2013/12/27(金) - 11:07
12月26日にベルギーのヒュースデン=ゾルダーで行なわれたUCIシクロクロスワールドカップ第5戦。混戦からゴール前で抜け出したUCIワールドカップリーダーの22歳ラルス・ファンデルハール(オランダ、ラボバンクデベロップメント)が勝利した。
ベルギー東部のゾルダーサーキットに集まった観客は1万5000人。コースは過去にF1グランプリも開催されたサーキットと隣接する林が組み合わされたもので、舗装路とテクニカルな林区間を何度も行き交う。その2つを繋ぐのは崖のようなキャンバーだ。
出場選手の中で注目を集めたのは、過去に2度シクロクロスの世界チャンピオンに輝いているゼネク・スティバル(チェコ、オメガファーマ・クイックステップ)だ。現在ロードレースに主眼を置き、ブエルタ・ア・エスパーニャでステージ優勝ならびにエネコ・ツアーで総合優勝を飾った"スティービー"、UCIワールドカップに戻ってきた。
そのスティバルやベルギーチャンピオンのクラース・ヴァントルノウト(ベルギー、サンウェブ・ナポレオンゲームス)、ドイツチャンピオンのフィリップ・ワルスレーベン(ドイツ、BKCP・パワープラス)、そしてUCIワールドカップリーダージャージのラルス・ファンデルハール(オランダ、ラボバンクデベロップメント)らが先行する形でレースは幕開け。
有力選手の一角ニールス・アルベルト(ベルギー、BKCP・パワープラス)はスタート後すぐの180度で転倒し、実質的に最後尾からのスタートに。前年度の優勝者で現世界チャンピオンのスヴェン・ネイス(ベルギー、クレラン・KDL)はいつも通りのスロースタート。
スティバルがパワフルな走りで牽引する先頭パックを、ネイス率いる追走パックが追いかける。ネイスらが近づく度にスティバルが舗装路でアタックを仕掛けたが、決定的なリードは生まれない。やがて最終周回が近づくと追走パックが合流し、先頭は10名を超える大所帯に。最後尾から順位を上げたアルベルトも追いつき、約13名が一列にラインを組んで最終周回に突入した。
先頭ではワルスレーベンやスティバルが積極的にペースを上げ、周回後半に入るとファンデルハール先頭へ。短い登りで小柄なファンデルハールが軽快なダンシングで先行。1人リードした状態で最終ストレートに差し掛かったファンデルハールがそのままフィニッシュした。バイクを担いで崖をよじ登るキャンバー区間を含むにも関わらず、最終周回の平均スピードは29.1km/hに達した。
「今日は戦略的なレースになると予想していたので、常に先頭に位置しながら最終周回までチャンスを待った。調子が良かったので、チャレンジする他に選択肢は無かったんだ」。第1戦と第2戦に続くUCIワールドカップ勝利で、シリーズランキングトップを独走するファンデルハールはそう振り返る。
第5戦までを終えて、ファンデルハールはランキング2位のワルスレーベンから33ポイント、同3位のヴァントルノウトから58ポイントのリードを得ている。シリーズチャンピオンが見えてきた22歳は「今日ニールス・アルベルトに起こったようなこと(落車)が僕にも起こるかもしれない。まだ2戦残っているので、その時になってみないと分からないよ」と慎重な姿勢を崩さない。
エリート男子同様に、エリート女子レースもUCIワールドカップリーダーの走りが光った。前半からリードした世界チャンピオンのマリアンヌ・フォス(オランダ、ラボウィメンサイクリング)とベルギーチャンピオンのサンヌ・カント(ベルギー、エネルタルム・BKCP)を、後方から追い上げた35歳のキャサリン・コンプトン(アメリカ、トレックシクロクロス)がパス。フォスを20秒差で振り切ったコンプトンがシリーズ4勝目をマークした。
昨シーズンのゾルダーで自身最高の24位をマークした豊岡英子(パナソニックレディース)は、落車の影響で順位を落として43位フィニッシュ。同じくUCIワールドカップを連戦している沢田時(チームブリヂストン・アンカー)は3分49秒差の34位でレースを終えている。
豊岡英子(パナソニックレディース)
「いい感じでスタートできましたが、2周回目のストレートで後ろから無理やり割り込んできた選手と接触して落車してしまい、そこからリズムを作ることができませんでした。シクロクロスは1レースのうちにトラブルが2、3回起きても普通のこと。今後、そのようなところを対処していきたいです。今日は例年になく走りやすいコンディションだったので、悔しい気持ちですが、明日もレースがあるので、気持ちを切り替えていきたいと思います」
沢田時(チームブリヂストン・アンカー)のコメント
