ツール・ド・フランス最終ステージで敢闘賞を獲得した別府史之(スキル・シマノ)が、8月16日(日)にドイツ・ハンブルクで行なわれるプロツアー第12戦ヴァッテンフォール・サイクラシックスで再始動する。難所ヴァーゼベルクが鍵を握るスプリンター向きのワンディクラシックだ。
ゴール15km手前のヴァーゼベルクがキーポイント
ヴァッテンフォール・サイクラシックス2009コースマップ image:www.vattenfall-cyclassics.de近年の相次ぐドーピングスキャンダルの影響で、自転車競技に対する風当たりが強いドイツ。30年の歴史を有していた1週間のステージレース、ドイツ・ツアーがキャンセルされたため、今年はこのヴァッテンフォール・サイクラシックスが国内唯一のプロツアーレースとなった。
1996年に「HEWサイクラシックス」としてスタートした同大会は、スウェーデンに拠点を置くヴァッテンフォール社によるスポンサー企業の買収に伴い、2006年に現在の名称に変更された。「サイクラシックス」は「サイクル」と「クラシック」を組み合わせた造語。クラシックレースの中ではかなり若い部類に入る。
2006年まではツール・ド・フランスの1週間後に開催されていたため、3週間の闘いで活躍した選手がこのサイクラシックスで猛威を振るった。1997年にはツール総合優勝のヤン・ウルリッヒ(ドイツ)が、2001年にはマイヨヴェール(ポイント賞)獲得のエリック・ツァベル(ドイツ)が優勝を飾っている。
レースの舞台となるのはドイツ北部、人口173万人の大都市ハンブルク。北海から約100km離れているが、ドイツ〜ポーランド〜チェコを貫く国際河川エルベ川が流れているため、古くから港湾都市として発達した。河川と運河が入り組んだ土地柄、「水の街」として大阪の姉妹都市でもある。
全長213kmのコースはハンブルク郊外に設定された大小3つの周回コースから構成されている。注目は合計4回登場する「ヴァーゼベルクの急坂」だ。終盤にはこのヴァーゼベルクを含む12kmの周回コースが3周設定されている。
ヴァーゼベルクは長さ700mほどの短い直線的な上りだが、平均勾配が10%、最大勾配は15%に達する。幅が狭いためスピードの上がった集団は縦に長く伸び、集団先頭ではアタックが繰り返されるのが常だ。上りの手前もテクニカルな細いコースが続くため、この勝負どころ目がけて激しいポジション争いが行なわれるのが、“一瞬の判断がレースを決める危険性のある”クラシックレースらしい。
最後のヴァーゼベルクをクリアすると、ハンブルク中心のゴール地点まで15km。細かいアップダウンを繰り返しながら、集団はスプリント勝負に向けて体制を整える。上りで飛び出した選手が逃げ切るか、それとも集団が逃げ切るか。近年は上りで縮小した数十人規模の集団によるスプリント勝負が恒例となっている。
ヴァッテンフォール・サイクラシックス2009コースプロフィール image:www.vattenfall-cyclassics.de
有力スプリンター勢揃い コロンビアトレインが猛威を振るうか
ポローニュで1勝を飾ったアンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC) photo:Cor Vos4回登場するヴァーゼベルクの急坂をパワーで押し切り、ポジションを守りながら集団スプリントで勝負に出るスプリンターに有利なコースレイアウト。歴代の優勝者リストを見てもスプリンターの名前がズラリと並ぶ。
昨年はロビー・マキュアン(オーストラリア)が集団スプリントを制し、マーク・レンショー(オーストラリア)が2位、アラン・デーヴィス(オーストラリア)が3位。史上初めてオーストラリア人選手が表彰台を独占した。
ポローニュで2勝したエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームコロンビア・HTC) photo:www.tourdepologne.plしかし5月のツアー・オブ・ベルギーで膝を負傷したマキュアンは残念ながら欠場。リハビリに励むマキュアンは8月18日開幕のエネコ・ツアーで復帰予定だ。
