2009/08/24(月) - 22:49
大町美麻ロードの第2ステージが8月23日(日)、長野県大町市美麻地区の公道で行われ、佐野淳哉(TEAM NIPPO-COLNAGO)が優勝、第1ステージとあわせての完全優勝を果たした。2位は西薗良太(東京大学)で、総合でも2位を獲得した。
第2ステージは201.6km個人ロードレースだ。コースは1周12.6km、標高差110m、30m、80mの坂のある1周あたり226mを上る。ここを16周する201.6km、合計3700mを上るハードなもの。坂の勾配はゴール前200mほどが最大10%ほどだが、ほかはそれほどきつくはない。しかし5時間以上の長丁場、実力差が如実に出るコースだ。
前日の第1ステージでは佐野が1位となり、イエローのリーダージャージを着てスタートラインに。同じく2位となった西薗はグリーンの山岳賞ジャージを着る。マークされる存在のこの2人と、チームの走りが注目された。
最初の6kmほどはローリングスタートのため、実際のスタートは南側の登坂区間の下からだ。すぐに阿部嵩之(シマノレーシング)が先頭に出てペースアップ、上りにもかかわらず一列棒状になる。1周目終盤には10名ほどが50mほどリード、2周目で10人の先頭集団ができる。メンバーはシマノ狩野智也・畑中勇介・阿部嵩之の3人、綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)、斉藤翔太(UTSUNOMIYA BLITZEN)、山下貴宏(TEAM NIPPO-COLNAGO)、平塚吉光(パールイズミ・スミタ・ラバネロ)、丸山厚(スワコレーシングチーム-TR)、菅洋介(GRUPPO ACQUA TAMA)、筧五郎(イナーメ・アイランド信濃山形)だ。その後丸山と菅が離れ、先頭の逃げは8人になる。佐野と西薗らエース級はメイン集団に残る。
8人の逃げはメイン集団との差を3分にまで広げる。メイン集団はおもに廣瀬敏(TEAM NIPPO-COLNAGO)と、そして真鍋和幸(TEAM NIPPO-COLNAGO)がコントロールし、差を保つ。6周目にはMTB XC選抜メンバーの小野寺健、竹之内悠、山本幸平らがペースアップして一気に差を50秒にまで縮める。そこでメイン集団から山本聖吾(スワコレーシングチーム-TR)が、続いて辻浦圭一(MTB XC選抜)が抜け出して2人で逃げを追走、2周かけて9周目に先頭に追いつき、逃げは10人に。
8周目にメイン集団はペースダウン、差は5分にまで広がると、小段亮(パールイズミ・スミタ・ラバネロ)が、続いて伊勢直人(MASSA-FOCUS-OUTDOORPRODUCTS)がメイン集団から抜け出し追走するが、それぞれ1周弱でメイン集団に戻る。メイン集団はブリッツェンと愛三がおもに引く。
12周目に先頭から綾部が下ると、メイン集団は愛三がペースアップ、ブリッツェンも加わって、14周目終盤でついにメイン集団が逃げを吸収する。15周目のラスト2周、平坦区間で激しいアタックがかかり、集団が活性化。8人が先行するが上り区間で集団が追いつく。鈴木譲(シマノレーシング)がペースアップする中、栂尾大知(パールイズミ・スミタ・ラバネロ)がアタック、高岡亮寛(イナーメ・アイランド信濃山形)とともに先頭に。さらに野寺秀徳(シマノレーシング)が追いつく。
最終周回へは高岡と野寺の2人が先頭で突入。高岡が引く時間が長い。しかし後続からも佐野の仕掛けに西薗、鈴木真理(シマノレーシング)が、さらに清水良行(UTSUNOMIYA BLITZEN)、伊勢、小段の3人が追走。上り区間に入って先頭はこの8人になる。ここで鈴木真理がペースアップを続け、小段が離れて7人でゴール前500mの上りに入る。ラスト400mで西薗がスパートをかけると佐野がすぐ反応。そして佐野は西薗をかわして優勝。2位西薗、そして3位には同タイムで肉薄した伊勢が入った。
優勝した佐野は「うれしいです。自分はこういう経験は初めてなもので。昨日は個人レースだけども、先に走った山下のタイムをベースにしたし、今日もチームメイトに動いてもらって勝てたので感謝したい。自分ではイエロージャージを着ているという意識を持たないようにした。自分らしく前に前に行くということで。序盤に山下が前に入ってくれたので焦らずにいられた。コースはだんだんと脚に来るタフなもの。2位の西薗君は強いですね。信念のある選手だと思いました」と語る。
