2013/11/25(月) - 11:10
ラピエールのロングライド、コンフォートライド用ロードラインナップであるSENSIUM(センシウム)。今回のテスト車両は、そのセンシウムシリーズのエントリーグレード完成車である「200CP」だ。フルカーボンフレームにシマノ105を組み合わせ、25万円というプライスを誇るこのバイクの実力とは。
1946年に創業し、今年で創業66年目となるフランスの老舗メーカー「ラピエール」。シティサイクルからピュアレーシングモデルまでをラインナップする総合バイクブランドであり、長い歴史の中で常に先進的なバイクを生産し続け、本国フランスやヨーロッパでは非常に知名度に長けるブランドだ。
KOGAやREDLINEといったブランドを所有するオランダのアクセルグループの一翼を担うラピエールは、ここ10年余りに渡り地元フランスのトップチーム「FDJ.fr」への機材サポートを行い、そのフィードバックを活かしたバイクを多数発表してきた。2013年シーズンFDJ.frはブエルタ・ア・エスパーニャ区間2勝などを上げ、シーズンを通してラピエールバイクの性能を証明した。
今回テストするセンシウムは、ピュアコンペティティブロードであるゼリウスと双璧を成す、快適性を重視したロングライドモデル。その高い快適性故、センシウムシリーズの最上級モデルはパリ〜ルーベやロンド・ファン・フラーンデレンなど石畳のクラシックレースでは特に愛用され、高い評価を得てきた。
インプレッション車両である「センシウム200CP」は、全4モデルが存在するシリーズ中、上から数えて3番目にあたるもの。上位2モデルに採用されるシートステーの振動減衰機構(ERASERシステム)を廃し、より買い求めやすいようコストパフォーマンスを高めたモデルである。
減衰機構こそ装備されていないものの、センシウム200 CPのテーマは上位グレードと違わず、剛性感とショック吸収性を兼ね備え、ライダーが快適にロングライドを楽しめること。ゼリウスとはジオメトリーも異なり、シート・ヘッドチューブ角はおよそ0.5°寝かせられ、ヘッドチューブは高く、リアセンターは長い。これはアップライトなポジションを可能とし、そして走行時の安定性を高めるための構造だ。
そして縦方向の衝撃を吸収するため、緩くアーチを描くトップチューブはこのセンシウムシリーズの特徴の一つ。上へと向かうにつれて細くなるシートチューブは、BB側(太断面)で剛性を稼ぎ、シートピラー側(細断面)では柔軟性を生み出すことで乗り心地を高めている。
加えて2014年モデルよりフロントフォークが刷新され、コンフォート性能とステアリング性能の改良が行われている。コラム径は上1-1/8、下1-1/4インチの上下異形テーパードヘッドチューブだ。
パーツアッセンブルはロングライドを楽しみたいビギナーに向けたものであり、コンポーネントはシマノ105をベースにティアグラをミックス、ホイールはフレームカラーに合わせた同WH-R501。組み合わせるタイヤは25cとなる。ハンドルバーやステム、シートポストはリッチー製とされ、全体の統一感向上に一役買っている。メタリックブルーとブラックのペイントもルックスに貢献しており、所有する満足度は価格以上にあるだろう。
車重8.2kgにまとめあげられたセンシウム200 CPのプライスは、250,950円(税込)。果たしてこのバイクの性能は如何なものだろうか。2人のテストライダーによるインプレッションをお届けする。
ーインプレッション
「バランス感に優れ、ロングライドに向いた性能がある」錦織大祐(フォーチュンバイク)
特別高い剛性感や軽快感を感じるわけではありませんが、最初の一踏みから力を推進力に変換してくれて、気持ちよく進むバイクでした。旋回性など取り回しも優れており、全体的なバランス感に長けていますね。
一見バックステーが細身であるものの、見た目ほどたわみを感じることはありません。登りでダンシングする際、意図的に車体を左右に大きく振った場合でもヨレは少ないですね。横方向には硬さがありますが、縦方向には若干の柔らかさがあり、狙い通りの性能が出ています。
通じてロングライドへの適正が高い。BB剛性は上位機種に負けるものの、ペダリング時の入力範囲が広いため、シッティングでテンポよく踏むと長時間楽しく乗り続けることができると感じました。体重の重い方やパワーライダーには剛性感がイマイチと捉えられるかもしれませんが、私を含めた多くのホビーレーサーには不満を感じることのないちょうど良い剛性のバイクだと思いました。
