2015/02/02(月) - 13:38
シクロクロス世界選手権エリート男子レースで、20歳のマテュー・ファンデルポールが飛翔。並みいる強豪勢を抑えたオランダ期待の星がアルカンシエルを手に入れた。山本和弘、竹之内悠のコメントとあわせてお伝えします。
21ヶ国から67名の選手たちがエントリーしたシクロクロス世界選手権男子エリート。3時間前に開催されたU23男子レースから気温が下がり、路面が凍りはじめるコンディション下でのレーススタートを迎えた。
号砲と共に先頭に飛び出したのはスタートを得意とするラルス・ファンデルハール(オランダ)。ここにトム・メーウセン(ベルギー)、マテュー・ファンデルポール(オランダ)らが続く形でレースは動き出した。
すぐに前週のUCIワールドカップを制し好調の波に乗るファンデルポールが先頭に立つと、同じくここまで好成績を重ね存在感を強めるワウト・ファンアールト(ベルギー)が追走。追うメーウセンやUCIワールドカップリーダーに輝いたケヴィン・パウエルス(ベルギー)を引き離しに掛かっていく。
すると1周目の最終コーナーでファンアールトのチェーンが脱落。この失速でファンデルポールはリードを築いたが、2周目に再びファンデルポール、ファンアールト、パウエルス、ファンデルハール、メーウセン、クラース・ヴァントルノート(ベルギー)が合流。ベルギー4名、オランダ2名という構図でレースは一旦振り出しに戻ったかのように見えた。
しかし波に乗るファンデルポールの勢いはこのグループをすぐさま破壊。一瞬のギャップは見る間に開き、3周回終了時点で11秒の差を稼ぎだす。
この動きを追ったのはファンデルハールとパウエルス2名だけ。やがてファンデルハールがパウエルスを切り離して2位に立つと、少しずつ先頭との差を詰めに掛かっていく。先頭2名の差は一時7〜8秒まで詰まったものの、ファンデルポールが踏み直したことで再びタイムギャップを奪い返していく。
後方からは度重なるメカトラに見舞われたファンアールトが気迫の追走を見せ、最終周回には遂にファンデルハールに合流するも追い上げはここでストップ。その間に堅実な走りを見せたファンデルポールはホームストレートに到達し、感情を爆発させながらゴール。オランダ期待の20歳が並みいる強豪を抑えてアルカンシエルを獲得した。
また一つビッグタイトルを手に入れたファンデルポールは「僕の人生の中で最良の選択だった」とU23ではなく、エリートレースへ出場したことを表現する。「コースがテクニカルだったことも自分に味方してくれた。全力で走ったのにタイム差も10秒ほどしか開かず苦しかったが、先週から集中力を切らさなかったおかげで勝利に繋がった」と振り返り、「U23のタイトルとエリートのタイトルは全く異なるものだし、これからのレースでアルカンシエルを着ることがとても楽しみだ」とも。
2位にはスプリントで先行したファンアールトが悔しさを表しながら入り、オランダ勢のワンツー勝利を阻止。強烈な追い上げを見せただけにトラブルが悔やまれた。なおスポルザによれば、今回のトップスリー平均年齢は21歳と115日。21歳162日のU23よりも若いという逆転現象が起きた。
そして日本勢は山本和弘(弱虫ペダルシクロクロスチーム)がトップから2周回遅れの38位、竹之内悠(ベランクラシック・イコイ)が3周回遅れの45位でレースを終えた。シーズン最後にして最大の闘いを終えた2人は以下のように語っている。
山本和弘
スタートから非常に冷静に走れました。いつもレース前にはどうやって走ろうかというイメージを描いているけれど、そのイメージ通りに走れました。こう走りたいな、という思い通りに身体が動いてましたね。自分自身をきっちりコントロール出来て、世界トップレベルの集団の中で走れたのはよかった。
スタートから降ろされるギリギリまでちゃんと追いこんで走れました。でももう一周いけたかなという気持ちもあって、もう一周残れたらもっと出し切れたのかもしれない。でも最後の周回では出し切ろうと思ってペースをかなり上げていきました。
前後にずっと選手がいたのも集中力を保つのに良かったですね。最後はパックで走っていた2人を登りで引き離して、レースらしいことも出来た。難しいコンディションをうまくコントロールできたので、ホントに気持ち良かった。いつもの自分を100%出せた世界戦でした。
試走はお昼前に2周しています。試走時よりも路面は少し凍って固まってきたけど、そこまでの変化はなかったですね。ずっと試走で思い描いていたラインを走れました。バイクはメインを2周、スペアを1周のローテーションで3回交換しました。基本的には泥対策ですね。かなり泥が付いていてシケイン越える時の重さが全然違うんですよ。1回柵に突っ込んだ以外は、ノートラブルでした。
