2014/05/08(木) - 16:48
ニールプライド・メンズクラブ所属の智野真央さんによるツアー・オブ・フレンドシップ参戦レポートをお届け。第2・5ステージで優勝し、総合も3位に。大好きな海外ステージレースで得た経験とは。
私は今回ニールプライド・ジャパンチームの一員としてこのレースに参加させて頂いた。国際レースでありながら非UCIレースなので、自分にとってはトレーニングという側面も持ちつつこのレースに臨んだ。
しかし、日本の女子選手にとってはステージレース(しかもラインレース!)自体がとても貴重で、参加が決まってから私の気持ちはとても高揚していた。なぜなら初めて海外のステージレースに出た時、私は大きな衝撃を受けた。「これが、ロードレースというものなのか!」と。 距離、走るコース、人数、チームカー、コースの道路状況、運営体制などなど、すべてが日本のそれとは違うのだ。 それ以来、海外のステージレースが大好きになったのだ。タイでのレースはツアー・オブ・タイランドに次いで2度め。期待は膨らむ。
レースだからもちろん辛いときもある。今回も辛くて、苦しくて、でもとっても楽しいレースを経験することができた。ツアー・オブ・フレンドシップの参加カテゴリーは、男子オープン(年齢区分なし)、エイジ30's、40's、50's、マスター(60's〜)、ジュニア、レディス、VIP(!)と分かれている。 ちなみにVIPの出場者はスポンサーでもあるフィリピンのヌードル会社の社長さんであった(笑)。
今回私はレディスで出場。しかしレースは男子と一緒に走ることができると聞いていたので、集団走およびハイスピードでの経験ができると思った。 参加選手にとっては自分にあったレベルで競争できて楽しいと思う。エイジの選手たちはとても生き生きしていた。レースを楽しんでいるのだ。
今回、日本チャンピオンの與那嶺恵理選手も出場していたが、第3ステージと第5ステージは男子と同じ長い距離を選択して走っていたし、そういうことができるのも逆にこういったレースだからこそだと思う。
■第1ステージ ITT 7km
一人づつのスタート。コースはバンコクの主要施設である国立仏教センターに通じる片側5車線の10車線道路を走るという、日本では絶対にできない贅沢な体験だった。レースの雰囲気はとてもよく、みんなが走っている選手に声援を送っている。みんなが一生懸命にペダルを回している。その表情はプロ選手のそれと何ら変わりはない。とても美しい光景だ。
大会運営もすばらしいと思ったし、二日目以降がとても楽しみになった。 肝心の自分のリザルトは4位。タイムはあまり芳しくなくちょっとショック…。でも次の日もある、というか、レースは始まったばかり! 気持ちを切り替えて明日へ。
■第2ステージ100km
女子はオープン、60's、ジュニアと同時スタートで、距離も同じ。 平坦のコース。自分の課題としては男子を含めた状態で逃げなどのレース展開を把握しつつ男子メイン集団内でちゃんとした位置で走ることだった。
走る前は男子に邪魔にされるかな、なんて考えていたけど、そんなことはなくて普通に集団の中で自分の思い通りに動けて走ることができた。みんなジェントルマンだった。 むしろ女子だけのレースのほうが駆け引きがえげつないかもしれない…笑!?スピードアップにも対応でき、メイン集団で走りきることができて最後はスプリントで女子で1着ゴールだった。パーティでは表彰台に上ってゴキゲン!
