2015/09/10(木) - 13:52
フィニッシュラインに先頭で飛び込んできたのはエティックス・クイックステップのスプリンター。観客はマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)の名前を叫んだが、勝ったのはスタジエールとして走る21歳の新星フェルナンド・ガビリア(コロンビア)だった。
1952年2月6日に在位した女王エリザベス2世がイギリス史上最長在位の君主(63年と216日)になったとのニュースがイギリスで報じられたこの日、ツアー・オブ・ブリテンはスコットランドの首都エディンバラで第4ステージのスタートを迎えた。
人口46万人、旧市街と新市街がユネスコ世界遺産に登録されている歴史あるエディンバラ。イギリス有数の大都市の通勤時間とスタート時間が被ったためどのチームも到着が予定よりも大幅に遅れた。
エティックス・クイックステップに至ってはスタート15分前になってようやく到着し、慌ただしく出走サインしてスタートラインに並ぶ。その中に、前日にイエロージャージを着ながら落車して指を骨折したペトル・ヴァコッチ(チェコ、エティックス・クイックステップ)の姿はなかった。
ステージ距離は217.4kmと長めだが、海岸近くを走るため前日までと比べるとずっと起伏が少ないコースレイアウト。しかしコース難易度の低さはレースの厳しさに比例せず、断続的なアタック合戦が繰り広げられたためレースは序盤から高速化する。UCIコンチネンタルチーム主導ではなく、UCIワールドチーム主導の逃げが形成された。
総合9位・18秒遅れのマッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)やダニーロ・ウィス(スイス、BMCレーシング)、アラン・マランゴーニ(イタリア、キャノンデール・ガーミン)という強力な3名が、ミハエル・スヴェンガード(デンマーク、クルトエナジー)、ロブ・パートリッジ(イギリス、NFTO)、レイナード・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、MTNキュベカ)とともにエスケープを試みた。
フアンホセ・ロバト(スペイン、モビスター)の総合首位を揺るがすトレンティンの逃げに、リーダーチームのモビスターがチーム一丸となってメイン集団を牽引。先頭6名のリードはモビスターの牽引によって4分に押さえ込まれた。
レースはスコットランドからツイード川(流域が羊毛生地ツイードの産地)を渡ってイングランドへ。相変わらず空はすっきりとしない雲に覆われている。最高気温が13度程度にまでしか上がらない肌寒い空気が、人間よりも羊と牛の数のほうが多い田園風景を覆っている。
モビスターに手を差し伸べたのはチームスカイとロット・ソウダル。するとタイム差の縮小は早まり、トレンティン、ウィス、マランゴーニというUCIワールドチーム所属の3名だけが先頭で逃げ続ける展開に。残り40km地点で2分あったタイム差は縮まり続け、残り17kmで逃げは吸収された。
チームスカイがメンバー6名全員で先頭に上がり、「ヨギ」のニックネームで親しまれているイアン・スタナード(イギリス、チームスカイ)がほぼ先頭固定で力強く牽引。
残り7km地点でマルティン・モルテンセン(デンマーク、クルトエナジー)とステファン・キュング(スイス、BMCレーシング)が飛び出すと、アワーレコード保持者ブラドリー・ウィギンズ(イギリス、チームウィギンズ)が自ら先頭に立って逃げを潰す。
チームスカイの牽引によって集団は一列棒状となり、残り2kmを切ったところで赤いロット・ソウダルのトレインが発進。そのまま主導権を握ったロットトレインが先頭でスプリントに持ち込んだ。
グライペルの勝ちパターンと思われたが、後方からマーク・レンショー(オーストラリア)がフェルナンド・ガビリア(コロンビア)とマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)を連れて加速し、ポジションを上げて最終コーナーをクリア。しかしカヴェンディッシュがコーナーで番手を下げたため、ガビリアがそのまま自分のタイミングでスプリントを開始する。
先行するグライペルとエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)をロックオンしたガビリアのスプリントが伸び続けた。グライペルとボアッソンハーゲンをかわし、そのまま先着したガビリア。フィニッシュラインでは驚きの表情でガッツポーズを繰り出した。
「世界のトップスプリンターに勝った。キャリアの中で重要な、記念すべき日だ」。スタジエール(研修生)としてエティックス・クイックステップで走るガビリアがキャリア最大の勝利、そして将来の活躍を感じさせる大きな勝利を手にした。
ガビリアはコロンビア北部アンティオキア県出身、1994年8月19日生まれの21歳。ジュニア時代からトラックレースでめきめきと力を伸ばし、2015年2月にフランスで開催されたトラック世界選手権オムニアムでヴィヴィアーニらを破って金メダルを獲得した。
2015年1月にはツール・ド・サンルイスでカヴェンディッシュとの直接対決を制してステージ2勝。その成績が認められ、同じく21歳のロドリゴ・コントレラス(コロンビア)とともにエティックス・クイックステップと2016年から2年契約を結んでいる。
「決して予定通りのスプリントではなかった。当初はマーク(カヴェンディッシュ)のリードアウト役だったけど、残り400mの最終コーナーでマークがポジションを下げてしまったので、周りの状況を見て自分のスプリントに持ち込んだ。加速して、グライペルとの差を詰め、そして先頭に出た。勝者として先頭でフィニッシュするのは最高の瞬間だった」。
