2014/07/06(日) - 05:58
2014年7月5日、イギリス・リーズで第101回ツール・ド・フランスが開幕した。ヨークシャー地方のアップダウンコースの先に待っていたのは大集団スプリント。大盛り上がりの会場がカヴェンディッシュの落車に凍り付く中、マルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)が先頭でフィニッシュラインを駆け抜けた。
前夜にかけて降った雨は上がり、曇り時々晴れ、強めの北風という気象コンディションの中、第101回ツールがリーズで動き出した。198名の選手たちが、幾重もの観客に囲われた17.5kmにおよぶニュートラルゾーンに繰り出して行く。
レースはイギリス王室の邸宅「ヘアウッドハウス」前で一旦ストップ。ウィリアムズ王子とキャサリン妃、ヘンリー王子が出席した正式なスタートセレモニーを経て正午ちょうどにレースはスタート。パリに至る23日間・3,664kmの旅路が始まった。
スタート後すぐ、馬車馬のように集団から飛び出して行ったのはイェンス・フォイクト(ドイツ、トレックファクトリーレーシング)、ニコラ・エデ(フランス、コフィディス)、ブノワ・ジャリエ(フランス、ブルターニュ・セシェ)。プロトン最年長42歳のフォイクト率いるエスケープトリオがプロトンを引き離して行く。
3つのカテゴリー山岳以外にも、ヨークシャーのダイナミックな丘陵地帯を走るコースには細かな起伏が詰め込まれていた。コースは曲がりくねり、道幅を変化させながらアップダウンを繰り返す。フランス本土では見られないほどの200万人(!)という大観衆が駆けつけたことも手伝って、初日から気が抜けないナーバスなレースを強いられた。
77km地点のスプリントポイントに差し掛かったところでフォイクトが先頭からアタック。42歳の大ベテランはそのまま約50kmにわたって独走する。2つの3級山岳を先頭通過したフォイクトはマイヨアポワと敢闘賞を同時に獲得。キャリア最後と銘打つツールの初日から見せ場を作った。
連続する3級山岳でホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)やクリストファー・ホーナー(アメリカ、ランプレ・メリダ)、ティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)らが遅れるシーンも見られたが、活発なペースアップは計られずに集団は淡々と進む。フィニッシュまで59kmを残して先頭フォイクトを捉えたメイン集団は、比較的スローペースでフィニッシュ地点ハロゲートの街に向かった。
プロトンは長らくロット・ベリソルとジャイアント・シマノ、オメガファーマ・クイックステップの支配下に置かれていたが、残り20kmを切ったところで総合系チームが危険回避のために集団先頭に出る。こうして様々なチームが入り乱れながら、相変わらず観客でごった返したコースをハイスピードで走行。やがて残り5kmを切ってオメガファーマ・クイックステップが先頭に出た。
他チームの勢いを押さえ込んだままオメガファーマ・クイックステップ先頭で残り1kmに向かう。すると短い登りでファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)がアタック。「(パヴェが設定された)第5ステージのためだけに出場しているんじゃないと見せつけたかった」というカンチェラーラが瞬間的にメイン集団を引き離す。
飛ぶようにフラムルージュを駆け抜けたカンチェラーラだったが、オメガファーマ・クイックステップとジャイアント・シマノのリードアウトを振り切ることは出来なかった。残り400mでカンチェラーラが吸収されるとジャイアント・シマノ先頭でゴールスプリント体制へ。
まもなくスプリントが開始されると思われたその刹那、カヴェンディッシュが自分のラインを確保するために隣のサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)と接触する。フィニッシュラインまで250mを残して両者は地面に叩き付けられた。
先頭では落車を免れたペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)が真っ先にスプリントを開始し、これをキッテルが追撃する形に。平坦な最終ストレートではキッテルの加速力が上回った。
2年連続ツールの開幕スプリントを制し、再びマイヨジョーヌを着たキッテル。「登り基調が続いたので本当にハードだった。再び第1ステージで優勝することが出来て嬉しいよ。チームの作戦通りの勝利であり、このマイヨジョーヌはチームメイトたちに捧げたいと思う」とコメントする。また、落車したカヴェンディッシュについて「彼の国で、彼に所縁のある地で、彼を打ち負かしてやろうとは思っていなかった。ただただステージ優勝だけを狙っていたんだ。大事に至っていないことを願っているよ」と気遣った。
キッテルはフィニッシュで45ポイントを荒稼ぎしてマイヨヴェールも同時に獲得。スプリントポイントで10ポイントを着実に加算したサガンと同ポイントで並んでいる。翌日はキッテルがマイヨジョーヌを、サガンがマイヨブランを、そしてステージ4位のブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)がマイヨヴェールを着て出走することになる。
右腕を抱えながらフィニッシュラインを切ったカヴェンディッシュは苦悶の表情を浮かべながら病院へ直行。X線検査で鎖骨の脱臼が判明した(骨折は無し)。第2ステージをスタートするかどうかは翌日になって決めると言う。「落車の原因は自分が作った。出来るだけ早くサイモン・ゲランスに直接謝罪したい。あるはずもないスペースをこじ開けようとしてしまったんだ。駆けつけてくれたファンには申し訳ないことをしてしまった」と、カヴェンディッシュはゲランスとファンに謝罪した。
ツール・ド・フランス2014第1ステージ結果
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
マイヨヴェール(ポイント賞)
マイヨアポワ(山岳賞)
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
チーム総合成績
ステージ敢闘賞
イェンス・フォイクト(ドイツ、トレックファクトリーレーシング)