■第3ステージ 100km
前日と同じくオープン、60's、ジュニアと同時スタート。距離はオープンがプラス30kmで130kmだったが他は100km。 コースは山岳でKOMが唯一あるステージ。今日はKOMでどこまでついていけるか、が課題だった。
しかしその上りでパンクしてしまう。が、なんと運良くあまり時間を空けずにチームカーが通りかかり代輪を履くことができた!パンクしてチームカーまで行くときに押してくれた男子がいて「チームカーがすぐそこだから大丈夫」と言ったら「そこまで一緒にいこう」と言ってくれて、それも嬉しかった。フレンドシップだなぁ。
ロードレースではパンクはつきもの。今回はラッキーだったがこのときにチームカーが通らなかったらどうするべきか、集団から離れてどう走るか、など色々なことを考えることができた。レースでのパンクだからこそこういったことを考える訳で、また一つ良い経験ができたと思う。
その後は他の選手と合流できてちょっとした集団で走ることができた。距離が違う男子とコースが分かれた後は8人くらいに。エイジのおじさんが「スピードを落とさずこのまま行こう!」と言って来た。後発の50'sクラスで逃げてきた選手で、どうもリーダージャージがかかっているらしく、超張り切り系だ。私は先頭交代したが、他の人はあまりローテーションに加わる気配がなく、微妙な感じに。
しかしおじさんが「Heeeeeey!! Guuuuuuuuuys!!!!」と叫ぶと、ジュニアの子が一人でてきて3人でローテーション。うーん、きつい〜苦しい〜と思いつつも回していると、ジュニアの子が「you don't give up! you don't give up!!」と掛け声。
"ぎょえ〜"と心の中では叫びつつも、こんな追い込めることもないだろうと、いけるところまで頑張った。残り8㎞くらいでローテから外れた。結果としては2位だった。終わった後、一緒に回したジュニアの男の子が話しかけてきた。日本人のクォーターで日本好きなんだって言っていた。彼はシンガポール人で私はつたない英語しか話せないけど、交流できるって楽しい。フレンドシップpart2だ。そしてきつかったけどその分爽快感があるのはなぜだろう!
■第4ステージ103km
エイジ30、50、60、VIP、女子が同時スタート。距離はオープンなど全てのカテゴリーで同じ。 ゆるく長いアップダウンの続くコースで、最後に3km上って600m平坦路でゴール。ゆるい上り坂は長くて暑くて、きついというか嫌になる感じだったけど、その分、下りでは時速78kmくらいでるところもあって超爽快だった!
しかし途中で落車に巻き込まれる。昨日に引き続いてのアクシデントだったが、これもレースではつきもの。地面とのキスは回避できたが、自転車は倒れチェーンが外れる。しかし集団復帰に気持ちを切り替えて超集中。
するとエイジ30クラスの戸田さんが待っていてくれて、始め引いてもらった。入れ替わり、気付くと戸田さんがいない。待ってもらったのにすみません〜…。と思いつつも、自分の目的に向かって走り続ける。その後はチームカーの間をうまくぬっていき無事に集団復帰することができた。
後で聞くと戸田さんはメカトラで離脱してしまったらしい。このシチュエーションは今まで経験したことがあったので、冷静に対処することができたし、今までで一番うまくいった気がする。やはり経験というのはとても重要だと再認識。そのあとはノントラブルで、最後の上りまで来たが脚がいっぱいでペースダウン。
すると50クラスのおじさんが声をかけてきて一緒にのぼる。女子の先頭グループに追いつきそうで追いつかない。差を縮めることができず、4着でゴール。夜のアワードでおじさんと再会しハグ。フレンドシップpart3だ。
■第5ステージ 60km
最終日。女子、50'、60'、ジュニアが同時スタートだ。このグループの距離は60kmと短め。男子の他のクラスは90km。 始めは多少アップダウンがあるが、残りは平坦。スタートのカテゴリーのせいか今までよりペースが遅く感じた。でも今まで出たレースでアジアンスタイルのレースはこういった感じなので、それを思い出してイメージすることにした。
始めは逃げに乗ったりローテーションしたりと積極的に動くようにした。残り20kmくらいでレースでしかできないシチュエーションにチェンジ。追い込むことは練習でもできるが、ゴール勝負の場面というのはレースでしかできない。集中してスプリントをして、優勝することができた。