本当に楽しく面白くて、笑いそうになったほどのレースでした。先週は体調良くなくて苦しかったんですが、今週は集中して走れました。息が上がるんだけどパワーが出せるという最高の状態でした。プロ選手としての引退レースとなる来週のシクロクロス東京でもかなり良い結果が残せそうな手ごたえを感じました。
竹之内悠
世界戦終わって、1月からずっとぱっとしないレースで結果も走りも良くなかったので、最後くらい頑張ろうと思ってたんですが。奇跡みたいなことは起こらず、今まで積み重ねてきたものが出た感じです。脚の状態や今年一年やってきたことを考えると仕方ないかなと。
1年間、ヨーロッパでやらさせていただいて、そういうチャレンジとしては良かったのですが、世界戦は数字を残す場。そこで今日見たいな走りは失敗だと思う。支えてくれたスタッフにも申し訳ない。スタートは悪くなかった。脚のことはあまり考えず、痛くなったら終わりだと思って踏み続けていました。途中波はあったんですが、痛みは最後の一周まででなかったので、その点は良かったです。なので、今の力は出し切れたと思っています。
先週までは1周も走れなかったような状態だったので、体調を戻せたのは良かったこと。こういったことも経験だと思って教訓にします。シクロクロス東京を終えたら、久しぶりに5月までオフをとる予定です。来季も世界選手権を目標としてチャレンジを続けていきたいです。僕の夢はここにしかないので。
シクロクロス世界選手権2015エリート男子結果
text:So.Isobe
interview:Alisa Okazaki
photo:CorVos
21ヶ国から67名の選手たちがエントリーしたシクロクロス世界選手権男子エリート。3時間前に開催されたU23男子レースから気温が下がり、路面が凍りはじめるコンディション下でのレーススタートを迎えた。
号砲と共に先頭に飛び出したのはスタートを得意とするラルス・ファンデルハール(オランダ)。ここにトム・メーウセン(ベルギー)、マテュー・ファンデルポール(オランダ)らが続く形でレースは動き出した。
すぐに前週のUCIワールドカップを制し好調の波に乗るファンデルポールが先頭に立つと、同じくここまで好成績を重ね存在感を強めるワウト・ファンアールト(ベルギー)が追走。追うメーウセンやUCIワールドカップリーダーに輝いたケヴィン・パウエルス(ベルギー)を引き離しに掛かっていく。
すると1周目の最終コーナーでファンアールトのチェーンが脱落。この失速でファンデルポールはリードを築いたが、2周目に再びファンデルポール、ファンアールト、パウエルス、ファンデルハール、メーウセン、クラース・ヴァントルノート(ベルギー)が合流。ベルギー4名、オランダ2名という構図でレースは一旦振り出しに戻ったかのように見えた。
しかし波に乗るファンデルポールの勢いはこのグループをすぐさま破壊。一瞬のギャップは見る間に開き、3周回終了時点で11秒の差を稼ぎだす。
この動きを追ったのはファンデルハールとパウエルス2名だけ。やがてファンデルハールがパウエルスを切り離して2位に立つと、少しずつ先頭との差を詰めに掛かっていく。先頭2名の差は一時7〜8秒まで詰まったものの、ファンデルポールが踏み直したことで再びタイムギャップを奪い返していく。
後方からは度重なるメカトラに見舞われたファンアールトが気迫の追走を見せ、最終周回には遂にファンデルハールに合流するも追い上げはここでストップ。その間に堅実な走りを見せたファンデルポールはホームストレートに到達し、感情を爆発させながらゴール。オランダ期待の20歳が並みいる強豪を抑えてアルカンシエルを獲得した。
また一つビッグタイトルを手に入れたファンデルポールは「僕の人生の中で最良の選択だった」とU23ではなく、エリートレースへ出場したことを表現する。「コースがテクニカルだったことも自分に味方してくれた。全力で走ったのにタイム差も10秒ほどしか開かず苦しかったが、先週から集中力を切らさなかったおかげで勝利に繋がった」と振り返り、「U23のタイトルとエリートのタイトルは全く異なるものだし、これからのレースでアルカンシエルを着ることがとても楽しみだ」とも。
2位にはスプリントで先行したファンアールトが悔しさを表しながら入り、オランダ勢のワンツー勝利を阻止。強烈な追い上げを見せただけにトラブルが悔やまれた。なおスポルザによれば、今回のトップスリー平均年齢は21歳と115日。21歳162日のU23よりも若いという逆転現象が起きた。
そして日本勢は山本和弘(弱虫ペダルシクロクロスチーム)がトップから2周回遅れの38位、竹之内悠(ベランクラシック・イコイ)が3周回遅れの45位でレースを終えた。シーズン最後にして最大の闘いを終えた2人は以下のように語っている。