出場するプロツアー18チーム&プロコンチネンタル2チーム(スキル・シマノとフォアアールベルク・コラテック)の中で、最も厚い選手層を誇るのはチームコロンビア・HTCだろう。ツールで破竹の勢いを見せたカヴェンディッシュは出場しないが、様々な展開に対応する戦力を有する。
ツアー・オブ・デンマークを制したヤコブ・フグルサング(デンマーク、サクソバンク)が総合首位に photo:Cor Vosツール・ド・ポローニュの最終ステージを制したアンドレ・グライペル(ドイツ)がエースで、同大会2勝のボアッソン(ノルウェー)や昨年大会2位のレンショー、アイゼル(オーストリア)、ブルグハート(ドイツ)、シーベルグ(ドイツ)らがトレインを組む。
ヴァーゼベルクでのアタックには、上りに強いキルシェン(ルクセンブルク)やロヴクヴィスト(スウェーデン)らがチェックに入る。チームコロンビア・HTCに死角は無い。
2度表彰台に上っているアラン・デーヴィス(オーストラリア、クイックステップ)がそのまま先頭でゴール photo:Mark Gunter2004年の優勝者スチュアート・オグレディ(オーストラリア)擁するサクソバンクは、独走力のあるファビアン・カンチェラーラ(スイス)を中心に、ブレシェル(デンマーク)やゴス(オーストラリア)らがスプリントを狙う。ツアー・オブ・デンマーク総合優勝の新鋭ヤコブ・フグルサング(デンマーク)の動きにも注目したい。
クラシカ・サンセバスティアンに続く“真夏のクラシック連覇”を目指すクイックステップは、ツール開幕直前に出場を決めたトム・ボーネン(ベルギー)と、チームプレゼンに出席しながらもボーネン出場の影響でツール開幕直前に出場を逃したアラン・デーヴィス(オーストラリア)の二大看板。デーヴィスは2005年と昨年3位。ボーネンは表彰台経験は無い。
シャンゼリゼ周回コースで熱い走りを披露した別府史之(日本、スキル・シマノ) photo:Makoto Ayanoスプリンターとしては他にもオスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)やゲラルド・チオレック(ドイツ、ミルラム)、ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)、タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)、フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、ランプレ)ら、グランツールで馴染みの顔が揃う。
スプリント勝負を阻止しようと、ヴァーゼベルクではセルゲイ・イワノフ(ロシア、カチューシャ)やフィリップ・ジルベール(ベルギー、サイレンス・ロット)、シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)らが攻撃を仕掛けてくると思われる。
毎年果敢な走りを披露する地元ドイツのファビアン・ウェーグマン(ドイツ、ミルラム)は欠場。2007年大会のゴール前で飛び出し、独走勝利を納めた世界チャンピオンのアレッサンドロ・バッラン(イタリア、ランプレ)も欠場する。
そしてツール最終ステージで敢闘賞を獲得した別府史之(スキル・シマノ)の3年連続・4回目のサイクラシックス出場が決まった。ツールで2度トップ10入りしたフミは、このワンディクラシックと相性が良い。初出場は2005年。2007年に25位に入ると、昨年は16位フィニッシュ。フミの活躍から目が離せない。
HEWサイクラシックス歴代優勝者
1996年 ロッサノ・ブラージ(イタリア)
1997年 ヤン・ウルリッヒ(ドイツ)
1998年 レオン・ファンボン(オランダ)
1999年 ミルコ・チェレスティーノ(イタリア)
2000年 ガブリエーレ・ミッサーリア(イタリア)
2001年 エリック・ツァベル(ドイツ)
2002年 ヨハン・ムセーウ(ベルギー)
2003年 パオロ・ベッティーニ(イタリア)
2004年 スチュアート・オグレディ(オーストラリア)
2005年 フィリッポ・ポッツァート(イタリア)
ヴァッテンフォール・サイクラシックス歴代優勝者
2006年 オスカル・フレイレ(スペイン)
