2009/09/04(金) - 01:28
ツール・ド・北海道が9月9日(水)から始まる。今年は道北から道央を中心に展開する5日間、6ステージ合計705kmで行われる。コースから見どころを紹介しよう。
牧草地帯、原生林、海岸、数々の峠そしてどこまでも続く一直線の道。今年のツール・ド・北海道は特に北海道らしい風景の真ん中を通過する。日本でもっともステージレースらしいレースと言われるのは、公道のラインレースだからだ。スタートとゴールが違うそれは、まさに町から町へのレース。選手もスタッフも観客もみんな移動する。
シクロワイアードでは、これら公道コースの全てを自動車ないし自転車で実地踏査した。写真とともに見どころを紹介しよう。
北海道の峠は緩くて長い。一般にそこで差はつきにくい。しかし大小の峠を毎日配し、むしろ小さな上りや下りで差がつきやすい。少なくともそのようなコースレイアウトになっている。さらに天候によっては大きく変貌する区間もある。そして秒差の争いの北海道で重要な位置を占めるTTは、今年は第1ステージに来ている。
つぎに各ステージ毎に見どころを挙げてみよう。
9月9日(水)午前
第1ステージ 個人タイムトライアル 1.1km
旭川市内の石狩川河川敷で行われる。約半分の地点、ターンする箇所のテクニックも重要。距離は毎度のことながら短いが、唯一コンマ秒差のつくもの。そのため短くとも上位陣はTTバイクを使う。そうでなくともDHバー、ディスクホイール、エアロヘルメットは必須だ。個人TTの全日本チャンピオン盛一大(愛三工業)は白いチャンピオンジャージで登場する。観戦はスタート・ゴール地点付近が選手名とタイムも読み上げられるのでいいだろう。
9月9日(水)午後
第2ステージ 旭川から士別 97km
午前のTT後になるため97kmと短いステージ。
スタート後20kmで標高差300m平均6%、KOMの江丹別峠がある。北海道では比較的勾配があるほうで、まずはここでアタックが見られるだろう。そこを過ぎると幌加内へ。ここ幌加内は日本一のソバ作付面積を誇り、あたり一面がソバ畑だ。ゆっくり観戦派はぜひここでそばを。町中心部のそば屋さんがお勧め。
このあたりから40kmほどはほぼ一直線の平坦、短いだけにアタックが頻繁にかかるだろう。
そしてゴール10km前で市道に入り自然公園内の丘陵へ。大集団で来てもここでばらける可能性が高い。ゴール前300mは緩い上り。上位以外も、タイム差を取られないような走りが必須だ。
9月10日(木)
第3ステージ 名寄から豊富 183km
当日の天候によって展開が大きく変わるコース。
序盤に峠があるものの、その後はほぼ平坦基調。終盤50kmはオロロンラインで海沿いを走る一直線の道だ。
名寄市役所前をスタートして10kmで標高差350mの上り、母子里を過ぎて150mの上りの美深峠がKOMだ。勾配はきつくなく、その後は平坦なので、逃げを決めるポイントにするには難しい。もし集団から遅れた場合、下り区間で追いついておかないと、この後ゴールまでの150kmはほぼ平坦なので完走は難しくなる。
母子里(もしり)は日本最低気温マイナス41.2度を記録した場所。そのクリスタルパークに立ち寄ってみては?
