2015/07/19(日) - 13:09
南アフリカ第8代大統領ネルソン・マンデラの誕生日という特別な日に、ツール初のアフリカンチームに勝利をもたらしたクミングスは「とってもファンタスティック」と喜びを隠さない。一方で、フランス期待の若手クライマーであるピノとバルデは「牽制が敗因」と揃って悔しさを滲ませた。
ステージ優勝のスティーブ・クミングス(イギリス、MTNキュベカ)
勝者としてフィニッシュラインを切ることができて本当にうれしい。ずっと、成し遂げたいと思ってきた目標を達成出来たのだから。僕らはこのステージを大きなモチベーションをもって走りだした。ツール・ド・フランスでステージ優勝したことは、本当にチームにとってもファンタスティックなことだし、しかもそれがマンデラデイにということならば、なおさらだよ。
今朝、チームはマンデラデイということで、スペシャルミーティングをしたし、スペシャルペイントのヘルメットを被ったけれど、実際に勝てるとは考えていなかった。本当に予想外だよ。いまでも、まだステージ優勝出来たことが信じられないほどさ。ツールは夢なんだもの。最初にツールに出場したとき、夢の中にいるような気分だった。ブエルタでステージ優勝した時も、ツールで勝ちたかったと考えてしまうほどだったんだ。
でも、自由に動くことが出来るこのチームでないと、今日の勝利は達成できなかった。去年の9月に、色んなチームからのオファーがあったけど、MTNキュベカを選んで本当に良かったと思っている。このチームはサイクリングスポーツ界において本当にユニークな存在で、僕は大好きなんだ。
そして、ステージを獲りにいくときのチームの戦略も気に入っている。僕はいつも自由に動けるというわけではなくて、時々はエドヴァルド・ボアッソンハーゲンや、ルイス・メンテンスをアシストするために働くこともある。でも、チャンスがあれば自分のレースができることが、このチームの魅力なんだ。そして幸運なことに、僕はうまく走ることが出来ている。
最後の登りは、2010年のパリ~ニースで走ったことがあるから知っていた。自分が最高のクライマーでないことは知っているから、出来るだけ失速しないようにペースをコントロールした。僕のライバルたちは、僕のことをすこし過小評価していたのではないかな。正直、少し驚いたよ。
AG2Rが明確な戦略を持って走っているようには見えなかった。バケランツが攻めてくるだろうと思っていたけど、これはツールで、誰もが自分の運試しをしたいと思っているんだ。一方、FDJはピノのためにチームがアシストしていることが分かりやすかったね。だから、あまり逃げ集団で多くを牽く必要が無かったんだ。
山頂の2km手前から、全力で踏み続けてピノを射程圏内に捕らえた。ピノとバルデの二人より体重があって、エアロダイナミクスに優れる僕は、登りの後の平坦とダウンヒル区間で追いつくことが出来るとふんでいた。正直、かなりギャンブルだったけどね。彼らは協調しなかったから、僕は彼らを捕まえることができた。コーナリングテクニックで先頭に出るとともにトラックライダーとしての経験を勝利につなげたんだ。今は本当にハッピーだよ。
悔しさを滲ませるティボー・ピノ(フランス、FDJ)
ロメンと牽制しあってしまったのは事実。そしてロメン(・バルデ)と僕よりも、クミングスのコーナリングがただただ速かった。彼はフルスロットルで僕らを追い抜き、出し抜いた。自らを褒められる点は何一つない。マチュー・ラダニュとジェレミー・ロワにアシストしてもらったにも関わらず2位だなんて、彼らの働きを無駄にしてまった。
ツールでステージ優勝できるチャンスは決して多くない。終盤で牽制してスピードを落としすぎた。僕達はただちに反応して協力しあうべきだったね。ツールであってもステージ2位に大きな意味はない。クミングスを初めて見たのは残り500mで僕らを抜き去った時のこと。同じ逃げに入っていることすら知らなかった。つまり彼は上手く立ちまわったということだ。ロメンと僕はファイターであり、お互いに勝利を渇望していた。しかし最後は2位と3位という結果に終わってしまった。
ピレネーに続き、ステージ優勝まであと一歩届かなかったロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
ピレネーではホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)にやられてしまい、今回も勝利に手が届かず。ティボー(・ピノ)と牽制しあってしまったがために共倒れしてしまった。後方からアタックしてきたクミングスのことは眼中になかった。抜け目のない走りだったね。
