2015/01/18(日) - 10:44
1月18日の顔見世クリテリウムを皮切りに、第17回ツアー・ダウンアンダー(UCIワールドツアー)が動きだす。真夏のオーストラリアを舞台にした1週間の闘いの見どころをチェックしておこう。
オールラウンダー向きに進化した真夏のステージレース
ツアー・ダウンアンダーの開催は今年で17回目。南オーストラリア州に根付いたロードレースとして産声をあげ、2008年にUCI(国際自転車競技連合)のトップレースカテゴリーであるUCIプロツアーレース(現在UCIワールドツアーレース)入りを果たした。長年UCIが推し進める「ロードレースの国際化」の象徴とも言える。
「ダウンアンダー」は、元々イギリスから見て地球の裏側にあるオーストラリアやニュージーランドを指す言葉。ヨーロッパ在住の選手たちは長時間のフライトを経てオーストラリア大陸に乗り込む。大きな気温の変化に慣れ、そして10時間近い時差を解消するため、多くの選手が時間に余裕をもって現地入りしている。
南半球オーストラリアは今がまさに夏の盛り。連日気温が40度を超えた2014年ほどの暑さではないが、気温30度前後の快適なコンディションが続くとの予報が出ている。なお、日本との時差は0.5時間(現在はサマータイム期間中なので日本時間+1.5時間)だ。
アデレード近郊には大きな山脈が無く、大会の最標高地点も標高500m程度と低い。海沿いの平野部や、ワインの産地として世界的に有名なバロッサバレー、クレアバレー、アデレードヒルズと呼ばれる丘陵地帯がコースの大部分を占めている。
スプリンター向きの平坦ステージが多く設定されているため、伝統的にマッチョなスプリンターたちが総合争いを繰り広げて来た。しかし、ここ数年は山岳ステージの重要度が上がっているため総合上位にはグランツール総合上位に名を連ねるオールラウンダーたちが名を連ねている。
1月17日のチームプレゼンテーションを経て、1月18日にアデレード市街地で行なわれるUCI非公認の顔見せクリテリウム「ピープルズチョイス・クラシック」で8日間の闘いがスタート。初日からトップスプリンターたちがバトルを繰り広げられるはずだ。
総合争いは、スターリングの登りフィニッシュが設定された第2ステージや新登場KOMパラコンベにフィニッシュする第3ステージで動くだろう。大会最大の難所であるKOMオールドウィランガヒルにゴールする第5ステージで総合争いは決する。最終日はアデレード市内で行われる平坦ステージだ。
ツアー・ダウンアンダー2015ステージリスト
1月18日(日)ピープルズチョイスクラシック アデレード 51km
1月19日(月)休息日
1月20日(火)第1ステージ タヌンダ〜キャンベルタウン 133km
1月21日(水)第2ステージ アンレー〜スターリング 150km
1月22日(木)第3ステージ ノーウッド〜パラコンベ 143km
1月23日(金)第4ステージ グレネルグ〜マウントバーカー 145km
1月24日(土)第5ステージ マクラーレンヴェイル〜ウィランガヒル 151km
1月25日(日)第6ステージ アデレード〜アデレード 90km
ゲランス欠場でポートやエヴァンスに注目 平地はキッテルの独壇場か
1月と言えばシーズン序盤の序盤。そのため選手のコンディションには大きなバラツキがある。まだまだふっくらとした(絞れていない)欧米の選手がいる一方で、地元オーストラリアやニュージーランドの選手たちは調子を上げている。
ディフェンディングチャンピオンのサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)は、MTBでのトレーニングライド中に落車して鎖骨を骨折。2006年、2012年、2014年に続く4度目の優勝の夢は泡と消えた。
開幕前から優勝候補として注目を集めているのがリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)だ。精彩を欠いた2014年シーズンを過去のものにするためにポートは例年にも増してオフシーズントレーニングに取り組み、絞れた状態で挑んだオーストラリア選手権タイムトライアルで初優勝を飾った。同ロードレースでは結果を残せなかったが、ライバルたちが最も警戒する存在であることに間違いはない。
2015年2月に自身が開催するグレートオーシャンレースを最後に現役を引退するカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)にも注目が集まる。エヴァンスは2014年大会でステージ優勝を飾りながらも、僅か1秒差で総合優勝を逃している。元ツール・ド・フランス覇者にとっては自身最後のステージレースであり、沿道からは熱烈な声援が飛ぶはずだ。
オーストラリアの期待を集めるオリカ・グリーンエッジは2011年大会の覇者キャメロン・マイヤー(オーストラリア)をはじめ、ダリル・インピー(南アフリカ)やサイモン・クラーク(オーストラリア)ら強力なラインナップが揃う。大会最強と目されるチーム力を揃えてくるあたり地元チームとしての意気込みを感じる。