その後幹線国道の40号を走り、100mと50mほどの小さな峠を2つ越えて日本海沿いへ。このオロロンラインは傍らに風力発電所があるほどに強風地帯。好天ならば素晴らしい景色の中、時速50kmで突き進む集団が見えるだろう。
しかし悪天候だとこの様相は一変しまさに地獄となる。海水混じりの雨粒が真横から強風とともに叩きつける。大集団もここで木っ端微塵となり、いくつもの斜めの車列ができる。北のクラシックさながらだ。この後サロベツ原野内を13km走るので、数人ならば逃げ切れる。
ゴール付近は、左折後1kmは広い直線路。ここで熾烈な主導権争いがされる。そして右折後200mでゴール。この最終コーナーを上位数番以内、あるいは先頭でクリアするのが必須だ。最終コーナーからゴールまでの距離は、全ステージを通じてこの200mが一番短いものだ。
好天ならば大集団で、そして悪天候ならば小集団で、それぞれゴール勝負が見られる。
9月11日(金)
第4ステージ 豊富から下川 182km
豊富町(とよとみ)は前日のフィニッシュ、そして当日のスタートなので選手やスタッフは移動の手間がない。期間中で唯一少し落ち着ける場所だ。
その豊富町は「自転車健康都市宣言の町」だ。
豊富町役場商工観光課川原課長は言う。「平成元年に自転車健康都市宣言の町として議決されました。ここは国立公園があり自然が豊か、そして自転車は環境にやさしく健康にもいい。そういった理由からです。自転車に関するイベント、ロードレース、サイクリング、MTBなど今まで開催していいます。自分自身宗谷サイクリング協会の事務局をしていますが。また、この宗谷でレースが単独で開けるよう、審判員の育成にも力を入れており、昨年は1名(役場職員!)をツール・ド・おきなわへも派遣しました」と、なんとも頼もしい話だ。
第4ステージは緩やかなアップダウンが続く、牧草地帯と原生林の中を走るコース。
スタート後15kmの豊幌峠は短いが勾配は6%でそれなりのもの。次の知駒峠へ向けてアタックが見られるかもしれない。しばらく牧草地帯を行くとその知駒峠に。標高差400m、6%の勾配は北海道では急なほう。この二つの峠で小集団ができると面白い展開だ。
その後はKOMもあるが緩やかなアップダウンの原生林を過ぎて、ゴールの下川町へ下っていく。この終盤およそ60kmは人家のほとんどない区間だ。途中の天の川トンネルは、幻の鉄道、旧国鉄美幸線を利用したものでそれほどにこの前後の勾配は緩いもの。
最後は下川町中心部をぐるっと一回りする。ゴール前約1kmは道幅の広い一直線路だ。逃げを飲み込んだ大集団の迫力あるゴールスプリントが見られるだろう。
9月12日(土)
第5ステージ 旭川から岩見沢 181km
いよいよ今年のツール・ド・北海道のハイライトステージだ。
見どころは中盤に現れる標高1050mの十勝岳中腹吹上温泉への登りだ。中盤までは北海道の峠らしい、2、3%の緩やかな勾配の直線状の道路だ。しかし後半8kmほどは5%から8%ほどのやっと峠らしい道になる。下りはコーナーのきついものが数箇所あり、その後は直線状。
ここで集団は大きく分かれるだろう。しかし先が長いため、小集団ができたとしても、下りで吸収されるかもしれない。いっぽうで完走を目指す選手にとっては最後にして最大の難関だ。ここを大差なく集団でクリアしたいところだ。
山岳区間を過ぎると、富良野盆地を一望する道路を走る。
第5ステージは総合順位を逆転する実質最終ステージ。ここはヒルクライマーがぜひとも少人数で逃げて欲しい場面だ。
大きな流れは吹上温泉、そして勝敗を決するポイントは、終盤のピークだろう。しかしここもゴールまで長いので、単独アタックは難しく、小集団でのゴールスプリントになるだろう。あるいは新城幸也が得意とするような、誰もがためらう距離を残しての単独アタックを見せる選手がいるか、注目だ。
9月13日(日)
第6ステージ モエレ沼クリテリウム 61km
いよいよ最終日はモエレ沼のクリテリウム。1周2.75kmを22周する。途中のホットスポットは4回、ゴールのボーナスタイムをあわせると最大22秒を稼ぐことができる。優勝争いの最後にして最大の見どころだ。昨年は中盤までリーダーの宮澤と2位選手がこのタイムを取り合う激しい戦いが見られた。今年はどんな戦いになるか。
観戦はどこでもOK、ゴール地点付近でそのボーナスタイム争いを見るも良し、逆周りに1周歩いても良しだ(ただしゴールには間に合うように!)。コース上は歩けない。特に集団が過ぎても選手がやってくるので注意。
なお、第2ステージ以降、ボーナスタイムが設定されている。同時にポイントも付与される。KOMでは山岳ポイントのみ付与される。
途中のホットスポット:3秒、2秒、1秒
ゴール:10秒、6秒、4秒(第2ステージのみ6秒、4秒、2秒)
ホットスポットは、第2ステージ1回、第3、4、5ステージ各2回、第6ステージ4回
第2ステージから第5ステージまでの観戦は地図とにらめっこの車での移動が一番いい。迂回路が少なく今年も考えどころだが、各ステージ大体3、4回は見られるだろう。スタートかゴールかどちらかを見ない覚悟をすると自由度は上がる。くれぐれも交通法規を守って安全運転で!
