2009/09/07(月) - 10:30
合計7つの山岳が登場した第8ステージは、最後の超級山岳アイタナ峠で勝負が決まった。有力集団からラスト2kmで飛び出したダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)が初優勝。世界選手権に向けて好調ぶりをアピールした。カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)が初めてマイヨオロに袖を通した。
本格的な山岳初日に昨年の山岳王がエスケープ
ブエルタの見どころは雨のオランダではなくスペインの山岳。第8ステージは本格的な山岳初戦、合計5つ登場する山頂フィニッシュの1回目、超級山岳アイタナ峠にゴールする難関山岳ステージが姿を現した。
204kmは今大会2番目の長さで、序盤からスキマなくカテゴリー山岳が敷き詰められている。絶え間なく登場する7つの2級&3級山岳を越え、最後は登坂距離21.7km・標高差1245m・平均勾配5.7%・最大勾配9.5%の超級山岳アイタナ峠を駆け上がってゴールだ。
他のグランツールと比べると、早い時期にアタックが決まることの多いブエルタ。しかしこの日は勝負がかかった重要な山岳ステージだけに、序盤のアタック合戦は熾烈を極めた。スタート直後からアタックと吸収を繰り返すこと1時間弱。37km地点で6名のアタックが決まると、ようやく事態は収拾した。
逃げたのは、昨年の山岳王ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)や、昨年ツール・ド・北海道(今年は9月9日開幕!)最終ステージ2位のジョニー・フーガーランド(オランダ、ヴァカンソレイユ)、2005年のツール・ド・フランスステージ勝者のピーター・ウェーニング(オランダ、ラボバンク)ら6名。
2級と3級の山岳が連続するアップダウンコースで、この6名の逃げは15分近いアドバンテージを築き上げた。最も積極的に山岳ポイントを加算したのはウェーニング。超級山岳アイタナ峠突入を前に、ウェーニングは48ポイントを獲得して暫定山岳賞ランキングトップに立った。
メイン集団はマイヨオロ擁するサクソバンクではなく、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)のグランツール初制覇に燃えるケースデパーニュがコントロール。タイム差は順調に縮まり続け、最後のアイタナ峠の麓に到着する頃には、タイム差が3分30秒まで縮まった。
登坂距離20kmオーバーの上りが始まると、先頭ではフーガーランドが果敢にペースを上げ、これに山岳王モンクティエが合流。ケースデパーニュがハイペースを刻むメイン集団からは、イニーゴ・クエスタ(スペイン、サーヴェロ)とダビ・デラフエンテ(スペイン、フジ・セルヴェット)がアタック。
逆にアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)とヤコブ・フグルサング(デンマーク、サクソバンク)は集団から脱落した。
クエスタとデラフエンテの追走コンビにはホセアンヘル・ゴメスマルチャンテ(スペイン、サーヴェロ)が追いついたが、ガルシアアコスタ、ロペスガルシア、キリエンカ、バルベルデ、ロドリゲス、モレーノを揃えるケースデパーニュの鉄壁集団コントロールの前にリードが奪えず吸収。
やがて先頭では経験と登坂力の差が如実に現れ始め、フーガーランドを振り切ったモンクティエがラスト5kmから独走態勢に。一方のメイン集団ではケースデパーニュに代わってリクイガスがリードを始め、シルヴェスタ・シュミット(ポーランド)に牽かれたイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)がアタック。
バッソのアタックによりメイン集団が有力勢7名(バッソ、バルベルデ、エヴァンス、クネゴ、ヘーシンク、サンチェス、ヴァリャベッチ)まで絞り込まれると、ラスト2kmで満を持したクネゴが飛び出した。
ライバルたちを一気に突き放す強烈なアタックで飛び出したクネゴは、それまでずっと逃げていたモンクティエをラスト1kmで追い抜いて先頭へ。クネゴは最後までペースを落とさず、霧に包まれたアイタナ峠の頂上でガッツポーズを決めた。
小さな王子の帰還、エヴァンス首位に躍進
強いクネゴが帰ってきた。2004年に22歳の若さでジロ・デ・イタリアを制した「ピッコロ・プリンチペ(小さな王子)」が久々のグランツールでの勝利。ブエルタではステージ初優勝だ。
「この成功には大きな満足感を得ているよ。勝利の味を堪能するのは久しぶり。しばらく低迷していたから、喜びはとても大きい。チームスタッフとのミーティングで、今日か明日のステージで好成績を狙って攻撃しようと決めていたんだ。レース中はとても調子が良くて、集団が一気にペースアップしたところでアタック。後ろを振り返ると誰も付いてこなかったけど、そんなこと関係ない、ただ前を見てゴールを目指した」。
今年クネゴは3月のセッティマーナ・コッピ・エ・バルタリで自身2度目の総合優勝を飾ったが、アルデンヌ・クラシックでは勝利に手が届かず(アムステル5位、ワロンヌ3位、リエージュ7位)。ジロでは序盤から山岳で出遅れ、総合19位に終わった。
この勝利で一気に総合7位までジャンプアップしたクネゴ。しかしブエルタでは開幕前から総合成績は狙わないことを公言している。総合を狙わないばかりか、最終日まで走りきるかどうかも分からない。
