2014/07/06(日) - 15:59
いよいよヨークシャーでのグランデパールだ。壮大なプレゼンテーションが開催されたリーズの市街中心部からのスタート。プレゼンの盛り上がりから大体の予想はついていたが、やはりすごい数の観客が押し寄せた。
街を発つ仮スタートは11時なのに、早朝7時台からスタート地点にはすでに人混みができているというツール公式Twitter情報で早めにスタート地点へ向かう。
シビックホール前は人垣ですごいことになっている。コース脇には黄色いシャツを着たり、配られた小物やイギリスの小旗を振っている大勢の観客たち。スカイ応援Tシャツを着てチームバスと一緒に写真を撮ったりと、ツールの訪問をどれだけ楽しみにしてきたかがよく分かる。この熱気はフランス国内のツール熱さえ大きく超えている。
ユーロップカーのバスの前に「ニイチャン」こと福島晋一さんと小田嶋(旧姓片山)梨絵さんが来ていた。イギリスにはコーチの研修のために来ていて、ユキヤにひと目会おうと訪ねたのだった。ユキヤの登場をしばし待つが、私は一足お先にスタートへ。その後ちゃんと会えたようです。”日本のフォイクト”と呼ばれた漢に会えたことで、今日活躍する選手が誰かピンと来た。(勝手に付けたあだ名です・笑)。
カヴェンディッシュはホワイトとグリーンで彩られたスペシャルカラーのCVNDSHバイクを用意していた。母国でのステージ勝利とマイヨ・ジョーヌ獲得。イギリスじゅうの期待も今日はそこに集まる。しかも温泉地として有名なゴールのハロゲートの街はカヴのお母さんの出身地で、今も親戚が住んでいるという。日本風に言えばカヴにとっては「田舎」だ。ジロのマリアローザ、ブエルタのマイヨロホはすでに着たが、マイヨジョーヌだけはまだ未着用だ。
リーズの街を発ったプロトンは超スローペースでパレード走行しながら沿道の観客たちの声援に応える。スタートセレモニーが行われるのは13.5km先のイギリス王室の邸宅「ヘアウッドハウス」。そこで選手たちを迎えたのはウィリアム王子、キャサリン妃、ヘンリー王子! なんともロイヤルなグランデパールとなった。
スタートが迫ると空を編隊を組んだアクロバット飛行隊がフレンチトリコローレを青空に描いた。ツールはこのところこの演出がお気に入りのようだ。
走りだしたコースの狭いこと。スタートしばらくは公園のなかの遊歩道のような一車線しか無い緑の小径が続く。そしてアップダウンに富んで、なかなか手ごわい。明日第2ステージはアルデンヌクラシックのようだと評されているが、この第1ステージでも十分そんな印象を受ける。
そして郊外に出ると、素晴らしい風景が広がる。なだらかで荒涼とした丘の連続。そこにつけられた石垣の小径。広々とした素晴らしい風景なのだが、そこに集まる人が多すぎた。とくに見どころの丘のコース上の密集はあまりに高く、写真を撮ろうとしてはみ出る観客と選手が接触しかけるシーンが何度も観られた。イギリスの観客は避けるのがうまくない上に、応援も熱心すぎておのずと距離が近くなる。
「応援してくれるのは嬉しいけれど、もっと選手たちにスペースを!」と完走後のフルームもコメントを出したほか、多くの選手が同様のメッセージをTweetした。ユキヤも「とにかく今日は観客の多さに驚いた。今までのツールでもこんなに見たことがない。しかし、その観客がコースにせりでてコース幅が狭まり、集団の後ろがつまって、いったん足を停めなければいけないところもあった。本当に危なかったし、一日中観客を避けることに神経を使っていたから、とても疲れた」とコメント。
随行プレス陣も至難の一日。オートバイでさえラスト100kmが道が細いため追い抜き不可(トライしてもムリだろう)。プレスカー部隊は沿道に立つ地元の警備員がプレスカーの動きを理解してくれず、コースイン・アウトができずにまごついた。これは7年前のイギリスステージでも同じだったが。ちなみにカメラマン辻啓と2人態勢だが動きは別々。
ともかく、沿道にも脇道にも人が多すぎて、接触せずにやり過ごせたことで良しとせねば。この日のコースは大きく弧を描くため、コースの序盤と後半の間を、脇道で移動してプロトンを2回観ようとする人が多かった。その移動はすべて自転車だ! かくして脇道も市民レースが行われているかと見間違うばかりのサイクリストたちであふれていた。イギリスって、こんなに自転車が盛んになったのか! と思い知った。
スプリントに向かうプロトンを迎えるハロゲートのゴール地点はカヴコールでうるさいほどだったが、ホームストレートに集団の先頭が一瞬見えたその瞬間にカヴがサイモン・ゲランスとともに路面に叩きつけられた。大きな失望の声、声、声。
しかしカヴが再びバイクに跨ってゴールラインに向かう際の温かい声援はすごいものがあった。右腕をかばうように、泣きそうな顔をしてゴール。どうしても勝ちたい一心で無理矢理な割り込みをしようとしたカヴ。勝ちたいという気持ちが大きすぎて、我を忘れたような走りだった。
