2014/03/05(水) - 22:21
ギラギラした太陽とジメジメした湿度の影響で、気温35度という数字以上の暑さを感じるマレー半島。ツール・ド・ランカウイ第7ステージで、グレーム・ブラウン(オーストラリア)のリードアウトを受けたテオ・ボス(オランダ、ベルキン)が悠々と2勝目を飾ってみせた。
「もう脚の怪我は大丈夫。しっかり血も止まった。シューズに穴が開いてしまったけど、逆に穴が無かったらシューズが患部に触れて痛くてたまらないと思う」。第2ステージの落車で足の指を負傷しながらも、翌日の第3ステージで勝利したアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)がスタート地点で爽やかな笑顔を浮かべながら話す。
4年連続でスプリント勝利を飾っているグアルディーニは、前日の第6ステージで7位に沈んだ。「昨日はラインを間違ってしまった。ずっとベルキンが主導権を握っていたのでボスの番手を取っていたものの、他のチームが被せてきてスプリントに持ち込めなかった。今日もベルキンが強力なトレインを組むと思う。自分はルスラン(トレバイェフ)のサポートを受けるけど、トレインを組めるようなメンバーじゃないから厳しい。怪我を除けば調子がとても良いよ」と笑いながらイタリアンスプリンターはスタートラインに向かった。
「愛三の作戦は、西谷と平塚の逃げか、西谷のスプリントの2パターンです」とスタート前に別府匠監督が語っていた通り、西谷泰治(愛三工業レーシング)は開始直後から繰り広げられたアタック合戦に加わり、25km地点で一時的に単独で先行した。
しかしチームや選手の思惑が一致せずに吸収され、その後も延々とアタック合戦が継続する。マレー半島の東海岸をひたすら北上する大会最長の230kmステージは、こうして序盤からハイスピードな展開を見せた。
緩いアップダウンが続く序盤に46kmを1時間でカバーした集団から、ピーター・ウェーニング(オランダ、オリカ・グリーンエッジ)やステフェン・クルイスウィク(オランダ、ベルキン)といったトップオールラウンダーが飛び出すシーンも。タブリスペトロケミカルを崩そうと、UCIプロチームが集中砲火を浴びせる。
50km地点で形成されたのは、第1ステージで優勝して4日間リーダージャージを着続けたドゥベル・キンテロ(コロンビア、コロンビア)、ブレット・ランカスター(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)、ヨナタン・モンサルベ(ベネズエラ、ネーリソットリ・イエローフルオ)、エリック・シェパード(オーストラリア、OCBCシンガポール)という4名の逃げ。2011年大会の覇者モンサルベは総合で2分20秒遅れ。タブリスペトロケミカルは厄介な逃げを許してしまった。
リーダージャージ擁するタブリスペトロケミカルが懸命にメイン集団を牽引したが、脚の揃った4名の逃げはレース中盤に4分のリードを稼ぎ出す。バーチャルリーダーのモンサルベを、リーダーチームが追いかける。
向かい風と海からの横風に打たれながら、うだるような暑さの中を逃げる先頭4人。タブリスペトロケミカルの集団牽引ではタイム差が詰まらず、危機感を感じ始めたベルキンやアスタナが残り80km地点で先頭交代にメンバーを送り込んだ。
スプリンターチームの介入により逃げグループのリードは縮小傾向に。横風区間でペースアップが計られるも集団分裂は起こらず。残り15kmで逃げを飲み込んだ大集団がスピードを上げてペカンの街に突入した。
なお、この日は50km地点でパヴェル・コチェトコフ(ロシア、カチューシャ)が落車。低空飛行していた中継ヘリの風に飛ばされたコチェトコフは鎖骨骨折によりレースを去っている。
残り500mで左コーナーを折れ、残り250mで右コーナーを抜けて最終ストレートへ。この2つの直角コーナーで勝負の行方がほぼ決まったと言ってもいい。
チームにとって縁起の良いボーラウルトラ80のリアホイールを投入した西谷は、自力でポジション取りしてこれらコーナーに突入したものの、先頭とは距離が離れてしまった。
「位置取りは良かったんですが、やはり前で突っ込んだ選手のほうが速いので、コーナー毎に離されてしまいました。最終コーナーは車輪を滑らせながら曲がっている選手がいたんじゃないかと思うほど、みんなリスクを背負って突っ込んでいた。最初のコーナーで先頭に出て、ロングスパートを仕掛けたほうが良かったかも知れない」と、20番手でフィニッシュラインを駆け抜けた西谷は語る。
一方、集団先頭では、グレーム・ブラウン(オーストラリア)にリードアウトされたボスが最終ストレートでスプリントを開始。勝利を確信したブラウンが残り100mで早くも両手を挙げると、ボスが余裕のリードを保ってガッツポーズを繰り出した。