大門宏ニッポ監督はこう語る。「チームは序盤から不利だった。実は初日にイエロージャージを取ると不利なレースになると思った。今まで(佐野)淳哉にはその経験も無かったし。でも、そこで勝てたことで一皮向けたと思う。チームメイトの動きとかがわかったと思うので次につながると思う。山下、真鍋も良かったし、廣瀬は調子良くなかったけれどもできる限りのことはしたし、一人ひとりが良かったと思う。でもほかのチームが、今回淳哉が勝ったことをどう思っているかも考えないといけない」
総合でも2位の西薗は「今日は思った以上に走れたので良かったです。当初はインカレの準備のつもりだったので、先頭集団でのゴールで十分、でもU23での1位は取りたい、と臨みました。結果全体の2位だけれども、もちろん選手である以上は1位を狙おうと思って走りました。チームメイトの高木さんが補給を前半は全部やってくれたので最後まで残れました」と語る。
また西薗は、第1ステージ後に「(第1ステージの)2位にはかなり満足しています。アンダー(U23)で1位なので、明日のロードで総合を狙います。今回は長丁場なので我慢が必要。でも抜け出すにはスピードが必要。ボクはそういう選手じゃないので消耗戦になったところを狙います」と語っていた。まさにそれを実行に移したのだった。
また4日後から始まるインカレなど今後は「インカレロードは優勝を狙うしかありません。団体追い抜きは4分40秒切る学校記録を出すこと。その後の北海道は、去年貴重な経験を積んだので、今年は勝負に絡んでステージを狙いたい」と語る。
涼しかったとは言え真夏の200kmのロードレース。しかもマークされるステージレース。力勝負のラスト2周の競り合いを制した佐野はこれで名実ともに日本のトップレーサーだ。そして西薗は、学生トップレーサーが実業団トップレーサーと互角に勝負できるレベルにあることを実証した。これは学連選手にとっても明るいニュースだ。ワイルドカードというフレキシブルな運営で実現したこの勝負、日本の自転車界にとって明るい材料であることは確かだ。
結果
TRクラス 第2ステージ 201.6km
1位 佐野淳哉(TEAM NIPPO-COLNAGO)5時間27分07秒(AVS36.98km/h)
2位 西薗良太(東京大学)+09秒
3位 伊勢直人(MASSA-FOCUS-OUTDOORPRODUCTS)+09秒
4位 野寺秀徳(シマノレーシング)+12秒
5位 清水良行(UTSUNOMIYA BLITZEN)+12秒
6位 高岡亮寛(イナーメ・アイランド信濃山形)+22秒
7位 鈴木真理(シマノレーシング)+25秒
8位 小段亮(パールイズミ・スミタ・ラバネロ)+1分47秒
9位 栂尾大知(パールイズミ・スミタ・ラバネロ)+1分57秒
10位 別府匠(愛三工業レーシングチーム)+2分01秒
山岳賞
1位 畑中勇介(シマノレーシング)22点
2位 斉藤翔太(UTSUNOMIYA BLITZEN)11点
3位 狩野智也(シマノレーシング)6点
個人総合(第1+第2ステージ、ボーナスタイム含む)
1位 佐野淳哉(TEAM NIPPO-COLNAGO)5時間36分11秒
2位 西薗良太(東京大学)+26秒
3位 野寺秀徳(シマノレーシング)+58秒
4位 清水良行(UTSUNOMIYA BLITZEN)+01分16秒
5位 伊勢直人(MASSA-FOCUS-OUTDOORPRODUCTS)+1分22秒
6位 高岡亮寛(イナーメ・アイランド信濃山形)+1分48秒
7位 鈴木真理(シマノレーシング)+2分11秒
8位 別府匠(愛三工業レーシングチーム)+2分28秒
9位 小段亮(パールイズミ・スミタ・ラバネロ)+2分38秒
10位 鈴木譲(シマノレーシング)+2分59秒
U23総合 1位 西薗良太(東京大学)
O40総合 1位 西谷雅史(オーベストディープラスデザイン)
BRクラス 50.4km
1位 高田森生(アストロOGKカブト)1時間19分30秒(AVS38.05km/h)
2位 岡崎陽介(トラクターRC)+01秒
3位 高塚亮輔(spacebikes.com)+02秒
4位 阿部健弥(チームスキップ)+02秒
5位 石垣賢(BREZZAカミハギRT)+04秒
6位 佐々木雄二(エルドラード)+04秒
7位 榊原健一(BREZZAカミハギRT)+04秒
8位 若杉厚仁(spacebikes.com)+10秒
9位 近江忠仁(TEAM☆ルパンttm)+11秒