巻き込まれたゲランスも、今日と明日の走りでマイヨジョーヌ獲得を最大の目標にしていたひとり。オメガファーマ・クイックステップのルフェーブルGMによれば、カヴは速度の鈍ったゲランスを押しのけようとしたようだ。
「マークは今日のスプリントを少なくとも100回はイメージトレーニングしていただろう。彼はとても集中していたし、死ぬほど勝ちたがっていた。失速したゲランスに引き下がってもらいたくて彼のことをプッシュしたとマークは言っていた。それが落車の理由」。
カヴはすぐさま謝罪の声明を出した。いちばんの被害が自分に返ってきたとあって大きな批判は免れそうだが、イギリスにとっての最大の期待「カヴの勝利とマイヨ・ジョーヌ」は残念ながら実らなかった。
ハロゲートのゴールラインから100mほどのコース脇には「CAVNDSH & HORSES」という名前のパブがあった。ハロゲートでも有名なこのパブ、もとはCOACH(馬車)&〜の名前だったが、ツールが来ることに合わせてカヴへの応援を表したくて店の名前を変えたという。
名前だけでなく看板もデコレーションも自転車のモチーフとデコレーションで作りなおしてあるという手間のかけよう。店内にはカヴのサイン入りシャツなどが飾られ、応援団が集う。カヴも7月1日には『Love this pub, 100 or so meters after the Stage1 finish in Harrogate. Thanks so much for the @cvndsh support guys!』とツィートして、この日マイヨジョーヌとともに立ち寄ることを楽しみにしていたはずだ。
災難のゲランス。開幕記者会見では「第2ステージはアルデンヌクラシックのブリティッシュ版で自分にぴったり。マイヨジョーヌを狙いたい」と話していたが、この怪我で走りに影響はでそうだ。夜にはボロボロになったオーストラリアチャンピオンジャージの写真に「初めて着て最後の使用になったよ」とコメントつきでツィートしている。
オリカ・グリーンエッジはツール開幕直前にダリル・インピー(昨年マイヨジョーヌ着用・今回はメンバー入りしていなかった)のドーピングが疑われるマスキング剤の陽性反応が出て、マイケル・マシューズは小石につまずいて落車してツール出場を棒に振る怪我。そして今回のゲランス。昨年のバス事件といい、どうもツール序盤に運が無いようだ。
photo&text:Makoto.AYANO
photo:KeiTsuji(in Harrogate UK)
街を発つ仮スタートは11時なのに、早朝7時台からスタート地点にはすでに人混みができているというツール公式Twitter情報で早めにスタート地点へ向かう。
シビックホール前は人垣ですごいことになっている。コース脇には黄色いシャツを着たり、配られた小物やイギリスの小旗を振っている大勢の観客たち。スカイ応援Tシャツを着てチームバスと一緒に写真を撮ったりと、ツールの訪問をどれだけ楽しみにしてきたかがよく分かる。この熱気はフランス国内のツール熱さえ大きく超えている。
ユーロップカーのバスの前に「ニイチャン」こと福島晋一さんと小田嶋(旧姓片山)梨絵さんが来ていた。イギリスにはコーチの研修のために来ていて、ユキヤにひと目会おうと訪ねたのだった。ユキヤの登場をしばし待つが、私は一足お先にスタートへ。その後ちゃんと会えたようです。”日本のフォイクト”と呼ばれた漢に会えたことで、今日活躍する選手が誰かピンと来た。(勝手に付けたあだ名です・笑)。
カヴェンディッシュはホワイトとグリーンで彩られたスペシャルカラーのCVNDSHバイクを用意していた。母国でのステージ勝利とマイヨ・ジョーヌ獲得。イギリスじゅうの期待も今日はそこに集まる。しかも温泉地として有名なゴールのハロゲートの街はカヴのお母さんの出身地で、今も親戚が住んでいるという。日本風に言えばカヴにとっては「田舎」だ。ジロのマリアローザ、ブエルタのマイヨロホはすでに着たが、マイヨジョーヌだけはまだ未着用だ。
リーズの街を発ったプロトンは超スローペースでパレード走行しながら沿道の観客たちの声援に応える。スタートセレモニーが行われるのは13.5km先のイギリス王室の邸宅「ヘアウッドハウス」。そこで選手たちを迎えたのはウィリアム王子、キャサリン妃、ヘンリー王子! なんともロイヤルなグランデパールとなった。
スタートが迫ると空を編隊を組んだアクロバット飛行隊がフレンチトリコローレを青空に描いた。ツールはこのところこの演出がお気に入りのようだ。
走りだしたコースの狭いこと。スタートしばらくは公園のなかの遊歩道のような一車線しか無い緑の小径が続く。そしてアップダウンに富んで、なかなか手ごわい。明日第2ステージはアルデンヌクラシックのようだと評されているが、この第1ステージでも十分そんな印象を受ける。