2007年 アレッサンドロ・バッラン(イタリア)
2008年 ロビー・マキュアン(オーストラリア)
ゴール15km手前のヴァーゼベルクがキーポイント
ヴァッテンフォール・サイクラシックス2009コースマップ image:www.vattenfall-cyclassics.de近年の相次ぐドーピングスキャンダルの影響で、自転車競技に対する風当たりが強いドイツ。30年の歴史を有していた1週間のステージレース、ドイツ・ツアーがキャンセルされたため、今年はこのヴァッテンフォール・サイクラシックスが国内唯一のプロツアーレースとなった。1996年に「HEWサイクラシックス」としてスタートした同大会は、スウェーデンに拠点を置くヴァッテンフォール社によるスポンサー企業の買収に伴い、2006年に現在の名称に変更された。「サイクラシックス」は「サイクル」と「クラシック」を組み合わせた造語。クラシックレースの中ではかなり若い部類に入る。
2006年まではツール・ド・フランスの1週間後に開催されていたため、3週間の闘いで活躍した選手がこのサイクラシックスで猛威を振るった。1997年にはツール総合優勝のヤン・ウルリッヒ(ドイツ)が、2001年にはマイヨヴェール(ポイント賞)獲得のエリック・ツァベル(ドイツ)が優勝を飾っている。
レースの舞台となるのはドイツ北部、人口173万人の大都市ハンブルク。北海から約100km離れているが、ドイツ〜ポーランド〜チェコを貫く国際河川エルベ川が流れているため、古くから港湾都市として発達した。河川と運河が入り組んだ土地柄、「水の街」として大阪の姉妹都市でもある。
全長213kmのコースはハンブルク郊外に設定された大小3つの周回コースから構成されている。注目は合計4回登場する「ヴァーゼベルクの急坂」だ。終盤にはこのヴァーゼベルクを含む12kmの周回コースが3周設定されている。
ヴァーゼベルクは長さ700mほどの短い直線的な上りだが、平均勾配が10%、最大勾配は15%に達する。幅が狭いためスピードの上がった集団は縦に長く伸び、集団先頭ではアタックが繰り返されるのが常だ。上りの手前もテクニカルな細いコースが続くため、この勝負どころ目がけて激しいポジション争いが行なわれるのが、“一瞬の判断がレースを決める危険性のある”クラシックレースらしい。
最後のヴァーゼベルクをクリアすると、ハンブルク中心のゴール地点まで15km。細かいアップダウンを繰り返しながら、集団はスプリント勝負に向けて体制を整える。上りで飛び出した選手が逃げ切るか、それとも集団が逃げ切るか。近年は上りで縮小した数十人規模の集団によるスプリント勝負が恒例となっている。
ヴァッテンフォール・サイクラシックス2009コースプロフィール image:www.vattenfall-cyclassics.de有力スプリンター勢揃い コロンビアトレインが猛威を振るうか
ポローニュで1勝を飾ったアンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC) photo:Cor Vos4回登場するヴァーゼベルクの急坂をパワーで押し切り、ポジションを守りながら集団スプリントで勝負に出るスプリンターに有利なコースレイアウト。歴代の優勝者リストを見てもスプリンターの名前がズラリと並ぶ。昨年はロビー・マキュアン(オーストラリア)が集団スプリントを制し、マーク・レンショー(オーストラリア)が2位、アラン・デーヴィス(オーストラリア)が3位。史上初めてオーストラリア人選手が表彰台を独占した。
ポローニュで2勝したエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームコロンビア・HTC) photo:www.tourdepologne.plしかし5月のツアー・オブ・ベルギーで膝を負傷したマキュアンは残念ながら欠場。リハビリに励むマキュアンは8月18日開幕のエネコ・ツアーで復帰予定だ。出場するプロツアー18チーム&プロコンチネンタル2チーム(スキル・シマノとフォアアールベルク・コラテック)の中で、最も厚い選手層を誇るのはチームコロンビア・HTCだろう。ツールで破竹の勢いを見せたカヴェンディッシュは出場しないが、様々な展開に対応する戦力を有する。
