2009/10/09(金) - 10:17
最も平坦なワンディクラシックと知られるパリ〜トゥール。昨年に引き続きHC(超級)ランクのワンディレースだが、相変わらず注目度は高い。ロワール渓谷を駆け抜け、名物グラモン大通りで決着するドラマチックなスピードバトル。日本からは新城幸也と別府史之が出場予定だ。
ワンディクラシック屈指の平坦コース
パリ〜トゥールは開催103回目を迎える伝統のワンディクラシック。2007年までUCIプロツアーに組み込まれていたが、UCIとレース主催者ASOの確執も影響して昨年プロツアーを離脱。HCレースとして開催されている。
「パリからトゥールまで」という名を冠しているが、実際はパリ南方に位置するシャルトルからトゥールまでの230km(昨年は252km)。石畳が名物のパリ〜ルーベと肩を並べるほどのフラットコースが特徴で、カテゴリーがつけられた上りは皆無だ。
世界遺産のロワール渓谷を南に向かい、最後はトゥール中心部のグラモン大通りにゴールする。一見完全なるスプリンター向きのクラシックだが、過去には何度も逃げ切りが決まっている。その秘密はラスト10kmを切ってから連続する細かなアップダウンにある。
ラスト8km地点のレパン(長さ500m・最大勾配8%)を皮切りに、ラスト5km地点でポン・ヴォラン(長さ400m・最大勾配7%)、ラスト4km地点でプティ・パ・ド・ラーヌ(長さ500m・最大勾配7%)を連続してクリア。スプリンターがパワーで乗り切れる短い上りだが、毎年ここで堰を切ったようにアタックが掛かる。
短い上りでどれだけ集団を引き離したとしても、1分差のような決定的なリードは奪えない。しかしトゥール郊外特有の曲がりくねった細いコースが少人数の逃げグループに味方する。大集団はどうしても縦に長く伸びてしまい、追撃モードに入りにくい。そのため少人数で逃げる選手にもチャンスがあるのだ。
過去の優勝者を見てみると、ここ数年は逃げ切りと集団スプリントの繰り返し。レース終盤に連続する上り、細いコース、ゴールまでの距離。この3つが絶妙なバランスで構成されているため、毎年逃げかスプリントか、最後まで展開が読みにくい手に汗握るレースが繰り広げられる。
3kmに渡って直線路が続くグラモン大通りで、牽制しながらも逃げる選手と、猛烈な勢いで追い上げる大集団という構図はお馴染み。昨年はフィリップ・ジルベール(ベルギー)が迫りくる大集団を振り切って劇的な逃げ切りを決めた。今年もドラマチックな展開が期待出来そうだ。
世界屈指のスプリンターが豪華勢揃い
出場するのはプロツアー15チームとプロコンチネンタル6チーム、さらにコンチネンタル4チームを加えた合計25チーム。これほど多くのチームが出場するレースは他にない。昨年からHCレースとして開催されているため、レース主催者によるチーム選出の自由度が上がった(プロツアーレースにコンチネンタルチームは出場できない)。
今年はパリ〜トゥールで優勝経験のあるスプリンターが一人も出場しない。注目のスプリンターは数多いが、中でも今年ブレイクしたタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)を推しておきたい。
ファラーは今年ヴァッテンフォール・サイクラシックス優勝、エネコ・ツアーステージ3勝、ブエルタ・ア・エスパーニャ第11ステージでグランツール初勝利と絶好調。特にシーズン後半の活躍が目立っており、1週間前のシルキュイ・フランコ・ベルジュではステージ2勝&総合優勝を飾るなど好調を維持している。
ファラーと同様に波に乗っているのが、ブエルタ・ア・エスパーニャでステージ4勝&ポイント賞獲得を果たしたアンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)だ。グライペルは直前のパリ〜ブールジュでも優勝し、今シーズンの通算勝利数を20まで伸ばしている。
スプリンターチームのチーム力としては、トム・ボーネン(ベルギー)とアラン・デーヴィス(オーストラリア)を擁するクイックステップが他を凌駕している。デーヴィスは2005年大会3位。意外にもボーネンは表彰台に上ったことがない。
これまで2度表彰台を経験しているオスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)は、今年はツール・ド・ロマンディでのステージ2勝に留まっている。ゲラルド・チオレック(ドイツ、ミルラム)も勝利数で伸び悩んでおり、シーズン最後に一花咲かせておきたいところだ。
上りで攻撃を仕掛けて逃げ切りを目論むアタッカーたち
劇的なエンディングを演出するのが、終盤の上りで攻撃を仕掛けるアタッカーたち。特に今年はパンチ力のある選手が揃っているため、比較的人数の多い逃げグループが形成されると、スプリンターチームは手を焼くことになりそうだ。
中でも昨年の優勝者フィリップ・ジルベール(ベルギー、サイレンス・ロット)は直前のコッパ・サバティーニで優勝するなど絶好調。マークが厳しくなること必至だが、得意の爆発的なアタックでレースを揺さぶってくるだろう。