総合優勝経験者としては2002年のマイケル・ロジャース(オーストラリア、ティンコフ・サクソ)、2005年のルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)、2007年のマルティン・エルミガー(スイス、IAMサイクリング)が出場予定。
他にもライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン)、ティアゴ・マシャド(ポルトガル、カチューシャ)、ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)らが総合上位に絡んでくるだろう。
ダウンアンダーで他の追随を許さないステージ通算16勝を飾り、2度総合優勝に輝いているアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)は欠場。ジャーマンスプリンターの系譜を継ぐのはマルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)だ。ジャイアント・アルペシンはトム・ドゥムラン(オランダ)やクーン・デコルト(オランダ)らを送り込んでおり、フィニッシュに向けて最速トレインを形成するはずだ。
オーストラリアチャンピオンのハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、IAMサイクリング)や、ジャパンカップクリテリウムで勝利したクリストファー・サットン(オーストラリア、チームスカイ)、マーク・レンショー(オーストラリア、エティックス・クイックステップ)ら、地元オーストラリア勢がキッテルのスピードを抑え込むことができるかに注目。グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、ロット・ソウダル)、ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレックファクトリーレーシング)、ロベルト・フェラーリ(イタリア、ランプレ・メリダ)らもスピード勝負に挑む。
2015年大会で注目したいのはワイルドカード枠で出場する2チーム、ドラパックプロサイクリングとUniSAオーストラリアだ。ツアー・オブ・ジャパンと熊野でステージ優勝したワウテル・ウィッパート(オランダ、ドラパック)はグレーム・ブラウン(オーストラリア)に導かれて勝利を狙う。UniSAオーストラリアはアワーレコード挑戦予定のジャック・ボブリッジ(オーストラリア)やスプリンターのスティール・ヴォンホフ(オーストラリア)らを擁しており、過去最強のラインナップでUCIワールドチーム相手に闘う。
text:Kei Tsuji in Adelaide, Australia
オールラウンダー向きに進化した真夏のステージレース
ツアー・ダウンアンダーの開催は今年で17回目。南オーストラリア州に根付いたロードレースとして産声をあげ、2008年にUCI(国際自転車競技連合)のトップレースカテゴリーであるUCIプロツアーレース(現在UCIワールドツアーレース)入りを果たした。長年UCIが推し進める「ロードレースの国際化」の象徴とも言える。
「ダウンアンダー」は、元々イギリスから見て地球の裏側にあるオーストラリアやニュージーランドを指す言葉。ヨーロッパ在住の選手たちは長時間のフライトを経てオーストラリア大陸に乗り込む。大きな気温の変化に慣れ、そして10時間近い時差を解消するため、多くの選手が時間に余裕をもって現地入りしている。
南半球オーストラリアは今がまさに夏の盛り。連日気温が40度を超えた2014年ほどの暑さではないが、気温30度前後の快適なコンディションが続くとの予報が出ている。なお、日本との時差は0.5時間(現在はサマータイム期間中なので日本時間+1.5時間)だ。
アデレード近郊には大きな山脈が無く、大会の最標高地点も標高500m程度と低い。海沿いの平野部や、ワインの産地として世界的に有名なバロッサバレー、クレアバレー、アデレードヒルズと呼ばれる丘陵地帯がコースの大部分を占めている。
スプリンター向きの平坦ステージが多く設定されているため、伝統的にマッチョなスプリンターたちが総合争いを繰り広げて来た。しかし、ここ数年は山岳ステージの重要度が上がっているため総合上位にはグランツール総合上位に名を連ねるオールラウンダーたちが名を連ねている。
1月17日のチームプレゼンテーションを経て、1月18日にアデレード市街地で行なわれるUCI非公認の顔見せクリテリウム「ピープルズチョイス・クラシック」で8日間の闘いがスタート。初日からトップスプリンターたちがバトルを繰り広げられるはずだ。
総合争いは、スターリングの登りフィニッシュが設定された第2ステージや新登場KOMパラコンベにフィニッシュする第3ステージで動くだろう。大会最大の難所であるKOMオールドウィランガヒルにゴールする第5ステージで総合争いは決する。最終日はアデレード市内で行われる平坦ステージだ。
ツアー・ダウンアンダー2015ステージリスト
1月18日(日)ピープルズチョイスクラシック アデレード 51km
1月19日(月)休息日
1月20日(火)第1ステージ タヌンダ〜キャンベルタウン 133km