カヴェンディッシュのチーム移籍がささやかれる中での、世代交代を感じさせるガビリアの勝利。ガビリアは「毎日チームメイトたちから学ぶ事ばかり。落車でリタイアしたペトル(ヴァコッチ)にこの勝利を捧げたい。彼のリタイアは残念だったけど、勝利を追い求める変わらぬ姿勢と結果を彼に見せることができてよかった。この勝利を誇りに思う」とコメントしている。
ツアー・オブ・ブリテン2015第4ステージ結果
1位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、エティックス・クイックステップ) 5h13’08”
2位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)
3位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)
4位 オーウェン・ドゥール(イギリス、チームウィギンズ)
5位 イェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・ソウダル)
6位 ヨナス・ファンへネヒテン(ベルギー、IAMサイクリング)
7位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)
8位 ゲラルド・チオレック(ドイツ、MTNキュベカ)
9位 フローリス・ヘールツ(オランダ、BMCレーシング)
10位 グラハム・ブリッグス(イギリス、JLTコンドール)
個人総合成績
1位 フアンホセ・ロバト(スペイン、モビスター) 18h50’12”
2位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ) +06”
3位 フローリス・ヘールツ(オランダ、BMCレーシング) +12”
4位 ワウト・ポエルス(オランダ、チームスカイ) +13”
5位 ディラン・ファンバールレ(オランダ、キャノンデール・ガーミン)
6位 オーウェン・ドゥール(イギリス、チームウィギンズ) +14”
7位 グラハム・ブリッグス(イギリス、JLTコンドール)
8位 ラスムス・グルトハマー(デンマーク、クルトエナジー)
9位 マッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)
10位 セルジュ・パウエルス(ベルギー、MTNキュベカ) +20”
ポイント賞
オーウェン・ドゥール(イギリス、チームウィギンズ)
山岳賞
トーマス・スチュアート(イギリス、マディソン・ジェネシス)
スプリント賞
ピーター・ウィリアムス(イギリス、ワンプロサイクリング)
チーム総合成績
エティックス・クイックステップ
text&photo:Kei Tsuji in Blyth, United Kingdom
1952年2月6日に在位した女王エリザベス2世がイギリス史上最長在位の君主(63年と216日)になったとのニュースがイギリスで報じられたこの日、ツアー・オブ・ブリテンはスコットランドの首都エディンバラで第4ステージのスタートを迎えた。
人口46万人、旧市街と新市街がユネスコ世界遺産に登録されている歴史あるエディンバラ。イギリス有数の大都市の通勤時間とスタート時間が被ったためどのチームも到着が予定よりも大幅に遅れた。
エティックス・クイックステップに至ってはスタート15分前になってようやく到着し、慌ただしく出走サインしてスタートラインに並ぶ。その中に、前日にイエロージャージを着ながら落車して指を骨折したペトル・ヴァコッチ(チェコ、エティックス・クイックステップ)の姿はなかった。
ステージ距離は217.4kmと長めだが、海岸近くを走るため前日までと比べるとずっと起伏が少ないコースレイアウト。しかしコース難易度の低さはレースの厳しさに比例せず、断続的なアタック合戦が繰り広げられたためレースは序盤から高速化する。UCIコンチネンタルチーム主導ではなく、UCIワールドチーム主導の逃げが形成された。
総合9位・18秒遅れのマッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)やダニーロ・ウィス(スイス、BMCレーシング)、アラン・マランゴーニ(イタリア、キャノンデール・ガーミン)という強力な3名が、ミハエル・スヴェンガード(デンマーク、クルトエナジー)、ロブ・パートリッジ(イギリス、NFTO)、レイナード・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、MTNキュベカ)とともにエスケープを試みた。
フアンホセ・ロバト(スペイン、モビスター)の総合首位を揺るがすトレンティンの逃げに、リーダーチームのモビスターがチーム一丸となってメイン集団を牽引。先頭6名のリードはモビスターの牽引によって4分に押さえ込まれた。
レースはスコットランドからツイード川(流域が羊毛生地ツイードの産地)を渡ってイングランドへ。相変わらず空はすっきりとしない雲に覆われている。最高気温が13度程度にまでしか上がらない肌寒い空気が、人間よりも羊と牛の数のほうが多い田園風景を覆っている。
モビスターに手を差し伸べたのはチームスカイとロット・ソウダル。するとタイム差の縮小は早まり、トレンティン、ウィス、マランゴーニというUCIワールドチーム所属の3名だけが先頭で逃げ続ける展開に。残り40km地点で2分あったタイム差は縮まり続け、残り17kmで逃げは吸収された。