「やっぱりスタートが苦手ですね。スタートで遅れてしまい、1周回目を終えて、20番代のパックにしかいけなかったのが残念。コーナリングでは詰められたので、スタートでもっと前に行ければ、技術的にももっと前のパックで走れたいなと思います。1周目を意識してスタートなどの練習などしていきたいと思います。あとは周りの選手は担いだあとの加速が速くて、そこで抜かれてしまいました。でも乗れる区間、とくに下りは良かったので、いいところを伸ばして、もっと前のパックで走れるようになると面白そうです。ペース配分はよく、今日は自分の実力を出し切れました」
UCIシクロクロスワールドカップ2013-2014第5戦結果
エリート男子
1位 ラルス・ファンデルハール(オランダ、ラボバンクデベロップメント) 1h02'41"
2位 マルティン・ビーナ(チェコ、クワドロ・スタンナー) +01"
3位 ゼネク・スティバル(チェコ、オメガファーマ・クイックステップ) +02"
4位 フィリップ・ワルスレーベン(ドイツ、BKCP・パワープラス) +03"
5位 ロブ・ピータース(ベルギー、テレネット・フィデア) +04"
6位 スヴェン・ネイス(ベルギー、クレラン・KDL)
7位 クラース・ヴァントルノウト(ベルギー、サンウェブ・ナポレオンゲームス) +05"
8位 ケヴィン・パウエルス(ベルギー、サンウェブ・ナポレオンゲームス) +07"
9位 タイス・ファンアメロンヘン(オランダ、AAドリンク) +10"
10位 バルト・アルノーツ(ベルギー、AAドリンク) +12"
エリート女子
1位 キャサリン・コンプトン(アメリカ、トレックシクロクロス) 38'42"
2位 マリアンヌ・フォス(オランダ、ラボウィメンサイクリング) +20"
3位 サンヌ・カント(ベルギー、エネルタルム・BKCP) +57"
4位 ニキ・ハリス(イギリス、ヤングテレネット・フィデア) +1'29"
5位 ルーシー・シェネル(フランス、BH・SRサンツアー) +1'31"
43位 豊岡英子(日本、パナソニックレディース) +5'50"
U23
1位 マテュー・ファンデルポール(オランダ) 49'08"
2位 ワウト・ファンアールト(ベルギー) +11"
3位 マイク・テウニッセン(オランダ) +19"
4位 ティム・メルリエ(ベルギー) +22"
5位 スタン・ゴドリー(オランダ) +23"
34位 沢田時(日本) +3'49"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Sonoko Tanaka
ベルギー東部のゾルダーサーキットに集まった観客は1万5000人。コースは過去にF1グランプリも開催されたサーキットと隣接する林が組み合わされたもので、舗装路とテクニカルな林区間を何度も行き交う。その2つを繋ぐのは崖のようなキャンバーだ。
出場選手の中で注目を集めたのは、過去に2度シクロクロスの世界チャンピオンに輝いているゼネク・スティバル(チェコ、オメガファーマ・クイックステップ)だ。現在ロードレースに主眼を置き、ブエルタ・ア・エスパーニャでステージ優勝ならびにエネコ・ツアーで総合優勝を飾った"スティービー"、UCIワールドカップに戻ってきた。
そのスティバルやベルギーチャンピオンのクラース・ヴァントルノウト(ベルギー、サンウェブ・ナポレオンゲームス)、ドイツチャンピオンのフィリップ・ワルスレーベン(ドイツ、BKCP・パワープラス)、そしてUCIワールドカップリーダージャージのラルス・ファンデルハール(オランダ、ラボバンクデベロップメント)らが先行する形でレースは幕開け。
有力選手の一角ニールス・アルベルト(ベルギー、BKCP・パワープラス)はスタート後すぐの180度で転倒し、実質的に最後尾からのスタートに。前年度の優勝者で現世界チャンピオンのスヴェン・ネイス(ベルギー、クレラン・KDL)はいつも通りのスロースタート。
スティバルがパワフルな走りで牽引する先頭パックを、ネイス率いる追走パックが追いかける。ネイスらが近づく度にスティバルが舗装路でアタックを仕掛けたが、決定的なリードは生まれない。やがて最終周回が近づくと追走パックが合流し、先頭は10名を超える大所帯に。最後尾から順位を上げたアルベルトも追いつき、約13名が一列にラインを組んで最終周回に突入した。
先頭ではワルスレーベンやスティバルが積極的にペースを上げ、周回後半に入るとファンデルハール先頭へ。短い登りで小柄なファンデルハールが軽快なダンシングで先行。1人リードした状態で最終ストレートに差し掛かったファンデルハールがそのままフィニッシュした。バイクを担いで崖をよじ登るキャンバー区間を含むにも関わらず、最終周回の平均スピードは29.1km/hに達した。
