2014/03/02(日) - 14:04
3月1日、いよいよベルギーのクラシックレースカレンダーが動き出した。伝統のオンループ・ヘットニュースブラッドは、イアン・スタナード(イギリス、チームスカイ)がフレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)との一騎打ちを制し英国人初の栄冠に輝いた。
オンループ・ヘットニュースブラッドは、ヘットニュースブラッド紙が1913年に創設したロンド・ファン・フラーンデレン(ツール・デ・フランドル)に対抗して、ヘットフォルク紙が1945年に創設したセミクラシック。
長年「オンループ・ヘットフォルク」として開催されていたが、2009年にロンドと同じヘットニュースブラッド紙にスポンサーが変更され、現在の名称に変更された。
今年で開催69回目で、このセミクラシック初戦となるオンループを皮切りに、ベルギーの春のクラシックシーズンが始動する。
2014年大会の最注目選手は、昨年ステイン・ファンデンベルフ(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)とのマッチスプリントを制し優勝したルーカ・パオリー二(イタリア、カチューシャ)や、ロンド・ファン・フラーンデレンに向けて調子を上げるトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)ら。彼らを筆頭に、トル・フースホフト(ノルウェー、BMCレーシングチーム)、エドアルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チームスカイ)など、春のクラシックシーズンをにぎわせる有力選手が多く揃う豪華なスタートリストとなった。
フランドル州にあるベルギー第3の都市、ヘントを発着する198kmのコースには多数の石畳セクションや急坂が凝縮されており、モーレンベルグやレベルグなど、ロンド・ファン・フラーンデレンにも登場する勝負所がいくつも登場するため、大一番に向けた重要な前哨戦となる。
スタートラインに集まったプロトンは、IAMサイクリングが前列に並び、クリストフ・ゴダールト(ベルギー)の死を悼む。27歳の若きレーサーを惜しむ黙祷を捧げた後、レースは始まった。
昨年大会は雨。そして今年もフランドル地方が冷たい雨に見舞われたこの日、レースは8名の逃げを伴ってスタートする。しかしボーネン擁するオメガファーマ勢が徹底した集団のペースコントロールを行ったため、ゴールまで距離を残した段階で吸収への動きが加速していく。
逃げとのタイム差が2分を切ると、メイン集団からは細かなアタックが断続的に発生した。残り60kmを切ったところでニキ・テルプストラ(オランダ、オメガファーマ・クイックステップ)、イアン・スタナード、フレフ・ファンアフェルマート、セプ・ファンマルク(ベルギー、ベルキンプロサイクリング)らを含む超強力な逃げ集団が発生。結果的にこの逃げはレースを決定づける大きな動きとなった。
この日は雨と石畳によって集団内で多数の落車が発生し、フースホフトら有力選手もその餌食になってしまう。最終的には59名の選手がDNFという厳しいレースになった。
一方、オメガファーマ勢が先頭に立ち積極的にペースを上げるエスケープグループは、統率の取れないメイン集団を引き離し、次第に逃げ切りに向けての体制を築き上げていく。凍える寒さのなか、残り45kmではメイン集団も30人ほどの小集団に絞られた。
パヴェの上りでのアタックや落車、パンク、メカトラブルを経るたびに先頭グループは割れ、残り28kmで40秒ほどのタイム差を持って逃げるかたちになったのはテルプストラ、ラルス・ボーム(ベルキン)、ボアッソンハーゲンの3人に。
しかしほどなくしてボームがパンクして後退し、2人に。ペースが上がらなくなった2人は協調体制も取ることなく、お互いアタックをするうちにさらにペースを落とし、残り17kmで追走集団に捕まってしまった。
そこからからボアッソンハーゲンとのバトンタッチでカウンターアタックをかけたのはスカイのスタナード。これに食らいついたのがファンアフェルマートだった。
抜け出しに成功した2人、10秒差で追走第2グループの3人(ボアッソンハーゲン、ファンマルク、テルプストラ)、45秒差で15人のメイン集団という構図に。身体の凍えたボーネンは大きく遅れた後方集団にとどまり、オメガファーマの描いたシナリオは崩れ去ってしまった。
逃げるスタナードとファンアフェルマートの2人。残り5kmを切って10秒だった後続との差は2.5kmで14秒に広がり、逃げ切りが濃厚となった。
後続グループが必死の追い上げを見せるも、ゴール前には24秒差。スタナードとファンアフェルマートの一騎打ちとなった。牽制の後、先行から早めに仕掛けたスタナードがゴールラインまでそのまま逃げ切る勝利。スプリントの得意なファンアフェルマートだったが、凍えた身体は思うように動かず、追い込んだもののスピードに乗ったスタナードには届かなかった。