10位 遠藤積穂(spacebikes.com)+16秒
photo&text:高木秀彰
第2ステージは201.6km個人ロードレースだ。コースは1周12.6km、標高差110m、30m、80mの坂のある1周あたり226mを上る。ここを16周する201.6km、合計3700mを上るハードなもの。坂の勾配はゴール前200mほどが最大10%ほどだが、ほかはそれほどきつくはない。しかし5時間以上の長丁場、実力差が如実に出るコースだ。
前日の第1ステージでは佐野が1位となり、イエローのリーダージャージを着てスタートラインに。同じく2位となった西薗はグリーンの山岳賞ジャージを着る。マークされる存在のこの2人と、チームの走りが注目された。
最初の6kmほどはローリングスタートのため、実際のスタートは南側の登坂区間の下からだ。すぐに阿部嵩之(シマノレーシング)が先頭に出てペースアップ、上りにもかかわらず一列棒状になる。1周目終盤には10名ほどが50mほどリード、2周目で10人の先頭集団ができる。メンバーはシマノ狩野智也・畑中勇介・阿部嵩之の3人、綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)、斉藤翔太(UTSUNOMIYA BLITZEN)、山下貴宏(TEAM NIPPO-COLNAGO)、平塚吉光(パールイズミ・スミタ・ラバネロ)、丸山厚(スワコレーシングチーム-TR)、菅洋介(GRUPPO ACQUA TAMA)、筧五郎(イナーメ・アイランド信濃山形)だ。その後丸山と菅が離れ、先頭の逃げは8人になる。佐野と西薗らエース級はメイン集団に残る。
8人の逃げはメイン集団との差を3分にまで広げる。メイン集団はおもに廣瀬敏(TEAM NIPPO-COLNAGO)と、そして真鍋和幸(TEAM NIPPO-COLNAGO)がコントロールし、差を保つ。6周目にはMTB XC選抜メンバーの小野寺健、竹之内悠、山本幸平らがペースアップして一気に差を50秒にまで縮める。そこでメイン集団から山本聖吾(スワコレーシングチーム-TR)が、続いて辻浦圭一(MTB XC選抜)が抜け出して2人で逃げを追走、2周かけて9周目に先頭に追いつき、逃げは10人に。
8周目にメイン集団はペースダウン、差は5分にまで広がると、小段亮(パールイズミ・スミタ・ラバネロ)が、続いて伊勢直人(MASSA-FOCUS-OUTDOORPRODUCTS)がメイン集団から抜け出し追走するが、それぞれ1周弱でメイン集団に戻る。メイン集団はブリッツェンと愛三がおもに引く。
12周目に先頭から綾部が下ると、メイン集団は愛三がペースアップ、ブリッツェンも加わって、14周目終盤でついにメイン集団が逃げを吸収する。15周目のラスト2周、平坦区間で激しいアタックがかかり、集団が活性化。8人が先行するが上り区間で集団が追いつく。鈴木譲(シマノレーシング)がペースアップする中、栂尾大知(パールイズミ・スミタ・ラバネロ)がアタック、高岡亮寛(イナーメ・アイランド信濃山形)とともに先頭に。さらに野寺秀徳(シマノレーシング)が追いつく。
最終周回へは高岡と野寺の2人が先頭で突入。高岡が引く時間が長い。しかし後続からも佐野の仕掛けに西薗、鈴木真理(シマノレーシング)が、さらに清水良行(UTSUNOMIYA BLITZEN)、伊勢、小段の3人が追走。上り区間に入って先頭はこの8人になる。ここで鈴木真理がペースアップを続け、小段が離れて7人でゴール前500mの上りに入る。ラスト400mで西薗がスパートをかけると佐野がすぐ反応。そして佐野は西薗をかわして優勝。2位西薗、そして3位には同タイムで肉薄した伊勢が入った。
優勝した佐野は「うれしいです。自分はこういう経験は初めてなもので。昨日は個人レースだけども、先に走った山下のタイムをベースにしたし、今日もチームメイトに動いてもらって勝てたので感謝したい。自分ではイエロージャージを着ているという意識を持たないようにした。自分らしく前に前に行くということで。序盤に山下が前に入ってくれたので焦らずにいられた。コースはだんだんと脚に来るタフなもの。2位の西薗君は強いですね。信念のある選手だと思いました」と語る。
