2016/05/08(日) - 05:00
大会最初の大集団スプリントに持ち込まれたジロ・デ・イタリア第2ステージ。高速リードアウトトレインから抜け出し、ライバルたちを大きく引き離す加速でマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)が勝利した。
オランダ東部、ヘルダーラント州のアーネムからナイメーヘンまでの190kmコースで行われた第2ステージ。残り34.7km地点で通過する今大会最初の4級山岳ベルグ・エン・ダル(1.1km/最大11%)を除いて起伏は皆無に等しく、スプリンターにとって絶好のチャンスが用意された。
このオランダらしい真っ平らなコースで逃げたのは、このジロを最後に引退を予定している38歳のマーティン・チャリンギ(オランダ、ロットNLユンボ)と、2015年ブエルタ・ア・エスパーニャで山岳賞を獲得したオマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ)、そしてこれが2度目のジロ出場で昨年ジャパンカップを走っているジャコモ・ベルラート(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)の3名。
中間スプリントのボーナスタイムを全て消化してくれる3名が逃げる展開は、マリアローザを守る立場のジャイアント・アルペシンにとって理想的。時折横風が副区間で集団内がナーバスな状態になるシーンも見られたが、比較的平穏にプロトンは進行する。平坦な幹線道路を進むうちにタイム差は9分まで広がった。
2カ所の中間スプリントはいずれもチャリンギが先頭通過。メイン集団にはボーナスタイムが与えられないものの、2年連続マリアロッサ(ポイント賞ジャージ)獲得を狙うジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)が集団から抜け出して4番手通過し、合計4ポイントを獲得している。
観客が詰めかけた4級山岳ベルグ・エン・ダルに差し掛かる頃には逃げグループとメイン集団のタイム差は3分にまで縮まる。最大勾配11%の登坂勝負で競り勝ったフライレがマリアアッズーラ(山岳賞ジャージ)獲得を決めた。
いよいよナイメーヘンの街が迫り、ほぼ3周することになる8.6km周回コースに入るとタイム差の縮小は加速する。
メイン集団から10秒ほどの距離で泳がされた状態の逃げグループからベルラートがアタック。独走に持ち込んだベルラートは逆にリードを50秒まで広げることに成功したが、すでに170km以上を逃げていた脚に集団を振り切る力は残っていなかった。
最終周回突入を前に、およそフィニッシュまで10kmを残してベルラートは吸収される。メイン集団はジャイアント・アルペシンがリードしたまま最終周回に入り、キャノンデールやモビスター、アスタナ、チームスカイといった総合系チームも集団先頭へ。
残り3kmでスプリンターチームの中で最初に存在感を見せたのはFDJ。フランスチームが人数を揃えて集団先頭に上がったが、残り2kmでエティックス・クイックステップとロット・ソウダルというジャーマンスプリンター擁する2つのベルギーチームが先頭を奪う。
ムリロ・フィッシャー(ブラジル)の強力な牽引によってFDJが再び先頭に立ったものの、残り500mからファビオ・サバティーニ(イタリア、エティックス・クイックステップ)がリードアウトを開始。アルノー・デマール(フランス、FDJ)の番手につけていたキッテルが残り200mから腰を上げて加速した。
すでに65km/h近く出ていた集団の先頭からさらに加速していくキッテル。ステージ4位に入ったモレーノ・ホフランド(オランダ、ロットNLユンボ)のSTRAVAログによると、スプリント時のトップスピードは75km/h程度。キッテルはその上をいくスピードで完全に抜け出し、大きく両手を広げ、拳を握ってフィニッシュラインを駆け抜けた。
「昨日のタイムトライアルで自分の調子の良さを実感していた。この勝利はスーパーハッピーだ。チームメイトがスプリントに向けて位置取りして、自分が残りの仕事を片付けた。完璧なタイミングからのスプリントだった」。今大会1勝目を飾ったキッテルはレース後すぐの囲みインタビューでそう答えた。
「今日のフィニッシュはファンが大勢詰め掛けて最高の雰囲気だった。まるでパーティーのようだったよ。そして、この近くに住んでいる(オランダのバレーボール選手である)ガールフレンドがフィニッシュに駆けつけれくれたので、ますます特別な勝利に感じるよ」。
マリアロッサを獲得したキッテルはボーナスタイム10秒によって総合3位に浮上。総合首位トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)との総合タイム差を1秒まで詰め、翌日のマリアローザ奪回に向けて順調に駒を進めた。
「とにかく今日の役割はフィニッシュすること」と言ってスタートした山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)はキッテルと同タイムの174位でフィニッシュ。終盤のペースアップによって脱落した総合8位のファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード)は1分51秒遅れでフィニッシュしている。
ジロ・デ・イタリア2016第2ステージ結果
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) 4h38’31”
2位 アルノー・デマール(フランス、FDJ)
3位 サーシャ・モードロ(イタリア、ランプレ・メリダ)
4位 モレーノ・ホフランド(オランダ、ロットNLユンボ)
5位 ニコラ・ルッフォニ(イタリア、バルディアーニCSF)
6位 アレクサンドル・ポルセフ(ロシア、カチューシャ)
7位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
8位 クリスティアン・ズバラーリ(イタリア、ディメンションデータ)
