防府(6月3日)から川崎(9月1日)までの計10か所を巡る「競輪ワールドシリーズ」。参戦のため来日した、世界王者ハリー・ラブレイセン(オランダ)やそのライバル、マシュー・リチャードソン(イギリス)、パリ五輪2冠エリース・アンドリュース(ニュージーランド)のインタビューをお届けする。

ガッツポーズでフォトセッションに応じる競輪ワールドシリーズ招聘選手達 photo: Yuichiro Hosoda
「競輪ワールドシリーズ」のために招聘された男女3名ずつ、計6名の世界トップ選手たち。また海外選手による2019年以来の参戦ということもあり、TVや新聞社など多くのメディアが詰めかけた。各メディアが次々に入れ替わる個別インタビューのスタイルだったにもかかわらず、シクロワイアードが話を聞いた3選手は終始笑顔で、丁寧に言葉を選びながら答えてくれた。
エリース・アンドリュース(ニュージーランド) 1999/12/31生(26歳)

2024年パリ五輪でスプリントとケイリン、2つの金メダルを獲得したエリース・アンドリュース(ニュージーランド) photo: Yuichiro Hosoda
まず話を聞いたのは、2024年のパリ五輪でスプリントとケイリンの2冠を達成し、チームスプリントでも銀メダルを獲得したアンドリュース。176cmの長身から繰り出される力強いスプリントとその持続力を武器にするアンドリュースは、父親が元トラック選手(現ニュージーランドナショナルチームのコーチ)で、母親は元マウンテンバイクの選手というサラブレッドだ。
─競輪に参戦する、いまの気持ちを聞かせて下さい。
アンドリュース:久々となる競輪への招待選手のなかに、自分が入ることができて光栄に思う。
─競輪選手としてはレース前からスマホの使用などが禁止される、隔離生活があります。
そのような環境は初体験だが、正直ワクワクしている。どんな挑戦だって歓迎する気持ちがある。
─またバイクのセッティングも自ら行わなければなりません。問題なく対応できると思いますか?
(練習拠点である)ニュージーランドでもたまに自分で触ることはあるし、ここ(日本競輪選手養成所)で教えて貰えるのであまり心配はしていない。

2024年のパリ五輪で2冠を達成したアンドリュース photo:UCI
─日本人のファンからは、ケイリン世界王者である佐藤水菜選手との直接対決が期待されています。
水菜とはライバルであり、友でもある。仲も良く、世界王者としてリスペクトしている選手。だからぜひとも戦いたい。
─脚質的にはあなたも佐藤選手も、ロングスプリントを得意としています。そこに特徴の差などはありますか?
割と近い性質があるが、彼女は短い距離でもパワフルなスプリントがある。だからこそ強敵だ。
─2017年にジュニア世界選手権の個人パシュート(中距離種目)で世界一に輝き、当時の世界記録を更新。その後、短距離に転向しました。それが現在のスプリントの持続力にも繋がっていると思うのですが、転向の理由は何だったのでしょうか?
そもそもスプリントとケイリンが好きだったし、中距離の練習が辛くなってしまったから。短距離の練習とは全く異なるものだからね。またジュニアの時から短距離種目もやっており、光るものがあるとスプリントコーチが声を掛けてくれた。

笑顔で話す姿が印象的だったアンドリュース photo: Yuichiro Hosoda
─最後に1つ。様々なプロフィールに書かれている「2000年になる直前に生まれた」というのは本当ですか?
それは本当で、ミレニアムになる15分前に生まれたの。自転車競技はジュニアなどの区分が1月1日からになるから、そういう意味では不利だったかもね(笑)。
マシュー・リチャードソン(イギリス) 1999/4/17生(26歳)

2月のヨーロッパ選手権でラブレイセンを破ったマシュー・リチャードソン(イギリス) photo: Yuichiro Hosoda
2人目は、パリ五輪でスプリントとケイリンで2つの銀メダルを獲得したリチャードソン。しかし今年2月にトルコで行われたヨーロッパ選手権では、絶対王者ハリー・ラブレイセン(オランダ)をスプリントとケイリンで下し、2冠を達成。特にスプリントでは、2019年以来スプリントで無敗を誇っていたブレイセンを相手に劇的な逆転勝利を演出し、今後が注目される選手だ。
─その坊主頭は、競輪を意識したもの…ですか?
リチャードソン:全然関係ないよ(笑)。坊主にしたのは昨年の11月頃。シャワーの後に乾かしたり、風に吹かれたりするのがめんどくさくなっただけだ。
─先程の記者会見では競輪参戦が"夢”だと語っていました。
その通り。繰り返しになるが、競輪挑戦は長年の夢だった。僕が自転車競技を始め、すぐに短距離種目を始めた。トラックの短距離選手であれば、日本の競輪はその長い歴史を含め、意識せざるを得ないものだ。まだ僕が若かった数年前、日本国外の選手たちが競輪に招かれる様子を見て、いつか僕もその1人になりたいと思い続けていた。
だからいま競輪に参戦すべく、日本に来たことが信じられない。