ボスは2年連続ステージ2勝。昨年ボスは現地の食べ物で胃腸を壊し、レース中盤にリタイアしている。その二の舞は踏むまいと、今年はオランダから持ち込んだ食品を主に摂っていると言う。
「ロードブックは残り900mと500mにコーナーがあると書いてあったけど、先にゴール地点についたスタッフから残り500mと250mだと伝えられたのが幸いした。最高のリードアウト役であるブラウンがいて助けられたよ」。今大会の勝利数でボスが一つ抜け出した。
ツール・ド・ランカウイは残り3ステージ。いずれも平坦コースであり、西谷は「今日も前半にアタックしましたが、いかんせん(愛三の)人数が少ないので、自分たちで動いてチャンスを作っていかないといけない。総合逆転を狙うチームの動きにもよりますが、このままの様子だと残りのステージもスプリントになると思います。出来れば入賞圏内でフィニッシュしたいですね」と、残るチャンスに懸ける。
その他の写真はフォトギャラリーにて!
ツール・ド・ランカウイ2014第7ステージ結果
1位 テオ・ボス(オランダ、ベルキン) 5h33'12"
2位 アイディス・クルオピス(リトアニア、オリカ・グリーンエッジ)
3位 レオナルド・ドゥケ(コロンビア、コロンビア)
4位 カルロス・アルサーテ(コロンビア、ユナイテッドヘルスケア)
5位 ミカル・コラー(スロベキア、ティンコフ・サクソ)
6位 ケン・ハンソン(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)
7位 ロベルト・フェルスター(ドイツ、ユナイテッドヘルスケア)
8位 フランチェスコ・キッキ(イタリア、ネーリソットリ・イエローフルオ)
9位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)
10位 ディーントーマス・ロジャース(ニュージーランド、OCBCシンガポール)
20位 西谷泰治(日本、愛三工業レーシング)
80位 平塚吉光(日本、愛三工業レーシング)
111位 福田真平(日本、愛三工業レーシング) +5'29"
個人総合成績
1位 ミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン、タブリスペトロケミカル) 25h17'02"
2位 メルハウィ・クドゥス(エリトリア、MTNキュベカ) +08"
3位 イサーク・ボリバル(コロンビア、ユナイテッドヘルスケア) +11"
4位 エスデバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ) +20"
5位 ペトル・イグナテンコ(ロシア、カチューシャ) +36"
6位 ジャック・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、MTNキュベカ) +40"
7位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ベルキン) +52"
8位 ジャンフランコ・ジリオーリ(イタリア、アンドローニ・ベネズエラ) +1'09"
9位 ガファリ・ヴァヒド(イラン、タブリスペトロケミカル) +1'27"
10位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、MTNキュベカ) +1'41"
アジアンライダー賞
1位 ミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン、タブリスペトロケミカル) 25h17'02"
2位 ガファリ・ヴァヒド(イラン、タブリスペトロケミカル) +1'27"
3位 アミール・コラドザグ(イラン、タブリスペトロケミカル) +3'03"
スプリント賞
1位 アイディス・クルオピス(リトアニア、オリカ・グリーンエッジ) 61pts
2位 ミカル・コラー(スロベキア、ティンコフ・サクソ) 57pts
3位 トマス・ラボウ(オランダ、OCBCシンガポール) 48pts
山岳賞
1位 マット・ブラマイヤー(アイルランド、シナジーバクサイクリング) 34pts
2位 イサーク・ボリバル(コロンビア、ユナイテッドヘルスケア) 31pts
3位 ミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン、タブリスペトロケミカル) 25pts
チーム総合成績
1位 MTNキュベカ 74h53'53"
2位 タブリスペトロケミカル +1'38"
3位 アンドローニ・ベネズエラ +8'52"