上りで攻撃を仕掛けてくると思われるのは他にも、シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)やアレッサンドロ・バッラン(イタリア、ランプレ)、フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、ラボバンク)、フィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)ら。
クラシックハンターと称される上記の選手たちは、得意の独走力を武器に攻撃を仕掛けてくるだろう。仮に攻撃が失敗しても、エーススプリンターの手助けになるはずだ。
ブエルタ・ア・エスパーニャでグランツール初制覇を成し遂げたアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)や、ブエルタ総合2位&北京五輪金メダリストのサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)も不気味な存在。ブエルタ以降活躍しているジョニー・フーガーランド(オランダ、ヴァカンソレイユ)もスプリンターにとって厄介な存在になるだろう。
スプリントから独走まで何でもござれなエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームコロンビア・HTC)は、ヘント〜ウェベルヘムやエネコツアー、ツアー・オブ・ブリテンなど、その輝かしいシーズン戦歴にもう一つトロフィーを付け加えることが出来るだろうか。
そして日本からはツール・ド・フランスで活躍した新城幸也(Bboxブイグテレコム)と別府史之(スキル・シマノ)の2名が出場する。ロード世界選手権で逃げたユキヤは、直前のパリ〜ブールジュで14位に入るなど好調。2年連続3度目の出場となるフミにとって、このパリ〜トゥールが今シーズン最後のレースとなる。
シクロワイアードではパリ〜トゥールのテキストライブを10月11日(日)22:30からお届けする予定です!
過去10年のパリ〜トゥール優勝者
2008年 フィリップ・ジルベール(ベルギー)逃げ切り
2007年 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)スプリント
2006年 フレデリック・ゲドン(フランス)逃げ切り
2005年 エリック・ツァベル(ドイツ)スプリント
2004年 エリック・デッケル(オランダ)逃げ切り
2003年 エリック・ツァベル(ドイツ)スプリント
2002年 ヤコブ・ピール(デンマーク)逃げ切り
2001年 リシャール・ヴィランク(フランス)逃げ切り
2000年 アンドレア・タフィ(イタリア)逃げ切り
1999年 マルク・ワウテラス(ベルギー)逃げ切り
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Unipublic
ワンディクラシック屈指の平坦コース
パリ〜トゥールは開催103回目を迎える伝統のワンディクラシック。2007年までUCIプロツアーに組み込まれていたが、UCIとレース主催者ASOの確執も影響して昨年プロツアーを離脱。HCレースとして開催されている。
「パリからトゥールまで」という名を冠しているが、実際はパリ南方に位置するシャルトルからトゥールまでの230km(昨年は252km)。石畳が名物のパリ〜ルーベと肩を並べるほどのフラットコースが特徴で、カテゴリーがつけられた上りは皆無だ。
世界遺産のロワール渓谷を南に向かい、最後はトゥール中心部のグラモン大通りにゴールする。一見完全なるスプリンター向きのクラシックだが、過去には何度も逃げ切りが決まっている。その秘密はラスト10kmを切ってから連続する細かなアップダウンにある。
ラスト8km地点のレパン(長さ500m・最大勾配8%)を皮切りに、ラスト5km地点でポン・ヴォラン(長さ400m・最大勾配7%)、ラスト4km地点でプティ・パ・ド・ラーヌ(長さ500m・最大勾配7%)を連続してクリア。スプリンターがパワーで乗り切れる短い上りだが、毎年ここで堰を切ったようにアタックが掛かる。
短い上りでどれだけ集団を引き離したとしても、1分差のような決定的なリードは奪えない。しかしトゥール郊外特有の曲がりくねった細いコースが少人数の逃げグループに味方する。大集団はどうしても縦に長く伸びてしまい、追撃モードに入りにくい。そのため少人数で逃げる選手にもチャンスがあるのだ。
過去の優勝者を見てみると、ここ数年は逃げ切りと集団スプリントの繰り返し。レース終盤に連続する上り、細いコース、ゴールまでの距離。この3つが絶妙なバランスで構成されているため、毎年逃げかスプリントか、最後まで展開が読みにくい手に汗握るレースが繰り広げられる。
3kmに渡って直線路が続くグラモン大通りで、牽制しながらも逃げる選手と、猛烈な勢いで追い上げる大集団という構図はお馴染み。昨年はフィリップ・ジルベール(ベルギー)が迫りくる大集団を振り切って劇的な逃げ切りを決めた。今年もドラマチックな展開が期待出来そうだ。
世界屈指のスプリンターが豪華勢揃い
出場するのはプロツアー15チームとプロコンチネンタル6チーム、さらにコンチネンタル4チームを加えた合計25チーム。これほど多くのチームが出場するレースは他にない。昨年からHCレースとして開催されているため、レース主催者によるチーム選出の自由度が上がった(プロツアーレースにコンチネンタルチームは出場できない)。