text:Kei Tsuji
photo:Kei Tsuji, Makoto Ayano, Tim de Waele
前夜にかけて降った雨は上がり、曇り時々晴れ、強めの北風という気象コンディションの中、第101回ツールがリーズで動き出した。198名の選手たちが、幾重もの観客に囲われた17.5kmにおよぶニュートラルゾーンに繰り出して行く。
レースはイギリス王室の邸宅「ヘアウッドハウス」前で一旦ストップ。ウィリアムズ王子とキャサリン妃、ヘンリー王子が出席した正式なスタートセレモニーを経て正午ちょうどにレースはスタート。パリに至る23日間・3,664kmの旅路が始まった。
スタート後すぐ、馬車馬のように集団から飛び出して行ったのはイェンス・フォイクト(ドイツ、トレックファクトリーレーシング)、ニコラ・エデ(フランス、コフィディス)、ブノワ・ジャリエ(フランス、ブルターニュ・セシェ)。プロトン最年長42歳のフォイクト率いるエスケープトリオがプロトンを引き離して行く。
3つのカテゴリー山岳以外にも、ヨークシャーのダイナミックな丘陵地帯を走るコースには細かな起伏が詰め込まれていた。コースは曲がりくねり、道幅を変化させながらアップダウンを繰り返す。フランス本土では見られないほどの200万人(!)という大観衆が駆けつけたことも手伝って、初日から気が抜けないナーバスなレースを強いられた。
77km地点のスプリントポイントに差し掛かったところでフォイクトが先頭からアタック。42歳の大ベテランはそのまま約50kmにわたって独走する。2つの3級山岳を先頭通過したフォイクトはマイヨアポワと敢闘賞を同時に獲得。キャリア最後と銘打つツールの初日から見せ場を作った。
連続する3級山岳でホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)やクリストファー・ホーナー(アメリカ、ランプレ・メリダ)、ティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)らが遅れるシーンも見られたが、活発なペースアップは計られずに集団は淡々と進む。フィニッシュまで59kmを残して先頭フォイクトを捉えたメイン集団は、比較的スローペースでフィニッシュ地点ハロゲートの街に向かった。
プロトンは長らくロット・ベリソルとジャイアント・シマノ、オメガファーマ・クイックステップの支配下に置かれていたが、残り20kmを切ったところで総合系チームが危険回避のために集団先頭に出る。こうして様々なチームが入り乱れながら、相変わらず観客でごった返したコースをハイスピードで走行。やがて残り5kmを切ってオメガファーマ・クイックステップが先頭に出た。
他チームの勢いを押さえ込んだままオメガファーマ・クイックステップ先頭で残り1kmに向かう。すると短い登りでファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)がアタック。「(パヴェが設定された)第5ステージのためだけに出場しているんじゃないと見せつけたかった」というカンチェラーラが瞬間的にメイン集団を引き離す。
飛ぶようにフラムルージュを駆け抜けたカンチェラーラだったが、オメガファーマ・クイックステップとジャイアント・シマノのリードアウトを振り切ることは出来なかった。残り400mでカンチェラーラが吸収されるとジャイアント・シマノ先頭でゴールスプリント体制へ。
まもなくスプリントが開始されると思われたその刹那、カヴェンディッシュが自分のラインを確保するために隣のサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)と接触する。フィニッシュラインまで250mを残して両者は地面に叩き付けられた。
先頭では落車を免れたペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)が真っ先にスプリントを開始し、これをキッテルが追撃する形に。平坦な最終ストレートではキッテルの加速力が上回った。
2年連続ツールの開幕スプリントを制し、再びマイヨジョーヌを着たキッテル。「登り基調が続いたので本当にハードだった。再び第1ステージで優勝することが出来て嬉しいよ。チームの作戦通りの勝利であり、このマイヨジョーヌはチームメイトたちに捧げたいと思う」とコメントする。また、落車したカヴェンディッシュについて「彼の国で、彼に所縁のある地で、彼を打ち負かしてやろうとは思っていなかった。ただただステージ優勝だけを狙っていたんだ。大事に至っていないことを願っているよ」と気遣った。
キッテルはフィニッシュで45ポイントを荒稼ぎしてマイヨヴェールも同時に獲得。スプリントポイントで10ポイントを着実に加算したサガンと同ポイントで並んでいる。翌日はキッテルがマイヨジョーヌを、サガンがマイヨブランを、そしてステージ4位のブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)がマイヨヴェールを着て出走することになる。
右腕を抱えながらフィニッシュラインを切ったカヴェンディッシュは苦悶の表情を浮かべながら病院へ直行。X線検査で鎖骨の脱臼が判明した(骨折は無し)。第2ステージをスタートするかどうかは翌日になって決めると言う。「落車の原因は自分が作った。出来るだけ早くサイモン・ゲランスに直接謝罪したい。あるはずもないスペースをこじ開けようとしてしまったんだ。駆けつけてくれたファンには申し訳ないことをしてしまった」と、カヴェンディッシュはゲランスとファンに謝罪した。
ツール・ド・フランス2014第1ステージ結果
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)
2位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
3位 ラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・シャープ)
4位 ブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)
5位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、ティンコフ・サクソ)
6位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