「この勝利で、ブエルタに対する意識が上がった。それでも、ブエルタは世界選手権の準備レースだという位置づけに変わりはない。上りが厳しくて長い距離のレースで勝ったことは、(世界選に向けて)大きな自信になるよ」。今月末スイス・メンドリシオで開催されるロード世界選手権では優勝候補の筆頭だ。
有力選手ひしめくメイン集団は、ラスト1kmで飛び出したヘーシンクを先頭にゴール。マイヨオロを着るファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)が早々に遅れていたため、この日の結果を受けて総合6位のエヴァンスが総合首位まで浮上。エヴァンスのマイヨオロ獲得が決まった。
肩を突き合わしてゴールした有力選手たち。しかしそこにはアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)の姿は無かった。アンディは体調不良によりレース中盤にリタイア。
「ずっと調子が悪くて、昨夜から風邪のような症状が出ていたんだ。今日はスタート前に何も食べられなかった。当然エネルギー不足で力は出なかった。こんな状況でゴールまで辿り着くのは意味がないと思った」。ツール総合2位の若武者が、初出場のブエルタ前半ステージで姿を消した。
この日はサクソバンク大苦戦。アンディに代わるエースと期待されたヤコブ・フグルサング(デンマーク)はフランク・シュレク(ルクセンブルク)と一緒に10分42秒遅れでゴール。サクソバンクは総合上位から姿を消した。
フグルサングは「今日は悪い一日だった。(第4ステージの)落車の痛みで調子が上がらず、アイタナ峠は自分のペースで上ることにしたんだ。重要なカードの一枚であるアンディのリタイアは、チームにとって大きな痛手。彼の存在がチームの士気を高めてくれていた」とコメント。総合を諦めたサクソバンクは戦略を転換してくるだろう。
アスタナもこの日苦戦したチームの一つ。2006年ブエルタ覇者のヴィノクロフは9分01秒遅れでゴールし、実質的に総合争いから脱落した。
アスタナのショーン・イェーツ監督は「ヴィノはラスト10kmで集団から脱落した。今日は最後の上りだけを見ると長さは20km程度。だがコース全体を見ると登坂距離は60kmを超えていた。我々は現実的にならなければならない。ヴィノには2年間のブランクがあることを忘れてはならない」と、山岳初日にマイヨオロ争いの敗北宣言。
イェーツ監督は「アイマル(スベルディア)がラスト2kmで脱落したことは残念だ。今になってクリストファー・ホーナーのリアイアがとても悔やまれる。彼は間違いなく今日チームでトップの成績を残していただろう。とにかく現実を受け止めて、明日のステージに挑みたい」と、厳しい第9ステージに目を向ける。
この日明らかになったのは、世界選手権に向けてクネゴが完調に近いこと、サクソバンク勢とヴィノクロフが総合争いから脱落したこと、そして山岳ではケースデパーニュのチーム力が突出していること。
ケースデパーニュはバルベルデのステージ優勝とマイヨオロには届かなかったが、地元スペインチームとしてのプライドと高い戦闘力を見せつけた。この先の山岳ステージでもケースデパーニュ主導の山岳バトルが繰り広げられるはずだ。
ラスト1kmでクネゴに吸収されながらもステージ2位に食い込んだモンクティエは、序盤から積算した山岳ポイントに超級山岳2番手通過の高ポイントを加算して山岳賞ランキングトップに浮上。2年連続山岳賞獲得に向けて山岳初日に存在感を示した。
翌日の第9ステージは、合計7つのカテゴリー山岳が登場する難関山岳ステージ。2つの3級山岳と4つの2級山岳を越え、最後は最大勾配20%の1級山岳ソレット・デル・カティ峠を駆け上がってゴールとなる。
選手コメントはランプレ、アスタナ、サクソバンクのチーム公式サイトより。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2009第8ステージ結果
1位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)6h04'54"
2位 ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)+33"
3位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)+36"
4位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)+44"
5位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)
6位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)
7位 タディ・ヴァリャベッチ(スロベニア、アージェードゥーゼル)+50"
8位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)
9位 エセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)
10位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、ケースデパーニュ)