競輪参戦を「長年の夢」と語ったリチャードソン photo: Yuichiro Hosoda
─トラックで使っているフレームの素材はカーボンではなく、クロモリになります。既に試走しましたか?
昨日試走したよ。乗ったのはブリヂストン。正直、感触はかなり良かった。走りはスムーズだし、思ったよりも剛性が高くて安心した。まだ全力でもがいてはいないが、これまで様々なバイクで走ってきた経験もあるので問題はないだろう。それに自ら行うバイクセッティングも心配はしていない。
*リチャードソンには、2024年にオーストラリアからイギリスへ国籍を変更した理由についても聞いた。その詳細は別記事でお届けする。
ハリー・ラブレイセン(オランダ) 1997/3/14生(29歳)

五輪では東京、パリと2大会連続でスプリント&ケイリンを制しているハリー・ラブレイセン(オランダ) photo: Yuichiro Hosoda
そして最後に話を聞いたのは、トラック界のスーパースターであるラブレイセン。東京五輪ではスプリントで金メダルを獲得し、パリ五輪ではスプリントとケイリン、そしてチームスプリントの3冠を達成。特にスプリントでは、2019年から世界選手権で負けなしの7連覇中。中野浩一の10連覇の更新に迫る29歳だ。
─競輪参戦への意気込みを教えてください。
ラブレイセン:長い期間にわたり競輪への参加が叶わなかった。ずっと挑戦したいと思っていたから本当に楽しみだよ。日本での経験は、きっと僕の選手キャリアをより豊かなものにしてくれるはずだ。
─来日は2021年の東京五輪以来ですか?
そうだね。でもあの時は(コロナ禍のため)隔離されてどこへも行けなかったので、日本での滞在が本当に楽しみだ。
─競輪選手としての生活も、コロナ禍とは違う意味でのストイックなものになると思います。大丈夫そうですか?
正直、わからない(笑)。オランダから日本まで飛行機で13時間掛かったのだが、そのインターネットがない状態でさえとても長く感じた。それが3〜4日間続くんだろう?辛いかもしれないね。

2019年からスプリントでは世界王者ジャージを着続けるハリー・ラブレイセン(オランダ) photo:CorVos
─クロモリフレームの感触はどうでしたか?
今日の午前中に初めて乗った。そこまで悪くない…というのが率直な感想だ。普段はとても剛性の高いバイクに乗っているので違いはあるが、力を込めたときの反応も良かった。あれならば問題なくトップスピードに乗れると思う。(カーボンと比べ)バイクがブレる感覚こそあるが、僕の体型に合わせ、ホイールベースを長くすることができるらしいから、その問題も解決できると思っている。
─自ら行うバイクセッティングについて不安はありますか?
練習では自分でセッティングしているから大丈夫だろう。さすがにレースではメカニックが担当するけどね。でもトラックと違い、競輪は1日に1レースしか行わないから不安はないよ。
─日本にはトラック世界選手権のスプリントで10連覇を達成した中野浩一という、偉大なチャンピオンがいます。彼とお会いしたことはありますか?
世界選手権などのレースで何度か会ったことがある。日本に限らず偉大な人なので、この夏、競輪で再び会えたら嬉しいね。
─10連覇という記録の更新は可能だと思いますか?
わからないよ。その記録に並ぶにはまず、あと3回勝たなければならない。もちろん厳しい戦いを強いられることになるだろう。狙える年齢ではあるが、どうだろうね。