突出した踏み出しの軽さや優れた軽快感こそありませんが、エントリーモデルですからその辺りに問題はありません。一方でヘッドチューブ周りの剛性が確保されていて、悪路でも十分なコントロール性能があるという特徴がありますね。剛性の低いバイクにありがちな、ハードブレーキング時のブレは一切ありませんでした。
フォークやバックステーのしなりによって振動吸収するというよりも、車体全体を使って不快な振動をカットする性格です。「極上の乗り心地」ではありませんが、振動吸収性は一般的なバイク以上にあり、安心感がありますね。
フレームの全体的なまとまりは優れていますが、ホイール&タイヤを交換すれば、よりシャープな走りを見せてくれるはず。ホビーレースレベルなら十分な性能がありますし、高性能ホイールと合わせてもフレームが負けてしまうことは少なそうですね。
飛び抜けた性能こそありませんが、ホビーレーサーのエントリー用としてはとてもフィットしたバイクです。高いコントロール性などロングライドに向く性能を持ったモデルですから、現状よりも更に長距離ライドを楽しみたいと考えている方、ヒルクライム等の大会にこれから挑戦したいと考えている方にお勧めのモデルです。
「衝撃吸収に寄ったレーサーバイク。剛性感が高い」渡辺将大(タキザワサイクル)
非常にしっかりと作りこまれたフレームだという第一印象を受けました。車体のバランスが良いので登り・下り・平坦のどんなシチュエーションでも違和感なく乗ることが可能です。コンフォートジオメトリーのためゆったりとしたポジションが取れますが、乗り味としてはやや硬め。衝撃吸収に優れた「レーサー」として捉えると良いかもしれません。
シート角が立っているため、ペダリングの力がロス無く伝わっているように感じます。軽いギアでケイデンスを高く走るよりも、重めのギアでテンポ良くペダルを踏むと、楽に前に進むことができます。ダンシングで力を加えても車体に嫌なブレが発生することなく、左右に軽く振ることができました。
剛性がしっかりと確保されているため、しっかりとブレーキが掛かり、変速操作もストレスがありませんね。前モデルではアウター受けが手前にあることで、内部のゴムパッキンが飛び出すトラブルがありましたが、その辺りも改善されていますね。
ロングライド用として謳っていますが、剛性があり突き上げを若干感じるため、私は100km程度までの中距離かつアップダウンの連続したコースを走るほうが適性が高いように感じました。長距離でも問題はありませんが、しなやかなタイヤやホイールに変えれば、より気持ちよく走ることができるでしょう。
他のモデルと比較してコストパフォーマンスは抜群に良いとは言えませんが、決して選んで損をすることは無いバイクでしょう。操作性が良く安定感があり、剛性はあれどコンフォート性能も備えているなど、高いレベルでのバランスが取れている1台です。
これといった気になる癖がなく、基礎体力がある方で、これから自転車を始めようと考えている方にもオススメです。エントリーレベルから中級クラスのレーサーまででしたら、誰が乗っても不満を感じることの無い優秀なバイクです。
ラピエール Sensium 200 CP
サイズ:XS、S、M、L
フレーム:SENSIUM CARBON
コンポーネント:シマノ 105+ティアグラ
ホイール:シマノ WH-R501
ハンドル、ステム、シートポスト:リッチー アルミ
サドル:セライタリア X1
タイヤ:ミシュラン DYNAMIC SPORT 700x25C
重 量:8.3kg(52サイズ)
インプレライダーのプロフィール
渡辺将大(タキザワサイクル)
群馬県のタキザワサイクルにてチーフメカニックとして勤務する傍ら、シクロクロスを含むレース参加や林道ツーリングを通して、10代から60代まで幅広い年齢層のユーザーに自転車の楽しみ方を提供している。かつては高校大学と名門校にて競技生活を送り、ベルギーやオランダでの競技経験、1年間のオーストラリア競技留学経験を持つ。グラベルライディングを嗜み、レースだけにとらわれない幅広い自転車の楽しみ方を追求中。
タキザワサイクル
錦織大祐(フォーチュンバイク)
幼少のころから自転車屋を志し、都内の大型プロショップで店長として経験を積んだ後、2010年に東京錦糸町にフォーチュンバイクをオープンさせた新進気鋭の若手店主。台湾をはじめとした世界各国の自転車メーカーと繋がりを持ち、実際の製造現場で得た見聞をユーザーに伝えることを信条としている。シマノ鈴鹿ロードに18年連続で出場する一方、普段はロングライドやスローペースでのサイクリングを楽しむ。
フォーチュンバイク
