2016/01/23(土) - 01:26
アジア選手権は22日からロードレースが始まった。女子ジュニアは下山美寿々(大阪教育大付属高校天王寺校)が優勝し、細谷夢菜(浦和工業高校)が3位。男子ジュニアは花田聖誠(昭和第一学園)が3位に入った。
大会3日目にして初めて穏やかに晴れた伊豆大島。ロードレースのコースは、島の北東部の山間部と海岸沿いを走る1周11.9km。大島支庁前をスタートし、3kmまでは登りが続く。
ピークを過ぎると海岸線まで一気に下り、前日までタイムトライアルの舞台となったサンセットパームラインを走る。これだけでも獲得標高差191mのハードなコースであるが、天気が荒れると海岸の強風も加わる事になる。
女子ジュニア 序盤からの逃げに乗った下山美寿々が優勝
7つの国と地域から15名が出走した女子ジュニアは6周回。日本からは細谷夢菜(浦和工業高校)と下山美寿々(大阪教育大付属高校天王寺校)の2人が出場した。
1周目に下山と、前日のタイムトライアルで優勝したチャン・ティンティン(台湾)を含む4人が抜け出す。1周目の残り1㎞付近、短い登りでチャンが飛び出す。これに下山が飛びつき、2人が後続を引き離し始める。
2人と後続の差は2周目には1分、3周目には2分と開いていく。「2人で1位、2位を取ろうと言って回していきました」とレース後に下山が話した通り、その後も後続との差はどんどん開いていき、5周目には5分以上に開いた。
最終周回の6周目に入っても2人は離れず、チャンが先行してゴールの大島支庁前に現れた。残り100mを過ぎてチャンの背後から出る下山。そこから一気にまくってゴールラインを越えると、嬉しさからか、ジロ・ローザで勝った萩原麻由子のように手で顔を覆った。
遅れた選手がまとまったメイン集団のスプリントは細谷夢菜が獲り、日本は1・3フィニッシュとなった。
「梶原悠未さんが昨年のアジア選手権で勝っているので、日本での開催だし負けるわけにいかないと思っていました。チャン選手は強いと聞いていたので、2人になった時にこのまま行けるといいなと考えていました。登りは強かったですね。最後のスプリントは自分のタイミングで行きましたけれど、最後の最後まで勝てたとは思わなかったです。」と話す下山は現在高校1年生。
昨年の全日本選手権は完走も出来ないレベルだったが、10月の四日市ジュニアでは優勝するまでになった。柿木コーチによれば、直前合宿では女子エリートの選手と登りをこなせるほどの力を持っているという。
「これから注目されるようになっても、自分の走りが出来るように頑張りたい」と、シンデレラガールははにかんでみせた。
一方3位の細谷は「前日のタイムトライアルの事は忘れて気持ちを切り替えて臨みました。トラックにつながる結果になったと思います。」と、冷静に結果を受け止める。「集団の中でみんなで回そうと言ったら応じてくれて、遅れた選手を吸収して3位争いの集団にする事が出来ました。正直、このコースは自分にはきついのでメダルは無理かなと思っていたんですけれど、最後は自分の展開に持ち込めた事は今後につながると思います。」と語り、「トラックでは金を取ります!」と力強く宣言した。
男子ジュニア チームワークでもぎ取った花田聖誠の3位
13の国と地域から40人が出走した男子ジュニアは9周回。日本からは渡邉歩(学法石川高校)、花田聖誠(昭和第一学園)、小野寛斗(横浜高校)、吉川衛(奈良北高校)の4人が出場。日本と同じく4人が出場したカザフスタンや、3人が出場するイランが強敵と目された。
レース序盤から数名が飛び出しては吸収を繰り返す展開が続く。花田や小野が集団前方の動きをチェックし、集団がまとまると4名が前方に位置して集団をコントロールする。
4周目までに集団の人数は25名まで減り、その後も少しずつ人数が減っていき、8周目までに15名に絞られた。構成は日本4人、カザフスタン3人、イランと台湾、ベトナムが2人、ウズベキスタン、インドネシアが1人。その中から、カザフスタンのディンムハメッド・ウリスバエブと、ベトナムのタイ・ファンホアン(ベトナム)が飛び出す。グニャリディン・ハージ・ドルスン・オグリ(カザフスタン)とリー・ウェンチャオ(台湾)がそれぞれ単独で追うが、先行する2人との差は開き続け、1分以上にまで開く。勝負は先行する2人に絞られた。
最後まで離れずにゴール前に現れた2人は最後のスプリント勝負へ。10mを残して勝利を確信したウリスバエブが、ガッツポーズと雄たけびと共にゴールラインを越えた。
メイン集団は、先行していたハージとリーを吸収してひとつにまとまり、吉岡のアシストを受けた花田が先頭でゴール。3位をもぎ取った。