1月21日(水)第2ステージ アンレー〜スターリング 150km
1月22日(木)第3ステージ ノーウッド〜パラコンベ 143km
1月23日(金)第4ステージ グレネルグ〜マウントバーカー 145km
1月24日(土)第5ステージ マクラーレンヴェイル〜ウィランガヒル 151km
1月25日(日)第6ステージ アデレード〜アデレード 90km
ゲランス欠場でポートやエヴァンスに注目 平地はキッテルの独壇場か
1月と言えばシーズン序盤の序盤。そのため選手のコンディションには大きなバラツキがある。まだまだふっくらとした(絞れていない)欧米の選手がいる一方で、地元オーストラリアやニュージーランドの選手たちは調子を上げている。
ディフェンディングチャンピオンのサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)は、MTBでのトレーニングライド中に落車して鎖骨を骨折。2006年、2012年、2014年に続く4度目の優勝の夢は泡と消えた。
開幕前から優勝候補として注目を集めているのがリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)だ。精彩を欠いた2014年シーズンを過去のものにするためにポートは例年にも増してオフシーズントレーニングに取り組み、絞れた状態で挑んだオーストラリア選手権タイムトライアルで初優勝を飾った。同ロードレースでは結果を残せなかったが、ライバルたちが最も警戒する存在であることに間違いはない。
2015年2月に自身が開催するグレートオーシャンレースを最後に現役を引退するカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)にも注目が集まる。エヴァンスは2014年大会でステージ優勝を飾りながらも、僅か1秒差で総合優勝を逃している。元ツール・ド・フランス覇者にとっては自身最後のステージレースであり、沿道からは熱烈な声援が飛ぶはずだ。
オーストラリアの期待を集めるオリカ・グリーンエッジは2011年大会の覇者キャメロン・マイヤー(オーストラリア)をはじめ、ダリル・インピー(南アフリカ)やサイモン・クラーク(オーストラリア)ら強力なラインナップが揃う。大会最強と目されるチーム力を揃えてくるあたり地元チームとしての意気込みを感じる。
総合優勝経験者としては2002年のマイケル・ロジャース(オーストラリア、ティンコフ・サクソ)、2005年のルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)、2007年のマルティン・エルミガー(スイス、IAMサイクリング)が出場予定。
他にもライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン)、ティアゴ・マシャド(ポルトガル、カチューシャ)、ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)らが総合上位に絡んでくるだろう。
ダウンアンダーで他の追随を許さないステージ通算16勝を飾り、2度総合優勝に輝いているアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)は欠場。ジャーマンスプリンターの系譜を継ぐのはマルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)だ。ジャイアント・アルペシンはトム・ドゥムラン(オランダ)やクーン・デコルト(オランダ)らを送り込んでおり、フィニッシュに向けて最速トレインを形成するはずだ。
オーストラリアチャンピオンのハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、IAMサイクリング)や、ジャパンカップクリテリウムで勝利したクリストファー・サットン(オーストラリア、チームスカイ)、マーク・レンショー(オーストラリア、エティックス・クイックステップ)ら、地元オーストラリア勢がキッテルのスピードを抑え込むことができるかに注目。グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、ロット・ソウダル)、ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレックファクトリーレーシング)、ロベルト・フェラーリ(イタリア、ランプレ・メリダ)らもスピード勝負に挑む。
2015年大会で注目したいのはワイルドカード枠で出場する2チーム、ドラパックプロサイクリングとUniSAオーストラリアだ。ツアー・オブ・ジャパンと熊野でステージ優勝したワウテル・ウィッパート(オランダ、ドラパック)はグレーム・ブラウン(オーストラリア)に導かれて勝利を狙う。UniSAオーストラリアはアワーレコード挑戦予定のジャック・ボブリッジ(オーストラリア)やスプリンターのスティール・ヴォンホフ(オーストラリア)らを擁しており、過去最強のラインナップでUCIワールドチーム相手に闘う。
text:Kei Tsuji in Adelaide, Australia
Amazon.co.jp