級山岳をかけたバトルが繰り広げられ、チャリンギが頂上を先頭通過する。前日の2ポイントに3ポイントを上乗せしたチャリンギがマリアアッズーラ(山岳賞ジャージ)獲得を決めた。
合計2周するアーネムの14km周回コースに入る頃にはタイム差は2分半に。エティックス・クイックステップの集団牽引によってタイム差は縮まり、同時に集団後方では脱落者が出始める。
横風区間での分裂に落車が重なって集団は縮小。総合2位プリモス・ログリッチ(スロベニア、ロットNLユンボ)や総合8位シルヴァン・ディリエル(スイス、BMCレーシング)、山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)はメイン集団から脱落した。
1分リードで最終周回に入った先頭4名の中からディメンションデータのヴァンジルが飛び出して独走を開始する。残り10kmで1分近いリードを保ったヴァンジルだったが、さすがにスプリンターチームを相手にした平坦路での独走は不利。懸命の力走が逃げ切りの可能性を臭わせたが、残り1.7kmでエティックス・クイックステップ率いるメイン集団に吸収された。
ワール川にかかる橋をエティックス・クイックステップ先頭のメイン集団が駆け抜ける。マリアロッサのキッテルを従えたベルギーチームは、単発的なバルディアーニCSFの干渉も落ち着いて対処する。トレック・セガフレードとロット・ソウダルが被せにかかるが、マッテオ・トレンティンとファビオ・サバティーニのイタリアンリードアウトがキッテルのポジションを守り続けた。
最後はサバティーニが芸術的なリードアウトを見せ、絶好の位置から緩い左コーナーのベストラインを突き進んだキッテルが後続を引き離す。エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)とジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)の追撃も届かず、先に後ろで手を挙げるサバティーニに見守られながら赤いキッテルが両手を挙げた。
圧倒的とも言えるスプリントで2連勝を飾ったキッテル。「この素晴らしいチームを誇りに思う。逃げを捕まえて、スプリントまでスムーズに持ち込んでくれたんだ。間違いなく今日最強のチームだった。チームにはマッテオ・トレンティンとファビオ・サバティーニという素晴らしいパイロットがいる。他のチームメイトが常に風よけになってくれて、最後に彼らがいつも最高のポジションに連れて行ってくれるんだ。一人でも欠けていたらこの成功は掴めなかった」と、エティックス・クイックステップの完璧な仕事ぶりを讃える。
「ステージ優勝に集中していた」というキッテルはボーナスタイム10秒獲得によって総合首位に。トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)から9秒リードし、キッテルが自身初のマリアローザに袖を通した。
オランダでの3ステージを終えてジロは南イタリアに移動する。1日の休息日を挟んでカタンツァーロをスタートする第4ステージにキッテルはマリアローザを着て挑む。チャリンギがマリアアッズーラ、ヴィヴィアーニがマリアロッサ、そしてトビアス・ルドヴィグソン(スウェーデン、ジャイアント・アルペシン)がマリアビアンカを着て走る予定だ。
ジロ・デ・イタリア2016第3ステージ結果
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) 4h23’45”
2位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)
3位 ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)
4位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)
5位 アレクサンドル・ポルセフ(ロシア、カチューシャ)
6位 クリスティアン・ズバラーリ(イタリア、ディメンションデータ)
7位 モレーノ・ホフランド(オランダ、ロットNLユンボ)
8位 アルノー・デマール(フランス、FDJ)
9位 リック・ツァベル(ドイツ、BMCレーシング)
10位 マテイ・モホリッチ(スロベニア、ランプレ・メリダ)
185位 山本元喜(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ) +7’39”
マリアローザ 個人総合成績
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) 9h13’10”
2位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) +09”
3位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター) +15”
4位 トビアス・ルドヴィグソン(スウェーデン、ジャイアント・アルペシン) +17”
5位 モレーノ・モゼール(イタリア、キャノンデール) +21”
6位 ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ) +22”
7位 マティアス・ブランドル(オーストリア、IAMサイクリング) +23”
8位 ロジェ・クルーゲ(ドイツ、IAMサイクリング) +25”
9位 チャド・ハガ(アメリカ、ジャイアント・アルペシン)
10位 ゲオルグ・プレイドラー(オーストリア、ジャイアント・アルペシン) +26”
マリアロッサ ポイント賞
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) 106pts
2位 マーティン・チャリンギ(オランダ、ロットNLユンボ) 80pts
3位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ) 49pts
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 マーティン・チャリンギ(オランダ、ロットNLユンボ) 5pts
2位 オマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ) 3pts
3位 フレン・アメルスケタ(スペイン) 2pts
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 トビアス・ルドヴィグソン(スウェーデン、ジャイアント・アルペシン) 9h13’27”
2位 ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ) +05”
3位 ルーカス・ヴィスニオフスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)+12”
チーム総合成績
1位 ジャイアント・アルペシン 27h40’21”
2位 ロットNLユンボ +15”
3位 エティックス・クイックステップ +20”
text&photo:Kei Tsuji in Arnhem, Netherlands
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サイクルスポーツ2016年07月号
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