後続3名の表彰台争いはスプリント力に長けるボアッソンハーゲンが制し、チームスカイは1・3フィニッシュを成功させた。
「後方集団とは少し差があることは分かっていたので、あとは正しくスプリントに持ち込めば勝てると思っていた。先行して仕掛ける時に、自分自身に強さを感じたんだ。スプリントにとても集中して臨んだ。300m(が仕掛けるのにベストな距離)だと分かっていたんだ。全てが上手く行った。できる限りの力を尽くせば彼を倒せると思っていた。」と26歳の元イギリスナショナルチャンピオンは語った。
イギリス人がこのセミクラシックに勝利するのは初めてのことだ。チームスカイとしては2010年にフアンアンアトニオ・フレチャ(スペイン)が勝利したのにあわせオンループ2勝目だ。
昨年5位、2009年に4位のリザルトがあるファンアフェルマート。2位はベストリザルトだが、勝てたという思いが強く残る。
「最後のスプリントでは僕は本当に凍えていたんだ。でも、いいスプリントはできると思っていた。でもスタナードはサプライズアタックを決めて2m僕をリードした。僕の身体はそれ以上反応できなかったんだ。僕はスプリントでもっと強いと思っていたのに。
いつものレース経験からは、スタナードが一緒の逃げに居るときは最後まで逃げ切れるから、とにかく行くべきだと知っている。そして普通なら僕は彼を負かすことができる。今回は天候が彼にマッチしていたんだ」。
オンループ・ヘットニュースブラッド2014
1位 イアン・スタナード(イギリス、チームスカイ) 4h49'55"
2位 フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)
3位 エドアルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チームスカイ) +24"
4位 セプ・ファンマルク(ベルギー、ベルキンプロサイクリング)
5位 ニキ・テルプストラ(オランダ、オメガファーマ・クイックステップ)
6位 ジャンピエール・ドラッカー(ルクセンブルク、ワンティ) +1'34"
7位 テイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシングチーム)
8位 ドリス・デヴェイナンス(ベルギー、ジャイアント・シマノ)
9位 エゴイ・ガルシア(スペイン、コフィディス)
10位 アルノー・デマール(フランス、FDJ.fr)
text:So.Isobe,Makoto.AYANO
photo:Cor.Vos
オンループ・ヘットニュースブラッドは、ヘットニュースブラッド紙が1913年に創設したロンド・ファン・フラーンデレン(ツール・デ・フランドル)に対抗して、ヘットフォルク紙が1945年に創設したセミクラシック。
長年「オンループ・ヘットフォルク」として開催されていたが、2009年にロンドと同じヘットニュースブラッド紙にスポンサーが変更され、現在の名称に変更された。
今年で開催69回目で、このセミクラシック初戦となるオンループを皮切りに、ベルギーの春のクラシックシーズンが始動する。
2014年大会の最注目選手は、昨年ステイン・ファンデンベルフ(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)とのマッチスプリントを制し優勝したルーカ・パオリー二(イタリア、カチューシャ)や、ロンド・ファン・フラーンデレンに向けて調子を上げるトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)ら。彼らを筆頭に、トル・フースホフト(ノルウェー、BMCレーシングチーム)、エドアルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チームスカイ)など、春のクラシックシーズンをにぎわせる有力選手が多く揃う豪華なスタートリストとなった。
フランドル州にあるベルギー第3の都市、ヘントを発着する198kmのコースには多数の石畳セクションや急坂が凝縮されており、モーレンベルグやレベルグなど、ロンド・ファン・フラーンデレンにも登場する勝負所がいくつも登場するため、大一番に向けた重要な前哨戦となる。
スタートラインに集まったプロトンは、IAMサイクリングが前列に並び、クリストフ・ゴダールト(ベルギー)の死を悼む。27歳の若きレーサーを惜しむ黙祷を捧げた後、レースは始まった。
昨年大会は雨。そして今年もフランドル地方が冷たい雨に見舞われたこの日、レースは8名の逃げを伴ってスタートする。しかしボーネン擁するオメガファーマ勢が徹底した集団のペースコントロールを行ったため、ゴールまで距離を残した段階で吸収への動きが加速していく。