山本和弘
スタートから非常に冷静に走れました。いつもレース前にはどうやって走ろうかというイメージを描いているけれど、そのイメージ通りに走れました。こう走りたいな、という思い通りに身体が動いてましたね。自分自身をきっちりコントロール出来て、世界トップレベルの集団の中で走れたのはよかった。
スタートから降ろされるギリギリまでちゃんと追いこんで走れました。でももう一周いけたかなという気持ちもあって、もう一周残れたらもっと出し切れたのかもしれない。でも最後の周回では出し切ろうと思ってペースをかなり上げていきました。
前後にずっと選手がいたのも集中力を保つのに良かったですね。最後はパックで走っていた2人を登りで引き離して、レースらしいことも出来た。難しいコンディションをうまくコントロールできたので、ホントに気持ち良かった。いつもの自分を100%出せた世界戦でした。
試走はお昼前に2周しています。試走時よりも路面は少し凍って固まってきたけど、そこまでの変化はなかったですね。ずっと試走で思い描いていたラインを走れました。バイクはメインを2周、スペアを1周のローテーションで3回交換しました。基本的には泥対策ですね。かなり泥が付いていてシケイン越える時の重さが全然違うんですよ。1回柵に突っ込んだ以外は、ノートラブルでした。
本当に楽しく面白くて、笑いそうになったほどのレースでした。先週は体調良くなくて苦しかったんですが、今週は集中して走れました。息が上がるんだけどパワーが出せるという最高の状態でした。プロ選手としての引退レースとなる来週のシクロクロス東京でもかなり良い結果が残せそうな手ごたえを感じました。
竹之内悠
世界戦終わって、1月からずっとぱっとしないレースで結果も走りも良くなかったので、最後くらい頑張ろうと思ってたんですが。奇跡みたいなことは起こらず、今まで積み重ねてきたものが出た感じです。脚の状態や今年一年やってきたことを考えると仕方ないかなと。
1年間、ヨーロッパでやらさせていただいて、そういうチャレンジとしては良かったのですが、世界戦は数字を残す場。そこで今日見たいな走りは失敗だと思う。支えてくれたスタッフにも申し訳ない。スタートは悪くなかった。脚のことはあまり考えず、痛くなったら終わりだと思って踏み続けていました。途中波はあったんですが、痛みは最後の一周まででなかったので、その点は良かったです。なので、今の力は出し切れたと思っています。
先週までは1周も走れなかったような状態だったので、体調を戻せたのは良かったこと。こういったことも経験だと思って教訓にします。シクロクロス東京を終えたら、久しぶりに5月までオフをとる予定です。来季も世界選手権を目標としてチャレンジを続けていきたいです。僕の夢はここにしかないので。
シクロクロス世界選手権2015エリート男子結果
1位 マテュー・ファンデルポール(オランダ)
2位 ワウト・ファンアールト(ベルギー)
3位 ラルス・ファンデルハール(オランダ)
4位 ケヴィン・パウエルス(ベルギー)
5位 クラース・ファントルノート(ベルギー)
6位 トム・メーウセン(ベルギー)
7位 ジャンニ・フェルメールス(ベルギー)
8位 マルセル・メイセン(ドイツ)
9位 フィリップ・ワルスレーベン(ドイツ)
10位 マルコアウレリオ・フォンタナ(イタリア)
38位 山本和弘(弱虫ペダルシクロクロスチーム)
45位 竹之内悠(ベランクラシック・イコイ)
2位 ワウト・ファンアールト(ベルギー)
3位 ラルス・ファンデルハール(オランダ)
4位 ケヴィン・パウエルス(ベルギー)
5位 クラース・ファントルノート(ベルギー)
6位 トム・メーウセン(ベルギー)
7位 ジャンニ・フェルメールス(ベルギー)
8位 マルセル・メイセン(ドイツ)
9位 フィリップ・ワルスレーベン(ドイツ)
10位 マルコアウレリオ・フォンタナ(イタリア)
38位 山本和弘(弱虫ペダルシクロクロスチーム)
45位 竹之内悠(ベランクラシック・イコイ)
1h09'12"
+15"
+17"
+1'06"
+1'12"
+1'17"
+2'26"
+2'37"
+2'43"
+2'54"
-2Laps
-3Laps
+15"
+17"
+1'06"
+1'12"
+1'17"
+2'26"
+2'37"
+2'43"
+2'54"
-2Laps
-3Laps
text:So.Isobe
interview:Alisa Okazaki
photo:CorVos
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