text&photo:Kei Tsuji in Kuantan, Malaysia
「もう脚の怪我は大丈夫。しっかり血も止まった。シューズに穴が開いてしまったけど、逆に穴が無かったらシューズが患部に触れて痛くてたまらないと思う」。第2ステージの落車で足の指を負傷しながらも、翌日の第3ステージで勝利したアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)がスタート地点で爽やかな笑顔を浮かべながら話す。
4年連続でスプリント勝利を飾っているグアルディーニは、前日の第6ステージで7位に沈んだ。「昨日はラインを間違ってしまった。ずっとベルキンが主導権を握っていたのでボスの番手を取っていたものの、他のチームが被せてきてスプリントに持ち込めなかった。今日もベルキンが強力なトレインを組むと思う。自分はルスラン(トレバイェフ)のサポートを受けるけど、トレインを組めるようなメンバーじゃないから厳しい。怪我を除けば調子がとても良いよ」と笑いながらイタリアンスプリンターはスタートラインに向かった。
「愛三の作戦は、西谷と平塚の逃げか、西谷のスプリントの2パターンです」とスタート前に別府匠監督が語っていた通り、西谷泰治(愛三工業レーシング)は開始直後から繰り広げられたアタック合戦に加わり、25km地点で一時的に単独で先行した。
しかしチームや選手の思惑が一致せずに吸収され、その後も延々とアタック合戦が継続する。マレー半島の東海岸をひたすら北上する大会最長の230kmステージは、こうして序盤からハイスピードな展開を見せた。
緩いアップダウンが続く序盤に46kmを1時間でカバーした集団から、ピーター・ウェーニング(オランダ、オリカ・グリーンエッジ)やステフェン・クルイスウィク(オランダ、ベルキン)といったトップオールラウンダーが飛び出すシーンも。タブリスペトロケミカルを崩そうと、UCIプロチームが集中砲火を浴びせる。
50km地点で形成されたのは、第1ステージで優勝して4日間リーダージャージを着続けたドゥベル・キンテロ(コロンビア、コロンビア)、ブレット・ランカスター(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)、ヨナタン・モンサルベ(ベネズエラ、ネーリソットリ・イエローフルオ)、エリック・シェパード(オーストラリア、OCBCシンガポール)という4名の逃げ。2011年大会の覇者モンサルベは総合で2分20秒遅れ。タブリスペトロケミカルは厄介な逃げを許してしまった。
リーダージャージ擁するタブリスペトロケミカルが懸命にメイン集団を牽引したが、脚の揃った4名の逃げはレース中盤に4分のリードを稼ぎ出す。バーチャルリーダーのモンサルベを、リーダーチームが追いかける。
向かい風と海からの横風に打たれながら、うだるような暑さの中を逃げる先頭4人。タブリスペトロケミカルの集団牽引ではタイム差が詰まらず、危機感を感じ始めたベルキンやアスタナが残り80km地点で先頭交代にメンバーを送り込んだ。
スプリンターチームの介入により逃げグループのリードは縮小傾向に。横風区間でペースアップが計られるも集団分裂は起こらず。残り15kmで逃げを飲み込んだ大集団がスピードを上げてペカンの街に突入した。
なお、この日は50km地点でパヴェル・コチェトコフ(ロシア、カチューシャ)が落車。低空飛行していた中継ヘリの風に飛ばされたコチェトコフは鎖骨骨折によりレースを去っている。
残り500mで左コーナーを折れ、残り250mで右コーナーを抜けて最終ストレートへ。この2つの直角コーナーで勝負の行方がほぼ決まったと言ってもいい。
チームにとって縁起の良いボーラウルトラ80のリアホイールを投入した西谷は、自力でポジション取りしてこれらコーナーに突入したものの、先頭とは距離が離れてしまった。
「位置取りは良かったんですが、やはり前で突っ込んだ選手のほうが速いので、コーナー毎に離されてしまいました。最終コーナーは車輪を滑らせながら曲がっている選手がいたんじゃないかと思うほど、みんなリスクを背負って突っ込んでいた。最初のコーナーで先頭に出て、ロングスパートを仕掛けたほうが良かったかも知れない」と、20番手でフィニッシュラインを駆け抜けた西谷は語る。
一方、集団先頭では、グレーム・ブラウン(オーストラリア)にリードアウトされたボスが最終ストレートでスプリントを開始。勝利を確信したブラウンが残り100mで早くも両手を挙げると、ボスが余裕のリードを保ってガッツポーズを繰り出した。
ボスは2年連続ステージ2勝。昨年ボスは現地の食べ物で胃腸を壊し、レース中盤にリタイアしている。その二の舞は踏むまいと、今年はオランダから持ち込んだ食品を主に摂っていると言う。