5日間のステージレースが終わり、総合は3位だった。 この日は途中で右折するところでわかりずらく、先頭の数人がコースミスしてして直進してしまった。でもみんながコースを間違えた人が合流するまでスローダウンして待つ。フェアなレースをする。当たり前だけど何となくいい気分になった。こういうみんなの気持ちがこのレースを作り上げているとも思った。 今回初めてこのレースに参加してまたよい経験を積むことができた。
ツアー・オブ・フレンドシップは、私のようにレースを目指す選手にとっても、エイジで走る選手にとっても、それぞれの目的や楽しみをもって参加することができるレースだと思う。 日本では経験できないことがここではできる。若いジュニアの選手たちもこういったレースを早くから経験してほしいし、そういう機会があるといいと思う。
もちろん、ステージレースを経験したことがないエイジライダーにもぜひ参加してみてほしい。そして海外の自転車好きと交流するのはとても楽しい。 このレースは自転車への情熱と愛とリスペクトに包まれている。参加してみてそう感じた。
すばらしいレースをありがとう。自転車がより好きになった。
智野真央(ニールプライド・メンズクラブ)
私は今回ニールプライド・ジャパンチームの一員としてこのレースに参加させて頂いた。国際レースでありながら非UCIレースなので、自分にとってはトレーニングという側面も持ちつつこのレースに臨んだ。
しかし、日本の女子選手にとってはステージレース(しかもラインレース!)自体がとても貴重で、参加が決まってから私の気持ちはとても高揚していた。なぜなら初めて海外のステージレースに出た時、私は大きな衝撃を受けた。「これが、ロードレースというものなのか!」と。 距離、走るコース、人数、チームカー、コースの道路状況、運営体制などなど、すべてが日本のそれとは違うのだ。 それ以来、海外のステージレースが大好きになったのだ。タイでのレースはツアー・オブ・タイランドに次いで2度め。期待は膨らむ。
レースだからもちろん辛いときもある。今回も辛くて、苦しくて、でもとっても楽しいレースを経験することができた。ツアー・オブ・フレンドシップの参加カテゴリーは、男子オープン(年齢区分なし)、エイジ30's、40's、50's、マスター(60's〜)、ジュニア、レディス、VIP(!)と分かれている。 ちなみにVIPの出場者はスポンサーでもあるフィリピンのヌードル会社の社長さんであった(笑)。
今回私はレディスで出場。しかしレースは男子と一緒に走ることができると聞いていたので、集団走およびハイスピードでの経験ができると思った。 参加選手にとっては自分にあったレベルで競争できて楽しいと思う。エイジの選手たちはとても生き生きしていた。レースを楽しんでいるのだ。
今回、日本チャンピオンの與那嶺恵理選手も出場していたが、第3ステージと第5ステージは男子と同じ長い距離を選択して走っていたし、そういうことができるのも逆にこういったレースだからこそだと思う。
■第1ステージ ITT 7km
一人づつのスタート。コースはバンコクの主要施設である国立仏教センターに通じる片側5車線の10車線道路を走るという、日本では絶対にできない贅沢な体験だった。レースの雰囲気はとてもよく、みんなが走っている選手に声援を送っている。みんなが一生懸命にペダルを回している。その表情はプロ選手のそれと何ら変わりはない。とても美しい光景だ。
大会運営もすばらしいと思ったし、二日目以降がとても楽しみになった。 肝心の自分のリザルトは4位。タイムはあまり芳しくなくちょっとショック…。でも次の日もある、というか、レースは始まったばかり! 気持ちを切り替えて明日へ。
■第2ステージ100km
女子はオープン、60's、ジュニアと同時スタートで、距離も同じ。 平坦のコース。自分の課題としては男子を含めた状態で逃げなどのレース展開を把握しつつ男子メイン集団内でちゃんとした位置で走ることだった。
走る前は男子に邪魔にされるかな、なんて考えていたけど、そんなことはなくて普通に集団の中で自分の思い通りに動けて走ることができた。みんなジェントルマンだった。 むしろ女子だけのレースのほうが駆け引きがえげつないかもしれない…笑!?スピードアップにも対応でき、メイン集団で走りきることができて最後はスプリントで女子で1着ゴールだった。パーティでは表彰台に上ってゴキゲン!