逃げとのタイム差が2分を切ると、メイン集団からは細かなアタックが断続的に発生した。残り60kmを切ったところでニキ・テルプストラ(オランダ、オメガファーマ・クイックステップ)、イアン・スタナード、フレフ・ファンアフェルマート、セプ・ファンマルク(ベルギー、ベルキンプロサイクリング)らを含む超強力な逃げ集団が発生。結果的にこの逃げはレースを決定づける大きな動きとなった。
この日は雨と石畳によって集団内で多数の落車が発生し、フースホフトら有力選手もその餌食になってしまう。最終的には59名の選手がDNFという厳しいレースになった。
一方、オメガファーマ勢が先頭に立ち積極的にペースを上げるエスケープグループは、統率の取れないメイン集団を引き離し、次第に逃げ切りに向けての体制を築き上げていく。凍える寒さのなか、残り45kmではメイン集団も30人ほどの小集団に絞られた。
パヴェの上りでのアタックや落車、パンク、メカトラブルを経るたびに先頭グループは割れ、残り28kmで40秒ほどのタイム差を持って逃げるかたちになったのはテルプストラ、ラルス・ボーム(ベルキン)、ボアッソンハーゲンの3人に。
しかしほどなくしてボームがパンクして後退し、2人に。ペースが上がらなくなった2人は協調体制も取ることなく、お互いアタックをするうちにさらにペースを落とし、残り17kmで追走集団に捕まってしまった。
そこからからボアッソンハーゲンとのバトンタッチでカウンターアタックをかけたのはスカイのスタナード。これに食らいついたのがファンアフェルマートだった。
抜け出しに成功した2人、10秒差で追走第2グループの3人(ボアッソンハーゲン、ファンマルク、テルプストラ)、45秒差で15人のメイン集団という構図に。身体の凍えたボーネンは大きく遅れた後方集団にとどまり、オメガファーマの描いたシナリオは崩れ去ってしまった。
逃げるスタナードとファンアフェルマートの2人。残り5kmを切って10秒だった後続との差は2.5kmで14秒に広がり、逃げ切りが濃厚となった。
後続グループが必死の追い上げを見せるも、ゴール前には24秒差。スタナードとファンアフェルマートの一騎打ちとなった。牽制の後、先行から早めに仕掛けたスタナードがゴールラインまでそのまま逃げ切る勝利。スプリントの得意なファンアフェルマートだったが、凍えた身体は思うように動かず、追い込んだもののスピードに乗ったスタナードには届かなかった。
後続3名の表彰台争いはスプリント力に長けるボアッソンハーゲンが制し、チームスカイは1・3フィニッシュを成功させた。
「後方集団とは少し差があることは分かっていたので、あとは正しくスプリントに持ち込めば勝てると思っていた。先行して仕掛ける時に、自分自身に強さを感じたんだ。スプリントにとても集中して臨んだ。300m(が仕掛けるのにベストな距離)だと分かっていたんだ。全てが上手く行った。できる限りの力を尽くせば彼を倒せると思っていた。」と26歳の元イギリスナショナルチャンピオンは語った。
イギリス人がこのセミクラシックに勝利するのは初めてのことだ。チームスカイとしては2010年にフアンアンアトニオ・フレチャ(スペイン)が勝利したのにあわせオンループ2勝目だ。
昨年5位、2009年に4位のリザルトがあるファンアフェルマート。2位はベストリザルトだが、勝てたという思いが強く残る。
「最後のスプリントでは僕は本当に凍えていたんだ。でも、いいスプリントはできると思っていた。でもスタナードはサプライズアタックを決めて2m僕をリードした。僕の身体はそれ以上反応できなかったんだ。僕はスプリントでもっと強いと思っていたのに。
いつものレース経験からは、スタナードが一緒の逃げに居るときは最後まで逃げ切れるから、とにかく行くべきだと知っている。そして普通なら僕は彼を負かすことができる。今回は天候が彼にマッチしていたんだ」。
オンループ・ヘットニュースブラッド2014
1位 イアン・スタナード(イギリス、チームスカイ) 4h49'55"
2位 フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)
3位 エドアルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チームスカイ) +24"
4位 セプ・ファンマルク(ベルギー、ベルキンプロサイクリング)
5位 ニキ・テルプストラ(オランダ、オメガファーマ・クイックステップ)
6位 ジャンピエール・ドラッカー(ルクセンブルク、ワンティ) +1'34"
7位 テイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシングチーム)
8位 ドリス・デヴェイナンス(ベルギー、ジャイアント・シマノ)
9位 エゴイ・ガルシア(スペイン、コフィディス)
10位 アルノー・デマール(フランス、FDJ.fr)
text:So.Isobe,Makoto.AYANO
photo:Cor.Vos
フォトギャラリー
Amazon.co.jp