スペインを代表する総合バイクブランド、オルベア。そのラインアップの中で、レーシングロードとして君臨するORCAシリーズから、セカンドグレードのOMRフレームを用いたORCA M30iをインプレッション。



オルベア ORCA M30i

スペインのバスク地方、ビルバオ近郊に位置するマリャビアに拠点を構える総合自転車メーカー、オルベア。熱狂的な観客がバスクの象徴でもあるオレンジでコースを染めるほど、自転車競技への深く熱い愛を秘めた地域に根差すだけあり、常に優れた性能と品質を持つバイクを送り出し続けてきたブランドだ。

同国最大の規模を誇るバイクブランドであるオルベアのラインアップはまさに重厚長大。トップチームが用いるハイエンドレーシングバイクから、市民生活に根差したシティバイクまで、あらゆる範囲をカバーするという。

そのラインアップのなかで、ピュアレーシングモデルとして君臨するのがORCAシリーズ。オルベアとカーボンのイニシャル2文字を由来とするモデルは、2003年の登場以来20年以上の長きに渡りフラッグシップバイクであり続けてきた。

バックセクションは非常に細身に仕上げられる
剛性を担保するパワースパインコンセプト
クラウン直下から絞られるフロントフォーク



その歴史の中で、モデルチェンジを繰り返すこと6度。現在のORCAは第7世代として、2023年にデビューを果たした。"PRAISE THE LIGHT"、軽さを讃えよというのが、この最新世代ORCAの掲げるコンセプトだ。

ORCA史上最も軽量性に焦点を当てて開発されたこのバイクが目指したのは、究極のクライミングマシンであること。軽量なだけでなく、鋭い加速、俊敏な挙動、優れたトラクションを兼ね備えたORCAは、峠の登り方を変えてしまうほどのパフォーマンスを発揮する。

シンプルなヘッドチューブ。いかにもクライミングバイクらしい佇まい
セカンドグレードでもケーブルフル内装仕様



ボリューミーなBBが優れた剛性を生み出す
コンパクトなリアエンドの造形



昨今、ヒルクライムにおいても空力の重要性がクローズアップされがちであるが、オルベアはその点についてもしっかりと検証しているという。バイクの重量と空力性能、速度域と勾配の複雑な関係を解きほぐし、最適解を導き出した。

ヴェロドロームにおける実験も含め、徹底的な検証の結果得られた結論としては、平均的ライダーが乗った場合、新型ORCAはエアロに特化したバイクに対し勾配5%の登坂では約3W、勾配10%であれば約6W少ない出力で走れるというもの。

多くのヒルクライムレースの平均勾配は5%を超えていることを考えれば、クライマーにとっての最適解が何か、自ずと見えてくるのではないだろうか。

無駄を削ぎ落したチュービングが目を引く
チューブや工具を入れておくのに十分な容量の一体型ストレージを標準装備



この性能を実現するため、ORCAはあらゆる要素を徹底的にブラッシュアップし、ぜい肉をそぎ落としていった。特に注意が払われたのは、カーボンのオーバーラップ部分を最小限にする新たなレイアップスケジュールだ。最上位のOMXフレームにおいては、従来より90ピースを減らすことに成功したという。

フレーム形状自体も軽量化に貢献しているという。カーボンフレームの成型に必要不可欠なエポキシ樹脂だが、接合部やエッジ部などに溜まりがちな性質がある。オルベアは、その滞留を防ぐ工法に加え、フレーム形状を工夫することで余分なエポキシ樹脂を排除することに成功した。

フレーム構造のキーコンセプトとなるPowerspineデザインも軽量化に一役買っている。ヘッド~BB~チェーンステイを一つの「背骨」として捉えることで、優れたパワートランスファーと正確なハンドリングを実現。このデザインにより必要十分な剛性を確保できることで、余計な部材を使用する必要を無くしている。

トラディショナルな丸型のシートポストを採用。
レーシングモデルながらワイドタイヤに対応する
メイドインスペインであることを示すステッカーが貼られる



これらのアプローチにより、最上位モデルのOMXフレームでは750g(53サイズ)、フォーク単体360gを達成。セカンドグレードのOMRフレームで重量1,030g(先端のアクスル小物を含むフォーク単体410gの状態)を実現している。