今年はパリ〜トゥールで優勝経験のあるスプリンターが一人も出場しない。注目のスプリンターは数多いが、中でも今年ブレイクしたタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)を推しておきたい。
ファラーは今年ヴァッテンフォール・サイクラシックス優勝、エネコ・ツアーステージ3勝、ブエルタ・ア・エスパーニャ第11ステージでグランツール初勝利と絶好調。特にシーズン後半の活躍が目立っており、1週間前のシルキュイ・フランコ・ベルジュではステージ2勝&総合優勝を飾るなど好調を維持している。
ファラーと同様に波に乗っているのが、ブエルタ・ア・エスパーニャでステージ4勝&ポイント賞獲得を果たしたアンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)だ。グライペルは直前のパリ〜ブールジュでも優勝し、今シーズンの通算勝利数を20まで伸ばしている。
スプリンターチームのチーム力としては、トム・ボーネン(ベルギー)とアラン・デーヴィス(オーストラリア)を擁するクイックステップが他を凌駕している。デーヴィスは2005年大会3位。意外にもボーネンは表彰台に上ったことがない。
これまで2度表彰台を経験しているオスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)は、今年はツール・ド・ロマンディでのステージ2勝に留まっている。ゲラルド・チオレック(ドイツ、ミルラム)も勝利数で伸び悩んでおり、シーズン最後に一花咲かせておきたいところだ。
上りで攻撃を仕掛けて逃げ切りを目論むアタッカーたち
劇的なエンディングを演出するのが、終盤の上りで攻撃を仕掛けるアタッカーたち。特に今年はパンチ力のある選手が揃っているため、比較的人数の多い逃げグループが形成されると、スプリンターチームは手を焼くことになりそうだ。
中でも昨年の優勝者フィリップ・ジルベール(ベルギー、サイレンス・ロット)は直前のコッパ・サバティーニで優勝するなど絶好調。マークが厳しくなること必至だが、得意の爆発的なアタックでレースを揺さぶってくるだろう。
上りで攻撃を仕掛けてくると思われるのは他にも、シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)やアレッサンドロ・バッラン(イタリア、ランプレ)、フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、ラボバンク)、フィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)ら。
クラシックハンターと称される上記の選手たちは、得意の独走力を武器に攻撃を仕掛けてくるだろう。仮に攻撃が失敗しても、エーススプリンターの手助けになるはずだ。
ブエルタ・ア・エスパーニャでグランツール初制覇を成し遂げたアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)や、ブエルタ総合2位&北京五輪金メダリストのサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)も不気味な存在。ブエルタ以降活躍しているジョニー・フーガーランド(オランダ、ヴァカンソレイユ)もスプリンターにとって厄介な存在になるだろう。
スプリントから独走まで何でもござれなエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームコロンビア・HTC)は、ヘント〜ウェベルヘムやエネコツアー、ツアー・オブ・ブリテンなど、その輝かしいシーズン戦歴にもう一つトロフィーを付け加えることが出来るだろうか。
そして日本からはツール・ド・フランスで活躍した新城幸也(Bboxブイグテレコム)と別府史之(スキル・シマノ)の2名が出場する。ロード世界選手権で逃げたユキヤは、直前のパリ〜ブールジュで14位に入るなど好調。2年連続3度目の出場となるフミにとって、このパリ〜トゥールが今シーズン最後のレースとなる。
シクロワイアードではパリ〜トゥールのテキストライブを10月11日(日)22:30からお届けする予定です!
過去10年のパリ〜トゥール優勝者
2008年 フィリップ・ジルベール(ベルギー)逃げ切り
2007年 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)スプリント
2006年 フレデリック・ゲドン(フランス)逃げ切り
2005年 エリック・ツァベル(ドイツ)スプリント
2004年 エリック・デッケル(オランダ)逃げ切り
2003年 エリック・ツァベル(ドイツ)スプリント
2002年 ヤコブ・ピール(デンマーク)逃げ切り
2001年 リシャール・ヴィランク(フランス)逃げ切り
2000年 アンドレア・タフィ(イタリア)逃げ切り
1999年 マルク・ワウテラス(ベルギー)逃げ切り
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Unipublic
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