残り500mの地点で彼は僕らのことを抜き去っていった。ティボーがどうしたのかは分からないが、最後のコーナーで、クミングスは僕達に10mの差を築いていた。僕たちは出し抜かれたね。クミングスが後ろから来ているなんて全く知らなかった。だから、ティボーだけを注視して、最後にスプリントで彼を倒すことだけを考えていたんだ。
ティボーと僕は共にこのツールで苦汁をなめた。だからこそ、今日ステージ優勝を挙げられていれば、どんなに良かったことか。最悪だ。復調しつつはあるけど、本調子になるのは、最終盤になってからだろう。
マイヨジョーヌをキープし続けるクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
ハッピー・マンデラデー!クミングスの優勝は、アフリカにとってもイギリスにとっても素晴らしいものとなった。MTNキュベカにはおめでとうと言いたい。ワイルドカードでの出場チームによる、大きな意味のある勝利だ。そして、僕らのチームにとっても良い1日となった。最後の登りでチームメイトは完璧に仕事を遂行してくれた。
今日はキンタナが強力なアタックを繰り返したけど、自分のテンポを刻むことを心がけた。先行されても頂上までに追いつく自信はあったよ。今日のステージにおいては彼のことを最も注視していたし、1秒も無駄にできない状況であることから、最終の直線でスプリントした。ライバルたちとのタイム差を広げることができて嬉しく思う。
後ろで何が起こったかはわからないが、チームとしてはゲラント・トーマスが総合で上位につけており、様々な作戦を展開できる状況にある。今後はどこかのステージで彼を逃げに乗せることになるだろう。
最後の登りで積極的な走りを魅せ、総合順位を1つ上げたナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
調子は良かった。今日のステージではライバルたちの調子を探り、チームとしてマイヨジョーヌという夢のために戦い続けることができるのかを確認したかった。長くて様々な要素を試されるアルプスのほうが得意だし、今日の最後に登場した短い登りは決して得意ではない。だから今日は気合を入れてレースに臨んだんだ。
結果として、ライバルたちにタイム差をつけることができた。ただ、コンタドールやヴァンガーデレンはタイムを失ったが、まだ彼らは楽観視できないポジションにつけている。そして、チームとして、アルプスでフルームと戦う準備はできている。目標は依然として総合優勝。そして(チームメイトのアレハンドロ・)バルベルデと共にパリで表彰台に登れたら、なお良いね。
総合順位を3位に下げたティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)
自分の持てる力を最大限に発揮し、タイムロスを最小限に留めようと努力した。総合順位を落としてしまって残念だが、パリで表彰台に登れる可能性は十分に大きい。今日の最後の登りは難しかったし、短く急勾配であると僕は四苦八苦する傾向にある。アルプスのほうが僕の脚質には適している。こらからの展開が楽しみだし、コンディションも良好だ。
フルームとキンタナには大きく水をあけられてしまったが、総合成績で競っているロベルト・へーシンク(オランダ、ロットNLユンボ)とゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)に対してはタイム差を稼ぐことができた。つまり、完全に失敗した日という訳ではない。だから、困難を切り抜けられた日と捉えることにするよ。これからのアルプスでは失ったタイムを取り戻すチャンスが多くあることを期待したいね。
ポイント賞のリードを拡大したペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)
とてもハードな一日だった。最後の登りは10%超でかなり辛かったけれど、ベストは尽くした。中間スプリントポイントを獲得するために逃げに入ったけど、同じくらい、ステージ優勝も狙っていた。でも、5位と言うのも立派な成績さ。全力で踏み続けたんだからね。
リゴベルト・ウランや、ヤン・バケランツをはじめ、そうそうたるクライマーがいる中で互角に走ることが出来たというのは大きな自信になったよ。今日のレースには満足している。グリーンジャージ争いはまだまだ終わっていない。残り7ステージ、最後まで気を抜かずに走り続けるよ。
text:Yuya.Yamamoto, Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.Ayano,Kei.Tsuji,CorVos,Tim de Waele