ウエア協力:reric
text:So.Isobe
photo:Makoto.AYANO,So.Isobe
1946年に創業し、今年で創業66年目となるフランスの老舗メーカー「ラピエール」。シティサイクルからピュアレーシングモデルまでをラインナップする総合バイクブランドであり、長い歴史の中で常に先進的なバイクを生産し続け、本国フランスやヨーロッパでは非常に知名度に長けるブランドだ。
KOGAやREDLINEといったブランドを所有するオランダのアクセルグループの一翼を担うラピエールは、ここ10年余りに渡り地元フランスのトップチーム「FDJ.fr」への機材サポートを行い、そのフィードバックを活かしたバイクを多数発表してきた。2013年シーズンFDJ.frはブエルタ・ア・エスパーニャ区間2勝などを上げ、シーズンを通してラピエールバイクの性能を証明した。
今回テストするセンシウムは、ピュアコンペティティブロードであるゼリウスと双璧を成す、快適性を重視したロングライドモデル。その高い快適性故、センシウムシリーズの最上級モデルはパリ〜ルーベやロンド・ファン・フラーンデレンなど石畳のクラシックレースでは特に愛用され、高い評価を得てきた。
インプレッション車両である「センシウム200CP」は、全4モデルが存在するシリーズ中、上から数えて3番目にあたるもの。上位2モデルに採用されるシートステーの振動減衰機構(ERASERシステム)を廃し、より買い求めやすいようコストパフォーマンスを高めたモデルである。
減衰機構こそ装備されていないものの、センシウム200 CPのテーマは上位グレードと違わず、剛性感とショック吸収性を兼ね備え、ライダーが快適にロングライドを楽しめること。ゼリウスとはジオメトリーも異なり、シート・ヘッドチューブ角はおよそ0.5°寝かせられ、ヘッドチューブは高く、リアセンターは長い。これはアップライトなポジションを可能とし、そして走行時の安定性を高めるための構造だ。
そして縦方向の衝撃を吸収するため、緩くアーチを描くトップチューブはこのセンシウムシリーズの特徴の一つ。上へと向かうにつれて細くなるシートチューブは、BB側(太断面)で剛性を稼ぎ、シートピラー側(細断面)では柔軟性を生み出すことで乗り心地を高めている。
加えて2014年モデルよりフロントフォークが刷新され、コンフォート性能とステアリング性能の改良が行われている。コラム径は上1-1/8、下1-1/4インチの上下異形テーパードヘッドチューブだ。
パーツアッセンブルはロングライドを楽しみたいビギナーに向けたものであり、コンポーネントはシマノ105をベースにティアグラをミックス、ホイールはフレームカラーに合わせた同WH-R501。組み合わせるタイヤは25cとなる。ハンドルバーやステム、シートポストはリッチー製とされ、全体の統一感向上に一役買っている。メタリックブルーとブラックのペイントもルックスに貢献しており、所有する満足度は価格以上にあるだろう。
車重8.2kgにまとめあげられたセンシウム200 CPのプライスは、250,950円(税込)。果たしてこのバイクの性能は如何なものだろうか。2人のテストライダーによるインプレッションをお届けする。
ーインプレッション
「バランス感に優れ、ロングライドに向いた性能がある」錦織大祐(フォーチュンバイク)
特別高い剛性感や軽快感を感じるわけではありませんが、最初の一踏みから力を推進力に変換してくれて、気持ちよく進むバイクでした。旋回性など取り回しも優れており、全体的なバランス感に長けていますね。
一見バックステーが細身であるものの、見た目ほどたわみを感じることはありません。登りでダンシングする際、意図的に車体を左右に大きく振った場合でもヨレは少ないですね。横方向には硬さがありますが、縦方向には若干の柔らかさがあり、狙い通りの性能が出ています。
通じてロングライドへの適正が高い。BB剛性は上位機種に負けるものの、ペダリング時の入力範囲が広いため、シッティングでテンポよく踏むと長時間楽しく乗り続けることができると感じました。体重の重い方やパワーライダーには剛性感がイマイチと捉えられるかもしれませんが、私を含めた多くのホビーレーサーには不満を感じることのないちょうど良い剛性のバイクだと思いました。
突出した踏み出しの軽さや優れた軽快感こそありませんが、エントリーモデルですからその辺りに問題はありません。一方でヘッドチューブ周りの剛性が確保されていて、悪路でも十分なコントロール性能があるという特徴がありますね。剛性の低いバイクにありがちな、ハードブレーキング時のブレは一切ありませんでした。
