ブエルタ・ア・エスパーニャ第8ステージで落車し、長期間人工的な昏睡状態に置かれていたクリス・ボックマンス(ベルギー、ロット・ソウダル)が回復。復帰に向けてトレーニングライドを開始したと自身のTwitterで発表した。



今シーズン8勝を飾ったクリス・ボックマンス(ベルギー、ロット・ソウダル)今シーズン8勝を飾ったクリス・ボックマンス(ベルギー、ロット・ソウダル) photo:Tim de Waele


クリス・ボックマンス(ベルギー、ロット・ソウダル)クリス・ボックマンス(ベルギー、ロット・ソウダル) photo:Tim de Waeleアンドレ・グライペル(ドイツ)に次ぐロット・ソウダルのセカンドスプリンターとして活躍し、ベルギー人選手の中で最多となる今シーズン8勝を飾ったボックマンス。好調なシーズンを送っていたが、ブエルタ第8ステージの落車で大怪我を負った。チームメイトのトッシュ・ファンデルサンド(ベルギー)によると、ボックマンスはボトルを飲んでいる最中に路面の穴にはまったという。

トレーニングを再開したクリス・ボックマンス(ベルギー、ロット・ソウダル)トレーニングを再開したクリス・ボックマンス(ベルギー、ロット・ソウダル) photo:Twitter/krisboeckmansボックマンスは顔面に外傷を負った他、脳震盪、肋骨を3本骨折、気胸、肺の損傷という重傷。スペイン・ムルシアの病院でのCTスキャンでは脳のダメージは確認されなかったものの、自発呼吸に問題があったため1週間にわたって人工的な昏睡状態に置かれ、集中治療室で経過が観察された。

意識を戻したボックマンスはその後ベルギーの病院に転院。顔の修復手術を受け、事故から41日が経った10月10日に会見を開いて順調な回復を報告した。リハビリを続けるとともに、ボックマンスは復帰に向けた強い意思を見せていた。

記者会見の中でボックマンスは落車から回復に至るまでの経過を以下のように説明している。「ブエルタ開幕の記憶は完璧にあるけど、落車前の数日間と落車の記憶はない。最初の数週間は変な夢を見たよ。見舞いに来てくれる友人たちが夢に出たことを覚えている。人工的な昏睡状態が解かれて3日後に目覚めた。少しずつではあるけど、リハビリによって身体の機能が戻っていることを感じる。まだ顎の手術が残っているし、集中すると頭痛がするけど、15kgも落ちてしまった体重も戻りつつあるし、気持ちも澄んでいる。1日のうち数時間は暗い部屋で安静にして、脳震盪からの回復を図っている段階なんだ」。

「ロードレースから身を引くなんて考えたことがない。最初は自分に何が起こったのか、どうして自分が病院にいるのか分からず、早くプロトンに戻りたい一心だった。家族や友人、写真、映像、証言を頭の中でつなぎ合わせて、自分がどれだけ深刻なシチュエーションにあったのか理解できた。それでもロードレースは自分の人生の真ん中にあり、いつの日か落車前の自分のように活躍したいと願っている。世界選手権をテレビで観戦している時、もう気持ちはプロトンの中にあったよ」(ロット・ソウダル公式サイトより)

順調に回復したボックマンスは、11月1日、自身のTwitterでトレーニングを再開したと発表した。「穏やかな小春日和、バイクライドに戻ったことを嬉しく思う。トレーニング1日目。決して諦めない」。

復帰に向けてトレーニングするボックマンス。所属するロット・ソウダルはボックマンスとの契約を2年間延長している。

text:Kei Tsuji