2015/01/24(土) - 16:53
ウィランガヒルで繰り広げられたリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)とローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)のクライミングバトル。2年連続ウィランガヒルを制したポートがリーダージャージまで2秒差に迫ったが、デニスが首位を守り抜いた。
「決戦の日であることは誰の目にも明らか。でっかいファイトになるだろうね。登りは知り尽くしているし、(状況を)打破する脚はあるし、チームとしても準備は出来ている。BMCに屈しているわけにはいない」。いつも通りリラックスした表情でスタートを迎えたポートは語った。
第5ステージを前に総合首位デニスと総合5位ポートのタイム差は15秒。その間にカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)、トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)、ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)がいる。
総合を守る立場のデニスは「2枚のカードを持っているし、誰を警戒すべきかもチェック済み。昨日は早めにベッドに入ってぐっすりと寝た。準備は出来ている」と硬い表情で語る。バルダート監督に風向きの注意点を真剣に聞いてから、引退間近のエヴァンスとともにスタートを切った。
ツアー・ダウンアンダーのクイーンステージに位置付けられる第5ステージは、アデレードから40kmほど南下したワイン畑の丘が舞台だ。緩やかな起伏を描く広大な丘陵を走り、真っ青な海と白いビーチを横目に駆け抜け、決戦の地ウィランガヒルに向かう。
グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、ロット・ソウダル)、ジョーダン・カービー(オーストラリア、ドラパック)、そして2日連続の逃げとなるジャック・ボブリッジ(オーストラリア、UniSAオーストラリア)がスタート後すぐに飛び出すとメイン集団は沈黙。南半球トリオは瞬く間に5分のアドバンテージを築き上げた。
海からコンスタントに浮きつける風を利用した奇襲作戦は見られず、BMCレーシング率いるメイン集団は着々と逃げグループとのタイム差を詰める。フィニッシュまで23kmを残した最初の1級山岳ウィランガヒルが近づくと、2つのスプリントポイントをカービーとヘンダーソンに譲っていた山岳賞ジャージのボブリッジが飛び出した。
沿道を埋める観客やサイクリストの声援を受けながら、アデレードっ子のボブリッジが1級山岳ウィランガヒルを独走で駆け上がる。アスタナ率いるメイン集団を振り切って頂上を先頭通過したボブリッジが山岳賞獲得を暫定的に決めた。
下りでボブリッジが吸収されるといよいよ注目は最後のウィランガヒル決戦へ。平均勾配7%/登坂距離3.5kmウィランガヒルが近づくと、フィニッシュまでおよそ8kmを残して、ラース・ボーム(オランダ、アスタナ)のペースアップによって集団が分裂する。BMCレーシングがデニス、エヴァンス、ステティーナの3人を先頭に送り込んだ先頭集団を、チームスカイやオリカ・グリーンエッジが追う展開となった。
BMCレーシングが有利に駒を進めたものの、人数で勝る後続集団を振りきれずに先頭集団は一つに。およそ25名に絞られた精鋭集団がウィランガヒルに差し掛かる。
ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)がアタックを許さないハイペースを刻み、続いてキャメロン・マイヤー(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)がインピーのためにペースメイク。こう着状態を切り裂くように、残り1.3kmでポートが加速した。
エヴァンスが即座にポートに反応したもののしばらくして失速。代わってデニスがポートに食らいつく。デニスの顔色を伺いながらダンシングで加速し続けたポートが、残り600mでついにライバルたちを完全に振り切ることに成功した。
フィニッシュラインまで突き進んだポートが後ろを振り返ったがそこにデニスの姿はない。最後まで加速し続けたポートが小さく片手を挙げたその9秒後にデニスがフィニッシュラインを切った。
総合タイム差15秒から9秒を引き、ボーナスタイムを加算すると残るのはデニスの2秒のリード。2年連続ウィランガヒル制覇を果たしたポートは逆転を果たせず、2秒差でデニスが総合優勝に王手をかけた。
「チームが素晴らしい働きをしてくれただけに、リーダージャージを奪えなかったのは残念だった。ローハンを最大限苦しめたものの届かなかった。苦しいシーズンを経験したので、こうして勝利でシーズンをスタート出来たことを嬉しく思う。残念な気持ちと嬉しい気持ちが同居している」とポートは語る。
首位を守ったデニスは「カデルが脱落してしまったのは残念だった。リッチーのリアホイールに食らいついたものの、彼は飛ぶように登って行った。彼が強いのは間違いなかったけど、仕掛けるのが遅すぎたんだと思う」とライバルの走りを分析する。「正直言って、リッチーの勢いを見て首位を奪われたと思ったよ」とも。
総合3位にダウンしたエヴァンスは「常に先頭でレースを展開出来ていたけど、それに伴う疲労が最終的に響いてしまった」と悔やむ。「でも自分よりも調子の良いローハンを良い位置に連れていくことが出来たし、チームとしてリーダージャージを守り切ったので良かった」。
第3ステージの1級山岳パラコーム頂上フィニッシュでついたタイム差が最後まで尾を引く形となったツアー・ダウンアンダーの総合争い。UCIワールドツアー初戦は、1月25日(日)にアデレード周回コースでフィナーレを迎える。