フォークやバックステーのしなりによって振動吸収するというよりも、車体全体を使って不快な振動をカットする性格です。「極上の乗り心地」ではありませんが、振動吸収性は一般的なバイク以上にあり、安心感がありますね。
フレームの全体的なまとまりは優れていますが、ホイール&タイヤを交換すれば、よりシャープな走りを見せてくれるはず。ホビーレースレベルなら十分な性能がありますし、高性能ホイールと合わせてもフレームが負けてしまうことは少なそうですね。
飛び抜けた性能こそありませんが、ホビーレーサーのエントリー用としてはとてもフィットしたバイクです。高いコントロール性などロングライドに向く性能を持ったモデルですから、現状よりも更に長距離ライドを楽しみたいと考えている方、ヒルクライム等の大会にこれから挑戦したいと考えている方にお勧めのモデルです。
「衝撃吸収に寄ったレーサーバイク。剛性感が高い」渡辺将大(タキザワサイクル)
非常にしっかりと作りこまれたフレームだという第一印象を受けました。車体のバランスが良いので登り・下り・平坦のどんなシチュエーションでも違和感なく乗ることが可能です。コンフォートジオメトリーのためゆったりとしたポジションが取れますが、乗り味としてはやや硬め。衝撃吸収に優れた「レーサー」として捉えると良いかもしれません。
シート角が立っているため、ペダリングの力がロス無く伝わっているように感じます。軽いギアでケイデンスを高く走るよりも、重めのギアでテンポ良くペダルを踏むと、楽に前に進むことができます。ダンシングで力を加えても車体に嫌なブレが発生することなく、左右に軽く振ることができました。
剛性がしっかりと確保されているため、しっかりとブレーキが掛かり、変速操作もストレスがありませんね。前モデルではアウター受けが手前にあることで、内部のゴムパッキンが飛び出すトラブルがありましたが、その辺りも改善されていますね。
ロングライド用として謳っていますが、剛性があり突き上げを若干感じるため、私は100km程度までの中距離かつアップダウンの連続したコースを走るほうが適性が高いように感じました。長距離でも問題はありませんが、しなやかなタイヤやホイールに変えれば、より気持ちよく走ることができるでしょう。
他のモデルと比較してコストパフォーマンスは抜群に良いとは言えませんが、決して選んで損をすることは無いバイクでしょう。操作性が良く安定感があり、剛性はあれどコンフォート性能も備えているなど、高いレベルでのバランスが取れている1台です。
これといった気になる癖がなく、基礎体力がある方で、これから自転車を始めようと考えている方にもオススメです。エントリーレベルから中級クラスのレーサーまででしたら、誰が乗っても不満を感じることの無い優秀なバイクです。
ラピエール Sensium 200 CP
サイズ:XS、S、M、L
フレーム:SENSIUM CARBON
コンポーネント:シマノ 105+ティアグラ
ホイール:シマノ WH-R501
ハンドル、ステム、シートポスト:リッチー アルミ
サドル:セライタリア X1
タイヤ:ミシュラン DYNAMIC SPORT 700x25C
重 量:8.3kg(52サイズ)
インプレライダーのプロフィール
渡辺将大(タキザワサイクル)
群馬県のタキザワサイクルにてチーフメカニックとして勤務する傍ら、シクロクロスを含むレース参加や林道ツーリングを通して、10代から60代まで幅広い年齢層のユーザーに自転車の楽しみ方を提供している。かつては高校大学と名門校にて競技生活を送り、ベルギーやオランダでの競技経験、1年間のオーストラリア競技留学経験を持つ。グラベルライディングを嗜み、レースだけにとらわれない幅広い自転車の楽しみ方を追求中。
タキザワサイクル
錦織大祐(フォーチュンバイク)
幼少のころから自転車屋を志し、都内の大型プロショップで店長として経験を積んだ後、2010年に東京錦糸町にフォーチュンバイクをオープンさせた新進気鋭の若手店主。台湾をはじめとした世界各国の自転車メーカーと繋がりを持ち、実際の製造現場で得た見聞をユーザーに伝えることを信条としている。シマノ鈴鹿ロードに18年連続で出場する一方、普段はロングライドやスローペースでのサイクリングを楽しむ。
フォーチュンバイク
ウエア協力:reric
text:So.Isobe
photo:Makoto.AYANO,So.Isobe
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