親しみやすい笑顔で、丁寧に質問に答えてくれる姿が印象的だった photo: Yuichiro Hosoda
─ところで、先日のヨーロッパ選手権はどうでしたか?先程リチャードソン選手にも話を聞いたのですが、スプリントでは久々の負けだったと思います。
2019年以来の負けとなったが、それほど落ち込んではいないよ。それにあの時はトップコンディションではなかったの。だから日本で追い込み、10月の世界選手権でリベンジできればと思っている。
─2018年と19年に参戦し、高い勝率を誇った同じオランダ出身のマティエス・ブフリ選手には競輪に向けたアドバイスなどありましたか?
競輪の色んな話を聞いたし、彼からも僕に参戦するべきだと背中を押された。特にトラックとは違う戦術的なアドバイスを貰った。それに今回共に参戦するジョー(トルーマン)も競輪経験者だ。彼にも色々アドバイスを貰いながら準備を進めることになるだろう。
─ありがとうございました。
(流暢な日本語で)ありがとうございます。

「競輪ワールドシリーズ」のために招聘された男女3名ずつ、計6名の世界トップ選手たち。また海外選手による2019年以来の参戦ということもあり、TVや新聞社など多くのメディアが詰めかけた。各メディアが次々に入れ替わる個別インタビューのスタイルだったにもかかわらず、シクロワイアードが話を聞いた3選手は終始笑顔で、丁寧に言葉を選びながら答えてくれた。
エリース・アンドリュース(ニュージーランド) 1999/12/31生(26歳)

まず話を聞いたのは、2024年のパリ五輪でスプリントとケイリンの2冠を達成し、チームスプリントでも銀メダルを獲得したアンドリュース。176cmの長身から繰り出される力強いスプリントとその持続力を武器にするアンドリュースは、父親が元トラック選手(現ニュージーランドナショナルチームのコーチ)で、母親は元マウンテンバイクの選手というサラブレッドだ。
─競輪に参戦する、いまの気持ちを聞かせて下さい。
アンドリュース:久々となる競輪への招待選手のなかに、自分が入ることができて光栄に思う。
─競輪選手としてはレース前からスマホの使用などが禁止される、隔離生活があります。
そのような環境は初体験だが、正直ワクワクしている。どんな挑戦だって歓迎する気持ちがある。
─またバイクのセッティングも自ら行わなければなりません。問題なく対応できると思いますか?
(練習拠点である)ニュージーランドでもたまに自分で触ることはあるし、ここ(日本競輪選手養成所)で教えて貰えるのであまり心配はしていない。

─日本人のファンからは、ケイリン世界王者である佐藤水菜選手との直接対決が期待されています。
水菜とはライバルであり、友でもある。仲も良く、世界王者としてリスペクトしている選手。だからぜひとも戦いたい。
─脚質的にはあなたも佐藤選手も、ロングスプリントを得意としています。そこに特徴の差などはありますか?
割と近い性質があるが、彼女は短い距離でもパワフルなスプリントがある。だからこそ強敵だ。
─2017年にジュニア世界選手権の個人パシュート(中距離種目)で世界一に輝き、当時の世界記録を更新。その後、短距離に転向しました。それが現在のスプリントの持続力にも繋がっていると思うのですが、転向の理由は何だったのでしょうか?
そもそもスプリントとケイリンが好きだったし、中距離の練習が辛くなってしまったから。短距離の練習とは全く異なるものだからね。またジュニアの時から短距離種目もやっており、光るものがあるとスプリントコーチが声を掛けてくれた。

─最後に1つ。様々なプロフィールに書かれている「2000年になる直前に生まれた」というのは本当ですか?
それは本当で、ミレニアムになる15分前に生まれたの。自転車競技はジュニアなどの区分が1月1日からになるから、そういう意味では不利だったかもね(笑)。
マシュー・リチャードソン(イギリス) 1999/4/17生(26歳)

2人目は、パリ五輪でスプリントとケイリンで2つの銀メダルを獲得したリチャードソン。しかし今年2月にトルコで行われたヨーロッパ選手権では、絶対王者ハリー・ラブレイセン(オランダ)をスプリントとケイリンで下し、2冠を達成。特にスプリントでは、2019年以来スプリントで無敗を誇っていたブレイセンを相手に劇的な逆転勝利を演出し、今後が注目される選手だ。
─その坊主頭は、競輪を意識したもの…ですか?
リチャードソン:全然関係ないよ(笑)。坊主にしたのは昨年の11月頃。シャワーの後に乾かしたり、風に吹かれたりするのがめんどくさくなっただけだ。
─先程の記者会見では競輪参戦が"夢”だと語っていました。
その通り。繰り返しになるが、競輪挑戦は長年の夢だった。僕が自転車競技を始め、すぐに短距離種目を始めた。トラックの短距離選手であれば、日本の競輪はその長い歴史を含め、意識せざるを得ないものだ。まだ僕が若かった数年前、日本国外の選手たちが競輪に招かれる様子を見て、いつか僕もその1人になりたいと思い続けていた。
だからいま競輪に参戦すべく、日本に来たことが信じられない。