ステージ優勝のスティーブ・クミングス(イギリス、MTNキュベカ)
勝者としてフィニッシュラインを切ることができて本当にうれしい。ずっと、成し遂げたいと思ってきた目標を達成出来たのだから。僕らはこのステージを大きなモチベーションをもって走りだした。ツール・ド・フランスでステージ優勝したことは、本当にチームにとってもファンタスティックなことだし、しかもそれがマンデラデイにということならば、なおさらだよ。
今朝、チームはマンデラデイということで、スペシャルミーティングをしたし、スペシャルペイントのヘルメットを被ったけれど、実際に勝てるとは考えていなかった。本当に予想外だよ。いまでも、まだステージ優勝出来たことが信じられないほどさ。ツールは夢なんだもの。最初にツールに出場したとき、夢の中にいるような気分だった。ブエルタでステージ優勝した時も、ツールで勝ちたかったと考えてしまうほどだったんだ。
でも、自由に動くことが出来るこのチームでないと、今日の勝利は達成できなかった。去年の9月に、色んなチームからのオファーがあったけど、MTNキュベカを選んで本当に良かったと思っている。このチームはサイクリングスポーツ界において本当にユニークな存在で、僕は大好きなんだ。
そして、ステージを獲りにいくときのチームの戦略も気に入っている。僕はいつも自由に動けるというわけではなくて、時々はエドヴァルド・ボアッソンハーゲンや、ルイス・メンテンスをアシストするために働くこともある。でも、チャンスがあれば自分のレースができることが、このチームの魅力なんだ。そして幸運なことに、僕はうまく走ることが出来ている。
最後の登りは、2010年のパリ~ニースで走ったことがあるから知っていた。自分が最高のクライマーでないことは知っているから、出来るだけ失速しないようにペースをコントロールした。僕のライバルたちは、僕のことをすこし過小評価していたのではないかな。正直、少し驚いたよ。
AG2Rが明確な戦略を持って走っているようには見えなかった。バケランツが攻めてくるだろうと思っていたけど、これはツールで、誰もが自分の運試しをしたいと思っているんだ。一方、FDJはピノのためにチームがアシストしていることが分かりやすかったね。だから、あまり逃げ集団で多くを牽く必要が無かったんだ。
山頂の2km手前から、全力で踏み続けてピノを射程圏内に捕らえた。ピノとバルデの二人より体重があって、エアロダイナミクスに優れる僕は、登りの後の平坦とダウンヒル区間で追いつくことが出来るとふんでいた。正直、かなりギャンブルだったけどね。彼らは協調しなかったから、僕は彼らを捕まえることができた。コーナリングテクニックで先頭に出るとともにトラックライダーとしての経験を勝利につなげたんだ。今は本当にハッピーだよ。
悔しさを滲ませるティボー・ピノ(フランス、FDJ)
ロメンと牽制しあってしまったのは事実。そしてロメン(・バルデ)と僕よりも、クミングスのコーナリングがただただ速かった。彼はフルスロットルで僕らを追い抜き、出し抜いた。自らを褒められる点は何一つない。マチュー・ラダニュとジェレミー・ロワにアシストしてもらったにも関わらず2位だなんて、彼らの働きを無駄にしてまった。
ツールでステージ優勝できるチャンスは決して多くない。終盤で牽制してスピードを落としすぎた。僕達はただちに反応して協力しあうべきだったね。ツールであってもステージ2位に大きな意味はない。クミングスを初めて見たのは残り500mで僕らを抜き去った時のこと。同じ逃げに入っていることすら知らなかった。つまり彼は上手く立ちまわったということだ。ロメンと僕はファイターであり、お互いに勝利を渇望していた。しかし最後は2位と3位という結果に終わってしまった。
ピレネーに続き、ステージ優勝まであと一歩届かなかったロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
ピレネーではホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)にやられてしまい、今回も勝利に手が届かず。ティボー(・ピノ)と牽制しあってしまったがために共倒れしてしまった。後方からアタックしてきたクミングスのことは眼中になかった。抜け目のない走りだったね。
残り500mの地点で彼は僕らのことを抜き去っていった。ティボーがどうしたのかは分からないが、最後のコーナーで、クミングスは僕達に10mの差を築いていた。僕たちは出し抜かれたね。クミングスが後ろから来ているなんて全く知らなかった。だから、ティボーだけを注視して、最後にスプリントで彼を倒すことだけを考えていたんだ。