「ロードブックは残り900mと500mにコーナーがあると書いてあったけど、先にゴール地点についたスタッフから残り500mと250mだと伝えられたのが幸いした。最高のリードアウト役であるブラウンがいて助けられたよ」。今大会の勝利数でボスが一つ抜け出した。
ツール・ド・ランカウイは残り3ステージ。いずれも平坦コースであり、西谷は「今日も前半にアタックしましたが、いかんせん(愛三の)人数が少ないので、自分たちで動いてチャンスを作っていかないといけない。総合逆転を狙うチームの動きにもよりますが、このままの様子だと残りのステージもスプリントになると思います。出来れば入賞圏内でフィニッシュしたいですね」と、残るチャンスに懸ける。
その他の写真はフォトギャラリーにて!
ツール・ド・ランカウイ2014第7ステージ結果
1位 テオ・ボス(オランダ、ベルキン) 5h33'12"
2位 アイディス・クルオピス(リトアニア、オリカ・グリーンエッジ)
3位 レオナルド・ドゥケ(コロンビア、コロンビア)
4位 カルロス・アルサーテ(コロンビア、ユナイテッドヘルスケア)
5位 ミカル・コラー(スロベキア、ティンコフ・サクソ)
6位 ケン・ハンソン(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)
7位 ロベルト・フェルスター(ドイツ、ユナイテッドヘルスケア)
8位 フランチェスコ・キッキ(イタリア、ネーリソットリ・イエローフルオ)
9位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)
10位 ディーントーマス・ロジャース(ニュージーランド、OCBCシンガポール)
20位 西谷泰治(日本、愛三工業レーシング)
80位 平塚吉光(日本、愛三工業レーシング)
111位 福田真平(日本、愛三工業レーシング) +5'29"
個人総合成績
1位 ミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン、タブリスペトロケミカル) 25h17'02"
2位 メルハウィ・クドゥス(エリトリア、MTNキュベカ) +08"
3位 イサーク・ボリバル(コロンビア、ユナイテッドヘルスケア) +11"
4位 エスデバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ) +20"
5位 ペトル・イグナテンコ(ロシア、カチューシャ) +36"
6位 ジャック・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、MTNキュベカ) +40"
7位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ベルキン) +52"
8位 ジャンフランコ・ジリオーリ(イタリア、アンドローニ・ベネズエラ) +1'09"
9位 ガファリ・ヴァヒド(イラン、タブリスペトロケミカル) +1'27"
10位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、MTNキュベカ) +1'41"
アジアンライダー賞
1位 ミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン、タブリスペトロケミカル) 25h17'02"
2位 ガファリ・ヴァヒド(イラン、タブリスペトロケミカル) +1'27"
3位 アミール・コラドザグ(イラン、タブリスペトロケミカル) +3'03"
スプリント賞
1位 アイディス・クルオピス(リトアニア、オリカ・グリーンエッジ) 61pts
2位 ミカル・コラー(スロベキア、ティンコフ・サクソ) 57pts
3位 トマス・ラボウ(オランダ、OCBCシンガポール) 48pts
山岳賞
1位 マット・ブラマイヤー(アイルランド、シナジーバクサイクリング) 34pts
2位 イサーク・ボリバル(コロンビア、ユナイテッドヘルスケア) 31pts
3位 ミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン、タブリスペトロケミカル) 25pts
チーム総合成績
1位 MTNキュベカ 74h53'53"
2位 タブリスペトロケミカル +1'38"
3位 アンドローニ・ベネズエラ +8'52"
text&photo:Kei Tsuji in Kuantan, Malaysia
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