9位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)
10位 ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)
174位 山本元喜(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ)
マリアローザ 個人総合成績
1位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) 4h49’34”
2位 プリモス・ログリッチ(スロベニア、ロットNLユンボ)
3位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) +01”
4位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター) +06”
5位 トビアス・ルドヴィグソン(スウェーデン、ジャイアント・アルペシン) +08”
6位 モレーノ・モゼール(イタリア、キャノンデール) +12”
7位 ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ) +13”
8位 マティアス・ブランドル(オーストリア、IAMサイクリング)
9位 シルヴァン・ディリエル(スイス、BMCレーシング) +16”
10位 ロジェ・クルーゲ(ドイツ、IAMサイクリング)
マリアロッサ ポイント賞
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) 56pts
2位 マーティン・チャリンギ(オランダ、ロットNLユンボ) 40pts
3位 アルノー・デマール(フランス、FDJ) 35pts
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 オマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ) 3pts
2位 マーティン・チャリンギ(オランダ、ロットNLユンボ) 2pts
3位 ジャコモ・ベルラート(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ) 1pt
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 トビアス・ルドヴィグソン(スウェーデン、ジャイアント・アルペシン)4h49’42”
2位 ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ) +05”
3位 ダミアン・ホーゾン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) +11”
チーム総合成績
1位 ジャイアント・アルペシン 14h29’06”
2位 ロットNLユンボ +15”
3位 エティックス・クイックステップ +20”
text&photo:Kei Tsuji in Nijmegen, Netherlands
オランダ東部、ヘルダーラント州のアーネムからナイメーヘンまでの190kmコースで行われた第2ステージ。残り34.7km地点で通過する今大会最初の4級山岳ベルグ・エン・ダル(1.1km/最大11%)を除いて起伏は皆無に等しく、スプリンターにとって絶好のチャンスが用意された。
このオランダらしい真っ平らなコースで逃げたのは、このジロを最後に引退を予定している38歳のマーティン・チャリンギ(オランダ、ロットNLユンボ)と、2015年ブエルタ・ア・エスパーニャで山岳賞を獲得したオマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ)、そしてこれが2度目のジロ出場で昨年ジャパンカップを走っているジャコモ・ベルラート(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)の3名。
中間スプリントのボーナスタイムを全て消化してくれる3名が逃げる展開は、マリアローザを守る立場のジャイアント・アルペシンにとって理想的。時折横風が副区間で集団内がナーバスな状態になるシーンも見られたが、比較的平穏にプロトンは進行する。平坦な幹線道路を進むうちにタイム差は9分まで広がった。
2カ所の中間スプリントはいずれもチャリンギが先頭通過。メイン集団にはボーナスタイムが与えられないものの、2年連続マリアロッサ(ポイント賞ジャージ)獲得を狙うジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)が集団から抜け出して4番手通過し、合計4ポイントを獲得している。
観客が詰めかけた4級山岳ベルグ・エン・ダルに差し掛かる頃には逃げグループとメイン集団のタイム差は3分にまで縮まる。最大勾配11%の登坂勝負で競り勝ったフライレがマリアアッズーラ(山岳賞ジャージ)獲得を決めた。
いよいよナイメーヘンの街が迫り、ほぼ3周することになる8.6km周回コースに入るとタイム差の縮小は加速する。
メイン集団から10秒ほどの距離で泳がされた状態の逃げグループからベルラートがアタック。独走に持ち込んだベルラートは逆にリードを50秒まで広げることに成功したが、すでに170km以上を逃げていた脚に集団を振り切る力は残っていなかった。
最終周回突入を前に、およそフィニッシュまで10kmを残してベルラートは吸収される。メイン集団はジャイアント・アルペシンがリードしたまま最終周回に入り、キャノンデールやモビスター、アスタナ、チームスカイといった総合系チームも集団先頭へ。
残り3kmでスプリンターチームの中で最初に存在感を見せたのはFDJ。フランスチームが人数を揃えて集団先頭に上がったが、残り2kmでエティックス・クイックステップとロット・ソウダルというジャーマンスプリンター擁する2つのベルギーチームが先頭を奪う。