大門宏ニッポ監督はこう語る。「チームは序盤から不利だった。実は初日にイエロージャージを取ると不利なレースになると思った。今まで(佐野)淳哉にはその経験も無かったし。でも、そこで勝てたことで一皮向けたと思う。チームメイトの動きとかがわかったと思うので次につながると思う。山下、真鍋も良かったし、廣瀬は調子良くなかったけれどもできる限りのことはしたし、一人ひとりが良かったと思う。でもほかのチームが、今回淳哉が勝ったことをどう思っているかも考えないといけない」
総合でも2位の西薗は「今日は思った以上に走れたので良かったです。当初はインカレの準備のつもりだったので、先頭集団でのゴールで十分、でもU23での1位は取りたい、と臨みました。結果全体の2位だけれども、もちろん選手である以上は1位を狙おうと思って走りました。チームメイトの高木さんが補給を前半は全部やってくれたので最後まで残れました」と語る。
また西薗は、第1ステージ後に「(第1ステージの)2位にはかなり満足しています。アンダー(U23)で1位なので、明日のロードで総合を狙います。今回は長丁場なので我慢が必要。でも抜け出すにはスピードが必要。ボクはそういう選手じゃないので消耗戦になったところを狙います」と語っていた。まさにそれを実行に移したのだった。
また4日後から始まるインカレなど今後は「インカレロードは優勝を狙うしかありません。団体追い抜きは4分40秒切る学校記録を出すこと。その後の北海道は、去年貴重な経験を積んだので、今年は勝負に絡んでステージを狙いたい」と語る。
涼しかったとは言え真夏の200kmのロードレース。しかもマークされるステージレース。力勝負のラスト2周の競り合いを制した佐野はこれで名実ともに日本のトップレーサーだ。そして西薗は、学生トップレーサーが実業団トップレーサーと互角に勝負できるレベルにあることを実証した。これは学連選手にとっても明るいニュースだ。ワイルドカードというフレキシブルな運営で実現したこの勝負、日本の自転車界にとって明るい材料であることは確かだ。
結果
TRクラス 第2ステージ 201.6km
1位 佐野淳哉(TEAM NIPPO-COLNAGO)5時間27分07秒(AVS36.98km/h)
2位 西薗良太(東京大学)+09秒
3位 伊勢直人(MASSA-FOCUS-OUTDOORPRODUCTS)+09秒
4位 野寺秀徳(シマノレーシング)+12秒
5位 清水良行(UTSUNOMIYA BLITZEN)+12秒
6位 高岡亮寛(イナーメ・アイランド信濃山形)+22秒
7位 鈴木真理(シマノレーシング)+25秒
8位 小段亮(パールイズミ・スミタ・ラバネロ)+1分47秒
9位 栂尾大知(パールイズミ・スミタ・ラバネロ)+1分57秒
10位 別府匠(愛三工業レーシングチーム)+2分01秒
山岳賞
1位 畑中勇介(シマノレーシング)22点
2位 斉藤翔太(UTSUNOMIYA BLITZEN)11点
3位 狩野智也(シマノレーシング)6点
個人総合(第1+第2ステージ、ボーナスタイム含む)
1位 佐野淳哉(TEAM NIPPO-COLNAGO)5時間36分11秒
2位 西薗良太(東京大学)+26秒
3位 野寺秀徳(シマノレーシング)+58秒
4位 清水良行(UTSUNOMIYA BLITZEN)+01分16秒
5位 伊勢直人(MASSA-FOCUS-OUTDOORPRODUCTS)+1分22秒
6位 高岡亮寛(イナーメ・アイランド信濃山形)+1分48秒
7位 鈴木真理(シマノレーシング)+2分11秒
8位 別府匠(愛三工業レーシングチーム)+2分28秒
9位 小段亮(パールイズミ・スミタ・ラバネロ)+2分38秒
10位 鈴木譲(シマノレーシング)+2分59秒
U23総合 1位 西薗良太(東京大学)
O40総合 1位 西谷雅史(オーベストディープラスデザイン)
BRクラス 50.4km
1位 高田森生(アストロOGKカブト)1時間19分30秒(AVS38.05km/h)
2位 岡崎陽介(トラクターRC)+01秒
3位 高塚亮輔(spacebikes.com)+02秒
4位 阿部健弥(チームスキップ)+02秒
5位 石垣賢(BREZZAカミハギRT)+04秒
6位 佐々木雄二(エルドラード)+04秒
7位 榊原健一(BREZZAカミハギRT)+04秒
8位 若杉厚仁(spacebikes.com)+10秒
9位 近江忠仁(TEAM☆ルパンttm)+11秒
10位 遠藤積穂(spacebikes.com)+16秒
photo&text:高木秀彰
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