そして郊外に出ると、素晴らしい風景が広がる。なだらかで荒涼とした丘の連続。そこにつけられた石垣の小径。広々とした素晴らしい風景なのだが、そこに集まる人が多すぎた。とくに見どころの丘のコース上の密集はあまりに高く、写真を撮ろうとしてはみ出る観客と選手が接触しかけるシーンが何度も観られた。イギリスの観客は避けるのがうまくない上に、応援も熱心すぎておのずと距離が近くなる。
「応援してくれるのは嬉しいけれど、もっと選手たちにスペースを!」と完走後のフルームもコメントを出したほか、多くの選手が同様のメッセージをTweetした。ユキヤも「とにかく今日は観客の多さに驚いた。今までのツールでもこんなに見たことがない。しかし、その観客がコースにせりでてコース幅が狭まり、集団の後ろがつまって、いったん足を停めなければいけないところもあった。本当に危なかったし、一日中観客を避けることに神経を使っていたから、とても疲れた」とコメント。
随行プレス陣も至難の一日。オートバイでさえラスト100kmが道が細いため追い抜き不可(トライしてもムリだろう)。プレスカー部隊は沿道に立つ地元の警備員がプレスカーの動きを理解してくれず、コースイン・アウトができずにまごついた。これは7年前のイギリスステージでも同じだったが。ちなみにカメラマン辻啓と2人態勢だが動きは別々。
ともかく、沿道にも脇道にも人が多すぎて、接触せずにやり過ごせたことで良しとせねば。この日のコースは大きく弧を描くため、コースの序盤と後半の間を、脇道で移動してプロトンを2回観ようとする人が多かった。その移動はすべて自転車だ! かくして脇道も市民レースが行われているかと見間違うばかりのサイクリストたちであふれていた。イギリスって、こんなに自転車が盛んになったのか! と思い知った。
スプリントに向かうプロトンを迎えるハロゲートのゴール地点はカヴコールでうるさいほどだったが、ホームストレートに集団の先頭が一瞬見えたその瞬間にカヴがサイモン・ゲランスとともに路面に叩きつけられた。大きな失望の声、声、声。
しかしカヴが再びバイクに跨ってゴールラインに向かう際の温かい声援はすごいものがあった。右腕をかばうように、泣きそうな顔をしてゴール。どうしても勝ちたい一心で無理矢理な割り込みをしようとしたカヴ。勝ちたいという気持ちが大きすぎて、我を忘れたような走りだった。
巻き込まれたゲランスも、今日と明日の走りでマイヨジョーヌ獲得を最大の目標にしていたひとり。オメガファーマ・クイックステップのルフェーブルGMによれば、カヴは速度の鈍ったゲランスを押しのけようとしたようだ。
「マークは今日のスプリントを少なくとも100回はイメージトレーニングしていただろう。彼はとても集中していたし、死ぬほど勝ちたがっていた。失速したゲランスに引き下がってもらいたくて彼のことをプッシュしたとマークは言っていた。それが落車の理由」。
カヴはすぐさま謝罪の声明を出した。いちばんの被害が自分に返ってきたとあって大きな批判は免れそうだが、イギリスにとっての最大の期待「カヴの勝利とマイヨ・ジョーヌ」は残念ながら実らなかった。
ハロゲートのゴールラインから100mほどのコース脇には「CAVNDSH & HORSES」という名前のパブがあった。ハロゲートでも有名なこのパブ、もとはCOACH(馬車)&〜の名前だったが、ツールが来ることに合わせてカヴへの応援を表したくて店の名前を変えたという。
名前だけでなく看板もデコレーションも自転車のモチーフとデコレーションで作りなおしてあるという手間のかけよう。店内にはカヴのサイン入りシャツなどが飾られ、応援団が集う。カヴも7月1日には『Love this pub, 100 or so meters after the Stage1 finish in Harrogate. Thanks so much for the @cvndsh support guys!』とツィートして、この日マイヨジョーヌとともに立ち寄ることを楽しみにしていたはずだ。
災難のゲランス。開幕記者会見では「第2ステージはアルデンヌクラシックのブリティッシュ版で自分にぴったり。マイヨジョーヌを狙いたい」と話していたが、この怪我で走りに影響はでそうだ。夜にはボロボロになったオーストラリアチャンピオンジャージの写真に「初めて着て最後の使用になったよ」とコメントつきでツィートしている。
オリカ・グリーンエッジはツール開幕直前にダリル・インピー(昨年マイヨジョーヌ着用・今回はメンバー入りしていなかった)のドーピングが疑われるマスキング剤の陽性反応が出て、マイケル・マシューズは小石につまずいて落車してツール出場を棒に振る怪我。そして今回のゲランス。昨年のバス事件といい、どうもツール序盤に運が無いようだ。
photo&text:Makoto.AYANO
photo:KeiTsuji(in Harrogate UK)
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