チームスカイがメンバー6名全員で先頭に上がり、「ヨギ」のニックネームで親しまれているイアン・スタナード(イギリス、チームスカイ)がほぼ先頭固定で力強く牽引。
残り7km地点でマルティン・モルテンセン(デンマーク、クルトエナジー)とステファン・キュング(スイス、BMCレーシング)が飛び出すと、アワーレコード保持者ブラドリー・ウィギンズ(イギリス、チームウィギンズ)が自ら先頭に立って逃げを潰す。
チームスカイの牽引によって集団は一列棒状となり、残り2kmを切ったところで赤いロット・ソウダルのトレインが発進。そのまま主導権を握ったロットトレインが先頭でスプリントに持ち込んだ。
グライペルの勝ちパターンと思われたが、後方からマーク・レンショー(オーストラリア)がフェルナンド・ガビリア(コロンビア)とマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)を連れて加速し、ポジションを上げて最終コーナーをクリア。しかしカヴェンディッシュがコーナーで番手を下げたため、ガビリアがそのまま自分のタイミングでスプリントを開始する。
先行するグライペルとエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)をロックオンしたガビリアのスプリントが伸び続けた。グライペルとボアッソンハーゲンをかわし、そのまま先着したガビリア。フィニッシュラインでは驚きの表情でガッツポーズを繰り出した。
「世界のトップスプリンターに勝った。キャリアの中で重要な、記念すべき日だ」。スタジエール(研修生)としてエティックス・クイックステップで走るガビリアがキャリア最大の勝利、そして将来の活躍を感じさせる大きな勝利を手にした。
ガビリアはコロンビア北部アンティオキア県出身、1994年8月19日生まれの21歳。ジュニア時代からトラックレースでめきめきと力を伸ばし、2015年2月にフランスで開催されたトラック世界選手権オムニアムでヴィヴィアーニらを破って金メダルを獲得した。
2015年1月にはツール・ド・サンルイスでカヴェンディッシュとの直接対決を制してステージ2勝。その成績が認められ、同じく21歳のロドリゴ・コントレラス(コロンビア)とともにエティックス・クイックステップと2016年から2年契約を結んでいる。
「決して予定通りのスプリントではなかった。当初はマーク(カヴェンディッシュ)のリードアウト役だったけど、残り400mの最終コーナーでマークがポジションを下げてしまったので、周りの状況を見て自分のスプリントに持ち込んだ。加速して、グライペルとの差を詰め、そして先頭に出た。勝者として先頭でフィニッシュするのは最高の瞬間だった」。
カヴェンディッシュのチーム移籍がささやかれる中での、世代交代を感じさせるガビリアの勝利。ガビリアは「毎日チームメイトたちから学ぶ事ばかり。落車でリタイアしたペトル(ヴァコッチ)にこの勝利を捧げたい。彼のリタイアは残念だったけど、勝利を追い求める変わらぬ姿勢と結果を彼に見せることができてよかった。この勝利を誇りに思う」とコメントしている。
ツアー・オブ・ブリテン2015第4ステージ結果
1位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、エティックス・クイックステップ) 5h13’08”
2位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)
3位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)
4位 オーウェン・ドゥール(イギリス、チームウィギンズ)
5位 イェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・ソウダル)
6位 ヨナス・ファンへネヒテン(ベルギー、IAMサイクリング)
7位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)
8位 ゲラルド・チオレック(ドイツ、MTNキュベカ)
9位 フローリス・ヘールツ(オランダ、BMCレーシング)
10位 グラハム・ブリッグス(イギリス、JLTコンドール)
個人総合成績
1位 フアンホセ・ロバト(スペイン、モビスター) 18h50’12”
2位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ) +06”
3位 フローリス・ヘールツ(オランダ、BMCレーシング) +12”
4位 ワウト・ポエルス(オランダ、チームスカイ) +13”
5位 ディラン・ファンバールレ(オランダ、キャノンデール・ガーミン)
6位 オーウェン・ドゥール(イギリス、チームウィギンズ) +14”
7位 グラハム・ブリッグス(イギリス、JLTコンドール)
8位 ラスムス・グルトハマー(デンマーク、クルトエナジー)
9位 マッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)
10位 セルジュ・パウエルス(ベルギー、MTNキュベカ) +20”
ポイント賞
オーウェン・ドゥール(イギリス、チームウィギンズ)
山岳賞
トーマス・スチュアート(イギリス、マディソン・ジェネシス)
スプリント賞
ピーター・ウィリアムス(イギリス、ワンプロサイクリング)
チーム総合成績
エティックス・クイックステップ
text&photo:Kei Tsuji in Blyth, United Kingdom
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