マイヨオロ(個人総合成績)
1位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)31h05'02"
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)+02"
3位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)+08"
4位 トーマス・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン)+13"
5位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)+29"
6位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)+46"
7位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)+1'26"
8位 アイマル・スベルディア(スペイン、アスタナ)+1'37"
9位 エセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)+1'46"
10位 ファンホセ・コーボ(スペイン、フジ・セルヴェット)+2'03"
モンターニャ(山岳賞)
1位 ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)60pts
2位 ピーター・ウェーニング(オランダ、ラボバンク)48pts
3位 ジョニー・フーガーランド(オランダ、ヴァカンソレイユ)31pts
プントス(ポイント賞)
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)88pts
2位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)75pts
3位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)67pts
コンビナーダ(複合賞)
1位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)17pts
2位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)25pts
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)27pts
チーム総合成績
1位 ケースデパーニュ 93h17'20"
2位 アスタナ +3'20"
3位 サイレンス・ロット +6'12"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Unipublic
本格的な山岳初日に昨年の山岳王がエスケープ
ブエルタの見どころは雨のオランダではなくスペインの山岳。第8ステージは本格的な山岳初戦、合計5つ登場する山頂フィニッシュの1回目、超級山岳アイタナ峠にゴールする難関山岳ステージが姿を現した。
204kmは今大会2番目の長さで、序盤からスキマなくカテゴリー山岳が敷き詰められている。絶え間なく登場する7つの2級&3級山岳を越え、最後は登坂距離21.7km・標高差1245m・平均勾配5.7%・最大勾配9.5%の超級山岳アイタナ峠を駆け上がってゴールだ。
他のグランツールと比べると、早い時期にアタックが決まることの多いブエルタ。しかしこの日は勝負がかかった重要な山岳ステージだけに、序盤のアタック合戦は熾烈を極めた。スタート直後からアタックと吸収を繰り返すこと1時間弱。37km地点で6名のアタックが決まると、ようやく事態は収拾した。
逃げたのは、昨年の山岳王ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)や、昨年ツール・ド・北海道(今年は9月9日開幕!)最終ステージ2位のジョニー・フーガーランド(オランダ、ヴァカンソレイユ)、2005年のツール・ド・フランスステージ勝者のピーター・ウェーニング(オランダ、ラボバンク)ら6名。
2級と3級の山岳が連続するアップダウンコースで、この6名の逃げは15分近いアドバンテージを築き上げた。最も積極的に山岳ポイントを加算したのはウェーニング。超級山岳アイタナ峠突入を前に、ウェーニングは48ポイントを獲得して暫定山岳賞ランキングトップに立った。
メイン集団はマイヨオロ擁するサクソバンクではなく、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)のグランツール初制覇に燃えるケースデパーニュがコントロール。タイム差は順調に縮まり続け、最後のアイタナ峠の麓に到着する頃には、タイム差が3分30秒まで縮まった。
登坂距離20kmオーバーの上りが始まると、先頭ではフーガーランドが果敢にペースを上げ、これに山岳王モンクティエが合流。ケースデパーニュがハイペースを刻むメイン集団からは、イニーゴ・クエスタ(スペイン、サーヴェロ)とダビ・デラフエンテ(スペイン、フジ・セルヴェット)がアタック。