ゴール直後、「勝てなくてごめん」と謝る花田に対し、「よくやった」と応える吉岡。
「小野と(渡邉)歩さんが平坦で集団を引いてくれたり、吉岡がアタックを潰したりしてくれたのに勝てなかったので、最後まで助けてくれた吉岡にまず謝りました。」と、ゴール直後の心境を振り返る花田。表彰式を終えて銅メダルを首から下げると嬉しさも湧いてきた。それでも「嬉しさ半分、悔しさ半分ですね」と花田は言う。「1位と2位の2人に圧倒的な力の差を見せつけられました。今回はたまたま僕にとって展開が良かったので3位に入れたけれど、それはチームメイトが僕に託してくれたおかげです。重い銅メダルですね。」
力を出せた下山、4人で結果を出した男子ジュニア
男女ジュニアのレースを、柿木コーチに総括してもらった。
「下山は優勝候補と言えるくらい力がありました。今朝も集中した良い顔をしていたので、いけるかなと思っていました。彼女はアジア選手権で絶対勝ちたいという想いをよく話していましたので、今回勝てて良かったと思います。
男子ジュニアの3位については、喜んでも良い結果かなとは思いますが、課題は多かったです。カザフスタンは一番強いと言われていた選手が序盤にトラブルで離脱してしまっていたのですが、それでも他の選手が勝ってしまうので強いですね。ラスト2周で花田1本で行く事を決め、小野と渡邉にはサポートに回るように指示しました。チームとしてまとまって動けた事は今後にもつながると思います。」
この日は風の影響はほとんど無かったが、週末にかけて天気が荒れる事が予想されており、レース展開にも影響が出るかもしれない。
2016年アジア自転車競技選手権大会 3日目結果
ロードレース男子ジュニア
1位 ディンムハメッド・ウリスバエブ(カザフスタン) 2時間50分23秒
2位 タイ・ファンホアン(ベトナム) +0秒
3位 花田聖誠(昭和第一学園) +1分11秒
4位 ヤン・ビンヨー(台湾) +1分12秒
5位 タイ・ファンホアン(ベトナム)
6位 吉岡 衛(奈良北高校)
ロードレース女子ジュニア
1位 下山美寿々(大阪教育大付属高校天王寺校) 2時間13分9秒
2位 チャン・ティンティン(台湾) +0秒
3位 細谷夢菜(浦和工業高校) +6分46秒
4位 リー・インイン(香港)
5位 マー・インユー(香港) +6分47秒
6位 ラン・ホイワー(香港) +6分53秒
text&photo:Satoru.Kato
大会3日目にして初めて穏やかに晴れた伊豆大島。ロードレースのコースは、島の北東部の山間部と海岸沿いを走る1周11.9km。大島支庁前をスタートし、3kmまでは登りが続く。
ピークを過ぎると海岸線まで一気に下り、前日までタイムトライアルの舞台となったサンセットパームラインを走る。これだけでも獲得標高差191mのハードなコースであるが、天気が荒れると海岸の強風も加わる事になる。
女子ジュニア 序盤からの逃げに乗った下山美寿々が優勝
7つの国と地域から15名が出走した女子ジュニアは6周回。日本からは細谷夢菜(浦和工業高校)と下山美寿々(大阪教育大付属高校天王寺校)の2人が出場した。
1周目に下山と、前日のタイムトライアルで優勝したチャン・ティンティン(台湾)を含む4人が抜け出す。1周目の残り1㎞付近、短い登りでチャンが飛び出す。これに下山が飛びつき、2人が後続を引き離し始める。
2人と後続の差は2周目には1分、3周目には2分と開いていく。「2人で1位、2位を取ろうと言って回していきました」とレース後に下山が話した通り、その後も後続との差はどんどん開いていき、5周目には5分以上に開いた。
最終周回の6周目に入っても2人は離れず、チャンが先行してゴールの大島支庁前に現れた。残り100mを過ぎてチャンの背後から出る下山。そこから一気にまくってゴールラインを越えると、嬉しさからか、ジロ・ローザで勝った萩原麻由子のように手で顔を覆った。
遅れた選手がまとまったメイン集団のスプリントは細谷夢菜が獲り、日本は1・3フィニッシュとなった。
「梶原悠未さんが昨年のアジア選手権で勝っているので、日本での開催だし負けるわけにいかないと思っていました。チャン選手は強いと聞いていたので、2人になった時にこのまま行けるといいなと考えていました。登りは強かったですね。最後のスプリントは自分のタイミングで行きましたけれど、最後の最後まで勝てたとは思わなかったです。」と話す下山は現在高校1年生。
昨年の全日本選手権は完走も出来ないレベルだったが、10月の四日市ジュニアでは優勝するまでになった。柿木コーチによれば、直前合宿では女子エリートの選手と登りをこなせるほどの力を持っているという。