ティボーと僕は共にこのツールで苦汁をなめた。だからこそ、今日ステージ優勝を挙げられていれば、どんなに良かったことか。最悪だ。復調しつつはあるけど、本調子になるのは、最終盤になってからだろう。
マイヨジョーヌをキープし続けるクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
ハッピー・マンデラデー!クミングスの優勝は、アフリカにとってもイギリスにとっても素晴らしいものとなった。MTNキュベカにはおめでとうと言いたい。ワイルドカードでの出場チームによる、大きな意味のある勝利だ。そして、僕らのチームにとっても良い1日となった。最後の登りでチームメイトは完璧に仕事を遂行してくれた。
今日はキンタナが強力なアタックを繰り返したけど、自分のテンポを刻むことを心がけた。先行されても頂上までに追いつく自信はあったよ。今日のステージにおいては彼のことを最も注視していたし、1秒も無駄にできない状況であることから、最終の直線でスプリントした。ライバルたちとのタイム差を広げることができて嬉しく思う。
後ろで何が起こったかはわからないが、チームとしてはゲラント・トーマスが総合で上位につけており、様々な作戦を展開できる状況にある。今後はどこかのステージで彼を逃げに乗せることになるだろう。
最後の登りで積極的な走りを魅せ、総合順位を1つ上げたナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
調子は良かった。今日のステージではライバルたちの調子を探り、チームとしてマイヨジョーヌという夢のために戦い続けることができるのかを確認したかった。長くて様々な要素を試されるアルプスのほうが得意だし、今日の最後に登場した短い登りは決して得意ではない。だから今日は気合を入れてレースに臨んだんだ。
結果として、ライバルたちにタイム差をつけることができた。ただ、コンタドールやヴァンガーデレンはタイムを失ったが、まだ彼らは楽観視できないポジションにつけている。そして、チームとして、アルプスでフルームと戦う準備はできている。目標は依然として総合優勝。そして(チームメイトのアレハンドロ・)バルベルデと共にパリで表彰台に登れたら、なお良いね。
総合順位を3位に下げたティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)
自分の持てる力を最大限に発揮し、タイムロスを最小限に留めようと努力した。総合順位を落としてしまって残念だが、パリで表彰台に登れる可能性は十分に大きい。今日の最後の登りは難しかったし、短く急勾配であると僕は四苦八苦する傾向にある。アルプスのほうが僕の脚質には適している。こらからの展開が楽しみだし、コンディションも良好だ。
フルームとキンタナには大きく水をあけられてしまったが、総合成績で競っているロベルト・へーシンク(オランダ、ロットNLユンボ)とゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)に対してはタイム差を稼ぐことができた。つまり、完全に失敗した日という訳ではない。だから、困難を切り抜けられた日と捉えることにするよ。これからのアルプスでは失ったタイムを取り戻すチャンスが多くあることを期待したいね。
ポイント賞のリードを拡大したペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)
とてもハードな一日だった。最後の登りは10%超でかなり辛かったけれど、ベストは尽くした。中間スプリントポイントを獲得するために逃げに入ったけど、同じくらい、ステージ優勝も狙っていた。でも、5位と言うのも立派な成績さ。全力で踏み続けたんだからね。
リゴベルト・ウランや、ヤン・バケランツをはじめ、そうそうたるクライマーがいる中で互角に走ることが出来たというのは大きな自信になったよ。今日のレースには満足している。グリーンジャージ争いはまだまだ終わっていない。残り7ステージ、最後まで気を抜かずに走り続けるよ。
text:Yuya.Yamamoto, Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.Ayano,Kei.Tsuji,CorVos,Tim de Waele
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