レースが動くのは1日目、そしてハイライトは第5ステージだ。
なお、ツール・ド・北海道2009見どころ「選手・チーム編」は、のちほどお送りします。
text&photo:高木秀彰
牧草地帯、原生林、海岸、数々の峠そしてどこまでも続く一直線の道。今年のツール・ド・北海道は特に北海道らしい風景の真ん中を通過する。日本でもっともステージレースらしいレースと言われるのは、公道のラインレースだからだ。スタートとゴールが違うそれは、まさに町から町へのレース。選手もスタッフも観客もみんな移動する。
シクロワイアードでは、これら公道コースの全てを自動車ないし自転車で実地踏査した。写真とともに見どころを紹介しよう。
北海道の峠は緩くて長い。一般にそこで差はつきにくい。しかし大小の峠を毎日配し、むしろ小さな上りや下りで差がつきやすい。少なくともそのようなコースレイアウトになっている。さらに天候によっては大きく変貌する区間もある。そして秒差の争いの北海道で重要な位置を占めるTTは、今年は第1ステージに来ている。
つぎに各ステージ毎に見どころを挙げてみよう。
9月9日(水)午前
第1ステージ 個人タイムトライアル 1.1km
旭川市内の石狩川河川敷で行われる。約半分の地点、ターンする箇所のテクニックも重要。距離は毎度のことながら短いが、唯一コンマ秒差のつくもの。そのため短くとも上位陣はTTバイクを使う。そうでなくともDHバー、ディスクホイール、エアロヘルメットは必須だ。個人TTの全日本チャンピオン盛一大(愛三工業)は白いチャンピオンジャージで登場する。観戦はスタート・ゴール地点付近が選手名とタイムも読み上げられるのでいいだろう。
9月9日(水)午後
第2ステージ 旭川から士別 97km
午前のTT後になるため97kmと短いステージ。
スタート後20kmで標高差300m平均6%、KOMの江丹別峠がある。北海道では比較的勾配があるほうで、まずはここでアタックが見られるだろう。そこを過ぎると幌加内へ。ここ幌加内は日本一のソバ作付面積を誇り、あたり一面がソバ畑だ。ゆっくり観戦派はぜひここでそばを。町中心部のそば屋さんがお勧め。
このあたりから40kmほどはほぼ一直線の平坦、短いだけにアタックが頻繁にかかるだろう。
そしてゴール10km前で市道に入り自然公園内の丘陵へ。大集団で来てもここでばらける可能性が高い。ゴール前300mは緩い上り。上位以外も、タイム差を取られないような走りが必須だ。
9月10日(木)
第3ステージ 名寄から豊富 183km
当日の天候によって展開が大きく変わるコース。
序盤に峠があるものの、その後はほぼ平坦基調。終盤50kmはオロロンラインで海沿いを走る一直線の道だ。
名寄市役所前をスタートして10kmで標高差350mの上り、母子里を過ぎて150mの上りの美深峠がKOMだ。勾配はきつくなく、その後は平坦なので、逃げを決めるポイントにするには難しい。もし集団から遅れた場合、下り区間で追いついておかないと、この後ゴールまでの150kmはほぼ平坦なので完走は難しくなる。
母子里(もしり)は日本最低気温マイナス41.2度を記録した場所。そのクリスタルパークに立ち寄ってみては?