逆にアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)とヤコブ・フグルサング(デンマーク、サクソバンク)は集団から脱落した。
クエスタとデラフエンテの追走コンビにはホセアンヘル・ゴメスマルチャンテ(スペイン、サーヴェロ)が追いついたが、ガルシアアコスタ、ロペスガルシア、キリエンカ、バルベルデ、ロドリゲス、モレーノを揃えるケースデパーニュの鉄壁集団コントロールの前にリードが奪えず吸収。
やがて先頭では経験と登坂力の差が如実に現れ始め、フーガーランドを振り切ったモンクティエがラスト5kmから独走態勢に。一方のメイン集団ではケースデパーニュに代わってリクイガスがリードを始め、シルヴェスタ・シュミット(ポーランド)に牽かれたイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)がアタック。
バッソのアタックによりメイン集団が有力勢7名(バッソ、バルベルデ、エヴァンス、クネゴ、ヘーシンク、サンチェス、ヴァリャベッチ)まで絞り込まれると、ラスト2kmで満を持したクネゴが飛び出した。
ライバルたちを一気に突き放す強烈なアタックで飛び出したクネゴは、それまでずっと逃げていたモンクティエをラスト1kmで追い抜いて先頭へ。クネゴは最後までペースを落とさず、霧に包まれたアイタナ峠の頂上でガッツポーズを決めた。
小さな王子の帰還、エヴァンス首位に躍進
強いクネゴが帰ってきた。2004年に22歳の若さでジロ・デ・イタリアを制した「ピッコロ・プリンチペ(小さな王子)」が久々のグランツールでの勝利。ブエルタではステージ初優勝だ。
「この成功には大きな満足感を得ているよ。勝利の味を堪能するのは久しぶり。しばらく低迷していたから、喜びはとても大きい。チームスタッフとのミーティングで、今日か明日のステージで好成績を狙って攻撃しようと決めていたんだ。レース中はとても調子が良くて、集団が一気にペースアップしたところでアタック。後ろを振り返ると誰も付いてこなかったけど、そんなこと関係ない、ただ前を見てゴールを目指した」。
今年クネゴは3月のセッティマーナ・コッピ・エ・バルタリで自身2度目の総合優勝を飾ったが、アルデンヌ・クラシックでは勝利に手が届かず(アムステル5位、ワロンヌ3位、リエージュ7位)。ジロでは序盤から山岳で出遅れ、総合19位に終わった。
この勝利で一気に総合7位までジャンプアップしたクネゴ。しかしブエルタでは開幕前から総合成績は狙わないことを公言している。総合を狙わないばかりか、最終日まで走りきるかどうかも分からない。
「この勝利で、ブエルタに対する意識が上がった。それでも、ブエルタは世界選手権の準備レースだという位置づけに変わりはない。上りが厳しくて長い距離のレースで勝ったことは、(世界選に向けて)大きな自信になるよ」。今月末スイス・メンドリシオで開催されるロード世界選手権では優勝候補の筆頭だ。
有力選手ひしめくメイン集団は、ラスト1kmで飛び出したヘーシンクを先頭にゴール。マイヨオロを着るファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)が早々に遅れていたため、この日の結果を受けて総合6位のエヴァンスが総合首位まで浮上。エヴァンスのマイヨオロ獲得が決まった。
肩を突き合わしてゴールした有力選手たち。しかしそこにはアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)の姿は無かった。アンディは体調不良によりレース中盤にリタイア。
「ずっと調子が悪くて、昨夜から風邪のような症状が出ていたんだ。今日はスタート前に何も食べられなかった。当然エネルギー不足で力は出なかった。こんな状況でゴールまで辿り着くのは意味がないと思った」。ツール総合2位の若武者が、初出場のブエルタ前半ステージで姿を消した。
この日はサクソバンク大苦戦。アンディに代わるエースと期待されたヤコブ・フグルサング(デンマーク)はフランク・シュレク(ルクセンブルク)と一緒に10分42秒遅れでゴール。サクソバンクは総合上位から姿を消した。
フグルサングは「今日は悪い一日だった。(第4ステージの)落車の痛みで調子が上がらず、アイタナ峠は自分のペースで上ることにしたんだ。重要なカードの一枚であるアンディのリタイアは、チームにとって大きな痛手。彼の存在がチームの士気を高めてくれていた」とコメント。総合を諦めたサクソバンクは戦略を転換してくるだろう。
アスタナもこの日苦戦したチームの一つ。2006年ブエルタ覇者のヴィノクロフは9分01秒遅れでゴールし、実質的に総合争いから脱落した。
アスタナのショーン・イェーツ監督は「ヴィノはラスト10kmで集団から脱落した。今日は最後の上りだけを見ると長さは20km程度。だがコース全体を見ると登坂距離は60kmを超えていた。我々は現実的にならなければならない。ヴィノには2年間のブランクがあることを忘れてはならない」と、山岳初日にマイヨオロ争いの敗北宣言。
イェーツ監督は「アイマル(スベルディア)がラスト2kmで脱落したことは残念だ。今になってクリストファー・ホーナーのリアイアがとても悔やまれる。彼は間違いなく今日チームでトップの成績を残していただろう。とにかく現実を受け止めて、明日のステージに挑みたい」と、厳しい第9ステージに目を向ける。
この日明らかになったのは、世界選手権に向けてクネゴが完調に近いこと、サクソバンク勢とヴィノクロフが総合争いから脱落したこと、そして山岳ではケースデパーニュのチーム力が突出していること。