7位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
8位 セプ・ファンマルク(ベルギー、ベルキン)
9位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
10位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)
2位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
3位 ラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・シャープ)
4位 ブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)
5位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、ティンコフ・サクソ)
6位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
7位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
8位 セプ・ファンマルク(ベルギー、ベルキン)
9位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
10位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)
4h44'07"
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)
2位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
3位 ラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・シャープ)
4位 ブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)
5位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、ティンコフ・サクソ)
6位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
7位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
8位 セプ・ファンマルク(ベルギー、ベルキン)
9位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
10位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)
2位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
3位 ラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・シャープ)
4位 ブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)
5位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、ティンコフ・サクソ)
6位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
7位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
8位 セプ・ファンマルク(ベルギー、ベルキン)
9位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
10位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)
4h44'07"
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)
2位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
3位 ブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)
2位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
3位 ブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)
45pts
45pts
39pts
45pts
39pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 イェンス・フォイクト(ドイツ、トレックファクトリーレーシング)
2位 ブノワ・ジャリエ(フランス、ブルターニュ・セシェ)
3位 ニコラ・エデ(フランス、コフィディス)
2位 ブノワ・ジャリエ(フランス、ブルターニュ・セシェ)
3位 ニコラ・エデ(フランス、コフィディス)
4pts
1pt
1pt
1pt
1pt
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
2位 ブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)
3位 アントニー・ドゥラプラス(フランス、ブルターニュ・セシェ)
2位 ブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)
3位 アントニー・ドゥラプラス(フランス、ブルターニュ・セシェ)
4h44'07"
チーム総合成績
1位 チームスカイ
2位 ネットアップ・エンデューラ
3位 ベルキン
2位 ネットアップ・エンデューラ
3位 ベルキン
14h12'21"
ステージ敢闘賞
イェンス・フォイクト(ドイツ、トレックファクトリーレーシング)
text:Kei Tsuji
photo:Kei Tsuji, Makoto Ayano, Tim de Waele
フォトギャラリー
Amazon.co.jp