その後幹線国道の40号を走り、100mと50mほどの小さな峠を2つ越えて日本海沿いへ。このオロロンラインは傍らに風力発電所があるほどに強風地帯。好天ならば素晴らしい景色の中、時速50kmで突き進む集団が見えるだろう。
しかし悪天候だとこの様相は一変しまさに地獄となる。海水混じりの雨粒が真横から強風とともに叩きつける。大集団もここで木っ端微塵となり、いくつもの斜めの車列ができる。北のクラシックさながらだ。この後サロベツ原野内を13km走るので、数人ならば逃げ切れる。
ゴール付近は、左折後1kmは広い直線路。ここで熾烈な主導権争いがされる。そして右折後200mでゴール。この最終コーナーを上位数番以内、あるいは先頭でクリアするのが必須だ。最終コーナーからゴールまでの距離は、全ステージを通じてこの200mが一番短いものだ。
好天ならば大集団で、そして悪天候ならば小集団で、それぞれゴール勝負が見られる。
9月11日(金)
第4ステージ 豊富から下川 182km
豊富町(とよとみ)は前日のフィニッシュ、そして当日のスタートなので選手やスタッフは移動の手間がない。期間中で唯一少し落ち着ける場所だ。
その豊富町は「自転車健康都市宣言の町」だ。
豊富町役場商工観光課川原課長は言う。「平成元年に自転車健康都市宣言の町として議決されました。ここは国立公園があり自然が豊か、そして自転車は環境にやさしく健康にもいい。そういった理由からです。自転車に関するイベント、ロードレース、サイクリング、MTBなど今まで開催していいます。自分自身宗谷サイクリング協会の事務局をしていますが。また、この宗谷でレースが単独で開けるよう、審判員の育成にも力を入れており、昨年は1名(役場職員!)をツール・ド・おきなわへも派遣しました」と、なんとも頼もしい話だ。
第4ステージは緩やかなアップダウンが続く、牧草地帯と原生林の中を走るコース。
スタート後15kmの豊幌峠は短いが勾配は6%でそれなりのもの。次の知駒峠へ向けてアタックが見られるかもしれない。しばらく牧草地帯を行くとその知駒峠に。標高差400m、6%の勾配は北海道では急なほう。この二つの峠で小集団ができると面白い展開だ。
その後はKOMもあるが緩やかなアップダウンの原生林を過ぎて、ゴールの下川町へ下っていく。この終盤およそ60kmは人家のほとんどない区間だ。途中の天の川トンネルは、幻の鉄道、旧国鉄美幸線を利用したものでそれほどにこの前後の勾配は緩いもの。
最後は下川町中心部をぐるっと一回りする。ゴール前約1kmは道幅の広い一直線路だ。逃げを飲み込んだ大集団の迫力あるゴールスプリントが見られるだろう。
9月12日(土)
第5ステージ 旭川から岩見沢 181km
いよいよ今年のツール・ド・北海道のハイライトステージだ。
見どころは中盤に現れる標高1050mの十勝岳中腹吹上温泉への登りだ。中盤までは北海道の峠らしい、2、3%の緩やかな勾配の直線状の道路だ。しかし後半8kmほどは5%から8%ほどのやっと峠らしい道になる。下りはコーナーのきついものが数箇所あり、その後は直線状。
ここで集団は大きく分かれるだろう。しかし先が長いため、小集団ができたとしても、下りで吸収されるかもしれない。いっぽうで完走を目指す選手にとっては最後にして最大の難関だ。ここを大差なく集団でクリアしたいところだ。
山岳区間を過ぎると、富良野盆地を一望する道路を走る。
第5ステージは総合順位を逆転する実質最終ステージ。ここはヒルクライマーがぜひとも少人数で逃げて欲しい場面だ。
大きな流れは吹上温泉、そして勝敗を決するポイントは、終盤のピークだろう。しかしここもゴールまで長いので、単独アタックは難しく、小集団でのゴールスプリントになるだろう。あるいは新城幸也が得意とするような、誰もがためらう距離を残しての単独アタックを見せる選手がいるか、注目だ。
9月13日(日)
第6ステージ モエレ沼クリテリウム 61km
いよいよ最終日はモエレ沼のクリテリウム。1周2.75kmを22周する。途中のホットスポットは4回、ゴールのボーナスタイムをあわせると最大22秒を稼ぐことができる。優勝争いの最後にして最大の見どころだ。昨年は中盤までリーダーの宮澤と2位選手がこのタイムを取り合う激しい戦いが見られた。今年はどんな戦いになるか。
観戦はどこでもOK、ゴール地点付近でそのボーナスタイム争いを見るも良し、逆周りに1周歩いても良しだ(ただしゴールには間に合うように!)。コース上は歩けない。特に集団が過ぎても選手がやってくるので注意。
なお、第2ステージ以降、ボーナスタイムが設定されている。同時にポイントも付与される。KOMでは山岳ポイントのみ付与される。
途中のホットスポット:3秒、2秒、1秒
ゴール:10秒、6秒、4秒(第2ステージのみ6秒、4秒、2秒)
ホットスポットは、第2ステージ1回、第3、4、5ステージ各2回、第6ステージ4回
第2ステージから第5ステージまでの観戦は地図とにらめっこの車での移動が一番いい。迂回路が少なく今年も考えどころだが、各ステージ大体3、4回は見られるだろう。スタートかゴールかどちらかを見ない覚悟をすると自由度は上がる。くれぐれも交通法規を守って安全運転で!
レースが動くのは1日目、そしてハイライトは第5ステージだ。
なお、ツール・ド・北海道2009見どころ「選手・チーム編」は、のちほどお送りします。
text&photo:高木秀彰
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