ツアー・オブ・デンマークを制したヤコブ・フグルサング(デンマーク、サクソバンク)が総合首位に photo:Cor Vosツール・ド・ポローニュの最終ステージを制したアンドレ・グライペル(ドイツ)がエースで、同大会2勝のボアッソン(ノルウェー)や昨年大会2位のレンショー、アイゼル(オーストリア)、ブルグハート(ドイツ)、シーベルグ(ドイツ)らがトレインを組む。ヴァーゼベルクでのアタックには、上りに強いキルシェン(ルクセンブルク)やロヴクヴィスト(スウェーデン)らがチェックに入る。チームコロンビア・HTCに死角は無い。
2度表彰台に上っているアラン・デーヴィス(オーストラリア、クイックステップ)がそのまま先頭でゴール photo:Mark Gunter2004年の優勝者スチュアート・オグレディ(オーストラリア)擁するサクソバンクは、独走力のあるファビアン・カンチェラーラ(スイス)を中心に、ブレシェル(デンマーク)やゴス(オーストラリア)らがスプリントを狙う。ツアー・オブ・デンマーク総合優勝の新鋭ヤコブ・フグルサング(デンマーク)の動きにも注目したい。クラシカ・サンセバスティアンに続く“真夏のクラシック連覇”を目指すクイックステップは、ツール開幕直前に出場を決めたトム・ボーネン(ベルギー)と、チームプレゼンに出席しながらもボーネン出場の影響でツール開幕直前に出場を逃したアラン・デーヴィス(オーストラリア)の二大看板。デーヴィスは2005年と昨年3位。ボーネンは表彰台経験は無い。
シャンゼリゼ周回コースで熱い走りを披露した別府史之(日本、スキル・シマノ) photo:Makoto Ayanoスプリンターとしては他にもオスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)やゲラルド・チオレック(ドイツ、ミルラム)、ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)、タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)、フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、ランプレ)ら、グランツールで馴染みの顔が揃う。スプリント勝負を阻止しようと、ヴァーゼベルクではセルゲイ・イワノフ(ロシア、カチューシャ)やフィリップ・ジルベール(ベルギー、サイレンス・ロット)、シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)らが攻撃を仕掛けてくると思われる。
毎年果敢な走りを披露する地元ドイツのファビアン・ウェーグマン(ドイツ、ミルラム)は欠場。2007年大会のゴール前で飛び出し、独走勝利を納めた世界チャンピオンのアレッサンドロ・バッラン(イタリア、ランプレ)も欠場する。
そしてツール最終ステージで敢闘賞を獲得した別府史之(スキル・シマノ)の3年連続・4回目のサイクラシックス出場が決まった。ツールで2度トップ10入りしたフミは、このワンディクラシックと相性が良い。初出場は2005年。2007年に25位に入ると、昨年は16位フィニッシュ。フミの活躍から目が離せない。
HEWサイクラシックス歴代優勝者
1996年 ロッサノ・ブラージ(イタリア)
1997年 ヤン・ウルリッヒ(ドイツ)
1998年 レオン・ファンボン(オランダ)
1999年 ミルコ・チェレスティーノ(イタリア)
2000年 ガブリエーレ・ミッサーリア(イタリア)
2001年 エリック・ツァベル(ドイツ)
2002年 ヨハン・ムセーウ(ベルギー)
2003年 パオロ・ベッティーニ(イタリア)
2004年 スチュアート・オグレディ(オーストラリア)
2005年 フィリッポ・ポッツァート(イタリア)
ヴァッテンフォール・サイクラシックス歴代優勝者
2006年 オスカル・フレイレ(スペイン)
2007年 アレッサンドロ・バッラン(イタリア)
2008年 ロビー・マキュアン(オーストラリア)
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