「今日は戦略的なレースになると予想していたので、常に先頭に位置しながら最終周回までチャンスを待った。調子が良かったので、チャレンジする他に選択肢は無かったんだ」。第1戦と第2戦に続くUCIワールドカップ勝利で、シリーズランキングトップを独走するファンデルハールはそう振り返る。
第5戦までを終えて、ファンデルハールはランキング2位のワルスレーベンから33ポイント、同3位のヴァントルノウトから58ポイントのリードを得ている。シリーズチャンピオンが見えてきた22歳は「今日ニールス・アルベルトに起こったようなこと(落車)が僕にも起こるかもしれない。まだ2戦残っているので、その時になってみないと分からないよ」と慎重な姿勢を崩さない。
エリート男子同様に、エリート女子レースもUCIワールドカップリーダーの走りが光った。前半からリードした世界チャンピオンのマリアンヌ・フォス(オランダ、ラボウィメンサイクリング)とベルギーチャンピオンのサンヌ・カント(ベルギー、エネルタルム・BKCP)を、後方から追い上げた35歳のキャサリン・コンプトン(アメリカ、トレックシクロクロス)がパス。フォスを20秒差で振り切ったコンプトンがシリーズ4勝目をマークした。
昨シーズンのゾルダーで自身最高の24位をマークした豊岡英子(パナソニックレディース)は、落車の影響で順位を落として43位フィニッシュ。同じくUCIワールドカップを連戦している沢田時(チームブリヂストン・アンカー)は3分49秒差の34位でレースを終えている。
豊岡英子(パナソニックレディース)
「いい感じでスタートできましたが、2周回目のストレートで後ろから無理やり割り込んできた選手と接触して落車してしまい、そこからリズムを作ることができませんでした。シクロクロスは1レースのうちにトラブルが2、3回起きても普通のこと。今後、そのようなところを対処していきたいです。今日は例年になく走りやすいコンディションだったので、悔しい気持ちですが、明日もレースがあるので、気持ちを切り替えていきたいと思います」
沢田時(チームブリヂストン・アンカー)のコメント
「やっぱりスタートが苦手ですね。スタートで遅れてしまい、1周回目を終えて、20番代のパックにしかいけなかったのが残念。コーナリングでは詰められたので、スタートでもっと前に行ければ、技術的にももっと前のパックで走れたいなと思います。1周目を意識してスタートなどの練習などしていきたいと思います。あとは周りの選手は担いだあとの加速が速くて、そこで抜かれてしまいました。でも乗れる区間、とくに下りは良かったので、いいところを伸ばして、もっと前のパックで走れるようになると面白そうです。ペース配分はよく、今日は自分の実力を出し切れました」
UCIシクロクロスワールドカップ2013-2014第5戦結果
エリート男子
1位 ラルス・ファンデルハール(オランダ、ラボバンクデベロップメント) 1h02'41"
2位 マルティン・ビーナ(チェコ、クワドロ・スタンナー) +01"
3位 ゼネク・スティバル(チェコ、オメガファーマ・クイックステップ) +02"
4位 フィリップ・ワルスレーベン(ドイツ、BKCP・パワープラス) +03"
5位 ロブ・ピータース(ベルギー、テレネット・フィデア) +04"
6位 スヴェン・ネイス(ベルギー、クレラン・KDL)
7位 クラース・ヴァントルノウト(ベルギー、サンウェブ・ナポレオンゲームス) +05"
8位 ケヴィン・パウエルス(ベルギー、サンウェブ・ナポレオンゲームス) +07"
9位 タイス・ファンアメロンヘン(オランダ、AAドリンク) +10"
10位 バルト・アルノーツ(ベルギー、AAドリンク) +12"
エリート女子
1位 キャサリン・コンプトン(アメリカ、トレックシクロクロス) 38'42"
2位 マリアンヌ・フォス(オランダ、ラボウィメンサイクリング) +20"
3位 サンヌ・カント(ベルギー、エネルタルム・BKCP) +57"
4位 ニキ・ハリス(イギリス、ヤングテレネット・フィデア) +1'29"
5位 ルーシー・シェネル(フランス、BH・SRサンツアー) +1'31"
43位 豊岡英子(日本、パナソニックレディース) +5'50"
U23
1位 マテュー・ファンデルポール(オランダ) 49'08"
2位 ワウト・ファンアールト(ベルギー) +11"
3位 マイク・テウニッセン(オランダ) +19"
4位 ティム・メルリエ(ベルギー) +22"
5位 スタン・ゴドリー(オランダ) +23"
34位 沢田時(日本) +3'49"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Sonoko Tanaka
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