「これから注目されるようになっても、自分の走りが出来るように頑張りたい」と、シンデレラガールははにかんでみせた。
一方3位の細谷は「前日のタイムトライアルの事は忘れて気持ちを切り替えて臨みました。トラックにつながる結果になったと思います。」と、冷静に結果を受け止める。「集団の中でみんなで回そうと言ったら応じてくれて、遅れた選手を吸収して3位争いの集団にする事が出来ました。正直、このコースは自分にはきついのでメダルは無理かなと思っていたんですけれど、最後は自分の展開に持ち込めた事は今後につながると思います。」と語り、「トラックでは金を取ります!」と力強く宣言した。
男子ジュニア チームワークでもぎ取った花田聖誠の3位
13の国と地域から40人が出走した男子ジュニアは9周回。日本からは渡邉歩(学法石川高校)、花田聖誠(昭和第一学園)、小野寛斗(横浜高校)、吉川衛(奈良北高校)の4人が出場。日本と同じく4人が出場したカザフスタンや、3人が出場するイランが強敵と目された。
レース序盤から数名が飛び出しては吸収を繰り返す展開が続く。花田や小野が集団前方の動きをチェックし、集団がまとまると4名が前方に位置して集団をコントロールする。
4周目までに集団の人数は25名まで減り、その後も少しずつ人数が減っていき、8周目までに15名に絞られた。構成は日本4人、カザフスタン3人、イランと台湾、ベトナムが2人、ウズベキスタン、インドネシアが1人。その中から、カザフスタンのディンムハメッド・ウリスバエブと、ベトナムのタイ・ファンホアン(ベトナム)が飛び出す。グニャリディン・ハージ・ドルスン・オグリ(カザフスタン)とリー・ウェンチャオ(台湾)がそれぞれ単独で追うが、先行する2人との差は開き続け、1分以上にまで開く。勝負は先行する2人に絞られた。
最後まで離れずにゴール前に現れた2人は最後のスプリント勝負へ。10mを残して勝利を確信したウリスバエブが、ガッツポーズと雄たけびと共にゴールラインを越えた。
メイン集団は、先行していたハージとリーを吸収してひとつにまとまり、吉岡のアシストを受けた花田が先頭でゴール。3位をもぎ取った。
ゴール直後、「勝てなくてごめん」と謝る花田に対し、「よくやった」と応える吉岡。
「小野と(渡邉)歩さんが平坦で集団を引いてくれたり、吉岡がアタックを潰したりしてくれたのに勝てなかったので、最後まで助けてくれた吉岡にまず謝りました。」と、ゴール直後の心境を振り返る花田。表彰式を終えて銅メダルを首から下げると嬉しさも湧いてきた。それでも「嬉しさ半分、悔しさ半分ですね」と花田は言う。「1位と2位の2人に圧倒的な力の差を見せつけられました。今回はたまたま僕にとって展開が良かったので3位に入れたけれど、それはチームメイトが僕に託してくれたおかげです。重い銅メダルですね。」
力を出せた下山、4人で結果を出した男子ジュニア
男女ジュニアのレースを、柿木コーチに総括してもらった。
「下山は優勝候補と言えるくらい力がありました。今朝も集中した良い顔をしていたので、いけるかなと思っていました。彼女はアジア選手権で絶対勝ちたいという想いをよく話していましたので、今回勝てて良かったと思います。
男子ジュニアの3位については、喜んでも良い結果かなとは思いますが、課題は多かったです。カザフスタンは一番強いと言われていた選手が序盤にトラブルで離脱してしまっていたのですが、それでも他の選手が勝ってしまうので強いですね。ラスト2周で花田1本で行く事を決め、小野と渡邉にはサポートに回るように指示しました。チームとしてまとまって動けた事は今後にもつながると思います。」
この日は風の影響はほとんど無かったが、週末にかけて天気が荒れる事が予想されており、レース展開にも影響が出るかもしれない。
2016年アジア自転車競技選手権大会 3日目結果
ロードレース男子ジュニア
1位 ディンムハメッド・ウリスバエブ(カザフスタン) 2時間50分23秒
2位 タイ・ファンホアン(ベトナム) +0秒
3位 花田聖誠(昭和第一学園) +1分11秒
4位 ヤン・ビンヨー(台湾) +1分12秒
5位 タイ・ファンホアン(ベトナム)
6位 吉岡 衛(奈良北高校)
ロードレース女子ジュニア
1位 下山美寿々(大阪教育大付属高校天王寺校) 2時間13分9秒
2位 チャン・ティンティン(台湾) +0秒
3位 細谷夢菜(浦和工業高校) +6分46秒
4位 リー・インイン(香港)
5位 マー・インユー(香港) +6分47秒
6位 ラン・ホイワー(香港) +6分53秒
text&photo:Satoru.Kato
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