ツアー・ダウンアンダー2015第5ステージ結果
1位 リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ) 3h37’32”
2位 ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング) +09”
3位 ルーベン・フェルナンデス(スペイン、モビスター) +16”
4位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)
5位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)
6位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール) +19”
7位 ティアゴ・マシャド(ポルトガル、カチューシャ) +24”
8位 モレーノ・モゼール(イタリア、キャノンデール・ガーミン) +26”
9位 ゴルカ・イサギーレ(スペイン、モビスター) +28”
10位 アルノー・ジャネソン(フランス、FDJ)
個人総合成績
1位 ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング) 17h19’09”
2位 リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ) +02”
3位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング) +20”
4位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) +22”
5位 ルーベン・フェルナンデス(スペイン、モビスター) +24”
6位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール) +31”
7位 ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ) +38”
8位 ティアゴ・マシャド(ポルトガル、カチューシャ) +46”
9位 ゴルカ・イサギーレ(スペイン、モビスター) +52”
10位 ヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、IAMサイクリング) +53”
ポイント賞
ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)
山岳賞
ジャック・ボブリッジ(オーストラリア、UniSAオーストラリア)
ヤングライダー賞
ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)
チーム総合成績
モビスター
text&photo:Kei Tsuji in Adelaide, Australia
「決戦の日であることは誰の目にも明らか。でっかいファイトになるだろうね。登りは知り尽くしているし、(状況を)打破する脚はあるし、チームとしても準備は出来ている。BMCに屈しているわけにはいない」。いつも通りリラックスした表情でスタートを迎えたポートは語った。
第5ステージを前に総合首位デニスと総合5位ポートのタイム差は15秒。その間にカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)、トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)、ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)がいる。
総合を守る立場のデニスは「2枚のカードを持っているし、誰を警戒すべきかもチェック済み。昨日は早めにベッドに入ってぐっすりと寝た。準備は出来ている」と硬い表情で語る。バルダート監督に風向きの注意点を真剣に聞いてから、引退間近のエヴァンスとともにスタートを切った。
ツアー・ダウンアンダーのクイーンステージに位置付けられる第5ステージは、アデレードから40kmほど南下したワイン畑の丘が舞台だ。緩やかな起伏を描く広大な丘陵を走り、真っ青な海と白いビーチを横目に駆け抜け、決戦の地ウィランガヒルに向かう。
グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、ロット・ソウダル)、ジョーダン・カービー(オーストラリア、ドラパック)、そして2日連続の逃げとなるジャック・ボブリッジ(オーストラリア、UniSAオーストラリア)がスタート後すぐに飛び出すとメイン集団は沈黙。南半球トリオは瞬く間に5分のアドバンテージを築き上げた。
海からコンスタントに浮きつける風を利用した奇襲作戦は見られず、BMCレーシング率いるメイン集団は着々と逃げグループとのタイム差を詰める。フィニッシュまで23kmを残した最初の1級山岳ウィランガヒルが近づくと、2つのスプリントポイントをカービーとヘンダーソンに譲っていた山岳賞ジャージのボブリッジが飛び出した。
沿道を埋める観客やサイクリストの声援を受けながら、アデレードっ子のボブリッジが1級山岳ウィランガヒルを独走で駆け上がる。アスタナ率いるメイン集団を振り切って頂上を先頭通過したボブリッジが山岳賞獲得を暫定的に決めた。
下りでボブリッジが吸収されるといよいよ注目は最後のウィランガヒル決戦へ。平均勾配7%/登坂距離3.5kmウィランガヒルが近づくと、フィニッシュまでおよそ8kmを残して、ラース・ボーム(オランダ、アスタナ)のペースアップによって集団が分裂する。BMCレーシングがデニス、エヴァンス、ステティーナの3人を先頭に送り込んだ先頭集団を、チームスカイやオリカ・グリーンエッジが追う展開となった。