今回インプレッションするORCA M30iは、OMRフレームにシマノ 105DI2を組合せ、529,900円(税込)という価格を実現したバリューモデル。最新世代のクライミングバイクに、電動コンポーネントを搭載することで、乗り出しから不満の無いパッケージに仕上げられた一台をインプレッションしていこう。



ーインプレッション

「素性の良いフレームで長く付き合っていける一台」小畑郁(なるしまフレンド)

「素性の良いフレームで長く付き合っていける一台」小畑郁(なるしまフレンド) photo: Kenta Onoguchi

フレームの素性の良さが光る一台ですね。上位グレードも乗ったことがあるのですが、重量面や反応速度に少し差があるな、といったぐらいで、性格としては同じ方向だなと感じました。

この世代のORCAはトップグレードも含めて脚ざわりが良い方向性に味付けされているので、そういったバイクを求める方にはピッタリでしょう。打てば響く、というよりはライダーをサポートしてくれてトータルで速い、というタイプですね。

形が同じで、カーボンが違うだけというバイクは多いですが、素材が違うとフィーリングもがらりと変わってしまうことも多い中で、しっかりと共通のキャラクターに設計できているところに、オルベアの技術力を感じますね。

「どんなシチュエーションでも活躍するオールラウンドなバイを求める人に応える一台」小畑郁(なるしまフレンド) photo: Kenta Onoguchi

特に、このグレードの完成車だとどうしてもホイールが重くて、加速はスポイルされてしまいます。その辺りを割り引けば、上位モデルに肉薄する性能だと思います。レーシングホイールを履かせてあげれば、レーサーも全く不満なく乗れると思いますよ。

剛性面でも非常にバランスが良くて、破綻している箇所が無い。これだけ細身のチューブを多用しているのに、ギアを掛けて踏んでいっても全部受け止めてくれます。

ダウンチューブはかなりボリュームが有る一方で、トップチューブは横に潰すような形状にしていたり、トラディショナルなチュービングに見えて様々な狙いが見え隠れするのも面白いですね。

「これだけ細身のチューブを多用しているのに、ギアを掛けて踏んでいっても全部受け止めてくれる」小畑郁(なるしまフレンド) photo: Kenta Onoguchi

ラインアップにはエアロに特化したORCA AEROもありますから、とにかく平坦を速く走りたいというニーズはそちらにまかせて、どんなシチュエーションでも活躍するオールラウンドなバイクを求める人に応えるための乗り味に仕上げられているのでしょう。

価格設定もこのフレーム性能を考えれば納得感は有ります。昨今の相場を踏まえれば、十分リーズナブルだと言えるでしょう。フレームの素性が良いですから、レースに参加したいというニーズにも応えられますし、もちろんツーリングを楽しみたいという方にも扱いやすい。

パーツアセンブルとして伸びしろを残している部分は多いので、そこを変えていく楽しみもありますよね。良いホイール、軽いパーツを付けてあげても、フレームとのバランスが崩れるようなことはなくて、むしろポテンシャルを引き出せるので、投資しがいがある。楽しい一台だと思います。

「登りも平坦も、なんとなれば不整地だってこなせる懐の深さが魅力の一台」高木三千成(シクロワイアード編集部)

「登りも平坦も、なんとなれば不整地だってこなせる懐の深さが魅力の一台」高木三千成(シクロワイアード編集部) photo: Kenta Onoguchi

スリムなシルエットで、いかにもクライミングバイクといった趣の一台ですが、実際に乗ってみると非常に懐の深いバイクでした。見た目は華奢で線が細く、とくにリアバックは折れそうなくらいですが、走りだすとこれが良く働いてくれますね。

大出力、例えば1000Wを越えるようなパワーで踏んでいくのであれば話は別ですが、高強度といっても繰り返し出し入れするような500~600Wくらいの領域であれば、全く問題なく受け止めてくれます。それくらいしっかりしたフレーム剛性で、レースでも十分なレベルにありますね。

リアをしならせつつ、リズミカルに加速してくれる感覚は、特に登りで気持ちいい。急斜面でもしっかりと路面を掴まえて、クックッと前に進んでくれます。一方のフロントセクションはがっしりしていて、ダンシングで体重を掛けても腰砕けになることもなく、リズムを崩さず思い通りに登っていけます。