ムリロ・フィッシャー(ブラジル)の強力な牽引によってFDJが再び先頭に立ったものの、残り500mからファビオ・サバティーニ(イタリア、エティックス・クイックステップ)がリードアウトを開始。アルノー・デマール(フランス、FDJ)の番手につけていたキッテルが残り200mから腰を上げて加速した。
すでに65km/h近く出ていた集団の先頭からさらに加速していくキッテル。ステージ4位に入ったモレーノ・ホフランド(オランダ、ロットNLユンボ)のSTRAVAログによると、スプリント時のトップスピードは75km/h程度。キッテルはその上をいくスピードで完全に抜け出し、大きく両手を広げ、拳を握ってフィニッシュラインを駆け抜けた。
「昨日のタイムトライアルで自分の調子の良さを実感していた。この勝利はスーパーハッピーだ。チームメイトがスプリントに向けて位置取りして、自分が残りの仕事を片付けた。完璧なタイミングからのスプリントだった」。今大会1勝目を飾ったキッテルはレース後すぐの囲みインタビューでそう答えた。
「今日のフィニッシュはファンが大勢詰め掛けて最高の雰囲気だった。まるでパーティーのようだったよ。そして、この近くに住んでいる(オランダのバレーボール選手である)ガールフレンドがフィニッシュに駆けつけれくれたので、ますます特別な勝利に感じるよ」。
マリアロッサを獲得したキッテルはボーナスタイム10秒によって総合3位に浮上。総合首位トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)との総合タイム差を1秒まで詰め、翌日のマリアローザ奪回に向けて順調に駒を進めた。
「とにかく今日の役割はフィニッシュすること」と言ってスタートした山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)はキッテルと同タイムの174位でフィニッシュ。終盤のペースアップによって脱落した総合8位のファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード)は1分51秒遅れでフィニッシュしている。
ジロ・デ・イタリア2016第2ステージ結果
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) 4h38’31”
2位 アルノー・デマール(フランス、FDJ)
3位 サーシャ・モードロ(イタリア、ランプレ・メリダ)
4位 モレーノ・ホフランド(オランダ、ロットNLユンボ)
5位 ニコラ・ルッフォニ(イタリア、バルディアーニCSF)
6位 アレクサンドル・ポルセフ(ロシア、カチューシャ)
7位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
8位 クリスティアン・ズバラーリ(イタリア、ディメンションデータ)
9位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)
10位 ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)
174位 山本元喜(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ)
マリアローザ 個人総合成績
1位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) 4h49’34”
2位 プリモス・ログリッチ(スロベニア、ロットNLユンボ)
3位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) +01”
4位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター) +06”
5位 トビアス・ルドヴィグソン(スウェーデン、ジャイアント・アルペシン) +08”
6位 モレーノ・モゼール(イタリア、キャノンデール) +12”
7位 ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ) +13”
8位 マティアス・ブランドル(オーストリア、IAMサイクリング)
9位 シルヴァン・ディリエル(スイス、BMCレーシング) +16”
10位 ロジェ・クルーゲ(ドイツ、IAMサイクリング)
マリアロッサ ポイント賞
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) 56pts
2位 マーティン・チャリンギ(オランダ、ロットNLユンボ) 40pts
3位 アルノー・デマール(フランス、FDJ) 35pts
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 オマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ) 3pts
2位 マーティン・チャリンギ(オランダ、ロットNLユンボ) 2pts
3位 ジャコモ・ベルラート(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ) 1pt
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 トビアス・ルドヴィグソン(スウェーデン、ジャイアント・アルペシン)4h49’42”
2位 ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ) +05”
3位 ダミアン・ホーゾン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) +11”
チーム総合成績
1位 ジャイアント・アルペシン 14h29’06”
2位 ロットNLユンボ +15”
3位 エティックス・クイックステップ +20”
text&photo:Kei Tsuji in Nijmegen, Netherlands
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