■第3ステージ 100km
前日と同じくオープン、60's、ジュニアと同時スタート。距離はオープンがプラス30kmで130kmだったが他は100km。 コースは山岳でKOMが唯一あるステージ。今日はKOMでどこまでついていけるか、が課題だった。
しかしその上りでパンクしてしまう。が、なんと運良くあまり時間を空けずにチームカーが通りかかり代輪を履くことができた!パンクしてチームカーまで行くときに押してくれた男子がいて「チームカーがすぐそこだから大丈夫」と言ったら「そこまで一緒にいこう」と言ってくれて、それも嬉しかった。フレンドシップだなぁ。
ロードレースではパンクはつきもの。今回はラッキーだったがこのときにチームカーが通らなかったらどうするべきか、集団から離れてどう走るか、など色々なことを考えることができた。レースでのパンクだからこそこういったことを考える訳で、また一つ良い経験ができたと思う。
その後は他の選手と合流できてちょっとした集団で走ることができた。距離が違う男子とコースが分かれた後は8人くらいに。エイジのおじさんが「スピードを落とさずこのまま行こう!」と言って来た。後発の50'sクラスで逃げてきた選手で、どうもリーダージャージがかかっているらしく、超張り切り系だ。私は先頭交代したが、他の人はあまりローテーションに加わる気配がなく、微妙な感じに。
しかしおじさんが「Heeeeeey!! Guuuuuuuuuys!!!!」と叫ぶと、ジュニアの子が一人でてきて3人でローテーション。うーん、きつい〜苦しい〜と思いつつも回していると、ジュニアの子が「you don't give up! you don't give up!!」と掛け声。
"ぎょえ〜"と心の中では叫びつつも、こんな追い込めることもないだろうと、いけるところまで頑張った。残り8㎞くらいでローテから外れた。結果としては2位だった。終わった後、一緒に回したジュニアの男の子が話しかけてきた。日本人のクォーターで日本好きなんだって言っていた。彼はシンガポール人で私はつたない英語しか話せないけど、交流できるって楽しい。フレンドシップpart2だ。そしてきつかったけどその分爽快感があるのはなぜだろう!
■第4ステージ103km
エイジ30、50、60、VIP、女子が同時スタート。距離はオープンなど全てのカテゴリーで同じ。 ゆるく長いアップダウンの続くコースで、最後に3km上って600m平坦路でゴール。ゆるい上り坂は長くて暑くて、きついというか嫌になる感じだったけど、その分、下りでは時速78kmくらいでるところもあって超爽快だった!
しかし途中で落車に巻き込まれる。昨日に引き続いてのアクシデントだったが、これもレースではつきもの。地面とのキスは回避できたが、自転車は倒れチェーンが外れる。しかし集団復帰に気持ちを切り替えて超集中。
するとエイジ30クラスの戸田さんが待っていてくれて、始め引いてもらった。入れ替わり、気付くと戸田さんがいない。待ってもらったのにすみません〜…。と思いつつも、自分の目的に向かって走り続ける。その後はチームカーの間をうまくぬっていき無事に集団復帰することができた。
後で聞くと戸田さんはメカトラで離脱してしまったらしい。このシチュエーションは今まで経験したことがあったので、冷静に対処することができたし、今までで一番うまくいった気がする。やはり経験というのはとても重要だと再認識。そのあとはノントラブルで、最後の上りまで来たが脚がいっぱいでペースダウン。
すると50クラスのおじさんが声をかけてきて一緒にのぼる。女子の先頭グループに追いつきそうで追いつかない。差を縮めることができず、4着でゴール。夜のアワードでおじさんと再会しハグ。フレンドシップpart3だ。
■第5ステージ 60km
最終日。女子、50'、60'、ジュニアが同時スタートだ。このグループの距離は60kmと短め。男子の他のクラスは90km。 始めは多少アップダウンがあるが、残りは平坦。スタートのカテゴリーのせいか今までよりペースが遅く感じた。でも今まで出たレースでアジアンスタイルのレースはこういった感じなので、それを思い出してイメージすることにした。
始めは逃げに乗ったりローテーションしたりと積極的に動くようにした。残り20kmくらいでレースでしかできないシチュエーションにチェンジ。追い込むことは練習でもできるが、ゴール勝負の場面というのはレースでしかできない。集中してスプリントをして、優勝することができた。
5日間のステージレースが終わり、総合は3位だった。 この日は途中で右折するところでわかりずらく、先頭の数人がコースミスしてして直進してしまった。でもみんながコースを間違えた人が合流するまでスローダウンして待つ。フェアなレースをする。当たり前だけど何となくいい気分になった。こういうみんなの気持ちがこのレースを作り上げているとも思った。 今回初めてこのレースに参加してまたよい経験を積むことができた。
ツアー・オブ・フレンドシップは、私のようにレースを目指す選手にとっても、エイジで走る選手にとっても、それぞれの目的や楽しみをもって参加することができるレースだと思う。 日本では経験できないことがここではできる。若いジュニアの選手たちもこういったレースを早くから経験してほしいし、そういう機会があるといいと思う。
もちろん、ステージレースを経験したことがないエイジライダーにもぜひ参加してみてほしい。そして海外の自転車好きと交流するのはとても楽しい。 このレースは自転車への情熱と愛とリスペクトに包まれている。参加してみてそう感じた。
すばらしいレースをありがとう。自転車がより好きになった。
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