BMCレーシングが有利に駒を進めたものの、人数で勝る後続集団を振りきれずに先頭集団は一つに。およそ25名に絞られた精鋭集団がウィランガヒルに差し掛かる。
ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)がアタックを許さないハイペースを刻み、続いてキャメロン・マイヤー(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)がインピーのためにペースメイク。こう着状態を切り裂くように、残り1.3kmでポートが加速した。
エヴァンスが即座にポートに反応したもののしばらくして失速。代わってデニスがポートに食らいつく。デニスの顔色を伺いながらダンシングで加速し続けたポートが、残り600mでついにライバルたちを完全に振り切ることに成功した。
フィニッシュラインまで突き進んだポートが後ろを振り返ったがそこにデニスの姿はない。最後まで加速し続けたポートが小さく片手を挙げたその9秒後にデニスがフィニッシュラインを切った。
総合タイム差15秒から9秒を引き、ボーナスタイムを加算すると残るのはデニスの2秒のリード。2年連続ウィランガヒル制覇を果たしたポートは逆転を果たせず、2秒差でデニスが総合優勝に王手をかけた。
「チームが素晴らしい働きをしてくれただけに、リーダージャージを奪えなかったのは残念だった。ローハンを最大限苦しめたものの届かなかった。苦しいシーズンを経験したので、こうして勝利でシーズンをスタート出来たことを嬉しく思う。残念な気持ちと嬉しい気持ちが同居している」とポートは語る。
首位を守ったデニスは「カデルが脱落してしまったのは残念だった。リッチーのリアホイールに食らいついたものの、彼は飛ぶように登って行った。彼が強いのは間違いなかったけど、仕掛けるのが遅すぎたんだと思う」とライバルの走りを分析する。「正直言って、リッチーの勢いを見て首位を奪われたと思ったよ」とも。
総合3位にダウンしたエヴァンスは「常に先頭でレースを展開出来ていたけど、それに伴う疲労が最終的に響いてしまった」と悔やむ。「でも自分よりも調子の良いローハンを良い位置に連れていくことが出来たし、チームとしてリーダージャージを守り切ったので良かった」。
第3ステージの1級山岳パラコーム頂上フィニッシュでついたタイム差が最後まで尾を引く形となったツアー・ダウンアンダーの総合争い。UCIワールドツアー初戦は、1月25日(日)にアデレード周回コースでフィナーレを迎える。
ツアー・ダウンアンダー2015第5ステージ結果
1位 リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ) 3h37’32”
2位 ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング) +09”
3位 ルーベン・フェルナンデス(スペイン、モビスター) +16”
4位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)
5位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)
6位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール) +19”
7位 ティアゴ・マシャド(ポルトガル、カチューシャ) +24”
8位 モレーノ・モゼール(イタリア、キャノンデール・ガーミン) +26”
9位 ゴルカ・イサギーレ(スペイン、モビスター) +28”
10位 アルノー・ジャネソン(フランス、FDJ)
個人総合成績
1位 ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング) 17h19’09”
2位 リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ) +02”
3位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング) +20”
4位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) +22”
5位 ルーベン・フェルナンデス(スペイン、モビスター) +24”
6位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール) +31”
7位 ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ) +38”
8位 ティアゴ・マシャド(ポルトガル、カチューシャ) +46”
9位 ゴルカ・イサギーレ(スペイン、モビスター) +52”
10位 ヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、IAMサイクリング) +53”
ポイント賞
ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)
山岳賞
ジャック・ボブリッジ(オーストラリア、UniSAオーストラリア)
ヤングライダー賞
ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)
チーム総合成績
モビスター
text&photo:Kei Tsuji in Adelaide, Australia
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