「リアをしならせつつ、リズミカルに加速してくれる感覚は、特に登りで気持ちいい」高木三千成(シクロワイアード編集部) photo: Kenta Onoguchi

そこまではある意味見た目通り、ピュアクライマーといった印象ですが、平坦は平坦ですごく走りやすいんです。こういうバイクだとヒラヒラした乗り味になりがちですが、ORCAは一本筋の通ったようなスタビリティが有ります。ジオメトリ的な側面もあるでしょうし、随所に仕込まれたエアロなディテールも効いているように感じます。

とはいえ、このパッケージの一番オイシイ速度域としては20~30km/hあたりでしょうか。これは、剛性やハンドリングといった動的性能がボトルネックとなっているわけでなく、もう少しエアロであれば、という意味合いが強いです。なので、例えばもっとディープなホイールを履かせれば、より気持ち良い速度域は拡がるはずです。

そういったフレームの素性の良さがまずこのバイクの魅力の一つ。そして、もう一つはかなりバーサタイルなバイクでもあるというのも大きな魅力です。

ある意味、このストレージは象徴的なパーツですよね。ピュアなレーシングバイクであれば余計なアイテムですが、サイクリングを楽しむのであれば絶対あったほうがいい。工具や補給食を携行するにしても、バックポケットやサドルバッグに収納すると自分の動きやバイクの振りに悪影響が出てしまう。ダウンチューブ下に収納できるのが、一番走りに影響がない。

レースに出ない限りほぼ必ず持っていくものなのだから、出来るだけ走りをスポイルしないように工夫されているのは、非常にありがたいですよね。そういった、色んな使い方が出来るようなバイクなのだと思います。

「単なるヒルクライムバイクではなくて、もっと色んな使い方に応えてくれる汎用性のあるフレーム」高木三千成(シクロワイアード編集部) photo: Kenta Onoguchi

究極なのが、シクロクロスのヨーロッパ選手権でORCAが勝ってしまったというエピソードですよね。レースで使われたのはOMXグレードのフレームだと思いますが、ちょっと気になってオフロードも走ってみたところ、確かにこれが全然問題ない。さっき、リアのトラクションが良いと言いましたが、その特性はオフロードにもベストマッチで、これならシクロクロスもカバーできてしまうだろうなと納得しました。

単なるヒルクライムバイクではなくて、もっと色んな使い方に応えてくれる汎用性のあるフレームなので、最初の一台としてはこれ以上ない選択だと思います。自分のスタイルを一緒に探していける、相棒として長く付き合っていけるでしょう。

オルベア ORCA M30i
フレーム:Orbea Orca carbon OMR 2026, monocoque construction, HS 1,5", BB 386mm, powermeter compatible, Rear Thru Axle 12x142mm, thread M12x2 P1, internal cable routing.
コンポーネント:シマノ 105DI2
サイズ:47、49、51、53、55、57、60
カラー:Iris White (Gloss) - Lilac (Matt)、Cobalt Blue - Carbon Raw (Matt)、Diamond Carbon View (Matt) - Titan Grey (Gloss)
価格:529,900円(税込)



インプレッションライダープロフィール

小畑郁(なるしまフレンド)
小畑郁(おばたかおる)
圧倒的な知識量と優れた技術力から国内No.1メカニックとの呼び声高い、なるしまフレンドの技術チーフ。勤務の傍ら精力的に競技活動を行っており、ツール・ド・おきなわ市民210kmでは2010年に2位、2013年と2014年に8位に入った他、国内最高峰のJプロツアーではプロを相手に多数の入賞経験を持つ。2020年以来、ベルマーレレーシングチームの一員として国内レースを走る。

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高木三千成(シクロワイアード編集部)
高木三千成(シクロワイアード編集部)

学連で活躍したのち、那須ブラーゼンに加入しJプロツアーに参戦。東京ヴェントスを経て、さいたまディレーブでJCLに参戦し、チームを牽引。シクロクロスではC1を走り、2021年の全日本選手権では10位を獲得した。



text:Naoki Yasuoka
photo:Kenta Onoguchi
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