ケースデパーニュはバルベルデのステージ優勝とマイヨオロには届かなかったが、地元スペインチームとしてのプライドと高い戦闘力を見せつけた。この先の山岳ステージでもケースデパーニュ主導の山岳バトルが繰り広げられるはずだ。
ラスト1kmでクネゴに吸収されながらもステージ2位に食い込んだモンクティエは、序盤から積算した山岳ポイントに超級山岳2番手通過の高ポイントを加算して山岳賞ランキングトップに浮上。2年連続山岳賞獲得に向けて山岳初日に存在感を示した。
翌日の第9ステージは、合計7つのカテゴリー山岳が登場する難関山岳ステージ。2つの3級山岳と4つの2級山岳を越え、最後は最大勾配20%の1級山岳ソレット・デル・カティ峠を駆け上がってゴールとなる。
選手コメントはランプレ、アスタナ、サクソバンクのチーム公式サイトより。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2009第8ステージ結果
1位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)6h04'54"
2位 ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)+33"
3位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)+36"
4位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)+44"
5位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)
6位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)
7位 タディ・ヴァリャベッチ(スロベニア、アージェードゥーゼル)+50"
8位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)
9位 エセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)
10位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、ケースデパーニュ)
マイヨオロ(個人総合成績)
1位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)31h05'02"
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)+02"
3位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)+08"
4位 トーマス・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン)+13"
5位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)+29"
6位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)+46"
7位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)+1'26"
8位 アイマル・スベルディア(スペイン、アスタナ)+1'37"
9位 エセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)+1'46"
10位 ファンホセ・コーボ(スペイン、フジ・セルヴェット)+2'03"
モンターニャ(山岳賞)
1位 ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)60pts
2位 ピーター・ウェーニング(オランダ、ラボバンク)48pts
3位 ジョニー・フーガーランド(オランダ、ヴァカンソレイユ)31pts
プントス(ポイント賞)
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)88pts
2位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)75pts
3位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)67pts
コンビナーダ(複合賞)
1位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)17pts
2位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)25pts
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)27pts
チーム総合成績
1位 ケースデパーニュ 93h17'20"
2位 アスタナ +3'20"
3位 サイレンス・ロット +6'12"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Unipublic
フォトギャラリー