─トラックで使っているフレームの素材はカーボンではなく、クロモリになります。既に試走しましたか?
昨日試走したよ。乗ったのはブリヂストン。正直、感触はかなり良かった。走りはスムーズだし、思ったよりも剛性が高くて安心した。まだ全力でもがいてはいないが、これまで様々なバイクで走ってきた経験もあるので問題はないだろう。それに自ら行うバイクセッティングも心配はしていない。
*リチャードソンには、2024年にオーストラリアからイギリスへ国籍を変更した理由についても聞いた。その詳細は別記事でお届けする。
ハリー・ラブレイセン(オランダ) 1997/3/14生(29歳)

そして最後に話を聞いたのは、トラック界のスーパースターであるラブレイセン。東京五輪ではスプリントで金メダルを獲得し、パリ五輪ではスプリントとケイリン、そしてチームスプリントの3冠を達成。特にスプリントでは、2019年から世界選手権で負けなしの7連覇中。中野浩一の10連覇の更新に迫る29歳だ。
─競輪参戦への意気込みを教えてください。
ラブレイセン:長い期間にわたり競輪への参加が叶わなかった。ずっと挑戦したいと思っていたから本当に楽しみだよ。日本での経験は、きっと僕の選手キャリアをより豊かなものにしてくれるはずだ。
─来日は2021年の東京五輪以来ですか?
そうだね。でもあの時は(コロナ禍のため)隔離されてどこへも行けなかったので、日本での滞在が本当に楽しみだ。
─競輪選手としての生活も、コロナ禍とは違う意味でのストイックなものになると思います。大丈夫そうですか?
正直、わからない(笑)。オランダから日本まで飛行機で13時間掛かったのだが、そのインターネットがない状態でさえとても長く感じた。それが3〜4日間続くんだろう?辛いかもしれないね。

─クロモリフレームの感触はどうでしたか?
今日の午前中に初めて乗った。そこまで悪くない…というのが率直な感想だ。普段はとても剛性の高いバイクに乗っているので違いはあるが、力を込めたときの反応も良かった。あれならば問題なくトップスピードに乗れると思う。(カーボンと比べ)バイクがブレる感覚こそあるが、僕の体型に合わせ、ホイールベースを長くすることができるらしいから、その問題も解決できると思っている。
─自ら行うバイクセッティングについて不安はありますか?
練習では自分でセッティングしているから大丈夫だろう。さすがにレースではメカニックが担当するけどね。でもトラックと違い、競輪は1日に1レースしか行わないから不安はないよ。
─日本にはトラック世界選手権のスプリントで10連覇を達成した中野浩一という、偉大なチャンピオンがいます。彼とお会いしたことはありますか?
世界選手権などのレースで何度か会ったことがある。日本に限らず偉大な人なので、この夏、競輪で再び会えたら嬉しいね。
─10連覇という記録の更新は可能だと思いますか?
わからないよ。その記録に並ぶにはまず、あと3回勝たなければならない。もちろん厳しい戦いを強いられることになるだろう。狙える年齢ではあるが、どうだろうね。

─ところで、先日のヨーロッパ選手権はどうでしたか?先程リチャードソン選手にも話を聞いたのですが、スプリントでは久々の負けだったと思います。
2019年以来の負けとなったが、それほど落ち込んではいないよ。それにあの時はトップコンディションではなかったの。だから日本で追い込み、10月の世界選手権でリベンジできればと思っている。
─2018年と19年に参戦し、高い勝率を誇った同じオランダ出身のマティエス・ブフリ選手には競輪に向けたアドバイスなどありましたか?
競輪の色んな話を聞いたし、彼からも僕に参戦するべきだと背中を押された。特にトラックとは違う戦術的なアドバイスを貰った。それに今回共に参戦するジョー(トルーマン)も競輪経験者だ。彼にも色々アドバイスを貰いながら準備を進めることになるだろう。
─ありがとうございました。
(流暢な日本語で)ありがとうございます。
text:Sotaro.Arakawa
photo:Yuichiro Hosoda
photo:Yuichiro Hosoda